艦これ!ー特Ⅱ型駆逐艦、朧の日常ー   作:日向@ひなた

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 毎話1万文字超えは無理みたいッスね……ところでがっこうぐらしのみーくんの、こう、あれ、ガーター見てると興奮するよね。あ、今回も中身のない、淡々とした日常です



第2話ー朧ちゃん、下着を買うー

 

「全然違うじゃん!」

 

 ーー賑やかなモール内に、彼女の声が響く。

 はあ、と生返事をしながら思わず首筋を触る。全然違う、とは。何のことを言っているのか、検討もつかなくて朧は疑問符を浮かべる。

 睨みをきかせながら、彼女は言葉を続ける。

 

「私、言ったよね? 今日はヅァスコで買い物をするって! 私たちが今日来ているここはなに!?」

 

「イ○ンモールだけど……一応、昔はヅァスコだったのかもしれないけれど、もう無くなったから」

 

 というか、ヅァスコって。何年生まれだ。

 

「もういい! トップバリュー買ってくる!」

 

 ……………………。

 なんだったのだろうか。

 

 さて、よくわからないやり取りをして満足をした響がトップバリューのお安い緑茶を買いに行ったので(今日はヴェールヌイとしてではなく響として行動をしている)、取り残された朧たちはレジから一番近くのベンチにでも座って待っているとしよう。

 今日はこないだ約束をした、買い物に来ている。

 鎮守府のすぐ近くにあるこのショッピングモールは、誰もが知る有名チェーン店だ。寂れた片田舎と表現しても差し支えない鎮守府周囲において、このショッピングモールは生活においても、あるいは単純に娯楽を求める若者においても重要な場所だ。

 必要なものなら鎮守府の中で済むかもしれないけれど、ショッピングをするという楽しみはこうして外に出ないと味わえない。別物なのだ。

 ……というのは、まあ、朧自身がそう思っているわけではなく、響が言っていたことなんだけれど。

 朧は別に明石さんのお店で十分だと思ってるし。

 

 今日はいつもの制服ではなく、私服だ。ここには一般の人もいるし、艦娘とわからないようにしておいたほうがいい。……なんてことは、オシャレをしたいための建前なんだろうけれど。夏の鎮守府祭などで部分的に一般公開されることもあり、近所の人たちとは比較的顔馴染みになっている。

 朧はというと簡素な無地のパーカーに、飾り気のないスカート。蟹さんはフードに入っている。

 オシャレとは縁遠い服装であることは自覚しているけれど、そもそもオシャレな格好ってどうすればいいのかもよくわからないし。

 

 隣に座る潮を見る。白のTシャツに緩めのロングカーディガンを羽織り、女の子らしい可愛らしい色をしたショートパンツ。なるほど、オシャレがどういったものかはわからないけれど、女の子らしいと言えばこういう服装のことを言うんだろう。

 Tシャツが胸に押し上げられておへそがチラチラと覗きそうなところがポイントなのかもしれない。

 ……凄いな、やっぱり。

 いや、何がとは言わないけれど。普段から思ってはいても、こうして観察してみると、凄い。

 だから何がって言ってないでしょ。

 

「わたしからすれば朧ちゃんもなかなかのなかなかだと思うけどなあ」

 

 さわさわ、むにむに。……何をしているんだ、この子は。

 

「うむ、朧ちゃんの小高い丘も登り甲斐があるにゃしい。卑下しなくてもよいぞ……よいぞ」

 

「潮、この子どうしよう。殴っていいのかな?」

 

「え、えっと……あはは」

 

 朧の胸を触って揉んだ睦月語を使う吹雪を引き剥がす。「ああん、いけずぅ」うるさい。

 

「だいたいなんでいるの……今日来るって言っていたのは潮と響だけだったはずなんだけど」

 

「ふっふっふ、おねーちゃんを差し置いて遊びに行くなんてノーなんだからネー!」

 

「絶好調だね、吹雪ちゃん」

 

「いつでも元気に笑顔で頑張りますがトレンド入りしている吹雪さんですからっ」

 

 まったく、騒がしい子だ。これが朧たち特型駆逐艦、すべての姉だというのだから世の中はわからない。

 細かく区別すると実際のところは朧たちは綾波型だし、響たちは暁型と分けられるんだけど、吹雪にとってはそんなの関係なく、全部ひっくるめてまとめて妹だと思っているらしい。

 器が大きいというべきなのか、なんとやら。

 普段の言動とかを見ているとあまり姉らしくはないよなあ、とは思うけれど。

 

「む、何か失礼なこと考えたね?」

 

「……なんのことやら」

 

 ふぶきーん、とよくわからない無駄な効果音を口に出してこちらに指を指してくる。無駄に鋭い。

 この鋭さはもしかすると姉らしさなのかも。妹たちのことならなんでもわかるということなのかもしれないなんて、いやまさか、そんなバカなことが。

 

「それにしても潮ちゃんは私服もかわいいなぁ。朧ちゃんは、うん。ちょっと女の子っぽくないね、この吹雪さんがしっかり選んであげよう!」

 

「吹雪ちゃん、残念だけど朧ちゃんの服を選ぶのはわたしと響ちゃんだよ」

 

「なんだってー!? え、吹雪さん除け者?」

 

「うふふ、朧ちゃんはわたしたちで遊ぶ……もとい選んであげるから、吹雪ちゃんは自分の買い物をひとりで楽しんでね」

 

「ハブだ! ハブられたんだー!?」

 

 ががーんと言いつつ、大袈裟にリアクションをする吹雪。一応人が多く多少のざわつきがあるモール内とは言え、さすがにうるさい。これだけ騒がしくしていれば目立ちそうなもので、やはりと言うべきか、周りの人々もこちらをチラチラと見ている。

 さすがにこれは、少し恥ずかしい。

 やっぱり吹雪は姉らしさとは縁遠い。むしろどちらかと言えば面倒見のかかる子供のようだ。

 ところで、もちろん潮は本気で言っているわけではなくて、ただ吹雪をからかっているだけだということを注釈しておこう。

 潮は一見すると気の弱そうな大人しいだけの子に見えがちかもしれないが、実際はしたたかだし、意外なほどに冗談も言う子なのである。

 

 ……ところでなんだか不穏な言葉が聞こえた気がしたけれど、それももちろん冗談なんだよね?

 

 一抹の不安も覚えるが、冗談だということにしておこう。朧自身の精神を安定させるためにも。

 

「うう、朧ちゃん、潮ちゃんがわたしをハブにしようとしてくるよぉ」

 

「潮がそんなことするわけないでしょ。潮なりの冗談だよ。ね、潮」

 

「えっ。……そうだね。しないよ、しないしない」

 

「今すごく意外そうな顔しなかった!?」

 

「うふふ、どうだったかなぁ?」

 

 凄く良い笑顔だった。

 楽しくて仕方ないとばかりの笑顔だった。

 吹雪のリアクションが楽しいんだろう。一々派手だから。

 

「騒がしいね。レジのほうまで話し声が聞こえてたよ」

 

 響が袋を下げながら戻ってきた。袋の中には四本の緑茶が入っている。人数分のお茶を買ってきていたらしい。響はさりげない気遣いのできる子だ。

 袋から取り出したお茶をそれぞれに配るのを受け取る。冷たいボトルは、ここにくるまでの間に汗をかいていて、少し濡れている。

 持ってきていたタオルをクルンとボトルに巻きつけてからカバンの中へと仕舞う。

 

「響、おかえり。まあ、吹雪がいるからね」

 

「ただいま。吹雪がいたのなら仕方ないか」

 

「うう、少し淑女になります……」

 

 反省しているようで何より。騒がしくも元気のいいところは吹雪のいいところではあるけれども、しかし世間にはTPOというものがあるので、時と場合によりけりなのである。

 

「さて、お茶も買ったことだし、外に行こうか。今日は野球をしよう」

 

「ちょっとフリーダム過ぎない?」

 

 何しにショッピングモールへ来たんだ。お茶を買うだけって。そのあたりの自販機でいいよね。

 というか、三人で野球はできない。

 

「冗談だよ。さすがの私も三人で野球をしようなんて本気で言わないさ。九人いないからね」

 

 九人いたらやるつもりだったのだろうか。

 響の冗談は冗談か読みにくい。

 

「今日は朧の下着を選ぶという大切な仕事があるからね。ついでに吹雪のも選ぼうか。普段姉ぶっているくせに白の綿パンツはどうかと思う」

 

「ふぁっ!? い、いや、わたしはいいかなー?」

 

「吹雪ちゃん、可愛いのを選んであげるよ?」

 

「そうそう。黒くてスケスケなのをね」

 

「えええっ!? そそ、そんな、だめですぅ!」

 

 吹雪が響と潮に遊ばれているが、極力関わらないようにしておこう。矛先がこちらに向きそうだし。

 この流れに巻き込まれたら、朧までとんでもないものを買わされそうだ……いや、まあ、なんとなく既に逃れられない、どうしようもできない決定事項となっているような気がしなくもないけれど。

 せめてこちらの被害を減らす……そのためにも吹雪には尊い犠牲になってもらうことにしよう、うん。

 

「うふふ」

 

 潮がこちらを見て微笑んでいたのには、気付かなかったことにしてもいいだろうか。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「アイキャッチなのです!」

 

        //   ,  /\ .i i V〈

        / /  ∠ム/ ー-V l 「ヽ

         j v、!●  ● i ' ├'

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      / _ ,.イ , `ーゥ  t-!,、_У

      ´ ' .レ^V´ V_,ィtー〈  「| 「|

           / `央ー'j  \_|:| |:|

 

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『おいクズ。なに職務放棄して遊んでんのよ?』

 

『おいおい勘違いするなよ。職務を放棄しているわけじゃあないって。ちゃんと説明しただろ、他所様の人に会うときには手土産が必要だって』

 

『聞いたわよ。で、それでアンタがしているのはなによ、ええ?』

 

『女児用の下着選びだ。向こうにも年頃の娘がいるんだから、ありがたいだろう? お、これなんてお前に似合いそうーー』

 

『ざっけんなよこのクズがああああああ!!』

 

 男女の声が響く(主に少女のブチギレた声だ)服屋をスルーして三軒ほど隣の店に入ることにする。

 レディース商品が豊富なセレクトショップだ。金額もほどほどにリーズナブルなもので、近所の中高生もよく買いに来ている、人気と評判の店舗だ。

 まあ、なんて。という情報のほとんどが実は響や潮の受け売りなんだけど。朧自身の知識ではない。

 最近の流行もよく知らない朧が、まさか服屋の情報に詳しいはずがない。有名なところなら知ってはいるけれど。有名ファストファッションブランドとかなら、ちょくちょく買ったりもするし。

 

 店舗に広がる様々な服がある。無難なものから奇抜なものまで、幅広いジャンルが取り扱っている。

 さて、朧はこの無難なシャツで済ませて店を出てみんなを待つとしようかーー

 

「朧ちゃん、ちゃんと選んであげるからね?」

 

「あっハイ」

 

 逃亡失敗。潮に釘を刺すような言葉と共にがっちりと腕を拘束……もとい腕を組まれた。

 横を見てみると同じように響に拘束されている吹雪の姿。まるで動物病院に連れて行かれる犬猫のような、何とも言えない物悲しい姿だった。

 それは朧自身にも言えることなのだけれど。

 事情を知らない人が傍から見たら、仲睦まじい(というか、仲良過ぎる)少女たちのように映るかもしれないが、その実態はただの拘束という事実を知ってしまえばどのような反応をするだろうか。

 

 店内を引き摺るように連れて行かれるままに下着売り場にきた。

 悪魔的なまでに黒い下着やエゲツない紐のような下着まで取り扱っている、なんてことはさすがに普通の服屋なので無いとは思うが、それなりに冒険しましたと言えるレベルのものは普通にありそうだ。

 実際にハンガーにかけられた下着上下セットの見本にはレース生地で作られた肌がスケて見えそうなものがある。……あんなものを着けた日には絶対にスカートなんて履けないと思うのだけれど、一体あの手のものを買うというのはどういう需要なのか。

 朧的には絶対にノーです。

 同様に見本の並びの中にある、黒のセクシーランジェリーを吹雪が見つけてアワアワと震えている。

 響が先ほど吹雪に選んであげると言っていた下着の条件にまさにピッタリなもので、あれを着けさせられるのかと想像して怯えているのだろう。まさか響が本気で言ったわけではないと思うが、テンパっていてそのあたりの判別がつかないのか。

 或いは朧自身がそうであってほしいと願っているだけであって、吹雪の反応こそが正しいのか。……いやいやまさか。そんなはずないじゃないか。

 せいぜい着せ替え人形にされるぐらいだ。

 たぶん。

 

「朧、まずは軽く、このガーターベルトセットから行っておこうか?」

 

 ……………このラインナップ、中高生向きのショップに置いてたらダメだと思うよ、今さらだけど。

 

「軽くの言葉の意味を調べよう、ね?」

 

「ああ、言葉なんて適当なものさ。言葉よりも確かなもの、それが行動だよ」

 

「国語のできない人間が使いそうな言い訳だね」

 

「なんとなく哲学的じゃない?」

 

「哲学的でもなければ、倫理学的でもない」

 

 ただの屁理屈だ。いや、屁理屈にすらなってないけれど。

 

「まあまあ、諦めて。ほら、吹雪だって試着室でもう着替えだしているよ。潮に着せ替えられながら」

 

「いつの間に!?」

 

 朧と響がやり取りをしている間に、吹雪はあっさりと潮に連れこまれていたようだった。

 試着室のひとつが妙にガサガサと動いている。おそらくあそこに二人はいるのだろう。

 

『やっ、いやいやっ、それはだめ! そんなの着れないーーえぇっ!? ちょっ、引っ張らないで、脱ぐ、自分で脱ぐからー!』

 

 ……潮、あなたはどうしてそうなっちゃったの?

 我が姉妹艦のあまりにもアレな行動に、思わず頭を抱える。

 

「まあ、そういうノリだよね。潮も今日を楽しんでるから、普段しない悪ノリをしているんだよ」

 

「アレ、悪ノリってレベルじゃないでしょ」

 

「まあ、悪ノリなんてことに慣れていないから、少し暴走気味なのは否めなけどね」

 

 少しで済むのだろうか……いや、まあ、潮が楽しんでいるというのならそれは良いことなのだろう。

 比較的自由なうちの鎮守府ではあっても、やはり艦娘であり、鎮守府に所属する兵器なのだ。戦いの日々の中で、はしゃぎ楽しむことができるというのは、それだけで素晴らしいことなのである。

 いや、ここ最近はそんなに戦ってない気がするけど。

 鎮守府が暇を持て余しているということは世の中が平和だということであるので、喜ばしいことなのだろう。完全な平和が齎されたときに朧たち、艦娘たちの存在意義はどうなるのかなんてことを考えることができれば、それはきっと幸せなことだ。

 幸いにも、不幸にも、まだそんなことを考える必要がない程度には深海棲艦は世に蔓延っているし、必要となれば戦わなければいけない。

 それでもまあ、戦わずに済むのなら、やはりそれが一番なのだろう。電ではないけれど、敵であったとしても沈めないので済むのならば良いことだと思うし、理解し合えるのならば良い話なのだが。

 いつか静かな海でーーか。

 

「で、朧、これを履くのかい?」

 

「悪ノリはやめよう、ね?」

 

 静かな海も大切だけど、今は何よりこの場を切り抜けたい。

 

 

 ーーそして一時間後。

 

 

 結局ガーターベルトを着せられた上にそのまま着用してお持ち帰ることになってしまった。とんでもない羞恥プレイだ……いや、オシャレの兼ね合いで着用する場合もあるので、一概に羞恥プレイとは言い切れないとは思うけれど、とはいえやっぱり少し恥ずかしい。

 そもそもガーターに合わせたファッションでもないので、些かアンバランスなのは否めない。靴下をニーハイソックス(ガーターセットのひとつだ。まるでコスプレのようだ)に変えたぐらいで、概ね全体的な服装は大きく変わっていないわけだし。

 他はまともな、普通に可愛い下着を数種類買うだけで済ませることができたのが唯一の救いか。

 

 同じように買った下着をそのまま着けさせられている吹雪は、しきりにスカートを抑えて歩く。見えないように気を遣い過ぎているのか、一歩一歩の歩幅も狭く、歩き辛そうだ。

 吹雪が買わされ、着けているものは朧と響にもわからない、潮が選んだものだ。が、概ね想像はついている。陳列された商品から消えていたやたらとスケている白の紐ショーツセット。たぶんアレ。

 うん、アレを見られるのはイヤだろう。それこそ本物の羞恥プレイだ。よりにもよって短いスカートを履いていることが、吹雪の不幸だ。

 白い英字プリントに青のミニスカートという、極めて健康的かつ素朴な少女感だというのに、その下はとんでもないアレなのだから、なんともミスマッチである。

 下着だけ冒険してもアンバランスでおかしくなるという証明であり、響と潮にはその件を考慮して貰いたかったものであるがあの二人はそれはそれで楽しんでるだけなので無駄な話かもしれない。

 

「うう、落ち着かない……こんなの履いてるのを見られたら痴女だって思われちゃう」

 

「いや、普段からちょくちょくパンツを見せている娘が今さら何を言うかな」

 

「見せてないよ!?」

 

「いや、普段は割と頻繁に見えてるよ」

 

「朧ちゃんまで!? え、ほんとに……?」

 

「うん、わたしもそう思うよ」

 

「わああああっ、よ、余計に気をつけないと……!」

 

 周りをキョロキョロと見回しながら一層警戒心を強める吹雪。

 お互い早く帰りたいものである。

 

「あ、バッティングセンター行かない?」

 

「「行かない!!」」

 

 響の提案に、吹雪と声を揃えて拒否をした。

 

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