ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか 作:ウンニーニョ
「はい、これ」
「おぉぉ…⁉︎」
ヘスティアが、ヘファイストスの差し出した物を見て歓喜の声をあげる。
漆黒の鞘に収められた、漆黒の柄を持つ短刀。
ヘスティアがヘファイストスに何度断られようと土下座し続け、やっと作ってもらえる事となった短刀だ。(もちろん
オラリオで一番の武器ブランドである【ヘファイストス・ファミリア】の刻印が入った一級品、しかも主神であるヘファイストスが打った短刀である。
「早く渡してあげなさい」
短刀を手に目を輝かせているヘスティアにヘファイストスが声をかけるとヘスティアは「そうだね! じゃあ行ってくるよ‼︎」と元気な声で返事をすると走って出て行く。
しかし、ドアに手を掛けたところでピタっと止まるとヘファイストスの方に振り向く。
「わかってるわよ。 もう一つの方は時間をちょうだい。 それと、ヘスティアも
「わかってるさ‼︎」
そう返事をし、今度こそ元気に出て行った。
ふうっ。と息を吐くとソファーの背もたれに体を預ける。
「それにしても…」
ヘスティアに頼まれたヘスティアの子の武器、先ほどの短刀ともう一つ、それの形が描かれた紙を見つめる。
斧でも槍でもない…しかし、この形…
考えていたところでドアがノックされた。
返事をするとドアが開き、褐色の女性が入ってきた。
ヘファイストスと反対の目を眼帯で覆っている女性の名は椿・コルブランド。【ヘファイストス・ファミリア】の団長であり、オラリオ最高の鍛治師である。
「主神様、何を見ておるのだ?」
そう質問する椿にヘファイストスはヘスティアに渡された紙を見せる。
「なんなのだ? それは? 槍…斧か?」
「どちらでもないわ。個人的に受けた依頼なのだけど一言で言うと鎌ね」
「鎌と言うと農業に使う鎌か?」
「ええ。 刃の部分はそれが一番近いわね。」
「こんな武器使う者がおるのか?」
「いるそうよ。寄せ集めでこんな者まで作ってたそうだし…」
そう言ってヘファイストスはヘスティアが持ってきたクロ自作の武器を見せる
「それは面白い奴もいたものだな。気に入った! 主神様、それを儂に打たせてくれんか?」
「何言ってるの、これは私の個人的な約束よ。あなた達にさせるわけには…」
「そんな面白そうな依頼を独り占めせんでもいいだろう? せめて手伝わせてくれ」
「…じゃあ、お願いしようかしら」
少し考えた後、ヘファイストスは首を縦に振った。
☆★☆★
神様はいつ帰って来るんだろう?
ヘスティアが飛び出して行って数日、クロはそんな事を考えていた。
ベルは朝からダンジョンへ出かけて行って居ない。
考えてみると、このホームにきてからの数日は長い時を生きてきた中でもとても濃密だ。
繋がりができたからだろうか?
それを考えると心が少し暖かくなった気がする。
…そろそろいい時間だ
今日はベルが先日言っていた
ダンジョンに潜らず暇をしているなら見に行ってみたらと勧められたので観戦に行く事にしている。
クロは戸締りを済ませると闘技場へ向けて歩き出した。
闘技場へと続く大通り、クロはヘスティアを見つけた。
ベルと楽しそうに歩く姿をみて、声をかけるのを止め、違う所を回ろうかと考え始めた時、辺りは悲鳴に包まれた。
「モ、モンスターだぁあああっ⁉︎」
どうやらモンスターが逃げ出したらしい。
クロはベル達に合流する為駆け寄った。
「ベル、神様!」
「クロ君⁉︎」
しかしあまり話す時間は無く、3人は今、モンスターに追いかけられる事になった。