1ページあたり5000文字を目安にすることにしつつ気分やノリ次第で大幅増量したり、逆に減量したりする感じでつまり安定感ない。
「今回もそちらとの演習をしてほしくて足を運んだわけだが、どうだろうか? 日程は明日だ」
どうも、恐縮です。古鷹です。……えへ、青葉の真似です。現在、秘書艦勤務中です。
今日は他所の鎮守府の提督と、そこの艦娘が来ています。ここ、第七鎮守府からかなり離れた場所にある、辺境と読んでもいいような場所にある第八鎮守府から遥々やってきたのは、恒例とも言っていい演習の申し込みでした。
第八鎮守府ーー八鎮の方々は、どうも他所の鎮守府とは演習を中々組んでもらえないらしく、古い付き合いでもあるうちの提督によく演習を頼んでいます。
と、言っても、普段は事前の連絡があるのに、今回は唐突なものでした。
「明日ってまた急だな……古鷹、明日は他鎮から演習の申し込みはなかったよな」
スケジュール管理は秘書艦の仕事の一つ。記憶する限りは特になかったはずですけれど、一応、スケジュール帳で予定を確認しておきます。
明日の日付には演習の文字はない。演習場は空いているので、問題はなさそうです。
「そうですね。出撃の予定もありません」
スケジュール帳を提督に見せる。提督も内容を確認し、頷いた。
「ありがとう、古鷹。まったく、今回は運が良かったようだな。演習の申し出、受けよう」
「おお、そいつは良かった。わざわざここまで足を運んできた予定が潰れずに済む」
助かるわー、とあっけらかんと八鎮の提督。相変わらず、ノリの軽い人だ。悪い人ではないんですけれど。どこか抜けているというか、敢えてそういう振る舞いをしているというのか。
「なら、直接乗り込むんじゃなくて前もってアポぐらい取ってくれよ。今回はたまたま運が良かっただけだ」
「うちみたいな辺境に電話や無線なんてものがうちにあるとでも思ってんの?」
「いや、無いほうがおかしいだろ。どうやって本部と連絡取るんだよ。というか前は私用のLINEで申し込んできただろ。いやそれもどうだって話だが」
「ちっ。バレたか……」
残念そうにぼやく。バレないと思っていたことに驚きです。
「だからアタシは忘れる前にさっさと電話をしなさいって言ったでしょ、このクズ」
八鎮の提督の隣に立つ小柄な少女が、キツい口調で言う。このクズ、を除けば何だか言っていることがお母さんのようだ。
第八鎮守府のブレイン、初期艦、そして秘書艦でもある艦娘ーー朝潮型の最終艦、霞ちゃんだ。
少し口調が厳しいけれど、実はとっても良い子です。どこか軽い、白々しく空々しく軽々しい第八鎮守府の提督を支える立場としては、彼女くらい厳しいほうが向いているのかもしれませんね。
「反省しているってお母さん。次は気を付ける」
「誰がお母さんか!」
小気味良い掛け合いに、独特な絆を感じる。普段からこんなやり取りをしているのだろうな、と容易に想像ができる。というか、来るたびにやっているので実際そうなんだとは思いますけど。
「まったく、お前という奴は変わらんな。アバウトでザックリ、およそ提督なんて職が向いているようには見えないんだがなぁ」
「女の子に囲まれる仕事なんだ。俺はむしろこの仕事を天職だと思っているぜ」
「その軽薄なところはまさしく向いていないと思うが。ハーレムか何かだとでも思っているのか」
ところで我が提督はご自分が無自覚にハーレムを築いていることを気付いているのでしょうか。
駆逐艦を中心に、多くの艦娘が好意を寄せられているということを、この、こと色事に関しては滅法鈍い方は恐らく気付いていないんだろうなぁ。
「まあな。俺のハーレムみたいなもんだよ、鎮守府は、艦娘たちは。だからこそ俺は、全力で彼女たちを守るために頑張るんだよ」
ふむ、とうちの提督が頷く。薄く微笑みを浮かべて、何だか嬉しそうだ。
変わらぬご友人の姿が嬉しいのだろう。
「キモい、クズ。決め顔で吐き気がするわね」
「今の格好良く決めたつもりなんだけど!?」
「アンタに守られるほど弱くもないし、助けられるだけでいられるほどに小賢しくもない。アタシは仲間に守られるだけのやつになるつもりはないわ」
「ははっ、そうか。そいつは失敬したな」
「フン。……まあ、心構えは悪くないわ」
霞ちゃんは素直じゃないです。そこが可愛いんですけれど。
「仲が良さそうで何よりだ。それで、演習の件だが時刻や海域の設定はどうする?」
「ああ、そうだな。そのへんはそっちに一任してもいいぜ。明日は丸一日空けてるから、適当に決めてくれ」
「そうか、わかったよ。なら明日の午前10時から正午までの2時間、正面海域で」
「決めるのはえーよ。まあ了解。あ、そうだ。ところで土産があるんだよ」
「ほう。お前にしては珍しく気が利くな」
「ははは。俺はいつでも気が利く男だぜ」
「それで、その土産とやらはどれのことだ? まさかと思うがお前が手に提げている袋がそうだ、とは言わないだろうな」
来たときからずっと彼の手に提げられていた洋服屋の袋を見ながら、提督が言う。
あれは確か……子供向けの下着を専門に扱っているお店のものだ。あっ……中身を察してしまいました。
霞ちゃんの目が悟りきったように投げやりなものになっていて、諦めましたと言わないばかりだ。
止めたのよ、止めたのよ、とうわ言のように呟いているあたりに彼女の苦労が伺えます。
「ははは。お前よくわかるなあ、常連か?」
「いや、常連ではないが……まあ、たまに駆逐艦の子たちに連れて行かれるからな」
「そうそう、駆逐の子たち喜ぶだろ。いやー、種類が色々あって選ぶの苦労したぜ。これ見ろよ、可愛いだろ、蟹さんプリントだぜ」
「……古鷹、こいつの脳内どうなってんだろな?」
「あはは……」
とりあえず、蟹さんプリントは朧ちゃん行きだろうなあ、と現実逃避的に思いました。
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「アイキャッチなのです!」
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「響だよ、その活躍ぶりから、フリーダムの通り名もあるよ」
「吹雪です! その活躍ぶりから、天災児の通り名もあります!」
「え、なにこの流れ。……お、朧です」
「朧だよ、その活躍ぶりから、キャンサーのデスマスクの通り名もーー」
「そんな呼ばれ方してない!」
響ちゃんの紹介に声を荒げて否定をする朧ちゃんとそれを見てあははと笑っている吹雪ちゃん。
相変わらず駆逐艦の子たちは仲が良いです。
今、ここへ来てもらっている響ちゃん、吹雪ちゃん、朧ちゃんの三人は、わたしが呼んで司令室まで来てもらいました。ちょうど三人とも用事も何もない時間だったのはよかったです。
「ところで司令官、何か御用でしょうか?」
吹雪ちゃんがいち早く会話を切り上げて本題に入る。
このあたりは秘書艦をわたしに次いで多くこなしている吹雪ちゃんだからこそだろう。
「いよいよわたしとケッコンカッコガチする気になりましたかっ?」
……………古鷹に何か落ち度でも?
本題どころか全力で自分の道を行ってました。
「ははは。結婚なんて吹雪にはまだ早いだろ、もっと大人にならないとな」
「むー、子供扱いです」
「実際子供なんだからしょうがないでしょ」
「たしかに朧ちゃんみたいにここは育ってないかもしれないけど」
「胸を触るな!」
まったく、と吹雪ちゃんの手を払いのけながら朧ちゃんが呆れて嘆息する。
しかし吹雪ちゃんと朧ちゃんが並んでいると、確かに吹雪ちゃんに比べると朧ちゃんの胸部は発達している。と言っても駆逐艦の子たちにしては、というレベルだけど。まだまだ成長段階で、育ちきってはいない。まあ、艦娘であるわたしたちは、艦娘になった時点でほぼ身体的な成長はないのだけれど。
ほぼ、なので少しぐらいの変化はあるけれど。普通の人のように大きく変化のある成長をすることはない。あくまでも艦娘になった時点での外見年齢相応の中での、限られた変化ぐらいだ。
中には第二段階改装ーーいわゆる改二により身体的に大きく変化をすることもあるのだが。かくいうわたしも、改二になって少し大人っぽくなったと評判です。
それまでが重巡にしては小さかっただけという可能性は、うん。古鷹型だから仕方ないですよね。
「えっと、朧たちはどうして呼ばれたんですか?」
「急で悪いんだが、明日、演習を行うことになってな。三人にはその演習に参加してもらう」
「朧たちが、ですか?」
「そうだ。何か用事があったか?」
「いえ、待機ですから特にはないですけど……この三人で、ですか?」
戸惑う朧ちゃんに、ニコニコと笑顔を絶やさない吹雪ちゃんに、どこ吹く風とばかりに涼しい顔の響ちゃん。それぞれの個性がよくわかる反応だ。
朧ちゃんが戸惑うのもわからないことはない。わかる。この三人はこの鎮守府、第七鎮守府においても屈指の練度を誇る駆逐艦娘だ。ゲーム的に言えば練度レベルは既に上限に達しようとしている。
なので、普通ならば他の艦娘をーーまだ経験の浅い娘たちを演習で鍛える、というのが定石だ。また本来、基本的には艦隊として行動する際は最大で六隻、聯合艦隊であったとしても十二隻です。演習はその前提として、実戦に近い形式にするため、連携を学ぶためにも六隻という形が多くなる。
しかし、そうではない。実際に今回の演習に出るのは彼女たち三人だ。
しばし考え込む素振りを見せてから、朧ちゃんがもしかして、と喋りだした。
「この三人で、となると相手は高練度、それも普通じゃない戦い方をするーー普通の経験にならないような相手ということだね、司令官」
そして心当たりを思いついた朧ちゃんに次いで響ちゃんが言葉を繋いだ。
「あはは、あそことは久しぶりですね。三ヶ月ぶりぐらいでしょうか?」
最初からわかっていたように吹雪ちゃんが言う。
それを見て朧ちゃんがやっぱり、と漏らし、溜息を吐く。視線が提督の机に向いている。その上には下着がたっぷり入った洋服屋のロゴが入った袋。
それを見てある程度相手のことを察したようだ。
それで察することができるって……改めて第八鎮守府の提督のアクの強さというか、個性の強さというか、控えめに言ってセクハラが代名詞のような存在です。それも、悪意がないから質の悪い。女子の下着を選んでプレゼントをするなんて行為を完全な善意だけでする男性は、世界を探し回っても恐らくはあそこの提督だけでしょう。
悪い人ではないんですけどね、本当に。何だかんだと霞ちゃんを始めとした艦娘に信頼されていますし、何より提督と意志を共にする友人です。
とは言え悪い人ではないけど、やはり変態であるという評価を覆すことは難しいわけでもあります。
いえ、セクハラをするのはあくまでも自分のところの艦娘ーーそれも特段酷いのは『彼女』だけなのですが、話を聞いているだけでうちの鎮守府でも共通認識としてセクハラ提督となったんです。
いや、酷いと思われるかもしれません。話だけで判断するなんて、と。しかし話の内容が、もう。私の口から語るのは、憚れるような内容ですし。
へその穴をほじられたとか、膝裏を甜められたとか、髪の毛を甘噛みされたとか。
……いや、むしろこんなことをされながらよく怒らないなあ、とすら思います。
霞ちゃん曰く「まあ、あのクズも大概なのは間違いないけどあの子も何だかんだ受け入れてるからアタシからは何も言えないわよ……はぁ」と、ハイライトの消えた遠い目をして言っていました。
本当に嫌がる子にはしない、とも。つまりセクハラを受け入れる艦隊だという裏付けにもなるんですけど、これはまあ、うん。私は何も知りません。
「古鷹先輩は出ないんですか?」
「うん。向こうが三人しか来ていないからその都合でね」
「前回は全員連れてきて鎮守府をガラ空きにしたことを霞に相当怒られたようだからな」
本部への報告のついでに現地に先乗りしていたことが仇になったわ、と頭を抱えてました。
「そんなわけだから、呼び出した理由は明日に備えておいてほしいということだ」
「わかりましたっ。吹雪、頑張ります!」
張り切る吹雪ちゃん。しかし対象的に落ち着いている、というよりは少し悲壮感の漂う朧ちゃんと響ちゃん。
「……朧も頑張ろう、死なないように」
「不死鳥の秘密は、危うきに近寄らないことにもあるんだよ」
とりあえず、演習で轟沈するということはないはずです。
ちなみに今回古鷹さん視点で通したのは、1ページ内でぐるぐる視点変わるのをあまりやりたくなかったからなだけです。次回からは再び朧ちゃん視点に戻ります。