ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか 作:ウンニーニョ
黒髪の少年、クロノス・ヴァレスティはダンジョンの行き止まりでピンチに陥っていた。
唯一の出入り口にはこの階層では出現しないモンスターであるミノタウルスが追い詰めたとばかりにゆっくりと近づいて来ている。
クロノスはチラリと横を見る。
全部、コイツのせいだ。
白髪に紅目の兎の様な冒険者。
ベル・クラネル
この冒険者に助けられて俺はまた冒険者になった。
主神であるヘスティアに見せてもらったステイタスはなぜかかつての力を失い、Lv.1だった。この子供に戻ってしまった体も関係あるのだろか?
閑話休題
まぁ、人との繋がりを作りたく無い。俺はそれだけを聞いてホームを去ったわけだ。
しかし生活をするのには金がいるわけで…
ダンジョンに潜って資金を稼ぎ今後どうしようかと考えていた(外に出て行こうかとも考えたが冒険者は自由に外に出れないらしい)矢先、バッタリとコイツと出くわしてしまった。
去ったヤツの事なんか放っておけばいい物をコイツはとびっきりのお人好しなのだろう。
「3日間どうしてたの?」「一人だと危ないよ?」「そんなに下に下りたら…」
などと言いながらつきまとってきた。
俺は諦めてくれるように無視を決め込み、逃げるように歩いた。
結果、5階層へと下りてきていた。
で、今の状況である。
5階層にはいないはずのミノタウルスが突如として現れ、追いかけられ、見事追いつかれた。
絶対絶命。でも、今度こそ死ねるかもな。
クロノスが目を閉じた時だった。
頭から生暖かい
目を開けるとミノタウルスは真っ二つに切り裂かれ、逆光で顔は分からないが黄金の髪の美女がそこに立っていた。
クロノスがまた生き延びたことを認識し始めた時だった。
「うわぁぁぁぁああ‼︎」
隣にいたベル・クラネルが叫びながら逃げ出したのだ。
クロノスの手を持って。
「おい、ちょっと離せ!!」
クロノスのその言葉はベル・クラネルの耳に届く事はなく。
冒険者の力により軽々と鞄のように引かれながら無しすすべなくホームへと運ばれたのだった。
☆★☆★
ホームへと帰ると血塗れの二人をヘスティアが心配したが、怪我がない事が分かると先に水浴びをして汚れを落として来るように言われた。
「しかし、ここに来る時、君はいつも血塗れだね」
ヘスティアの一言目は呆れが混ざったそんな言葉だった。
二言目からは心配の言葉。 この3日どうしていたのかと。
クロノスはもう逃げられないなと人と繋がりを作りたく無い事を伝える。
しかしヘスティアはその言葉を笑い飛ばし、
「君とボクの間には確かな絆ができてしまったんだ。そんなこと、今更言っても無駄だろう。ボク達はもう家族なんだから」
カタッ
クロノスの中で何かが震えた気がした。
その後、強引ながら三人で食事をとる事になった。
零細ファミリアらしく、ヘスティアのバイト先でもらった知ら無い揚げ物と具の無いスープだったが、三人で食べる食事はとても賑やかで、(主にベルが今日の事について神様に報告したり、一方的に次から一緒に冒険する事を約束させられたりだったが)とても懐かしかった。
「暖かいな…」
クロノスが漏らした呟きとしっかりと聞いていたヘスティアとベルはニィと笑い「これからはずっとこうやって食べるんだよ。」「そうさ。ボク達は家族なんだから」そう語った。
それを聞いて涙を滲ませるクロノスの中でカラカラと鎖の揺れる音が鳴り響いていた。