ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか   作:ウンニーニョ

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【ロキ・ファミリア】

「君はサポーター向きかもしれないね。」

 

食事の後、主神であるヘスティアがクロノスのステイタスを更新してからそう伝えてきた。

なんでも、ステイタスの上昇がほとんどないらしい。

はじめてのステイタス更新、それも3日ダンジョンに挑んでいてこの上昇だと今後きついのではないかと言う事だ。

しかし、冒険者によって成長の波は様々で3日で決めてしまうものではないらしい。しばらくダンジョンへ挑んでみては? だそうだ。

 

過去。と言っていいのかは分からないが、最前線で活動していたクロノスにはピンとしない話だった。

 

クロノスが考え事をしている内にベルのステイタス更新も終了し、ヘスティアがベルに告げていく。

そこでクロノスはある事に気づいた。

 

「【(リア)____」

 

「ああぁぁあ」

 

そう言ってヘスティアはクロノスの口を押さえ小声で耳打ちしてくる。

 

「君は【神聖文字(ヒロエグリフ)】が読めるのかい?」

 

口を押さえられているためクロノスがコクリと頷くとヘスティアは「本当に君は何者なんだ」とぼやきながらベルへ視線を戻すと続ける。

 

「ベル君のスキルはとびっきりのレアスキルだ。 そんなこと他の神達に知られたらややこしい事この上ないじゃないか。 ベル君もそんな事を秘密にできる性格でも無いんだ。 内緒にしておいてくれよ。 それと君の名前もだ。 クロノスと名乗るのはやめておいたほうがいい。ベル君にもクロ君と教えてあるからね。」

 

ひそひそと話しているとステイタスを書き写した紙を見ていたベルが声をかけてきた。

ヘスティアは「頼んだよ」と言うとベルの方へ向かった。

 

 

その日の夜。クロノス、クロはヘスティアとベルが寝静まった後、寝転がりながら考え事をしていた。

 

自分のステイタスについて。

自分の背中は見られないからヘスティアが何か隠しているかも知れないという事。

この体になっている事といい、何かあるのは確実だろう。

それにクロノスと名乗ってはまずい訳。

まあクロのが呼ばれ慣れているのだが…

色々考えている内に眠りに落ちていった。

 

 

☆★☆★

 

 

翌朝、ベルと一緒にダンジョンへ向かった。

ベルが慌ててご飯を食べる暇も無かったため、寝坊でもしたかと思ったがそうでも無いらしい。

 

道中、ベルが少女に声をかけられ、お弁当を渡されていたが、クロは他人のフリをしていた。

やはり、あまり繋がりを持ちたくは無いのだ。

 

無事?ベルがお弁当を渡されて(押し付けられ?)その後、ダンジョンへ到着した。

 

二人で協力してダンジョンへ潜る。

背中を預け合えば生存率も上がるからだ。

5階層まで降りた事をヘスティアに話した時「もうそんな無茶はしないでおくれ」と怒られた。

 

長年の経験でモンスターの攻撃をかわし、攻撃を受けずに倒す事でステイタスの低さを補って、モンスターを倒していく。

しかしと言うべきかやはりと言うべきか、ベルに比べれば倒すモンスターの数は雲泥の差で、ステイタスの低さを思い知らされる。

後半は協力して戦う事に慣れてきたのもあり、2階層へ場所を移しても危なげなく戦う事ができた。

 

当たり前だが、階層が下に行くほど魔石などの価値も上がる。

なので今日は二人でという事もあるがベルが冒険者になってから1番の稼ぎらしかった。

 

 

帰り道、ベルがお弁当を貰った少女にお店に食べに行くと約束したと話してきた。

自分はホームで食べるから行って来ればいいと思っていたが、せっかくだからヘスティアと三人で行こうとの事だ。

嫌な顔をする俺を尻目にホームに着くと、ベルは笑顔でヘスティアを誘う。

しかし、ヘスティアは用があるらしく「それじゃ、俺もホームで食べるからベルはいってこいよ」と言う俺の意見は無視され、二人で少女の働く店へと向かった。

 

 

☆★☆★

 

 

《豊饒の女主人》少女、シル・フローヴァの働く酒場だ。

 

ベル共にカウンターの端の目立た無い席に通される。

ベルがシルやこの店の女主人、ミアと話している間、クロは店の中を見渡す。

人気のある店らしく、賑わっている。

その風景を見ていると昔の、楽しかった思い出が蘇る。

 

 

 

『【クロノス・ファミリア】と【オーディン・ファミリア】の合同パーティの遠征の終了、無事帰還を祝ってカンパーイ』

 

店を貸し切りにしたファミリアのメンバーはグラスをぶつけ合い一気に飲み干して行く。

 

『ウマイ‼︎ お代わり‼︎』

 

『飛ばしすぎだよ。父さん』

 

『バカヤロウ‼︎家族が共に帰ってきたんだ。こんな美味い酒のペースを変えられる訳がねぇ。 なぁオーディン』

 

『そうさクロ。今日位大目にみてくれよ。』

 

クロと呼ばれた青年は溜め息を吐きながらも終始笑顔だ。

 

『しかし、レナスとクロは今回も大活躍だったな‼︎』

 

『そりゃ、両ファミリアのエースなんだから当然だろう』

 

皆それぞれ今回の遠征について語っていく。

 

『私だって今回は大活躍だったニャ‼︎』

 

『ミリィは途中クロにおぶってもらってただろう⁈』

 

『そんな事ないニャ。 大活躍だったニャ‼︎ だからクロ、撫でてほしいニャ〜』

 

『レナスが羨ましそうに見てるぞクロ』

 

『何言うんですか‼︎ オーディン‼︎』

 

皆んなが笑う中、クロはミリィの頭を撫でた。

 

『「みゃ〜〜〜〜〜」』

 

 

思い出に浸って体を動かしていたみたいだ。

山盛りのミートパスタを持って来てくれたの猫人(キャットピープル)の少女の頭をなでていた。

気持ちいいのだろう、身を任せて撫でられている。

 

「アーニャ、仕事仕事」

 

「お前が頭を撫でるからニャよ⁉︎」

 

そう言ってアーニャと呼ばれた少女はバツが悪そうにパスタを置いて行ってしまった。

 

食事中、クロはベルに話を任せて食べる事に集中していた。

 

「…おい見ろよ」

 

「おお、えれえ上玉」

 

「馬鹿、ちげえよエンブレムみろ」

 

すると店の中が一層騒がしくなった。

どうやら有名ファミリアがやってきたようだ。

隣を見るとベルはそちらを見て惚けている。

周りの声を聞くと【ロキ・ファミリア】だそうだ。

 

ああ、なるほど。

 

アイズ・ヴァレンシュタイン、彼女もこのファミリアなのだ。

想い人に見惚れているベルを微笑ましく思いながらフォークにパスタを巻きつけ口に放り込む。

 

そんな微笑ましい光景も

 

「そうだアイズ、あのはなしを聞かせてやれよ!」

 

「…あの話?」

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス! 最後の1匹、お前が5階層で始末しただろ? そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎どもの!」

 

狼人(ウェアウルフ)のこの言葉がぶち壊した。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」

 

「それそれ! 奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたのによ~」

 

ベルの表情が硬くなる…拳もぎゅっと握りしめ、ついには下を向いてしまった。

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ冒険者ガキ共が! 」

 

だいぶ酔っているのだろうか?狼人(ウェアウルフ)の暴言は続く。

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際へ追い込まれちまってよぉ! 可愛そうなくらい震え上がっちまって、顔をひきつらせてやんの!」

 

「それで、その冒険者どうしたんや? 助かったん?」

 

「アイズが間一髪ってところでミノを真っ二つにしてやったんだよ、なっ?」

 

「……」

 

アイズは飲み物を飲みばかりで答えない。

 

 

「それでその震えてた奴ら、あのくっせー牛の血を全身に浴びて…真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ!」

 

「うわぁ……」

 

クロはベルにそっと声をかけるが、うつむいたまま返事はない。

酒場の中が耳を傾ける中話はヒートアップしていく。

 

「アイズ、あれ狙ったんだよな? そうだよな? 頼むからそうと言ってくれ……!」

 

「……そんなこと、ないです」

 

「それにだぜ? そのトマト野郎共、叫びながらどっか行っちまってっ…くくくっ! うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのっ!」

 

どっと笑に包まれる【ロキ・ファミリア】の人達。

確かに笑いの種にはもってこいだろう。しかし当事者、しかもそのトマト野郎なら、笑えるはずもない

 

「しかしまぁ久々にあんな情けねぇヤツラを目にしちまって、胸糞悪くなったな。一人は泣くし、もう一人は諦めたように目を閉じやがった‼︎」

 

「ったく、泣きわめく位なら初めから冒険者なんかになるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」

 

「……」

 

「ああいう奴がいるから俺たちの品位が下がるっていうかよ、勘弁してほしいぜ!」

 

言い過ぎだと思ったのだろうか?【ロキ・ファミリア】でも咎める声が上がる。

 

「雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣りあわねぇ」

 

その言葉が引き鉄だった。

ベルは周囲の視線を集めながら、逃げるように外へ飛び出した。

 

「ベルさん⁉︎」

 

シルが声をかけ、追いかけるが、聞こえていないのかベルは走り去ってしまった。

 

「あァン? 食い逃げか?」

 

「うっわ、ミア母ちゃんのところでやらかすなんて…怖いもん知らずやなぁ」

 

周りから、ベルへ向けて様々な言葉が飛ぶ。

 

「ほいほーい、アーイズぅ。何やってるん〜?」

 

ベルの姿を見てどうして飛び出して行ったのか気づいたのだろうか?

入り口まで追いかけて行ったアイズを朱髪の女性【ロキ・ファミリア】の主神ロキが呼び戻している。

 

クロはミアに持ち金をベルが持っている事を話し、この姿になって唯一身につけていた大切な指輪を担保に明日まで待ってもらえないかと交渉するが「子供が気を回すんじゃないよ。明日必ず持ってきな。」と突き返されてしまう。

ミアは感のいい人のようで事情が大体分かっているようだった。

 

それが終わるとクロは騒ぎすぎたのか【ロキ・ファミリア】のメンバーに押さえつけられ、ロープでぐるぐる巻きにされている狼人(ウェアウルフ)の前に立つ。

 

どうしてこんな事をするか分からなかった。

いや、家族をバカにされて頭にきていたのだろう。

さっきからクロの中では鎖がカタカタと動きっぱなしである。

 

「確かにあんたは力は強いのかもしれないけど、ただのチンピラと一緒だ… ベルは強くなるよ。 あんたよりずっと」

 

それだけ言って店を出る。

後ろでは狼人(ウェアウルフ)がキョトンとした顔で見ている。この後【ロキ・ファミリア】の酒の肴になるかもしれない。

 

だけどそんな事関係なかった。

クロは確信する。 ベルは強くなる。憧れだけじゃなく悔しさを知ったから。

長年ファミリアのエースをしていた経験がそう言っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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