ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか   作:ウンニーニョ

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神の宴

「ベル! そんな怖い顔してどこ行こうってんだ?」

 

「クロ君…」

 

豊饒の女主人を出た後、クロはダンジョンへ向かった。

ベルはホームに戻らずに此処へ行くと確信していたから。

 

「あんな事気にするなとは言わない。 悔しさは強くなる為の糧になるから。 アイズ・ヴァレンシュタインに追いつきだろう?」

 

「…うん」

 

「いい顔になったじゃないか。 じゃぁ、無茶して死ぬ訳にはいかないよな?」

 

「うん」

 

ベルの顔は先ほどまでの鬼気迫る感じは無く、何かを決意した目をしていた。

 

「二人で行けば生存率も上がるとおもうぞ?」

 

「付き合ってくれるの?」

 

「俺に合わせれば死ぬ事は無いだろう?」

 

ベルは苦笑を返す事しか出来ない。

 

「用意するからちょっと待ってくれ」

 

そう言ってクロは何か作業をし始める。

 

「何してるの?」

 

「少しでも下まで付き合えるように武器を使いやすくしようと思って」

 

そう言ってクロはテキパキと作業を進めていく

 

「なんか…すっごい不安だ…」

 

「僕もそう思う…」

 

出来上がったのは長めの鉄パイプの先に今まで使っていたロングソードを括り付けそのロングソードの持ち手の部分に鎖を取り付けただけの物。

クロが前に使っていた武器をイメージしているが、そのような武器を使う人はオラリオにいない為、どうしても子供のオモチャに見えてまう。

 

「まぁ、なんとか行けるだろ」

 

数回振り回し壊れない事を確認するとクロは肩に担いでそう言った。

ベルはなぜかその姿がしっくりくるような感じがして、何も言わずに頷き、二人はダンジョンへ足を踏み入れた。

 

ベルが前衛で立ち回りクロが中衛から援護する。

豊饒の女主人へ出かける前にステイタスの更新をした事もあって順調に下へ降りて行った。

6階層でのモンスターの大量ポップを掃討し終わった後、クロの体力の限界と武器に使っている鉄パイプが曲がった事により、引き上げる事となった。

 

「ベル…日が昇ってるぞ?」

 

「そうだね」

 

時間も忘れるほどダンジョンにもぐってあたのか。

なんだか清々しい…じゃない!

 

「ベル、神様に何も言わずに朝帰り、しかもこの前注意されたばかりなのに5階層より下に行ったなんて知れたらどうなると思う?」

 

「は…早く帰らなきゃ⁉︎」

 

朝日に照らされる二人の冒険者の顔は何処か楽しげで、そして何処かたくましくなったように見えた。

 

 

☆★☆★

 

 

ホームに戻るとヘスティアは傷だらけの二人を見てとても心配し、話を聞いてしっかりとお説教した後、ステイタスを更新して顔をヒクつかせた。

 

それはベルの驚異的なステイタスの上昇とスズメの涙程しか上昇していないクロのステイタスにたいしてだ。

 

もちろん、ベルの上昇の理由となっているスキルに思うこともあるのだろうが。

 

「しかし、よくこんな武器で6階層まで言ったものだよ。ねえ、クロ君?」

 

溜め息を吐きつつ持ち上げたのは急ごしらえのクロの武器だ。

どう見てもガラクタにしか見えない。これが前に使っていた武器を再現したもと聞いてヘスティアは考え込む。

 

《前》と言うのがいつなのかは一旦置いておくとしても、こんな武器が売っているのを見た事がない以上、クロ君は使い慣れた武器を使えないどいう事になる…ステイタスの上昇の具合からしても冒険者を諦めさせてサポーターを進めるべきか? いや、駆け出しの冒険者に向いていないから諦めろと言うのは酷な話だ。 …二人にボクがしてあげられる事…

 

ヘスティアはガバッと勢いよく立ち上がると、急いで用意を始める。

 

「ボクは急に行かなきゃならないところができた。 数日留守にすると思うが心配しないでおくれ。 そうだ! クロ君、この紙に君が前に使っていた武器を書いてくれないか?」

 

ヘスティアは風呂敷にタッパーなどを詰め、クロの書いた紙を受け取ると急いで出て行ってしまった?

 

「そうだ! クロ君、君は武器もない事だしボクが戻るまで休んでるんだ。 ベル君も、決して無茶はしないように。 いいね‼︎」

 

今度こそ本当に行ってしまった。

 

「一体どうしたんだろうな?」

 

「うん…」

 

「あっ‼︎」

 

「どうしたの? クロ君?」

 

クロは冷や汗を流しながらベルの方へ顔を向ける。

 

「ほ」

 

「ほ?」

 

「豊饒の女主人の支払い…」

 

「あっ‼︎」

 

時刻は昼前、二人は死に物狂いで豊饒の女主人へ走った。

 

 

☆★☆★

 

 

「何やってんのよ、あんた…」

 

「むぐ? むっ!」

 

ここは【ガネーシャ・ファミリア】のホーム。

その名もアイアムガネーシャ。

 

今日はここでガネーシャ主催の神の宴が開催されている。

 

【ガネーシャ・ファミリア】の主神であるガネーシャが毎年この時期に行われているフィリア祭りの開催にあたり、各神々のファミリアに協力を求める。と言う建前のもと行われている立食式のパーティーだ。

 

ヘスティアはここにある(じんぶつ)を探しに来ていた。

探すついでに給仕係にわざわざ踏み台を用意してもらい、日持ちしそうなものを持参したタッパーに詰めつつ、自らもリスのように口に溜め込んでいたところ目的の(じんぶつ)の方から声をかけてきてくれたのである。

 

その(じんぶつ)、右目に大カナ眼帯をした麗人ヘファイストスがあきれ顔でヘスティアを見下ろしていた。

 

「ヘファイストス!」

 

「ええ、久しぶりヘスティア。元気そうでなによりよ。…もっとましな姿を見せてくれたら私はもっと嬉しかったんだけど」

 

神友同士積もる話をしつつヘファイストスがヘスティアを言い負かしていると意外な(じんぶつ)が声をかけて来た美に魅入られた神(、、、、、、、、)フレイヤどうやらヘファイストスと一緒に行動していたようだ。

 

そしてもう一神。

 

「おーい! ファーイたーん、フレイヤー、ドチビー‼︎」

 

【ロキ・ファミリア】の主神ロキ

ヘスティアとは会えばケンカをしている腐れ縁だ。

 

しかし今回は丁度いとばかりにアイズ・ヴァレン何某についてきいてみる。

しかし返って来たのはヘスティアの求めていたものではなく、アイズ・ヴァレン何某には今付き合っている男や伴侶は居ないというものだった。

ヘスティアが舌打ちしていると、こんどはロキの方から質問される。

 

「ウチも聞きたいことがある。 ドチビのとこの子についてや」

 

「ヘスティアの子っていったらベルって子だったかしら? 確か、白髪で赤い目をしたヒューマン。あなたがついに子ができたと言ってきた日には驚いたわ」

 

「ふふん、まあね。ボクなはもったいないくらい、すごく良い子だよ」

 

「ちがう。そっちやない黒髪に青い目のヒューマンのほうや」

 

ヘファイストスが言ったベルではなく、ロキが聞きたかったのはクロのほうだった。

その言葉が出た瞬間、ベルの話を聞いて帰ろうとしていたフレイヤの顔が一瞬ピクリと動いたが、誰も気づくことはなかった。

 

「クロ君のことかい?」

 

「ヘスティア、あなた家族が増えていたの?」

 

「そうなんだよ! クロ君もとっても良い子なんだよ」

 

「そうか。クロって言うんか……」

 

「まさかロキ、君は引き抜こうとか考えてないだろうね?」

 

「そんなことするか!この前酒場で見かけて面白そうな奴やとおもたんは確かやけど……アイズたんにはかなわへーんわー」

 

「なにをー!クロ君やベル君だってー!」

 

「なんやとドチビー‼︎」

 

「ロキ無乳ー‼︎」

 

二神(ふたり)は取っ組み合いのケンカに発展し、それをヘファイストスがあきれ顔で見ている。

 

「じゃあ私は失礼させてもらうわ」

 

「え、もう? フレイヤあなた用事があったんじゃないの?」

 

「もういいの。確認したいことはきけたし…」

 

フレイヤはそう言って去って言った。

それと同時にコンプレックスである無乳を責められ続けたロキも半泣きになりながら去っていく。

ヘスティアは勝利とばかりにその大きな胸をはり、ふふんと鼻を鳴らした。

 

「なにやってるのよ、ヘスティア。…それで、この後どうするの? 私はもう少し回ろうと思ってるけど、あなたは帰る? 」

 

その声にピクリとヘスティアは反応する。

今日ここに来たのは美味しい料理を食べに来たわけでもそれを持ち帰るためでも子を自慢しに来たわけでもロキとケンカしに来たわけでもない。

 

「ヘファイストス、君におねがいがあるんだ」

 

「何? もうお金は貸さないわよ?」

 

「ボクの子達に武器を作ってほしいんだ‼︎」

 

訝しげにヘスティアを見るヘファイストスの前にヘスティアの飛躍土下座(ジャンピング ド・ゲ・ザ)が華麗に決まった。

 

 

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