ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか 作:ウンニーニョ
「なあ、やっぱり俺帰ったらダメかな?」
ここはオラリオの北部、大通りと面するように設けられた半円型の広場。
クロはベルにそんな言葉を投げかける。
返ってきた答えはノー。
なぜここにいるかと言うと、クロは槍を買いに街に出ようとしていたのだがベルに一緒に行こうと誘われた。
買いに行こうとしていた店を通り過ぎベルに言われるがままここについたわけだが、理由を聞いてみれば先日、ギルドに行った際にベルとクロの担当アドバイザーであるエイナにこれ以上下層へ行くのは装備が心もとないからと買い物に誘われたらしい。
その際に登録以来ギルドに行っていないクロが心配だから連れてきてほしいと言われたそうだ。
クロがグダクダ言っている間にエイナが来てしまい。
少し話した後、目的地へ向けて歩き出す。
ベルとエイナが並んで歩く中、クロは少し後ろからついて行く形になる。
道中、エイナがベルに目的地であるバベルの事や発展アビリティについて講義しながら歩いている。
「ずーっと昔のことらしいんだけど、『神秘』のアビリティを持ったある派閥の構成員……賢者様が、『賢者の石』っていう
「……なんかもう、開いた口が塞がらないです」
「ふふっ、そうだね。でもこの話には続きがあって……その石を手にとった神は、賢者様の目の前で、床に叩きつけて壊しちゃったの。……永遠の命を」
「そんなっ……」
「賢者の石は偶然の産物だったらしくて、二度と精製されなかったらしいの。賢者様以上に『神秘』のアビリティを極められる人は出てこなくて文字通り伝説の
ベルの顔を見てクロはベルがなんてひどい神様だと考えているのだろうと読み取る。
しかしクロは神が壊した意味を理解している
永遠の命なんて…
「クロ君、どうしたの?」
ベルの声にクロは考えを霧散させ「別に」と答える
どうやらバベルに着いたようだ。
ベルが尻込みする中、エイナに背中を押されバベルにある【ヘファイストス・ファミリア】の出店エリアへ向かった。
☆★☆★
主神様に感謝しないといけないな
褐色のハーフドワーフ、椿は主神であるヘファイストスに頼まれてヘスティアがしっかり働いているか確認しにバベルへ来ていた。
椿が着いた時、ヘスティアは三人組の客を接客中。かと思ったが、どうやら偶然やって来た自身のファミリアの冒険者と話しているようだ。
椿が知るところによると【ヘスティア・ファミリア】の冒険者は二人。
三人の内一人はギルドで見かけたことがあることから残り二人のどちらかがあの興味深い武器を考案した者だろう。
椿はスッと眼帯をしていない方の目を細め、二人を観察する。
彼か…
腰に付けている武器をみて先日ヘスティアが取りに来た
三人が個人行動を取り始めたのを見て、椿は話しかけるため歩き出した。
☆★☆★
「少年、いい武器はみつかったか?」
クロは後ろからかけられた声の方を訝しげに見るが、何も答えずに棚に目を戻し再び槍を選びはじめる。
「別にあやしい者ではないぞ。言い忘れておったな、私の名は椿。お主の主神様に頼まれて武器を作っている」
クロはその言葉にピクリと反応するがその後は何も反応を返さない。
「あの武器を見てから少年に興味がでてな、しかしあの武器を作るのにはいささか時間がかかる。何せ見たこともない武器だからな。そこでどうじゃ? お主が今選んでいる槍も私が作ってやろうか? もちろん少年の予算にあわせるぞ」
周りがざわつきはじめる。ここの店員はもちろん【ヘファイストス・ファミリア】の人間だ。団長がここに並ぶ武器を選びに来る冒険者に武器を作ってやろうかと聞くこと自体驚きが隠せない。
「いらない」
クロはそう言って槍を一つ選び感触を確かめるとレジの方へ歩き出す。
するとざわつきはいっそう大きくなる。まさか団長の申し入れを断ると思っていなかったからだ。
「面白いヤツじゃのう。少年、名前はなんと言う?」
「……クロ」
クロは考えた後に名前を告げる。言わなければついてこられそうな気がしたからだ。
案の定「覚えたぞ、クロ!」椿はそう言うと追いかけて来ることはなかった。
しかし、クロの名前はこのテナントの店員にも知れ渡ることになった。
無事に槍を購入し、ベルと合流する。
ベルもいい防具に出会えたようだ。
遅れてエイナが合流する。
エイナはにこにこしながら二人に何かを手渡す。
「ベル君、クロ君。はい、これ」
おもむろに手渡されたのは色違いの細長いプロテクター。
籠手に取り付ける形で手首から肘くらいまでを覆う盾と同じ機能を持ったプロテクターでベルには
これはエイナの二人に無事帰ってきてほしいという思いが込められている。
クロはギルドに近づかないでいた意味が無かったと感じながらも、笑顔で受け取った。