ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか 作:ウンニーニョ
(ほんとに、こんな場所があるんだな……)
クロはベートに肩を貸してもらいながら辺りを見回す。
ダンジョンの中にもかかわらず、クリスタルが太陽の様に輝き、地面は草木で青々としている。
モンスターの気配は全くなく、ここに集まる冒険者は警戒を解き、地上と同じ様に休息を取っている。
自分の知らないダンジョンの実態、クロはある事に目を向けない様に頭の隅にそれを追いやり、無事たどり着いたであろう仲間達の事を訪ねる。
ハクアに案内され、テントの中でベル達の安否を確認し、そこでハイ・ポーションを貰い一気に煽る。
その横でベートがベルを発見し、何か言いたそうにベルを起こそうとするが、その時、テントにやって来た【ロキ・ファミリア】の団長フィンに解毒薬を取りに行って無い事を咎められ、慌てて地上へと走っていった。
そして今、クロは別のテントで【ロキ・ファミリア】の幹部、フィン、ティオナ、リヴェリア、ガレスと向かい合って座っている。
隣に座るハクアとレフィーヤが先程クロを見つけた状況をテントでフィンに報告した事からこの様な状況が出来上がった。
「のうフィン、此奴が本当にゴライアスを一人で倒したのか?」
リヴェリアが疑いの目でクロを見つめる。
隣に座るガレスも同じ様に疑っている様だ。
苦笑いをするクロにかわってハクア、それにフィンの隣に座るティオナも見た状況を説明する。
しかしそれだけではクロが倒したと説明できない。
誰か上級冒険者が地上へ向かう途中に倒した可能性もある。
特にリヴェリアはベルがミノタウロスを倒す横でやられて立ち上がれずに意識を手放したクロを見ている事もある。
フィンの「本当に君が1人で倒したのかい?」と言う質問にクロは苦笑いで「一応……」と答える。
リヴェリアの「お主、レベルは?」と言う質問に「1」と指を立てて苦笑いを深めた。
それを見たここにいるメンバーがまさかと顔に出して驚き、そして同時にガレスがガハハハと声に出して笑い出す。
「フィン、コイツがレベル1と言うのは本当だろう! だからゴライアスを倒したのも嘘ではないだろう」
ガレスの言葉にフィンも頷き、リヴェリアも呆れた様に鼻から息を吐く。
「できれば……この話は_____」
「しないよ。…できるわけがない」
クロの言葉がフィンの言葉で遮られる。
クロの偉業はクロが言えば笑い物のホラ話だが、オラリオ最強ファミリアの一つである【ロキ・ファミリア】のそれも団長が話せば信憑性が加わり、信じた
その前に笑い話だろうが、無駄に死に急ぐ者を増やす事もないだろだろう。
少しの沈黙の後、フィンが話の続きを話そうとした時、テントのカーテンが開き、金髪の女神の様な冒険者に連れられ兎によく似た冒険者が顔を覗かせた。
☆★☆★
ベルが目を覚ますとそこは知らない場所だった。
頭が覚醒し始めると自分が気を失った状況を思い出す。
その時、
そしてそれを最後に飛んで来たリリを受け取った反動で倒れ、坂道を転がり、そこで自分の意識は途切れた。
思い出したと同時にベルはハッと顔を上げ辺りを見回す。
するとリリとヴェルフは隣で寝息を立てているものの、やはり、クロの姿は見当たらない。
まさか、という思いで心が一杯になる。
「クロは! クロはここにはいないんですか⁈」
隣で看病してくれていたであろう人に叫びにも似た声で訪ねる。
その人が
ベルの剣幕に上手く言葉を返せないアイズだが、ベルの体に激痛が走り、言葉が途切れたところでゆっくりと話し始める。
「……大丈夫。今私達の団長と話してる」
その言葉にベルは安心して体の力を抜いた。
「……起きたら連れて来て欲しいって言われてるから」
そう言われてベルはアイズと共にテントを出た。
落ち着きを取り戻すとアイズと2人で歩いているという状況に緊張して思う様に体が動かない。
手足が同時に動いているのを慌てて直すと沈黙を破りたくてベルはアイズに話しかけた。
「ありがとうございます。手当てしてもらって、それに、クロも助けに行ってもらって」
ベルの言葉にアイズは歩きながら、顔だけベルに向けると首を傾げ話しだす。
「モンスターを倒したのは彼だよ?」
アイズの口から出た言葉にベルは目を見開いた。
アイズの言うモンスターはあの状況を考えるとゴライアスの事だろう。
(クロがゴライアスを倒した? 1人で?)
ベルは考えれば考えるほど頭は混乱し、アイズに何か尋ねようと口を開こうとした時、どうやら目的のテントに着いたようで、アイズに続きテントの中へと入った。