グラ子出ました。次回更新するときには出ていると良いなと言った気がしますが、フラグはフラグでも出るほうのフラグになってくれて本当によかったです。
さて、前置きはともかく。ともかく。ともかく!
ーー朧ちゃん、新グラ可愛すぎますね!!!!
「今度ちょっとイベントに付き合ってくんない?」
秋雲にそう誘われたのは、あの第八鎮守府との演習が行われた翌日のことだった。秋雲とは五航戦繋がりとして縁があり、鎮守府でも特に仲良くしているうちの一人ではあるのだけれど、そのイベントというものが大体どんなものなのか理解をしていた。
少し日付が違うので、恐らくあの大規模なほうのイベントではなく、あくまでも小規模なオンリーイベントといったところなのだろうけれど、人手がほしいのはどんなイベントでも変わらないらしい。
いわゆる、同人誌即売会と呼ばれるイベントだ。
つまり秋雲の趣味である漫画本作成のお披露目のようなものだ。インターネット上では結構な人気もあるようで、たまに売り子を手伝うこともある。
こういうのは漣のほうが向いていると思うんだけどなあ、といつも思っているが秋雲は朧に頼んでくるのだから、それは考えても仕方がない。
……ところで売っている本の内容については、言わないほうが良いこともある、ということでひとつ。 言わぬが華というより、R指定的な意味で。
年齢の問題は大丈夫なのか、という疑問は浮かぶが、そこは艦娘である。艦娘となった時点で実際の年齢なんて無かったようなものになる。朧だってこう見えても凄い年齢なのかもしれないのだから。
艦娘になるときにかつての記憶が曖昧になるのはよくあることだ。ましてや朧の場合、艦娘になる以前すら記憶が曖昧だったようだし。有耶無耶な記憶の遡りをしてみても、曖昧模糊な記憶しか浮かばない。実年齢なんて本当にわからないのだ。
閑話休題。それはともかく。
そんなわけで、先日の演習から三日が経った今日が、付き合ってほしいと言われた約束の日である。
朝だというのに少しも衰えることのない夏の炎天下と、容赦なく照りつける陽射しの中で朧は秋雲を待っていた。
指定された場所は鎮守府から一時間以上列車に揺られて着く場所で、鎮守府周辺よりも少し都会らしさがあった。平和でかつ発展した街並みに、まるで戦時下であるということを忘れそうになる。
というか、同人誌即売会なんてものが開かれている時点で平和そのものにしか思えない。これでも一部ではシリアスに戦争が行われているのだけれど。
海から陸地への侵攻を防いでいるのは大きいようで、どうにも海から離れた場所では、深海棲艦との戦いなど遠くでの出来事でしかないという認識があるのは、まあ、確かに存在しているのだろう。
戦争なんてものは、身近な場所で行われて始めて危機感を覚えるものだ。そんな危機感なんてものを誰もが持っていないといけないなんて考え方をしてはいないし、平和を享受することを悪いことだとも思わない。人知れず戦えばいいなんて風にも思わないし、感謝なんていらないとも言わないけれど。
……それにしても、秋雲はまだだろうか。自分が時間を指定しておきながら、既に約束の時間から十分以上が経過していた。秋雲がコンビニでコピーをしてからというので、現地最寄りの駅で集合という約束だったのだけれど。
余裕を持っての約束なので、まあ問題はないが。
「いやー、遅れた。ごめんごめん! ちょっとばかりコピーに手間取ってさ。結構待った?」
噂をすれば、というべきか。来ないなあと考えていたところで秋雲がやってきた。普段着ている夕雲型とお揃いの制服ではなく(一応言っておくと、秋雲は陽炎型だ)、ショートデニムパンツとオレンジ色の日本語プリントのTシャツという出で立ちである。
ちなみにプリントされた文字内容は『妹愛』。
……吹雪か。思わず特型駆逐隊の長女であり、普段からお姉ちゃんと呼べとうるさいあの子を思い浮かべてしまうのは、その文字では仕方がない。
しかし陽炎型の末っ子が妹愛を掲げるのは、なんとなく違和感を覚えなくもないが、そもそも秋雲が特別に妹好きだという話を今まで聞いたこともないので、たまたまそういう服にしただけだろう。
それはそれでどういうセンスだという話だが。
服のセンスに関して朧からとやかく言えるわけではないが、これの隣をしばらく歩かなければならないのは正直なところ、少し恥ずかしい。
「別に、ちょっと待つぐらいは構わないよ。それにしても大荷物だけど、郵送してないの?」
「これはコピーだからねぇ。他はちゃんと送ってるよ。他にも色々持ってきているってだけよ」
「そうなんだ。……秋雲、今日は余計なものは持ってきてないよね?」
「あはは、立ち止まって喋っているのもなんだしそろそろ行こうか」
否定していない……嫌な予感を覚えるが、これ以上詮索をしても恐らく喋らないだろうし、仕方ない。
「それにしても悪いね。付き合わせちゃって」
「いいよ、全然。街に出るのは久々だし、むしろ楽しみにしてたぐらいだから」
「そかそか。よかった。あとは秋月に瑞鶴さん、翔鶴さんにも来てもらいたかったなー」
「人手はそんなにいらないでしょ」
「いやいや、やっぱり持ち場が華やかだと人の集まり方も違うからねぇ」
「秋月には刺激が強すぎるよ。それに瑞鶴さんや翔鶴さんも、あれで箱入りなところあるから」
「朧も最初は恥ずかしがってたじゃん?」
「まあ、うん。そうだね。慣れって凄いよね……」
「今や死んだ顔で売り捌いてるからねー」
「明らかに自分たちがモデルの本を売られたときの気持ちになれば死んだ顔にもなると思う」
「鎮守府はネタの宝庫よねぇ。おかげで捗るわ」
「そのうち怒られても知らないよ……」
「まあ、むしろ提督とのカップリングで書いてって頼まれたりもするから大丈夫じゃない?」
「うわ……どうせ吹雪とか、そのへんだろうけど」
「ぶっきーはそうでもないかなぁ。どう見てもバレバレな変装をしてバレてないと思い込んでいる面白いぼのっちに頼まれたことはあるけど」
「うわあ、聞きたくなかった……」
「ちなみに提督に強引にされちゃう、いわゆる軽い陵辱ものっていう依頼だった」
「妹のアレな性癖とか聞きたくないよ!?」
「七駆は仲が良いよねぇ。潮ちゃんもぼのっちと同じようなシチュエーションだったよ。まあ、似てると言ってもぼのっちのはまだ可愛いけど、潮ちゃんのはちょっと口に出すのも憚れる、過激過ぎる内容だったねぇ……いやいや、あの子ムッツリだわ」
「朧は明日からあの子たちにどんな顔して会えばいいの……?」
「ダイジョブダイジョブ、さざみーはいちゃいちゃほのぼのものだから」
「そもそも自分と提督の本を描いてもらおうとしている時点で大丈夫じゃないと思う」
なんて、聞いているほうが疲れてくるような知りたくなかったことを話しているうちに、今回の目的地であるイベント会場へ辿り着いた。ぱっと見る感じ、あまり広すぎない、多目的ホールだ。出入り口には今回のイベント名が記された看板が出ている。
そもそもあまり人通りのある場所ではないのだろう、閑散としている。ちらほらと集まっている人たちは、秋雲と同業者か、或いは一般参加の人たちだろう。一般人(という言い方はどうなのかと思うが他に正しい言葉が見当たらないので便宜上)はほとんどいないと言ってしまってもいいだろう。
「お、アッキーセンセー。来てたのねー! 睦月感激ぃ」
「ん、ああ、第三鎮守府の睦月じゃん。ってことはうーたんも来てんの?」
「もちろん! あとで挨拶してあげて、喜ぶよ。ところでそっちのまおーにゃしぃは元気なの?」
「あっはー、うちの魔王様は今日も朝から騒いでたねぇ。久々にぶっきーと遊べるーって。まあ、私が朧を連れ出してるからねぇ」
「遊ぶイコールガチバトルなのね、わかるよ」
「ついでに電と大和さんも参加するっぽい?」
「あはは、夕立ちゃんの真似全然似てないー!」
まるで朧がいつも吹雪と一緒にいるかのような物言いはともかく、駆逐艦三隻にしれっと混ざるのが戦艦でも最高クラスの大和型という時点で何かがおかしい。知っている者であればなるほど、と納得できるけれど、普通は頭おかしいと思うだろう。
まあ、実際に演習をするわけではないとは思うけれど。大和さんもうちの鎮守府の睦月も、普通に吹雪と遊びたいだけだろうし。二人とも、吹雪のことがお気に入りだから。大和さんに至ってはお気に入りを通り越して別の感情が見え隠れしている気もするけれど……うん、朧はなんにも知りません。
「あ、朧。今の間にこれに着替えといてね?」
「やっぱり余計なもの持ってきてたんだ……」
「まあまあ。今度カニカマ奢るから」
「安い……いや、いいけどね。なんかもう、そういうのに耐性がついてきたから」
艤装装備時に水着になる現状と比べたら、どんなものだって着ることが出来る。いや、さすがに島風の制服を着ろと言われたら、躊躇うけれども。
朧にはあんな露出の多い服装は似合わないし、恥ずかしい。朧は地味だし、可愛くないし。あれは島風タイプの子のように、派手であったとしても可愛いからこそ似合う、挑発的な服装だと思うし。
紐とか、朧は外を歩けないです。
秋雲に手渡された服は、サンタクロースを意識していると思われる、赤色の衣装だった。
この茹だるように暑い真夏の季節にサンタクロースとは拷問かと言いたくなるが、とは言え会場は冷房も聞いているし、そもそもよくよく衣装を観察してみると袖のないワンピースタイプで、胸元は空気を通すためか空いている。それから、脚がよく見えてしまう丈の短いもので、寒く感じることはあっても暑いなんてことはどうやら無さそうだった。
少し露出は多いが、これぐらいならまあ、水着に比べると幾分マシか。どうにも判断力が毒されているというか、おかしくなっている気もするが、気にしない。気にしたら負けだ。
季節外れに違いはないけれど。
なんでこの時期に……
「今回のイベントだと、入り口から突き当りの右手にある物置き部屋が更衣室代わりに開放されているよ。うーちゃんもいるから、よろしくにゃしー!」
「その間に色々手続き済ませとくわー。ほら、これと衣装持っていって、着替えてきたきた」
イベントのコスプレ登録証を手渡され、朧はひとり置いてかれた。……仕方ない、着替えてこようか。
大淀タイプのコスプレをした受付さんに事前登録証を見せて入り口を通っていく。……コスプレ、じゃないかもしれない。あれ、どこか他所の鎮守府に所属している大淀タイプの艦娘なんじゃないか。
看板に堂々と、デカデカと、大々的に書かれていた文字は、艦娘オンリーイベント。つまり艦娘をネタにしたイベントだということはわかる。……仮にも人の姿をしていると言っても軍事兵器扱いである艦娘を題材にしているとなると、これは主催側に鎮守府、艦娘のどれかが関わっている可能性が高い。
鎮守府というのは、艦娘というのは、年頃の女の子が集まるのだ、それも必要以上に金銭を所持する女子がーーだ。有志でこんな風にイベントを開いていたとしても、不思議はない。
いや、大本営止めろよと思わなくもないけれど。
大した影響があるとは思っていないのだろう。
何なら買いに来てるんじゃないか。何せ朧の艤装を水着にするような連中なのだから……ありえる。
そう考えてからよく見ると、やけに艦娘らしき者が多い気もするし。裏方、参加者含めて。
考えても仕方ないか。推測は推測でしかない。詳細はきっと秋雲が知っているだろうし、どうしても気になったら秋雲に聞けばいいことだ。今の朧がするべきことは、コスプレをすることだ。
……………………。
悲しくなる。
するべきことがコスプレって。
どう聞いても頭が悪過ぎる。
「はぁ……提督は、朧がこんな格好をしているのを見てどう思うかな」
似合ってるよ、可愛いよーーなんて。
そんなことを想像しているほうが、よっぽど頭が悪いことなのかもしれないけれど。
贅沢を言えばサンタクロースな朧ちゃんも見たかったなという欲望が出た結果です。妙にエロティカルそうなのは、別にぼくの趣味ではなくて媚びただけですから。誤解しないように。本当だからな?
ところでぼくはこういったイベントにはあまり行かないうえ、一般参加の買い専なのでどういう感じなのかはグーグル先生頼りなのでなんか違うとかあるかもしれない。