リリカルオリヴィエSacred   作:ころに

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―――鏡を見ながら、私がいっぱい居たら便利だなとか思う時もあるわけで。

【前回のあらすじ】趙公なんとか、死す。


Memory.10:私と私と私で?

 目の前にそそり立つ真紅の壁、それは膨大な魔力によって生み出された滝でした。

 上から下へ。触れるもの全てを消飛ばさんとばかりの密度の奔流は勢いを止めず、大地を打撃します。

 ただ幸いな事に物理的な威力はそこまでないのか大地ごと私達が吹き飛ばされる事はありませんでした。

 視線を壁の生まれ来る方向――空へと向けます。

 されどもそこにあるのもまた真紅の壁でした。

 どうやら壁の規模が大き過ぎて根本まで隠れてしまっているようです。

 私は壁の生み出し手を確認する事を断念すると、視線の向け先を移します。

 新たな視線の向け先は、私の隣で同じ様に空を見上げていた碧銀の髪を持つ男の子ことクラウスです。

 彼を視界の中心に納めながら、私は彼へと声をかけます。

 

「クラウス、大丈夫ですか?」

「あぁ、俺はな……オリヴィエも大丈夫そうだが……なんだこれ」

 

 彼は驚いた顔で私達の眼前にいきなり現れた壁を見上げたまま呆然とした声を漏らしました。

 彼の驚きも尤もです。突如として目の前にこの様なものが現れれば誰だって驚愕します。

 しかしながら、私が魔導書から与えられた知識は真紅の壁の正体を既に導き出していました。

 

……うぅん……自分の覚えがない知識が頭の奥底から浮かんで来る感覚は未だに慣れませんね……。

 

 何だか見えざる手に頭を弄られている様な感じです。

 私はそんな気持ち悪さに耐えながらも、顎に手を当てて目を細め、導き出された答えを口にします。

 

「魔力の滝……恐らくは狙いを絞りに絞って圧縮された砲撃魔法かと」

「ってコレ、砲撃魔法なのか?どう考えても壁にしか見えないし、もう十秒以上は続いてるぞ?」

「えぇ、ずっと撃ち続けているようです……普通の人間なら無理ですが」

 

 私の言葉にクラウスが眉を顰めます。

 彼は視線を空から下ろして私へと向けながら、

 

「これを撃っているのは普通の人間ではないって事か?」

「はい。多分ですが魔導書が反応してますので、私達の"仲間"ではないかと」

「仲間……って事は夢の中で聞いたっていう助っ人の内の1人か」

 

 対する私は首肯を返しました。

 頷いた拍子に手元を見れば、右手に持った魔導書が白い光を帯びていました。

 毛玉を見つけた時には黒い光を放っていましたし、反対色の白は味方を表しているのだと思われます。

 だから今砲撃を放っているのは味方だと思う、というわけです。

 

……まあ、確証は持てないのですが……。

 

 その時はその時です、と私は納得しておきました。

 それから真紅の壁の中に薄っすらと見える先程光の中から現れた男性の影が倒れたのを確認して、

 

「12秒間……この魔力の奔流を耐えるとは、まともに対峙していたら危なかったかもしれませんね……」

「あぁ」

 

 神妙な表情でクラウスが頷きました。

 彼は横顔に一筋の汗を流しながら、

 

「壁の中でブレイクダンスを躍った挙句、体力尽きて倒れ伏すとか色々凄いよな……」

 

 並の変態じゃねぇ……とクラウスは戦慄しているようでした。

 ああ、それは私も『余裕があるなら脱出すれば……』とか思いましたがそれは言わぬが華でしょう。

 彼にとっては脱出よりもあの場でブレイクダンスする方が重要だったのでしょう。

 ともあれ、私の気を引いたのは彼の変態性ではありません。

 私の気を引いたのは、脳裏に浮かんだ疑問。それは――、

 

「一体彼は私達に踊りを通して何を伝えたかったのでしょうか……」

「いや、単に目立ちたがり屋なだけだったんじゃないか……?」

 

 いえ、そんな事はありません。

 あんな暴力の塊とも言える魔力に押し潰されながらも続けた必死のアピール。

 それが単に目立ちたいだけ等という理由で行われたとは到底思えません。

 きっと何か理由があったに違いありません――が、今ではもう彼の真意を知る事は出来ません。

 何故ならばこの魔力の滝に彼は飲み込まれてしまったのですから。

 今は彼の冥福を祈るのみです。

 両手を合わせていると、緩やかに消えて行く真紅の壁。

 恐らくは趙公なんとかさんが倒れた事が確認出来たので魔力の放出を止めたのでしょう。

 もう趙公なんとかさんが倒れてから十数秒は経過しているの筈なのですが、それでも壁を維持していた事から壁の作り手の慎重さが伺えます。

 

……一体どんな人なのでしょう?

 

 私の隣に立つクラウス、そして背後の高町さんも私と同じ様に改めて空を見上げるのが解ります。

 そうして見上げた先に居たのは――、

 

「……なのはさん?」

「おいおい、ドッペルゲンガーか……?」

「え……私?」

 

 なんと私達の後ろで屈んでいるなのはさんと瓜二つの女の子でした。

 いえ、細かな差異は多分にあるのですが、顔立ちがとても似た女の子だったのです。

 彼女は空に浮かぶ月を背景として、背に光を浴びながら、なのはさんの持つ物と似た杖を軽く振り、

 

「焼滅完了」

『冷却を開始します』

 

 杖から排気熱を吐き出させながら、私達を見下ろしました。

 そのまま彼女は無言で高度を落として、段々と私達に迫ってきます。

 その間に私とクラウス、なのはさんは素早く集まり、円陣を組んで小声で、

 

「やっぱり似ていますね……」

「ていうか、髪型と服は違うけど見た感じ姉妹だろ、これ……」

「まさか生き別れの妹なの……!?」

『マスターにはそんな過去が……!?』

「そうなのですか……!?」

 

 まさかのなのはさんの過去に驚愕しまいます。

 しかし私達の驚愕に対して、クラウスだけはいやいやと手を左右に振り、

 

「いや、違うと思う。ていうかオリヴィエ。君、さっき"俺らの仲間だと思う"って言ってただろ?」

「あ、そうでした」

 

 ポンと私は手を打ち、先程言ったばかりの自分の言葉を思い出します。

 あまりになのはさんそっくりなので、ついついなのはさんの言葉を信じてしまいました。

 コホン、と私は小さく咳払いをして、ふよふよと大地に足を降ろしたなのはさん似の女の子へと向き直ります。

 

「え、えぇっと、まずはありがとう御座います。助かりました?」

「なんで疑問形なんだ……」

「なんだか良く解らない内に決着ついちゃったからじゃないかなぁ……」

『出来ればあの少女漫画フェイスな毛玉は我々が消飛ばしたかったのですが……』

 

 後ろでクラウス達が騒いでいますが、今はなのはさん似の女の子への対応が優先的なので無視しました。

 しかし見れば見る程、なのはさんに良く似ている事が解ります。

 髪型はなのはさんの栗毛をショートヘアにしたもの。

 そして衣装はなのはさんの着込んだ魔法少女の衣装の色を反転させたもの。

 彼女が持つ杖もやはり色が異なり、金属部は血の様な赤黒く、宝玉部分は青紫色となっていました。

 彼女の胸元で紫色のリボンが風に吹かれて小さく揺れ、真っ青な瞳が私達を見据えました。

 見据えて来ました。

 えぇ、見据えるだけなのです。

 彼女は黙して、ひたすらに場に静寂をもたらして来ました。

 そうして膠着状態を保ち、数十秒が経った頃でしょうか。

 最初はジッと見つめあっていたのですが、それにも耐え切れなくなってきてしまいました。

 私もどう言葉を切り出して良いのか解らず、目を泳がせ始めてしまいます。

 

……えっと、どうするべきでしょうか?

 

 お礼に対する言葉が返って来る様子もありません。

 こ、こういう時は私から声をかけるべきですよね、うん!

 私は意気込み、眉を立てて覚悟を決めると両手に胸を置いて僅かに前のめりになり、

 

「あのっ!」

「……エネルギーが足りません」

「へ?」

 

 私は唐突な彼女の言葉に首を傾げてしまいます。

 エネルギー?カロリーが足りないのでしょうか?

 疑問に思いながら顔を上げて様子を窺うと、彼女の目線が私に向いていない事に気づきました。

 はて、それでは一体どこを見ているのでしょう?と彼女の視線を追ってみます。

 視線の先には、クラウスが居ました。

 

……いえ。クラウスを見ているわけではないですね、これは。

 

 クラウスを見ているにしては視線はやや下向き。つまり地面の方向です。

 ふむむ。とりあえず、この場に居る皆さんの状態を確認してみましょう。

 

 私――現れたなのはさん似の女の子と相対する様にして立っている状態です。

 クラウス――腰に片手を当てながら困り顔で私の隣に立っています。

 なのはさん――円陣を解いた後、再びユーノさんの隣に屈みながらコチラの様子を窺っています。

 ユーノさん――白目を剥いて気絶しています。どうしてああなったのでしょうか?

 

 この内、地面に最も近いのはなのはさんとユーノさんです。

 つまりなのはさん似の女の子の視線の向き先はこの2人に絞られます。

 その内、彼女が見据える原因を持っていそうなのは、瓜二つの姿を持つなのはさんだけでしょう。

 

……やはり自分と同じ容姿を持つ彼女の事が気になるのでしょうか?

 

 されども、何時までもこの状況を保っているわけにもいきません。

 結界を張るまでの間に騒ぎを聞きつけて結界周りに人が集まっているかもしれませんしね。

 故に私は意を決して口を開き、言葉を紡ぎました。

 

「と、とりあえずジュエルシードと趙公なんとかさんを封印して場所を移しませんか?ご飯もそこで……」

 

 横目でチラリと煙を上げて五体投地する趙公なんとかさんを見ます。

 もはや黒焦げで原型は良く解りませんが、笑顔を浮かべているようにも見えました。

 何故あんなにもやり切った顔をしているのかは解りませんが、きっと満足して逝ったのでしょう。

 うん、と私はとりあえず納得してなんか天使が迎えに来ている趙公なんとかさんから視線を外しました。

 改めてなのはさん似の女の子を見ると、彼女は顔を左右に振りました。

 

「いえ、移動する必要はありません」

「え?でもお腹が空いたのでは?」

「あぁ、そう思われていたのですか……失礼しました。そうではないのです」

「?」

 

 そうではない、とはどういう事でしょうか?

 私が頭の上に疑問符を大量発生させていると、彼女は唐突に歩を進め始めました。

 私とクラウスの間を抜けて彼女が進むのは、座った姿勢のなのはさんと倒れ伏したユーノさんが居る方向。

 

「……!」

『ほほう、やりますか?やるんですね?良いですよ!私はいつでも全力全壊ですよ!?ヘイカモォォォン!』

 

 なのはさんがレイジングハートの柄を握る手に力を籠めて黙らせました。

 同時に彼女は全身の筋肉を強張らせ、何時でも動けるように構えるのが解りました。

 が、それを私はジェスチャーで、抑えて、と伝えて何とか制します。

 私のジェスチャーを彼女は理解してくれたのか、眉を立てて警戒しながらも実際に動きはしませんでした。

 そんなやりとりをしている間にもなのはさん似の女の子は動きを止めませんでした。

 彼女はなのはさん達の近くまで行くと、屈み、相変わらずの無表情で1度なのはさんを見てから、

 

「失礼」

「は、はい?」

 

 彼女に向かって小さく礼をすると、流れる様な動きでユーノさんを抱きかかえ、そのまま、

 

「師匠成分を補充です」

 

 ムギューッと幸せそうな顔でユーノさんを強く抱き締めました。

 瞬間、場を満たすのは沈黙。

 ギュウギュウとユーノさんを抱き締めるなのはさん似の少女だけが動く世界が出来上がります。

 そうして何秒程世界は停止していたでしょうか?

 少なくとも1分近くは停止していたように思われます。

 一部を除き、全てが停止した世界。

 それを打ち破ったのは1人の少女の絶叫でした。

 

「ちょぉ、なにしてるのぉ―――!?」

『マスター落ち着いてください。なぁにただのスケコマシですよ、吹き飛ばしましょう』

「お前ら落ちつけ。ていうか、なんだこの状況……」

 

 離すのー!と叫びながらレイジングハートさんを振り回すなのはさん。

 喜々として魔力の充填を開始するレイジングハートさん。

 それを後ろから羽交い絞めにして止めるクラウス。

 その間もハグを止めないなのはさん似の女の子。

 ユーノさんは相変わらず白目を剥いてされるがままになっていました。

 私はそれらの状況を見ながら、眉根を下げ、頬に手を当てて、

 

「えと……もしやユーノさんの知り合いなのでしょうか、あの子は……?」

 

 何だか良く解らなくなってきた状況に困惑の声を漏らすのでした。

 

 

  ●

 

 

「封印!」

「嗚呼ッ!そんな激しく!?アッ――!」

 

 掲げた曙光の魔導書に趙公なんとかさんは体を三回転くらい捻りながら飲み込まれて行きました。

 彼を飲み込むとページを広げていた魔導書は空気を押し出す音を立てて閉じました。

 趙公なんとかさんが寝ていた地面に金属同士がぶつかった時に出す様な音を立てて青い宝石が転がります。

 恐らくはあれがジュエルシードでしょう。

 私はそれを見た後、魔導書の輝きが治まるのを確認してから溜息を1つ。

 

「封印、完了しました」

「おう。お疲れ様」

「そっちはどうです?」

「相変わらずだよ」

 

 彼は両手を肩の高さまで上げて、苦笑します。

 ふむりと本を脇に挟みながらクラウス達の方へと歩み寄ります。

 そこでは2人の女の子が睨み合い、火花を散らしていました。

 

「ユーノ君を離して!苦しがってるでしょっ!?」

「嫌です。それに絞殺未遂までしでかすあなたよりはマシだと思いますが?」

「こ、絞殺未遂なんてしていないの!ちょ、ちょっとあれはそう、愛が物理的パワーを持っただけなの……!」

『マスター、私はしっかり見ていました。録画した映像も残って――』

「レイジングハートはどっちの味方なの!?」

 

 ボキィと破砕音がしてギャー!という悲鳴が聞こえましたが、私はスルーしてクラウスを見て、

 

「えぇっと、ジュエルシードの封印、どうしましょうか?私達じゃ出来ませんし」

「あぁ、どっちかにやって貰った方が良いんじゃないか?レイジングハートは今真っ二つに折れたけど」

「では、なのはさん似の子に、ですね」

 

 クラウスと頷き合うと再び対峙する女の子達へと向き直り、

 

「あの、ちょっと良いですか?」

「むむむ……って、あ、は、はいっ!?」

「む。ジュエルシードの封印の件ですか?」

「あ、はい。お願い出来ますか?」

 

 思いの外、理解が早いですね。

 無表情のままなのはさん似の女の子は私のお願いに頷いて了承の意を見せてくれました。

 

「了解です。ではナノハ、暫く師匠を頼みますよ」

「え?あ、うん。ま、任せてっ!」

 

 白目を剥いたままのユーノさんの受け渡しが行われました。

 というか、良くユーノさんこの状況で起きませんね。

 まぁ、起きたら起きたで余計ややこしい状況になりそうなので、良いのですが……。

 なのはさんはユーノさんを受け取ると嬉しそうな笑みを浮かべて彼を抱き締めました。

 ぐったりとした彼の首を痛めない様にしっかり首の後ろに手を回した上で自身の方へと引き寄せ、

 

「えへへ」

「あとでしっかり返して下さいね」

「お断りするの」

「……あとで決着はつけますので……ジュエルシードはどこですか?」

 

 何だか無表情ながらもそこはかとなく怒りのオーラが感じられるのは気のせいでしょうか?

 ともあれ、今戦闘を始められても困ります。

 なので私は早々に彼女をジュエルシードの落ちている方へと案内しようと振り向き、

 

「はい、ジュエルシードはあそこに……」

 

 視線の先になにやら更になのはさんに良く似た女性が立っているのが見えました。

 えぇ、ジュエルシードが転がっていた筈の位置に女性が居たのです。

 

「……」

「……」

 

 思わずなのはさん似の女の子と共に沈黙してしまいます。

 振り返り、ユーノさんを抱いたまま恍惚としているなのはさんを見ます。

 彼女は相変わらず幸せそうにユーノさんに頬ずりをしていました。

 どうやらコチラの異常事態には気づいていないようです。

 振り向き直します。やっぱりなのはさん似の女性は消えずにそこに居ました。

 

「……えと、こんばんわ」

「はい。こんばんわ」

 

 なのはさん似の女性に頭を下げて挨拶をすると、彼女も笑顔で挨拶を返してくれました。

 うん、悪い人じゃないみたいです。

 ですが、それだけで会話が終了してしまいました。

 なのはさん似の女性はニコニコと私の次の言葉を待つだけです。

 

「……えっと」

「あぁ、私はシュテルです。それと私に話を振ろうとしないで下さい。私も状況把握が出来ていないので」

「あ、はい。すいません」

 

 なのはさん似の女の子――シュテルさんに助けを求めようとしたのですが、無情にも叩き落とされました。

 仕方がないので最後の頼みの綱であるクラウスへ助けを求める視線を向けると、

 

「おい、大丈夫か。レイジングハート、傷は深いぞ、しっかりしろ」

『ふふふ、私が死してもいずれ第二、第三の私が現れ……』

 

 なのはさんの近くに転がる真っ二つに折れたレイジングハートと何やら雑談していました。

 完全にコチラに背を向けている状態の彼はどうやら会話に加わる気ゼロのようでした。

 

……振られる前に逃げましたね、クラウスー!?

 

 彼の背を恨みがましげに見ますが、彼がコチラを振り向く事はありませんでした。

 再び仕方がありません、と視線を元に戻します。

 やはりなのはさん似の女性は消えていませんでした。

 つまりこれは現実。紛れもない現実なのです。

 相変わらず彼女はニコニコと笑顔で私とシュテルさんの事を見ていました。

 少しだけ彼女の姿を改めて観察してみます。

 伸ばしたなのはさんと同色の栗色の髪をサイドテールの形に白いリボンで結った髪型。

 着込んでいるのは、これまたなのはさんと似た白を基調として青い線が所々に入ったバリアジャケット。

 顔立ちなんかもなのはさんが大きなったらこうなるだろうなぁ、といったものでした。

 あとどことは言いませんが大きかったです。ぐぬぬ。

 ともあれ――うん。どう見てもなのはさんの関係者ですよね。

 というかこの場には現在、なのはさん本人も含めて似通った顔の持ち主が3人も居るのですが、

 神様は私にこの状況をどうしろというのでしょうか?

 

「あの、ええっと……なのはさんの御姉妹の方でしょうか?」

「ん?いや、本人だよ?」

「予想外の答えが……!」

 

 私の真後ろになのはさんは居るというのにご本人とはこれ如何に。

 

「あと姉妹と言えば、貴方達とは姉妹かな?」

「更に要素が追加されましたよ……!?」

 

 思わず頭を抱えてしまいます。

 つまりこの方はなのはさんご本人で、且つ、私とも姉妹で?

 という事は、

 

「私となのはさんも姉妹……!?」

「落ち着いてください。魔導書が反応してます。同郷ですよ、恐らくですが」

「えっ」

 

 シュテルさんの言葉に私は脇に抱えた魔導書を見ます。

 なんだか魔導書はその表紙を小さく白く明滅をさせていました。

 これは真紅の壁の生み出し手であるシュテルさんを味方と教えてくれた時と同じ反応です。

 つまり目の前のなのはさん似の女性も、

 

「うん。その通りだね。まぁ……私は増援部隊じゃないけど、あなた達の味方だよ」

「増援部隊じゃない?」

 

 彼女の言葉に私は首を傾げてしまいます。

 つまり魔導書の中で私が聞いた6人の内の1人ではないという事でしょうか?

 

「えぇ、私もこの様なナノハ似の女性が来るとは聞いていません」

「あ。シュテルさん、他のメンバーの事もご存知なんですか?」

「2人は知己です。あとの3人は知りませんが……少なくとも全員同年代と聞いています」

「なるほど」

 

 目の前のなのはさん似の女性はどう見ても20代くらいに見えます。

 容姿を見る限りではシュテルさんの言う増援部隊ではないのでしょう。

 というよりも、なんで増援部隊、私達と同年代なのでしょうか。

 もっと大人の増援を送ってくれても良い気がするのですが……。

 

「大人同士だと人間関係が複雑になりがちだったり、利害の不一致で諍いとか面倒事が起きやすいからね」

「はうっ!?思考が読まれました!?」

「声に出てたよ?」

「はうわっ!?」

 

 私は深く思考の海に沈むと声に漏らす癖でもあるのでしょうか。

 これはいけません。早急に直さねば変な子だと思われてしまいます。

 

「ふふっ、まぁ、良くやってくれたね。おかげさまで私も実体を確保出来たよ」

「つまり先程のジュエルシードを吸収したのですか……あなたも先程の変質者と同様の存在ですか?」

「あ。勘違いしないでね。私は黒い魂側じゃないよ?」

「では?」

「うん。言った通り、私はあなた達の味方。どちらかというと白い魂側かな」

 

 信頼、して良いのでしょうか?

 魔導書が白い光を帯びているところを見る限りでは彼女の言葉真実だと思われるのですが……。

 私が訝しげな視線をなのはさん似の女性へ向けているとシュテルさんが私の前へ一歩踏み出しました。

 

「では1つ質問を」

「何かな?」

「あなたはもしや"未来のタカマチ・ナノハ"なのですか?」

「うん。そう……と、詳しい事はそっちの子に聞けば解ると思うよ?」

 

 なのはさん似の女性は私達の後ろを指差しました。

 そこには、

 

「にゃへへー、ユーノくぅーん」

「う、うぅぅ、悪魔……白い悪魔がぁ……」

『私はもう駄目です……せめて最後に夢である盛大に周囲一帯を巻き込む様な自爆を……』

「おいばかやめろ」

 

 なんだか混沌とした状況が広がっていました。

 

「えっと、どなたですか……?」

「どれも当てになりそうにありませんね……」

「えっとぉ……」

 

 なのはさん似の女性は困った様に眉を下げた笑顔で頬を掻きました。

 とりあえず、となのはさん似の女性は前置きして、

 

「私の事は……まぁ、先生(レーラァ)とでも呼んでくれれば嬉しいかな?」

「レーラァ……ドイツ語で師匠ですか。未来のナノハはどこかの道場の主でもやっていたのですか?」

「それはお姉ちゃんの仕事かなぁ……」

 

 シュテルさんの言葉になのはさん似の女性、改め、先生はにゃははと苦笑します。

 それから彼女は両手を合わせて、

 

「それじゃあ、まずは」

「「まずは?」」

 

 私とシュテルさんの首を傾げる動作と言葉が一致します。

 先生はそんな私達の様子がおかしかったのか、小さく笑いながら人差し指を立てて、

 

「此処から離脱しようか?そろそろ結界が消えるよ?」

「え゙?」

 

 瞬間、世界が色を取り戻し始め、ついでになんか遠くからサイレンの様な音が――、

 

「いけません。ナノハ、師匠を連れてとんずらしますよ」

「え?もう少しこの至福の時を味わっていたいのに……」

「張り倒しますよ、駄ナノハ」

「駄なのは!?って、あ、やめて、やめて!引っ張らないであーうー!?」

 

 音が聞こえた瞬間、シュテルさんがなのはさんの首根っこを掴んでユーノさんごと飛び立って行きました。

 

「あ、えぇと、ク、クラウス、私達も逃げましょう!?」

「あ、おうさ。って、この折れたレイジングハートどうする?」

「あぁ、それなら私が直しておくよ」

 

 先生がクラウスに近づいて彼の持っていたレイジングハートさんを受け取ります。

 それから恨み節をブツブツと呟くレイジングハートさんを待機状態の宝石に戻すと、

 

「ただ……あの3人に付いていくわけにもいかないし、ご迷惑かもしれないけど一緒に行っていいかな?」

「あ、はい。大丈夫ですかね、クラウス?」

「ん?んー……多分、大丈夫じゃないか?水橋さんに聞いてみないと解んないけど」

「良かった。それじゃあ、とりあえずは離脱しようか。ステルス使いながら飛ぶから2人とも掴まって」

 

 先生がそう言うと、彼女の靴の外側から桜色の翼が生えます。

 それはなのはさんが魔法を行使していた時に生えていた翼と同じものでした。

 先生が生やした物の方がだいぶ大きいように見えますが、やはりそれは、

 

「なのはさんと一緒……本当になのはさんご本人なんですね……」

「にゃはは、信じてくれたかな?私も魔導書から零れ落ちてから暫くは変な感じだったよ。小さな頃の自分を見守る事になるとは夢にも思っていなかったしね……まぁ、数年も続けているし、もう慣れたけど」

「数年も、ですか?」

「うん。ってほら。そっちの子ももう少ししっかり捕まって」

「うお、柔らか……」

 

 クラウス、後でちょっとお話ししましょう。

 えぇ、OHANASHIです。安心してください。

 

「まぁ、詳しい話は後にして――それじゃあ飛ぶよ!」

「あ、はいっ」

「俺もオッケーですよ、って、ぬおぉぉっ!?」

 

 クラウスが返事を返し切る前に全身に衝撃を感じました。

 下へと私達の体を叩きつける様な感覚をもたらす原因は、地球の重力と空気の抵抗によるもの。

 堪らず先生の服を掴んでいた手を離してしまいそうになりますが、先生が私達の腰に手を回していてくれた事でなんとか耐えきる事が出来ました。

 それから数秒程、目を強く閉じて頭を押さえつけられる様な圧力と格闘していましたが、

 

「?」

 

 不意にその圧力が消えました。

 

「うん、もう安定したから大丈夫だよ」

 

 先生の声にゆっくりと瞼を上げます。

 そうして開いた視界には、

 

「わっ」

「うわ……こりゃまた……綺麗だな」

「でしょ?」

 

 満天の星空が広がっていました。

 どうやら先生は街を背にして、空に向かって仰向けの姿勢で空を飛んでいるようです。

 故に私達の目の前には月と数多の星が浮かぶ海が広がっていました。

 まるで私達までもその海に浮かんでいるような錯覚すら感じてしまう程の美しさです。

 そんな海に浮かびながら、先生は子どもの様に無邪気な笑みを見せて、

 

「この方が空が見えて綺麗でしょ。だから私、この飛び方好きなんだ」

 

 言ってから、彼女は私達を胸に抱き込みました。

 2人してわぁ、と声を上げてしまいますが、彼女は構わず言葉を続けます。

 

「ありがとう、2人とも」

「ふぇ?」

「やわ、柔らか……」

 

 ちょっとクラウス、黙りましょう。

 

「小さな私を護ってくれて……それに2人のおかげでこうしてまた空を飛べたよ」

「わ、私達だけの成果じゃないですよ……?」

「ううん。それでも、だよ。勿論、他の皆にもお礼は言うけどね」

 

 くすり、と先生は目を細めた、柔らかな笑顔を浮かべて、

 

「これからは私もお手伝いさせて貰うから、よろしくね。2人とも」

 

 私とクラウスの頭を撫でてくれました。

 なんだかその仕草や優しさのせいか、私はふとお母さんみたいだなぁ……という感想を抱き、

 彼女の腰に回した抱きつく腕につい力を籠めてしまっていました。

 先生はそんな私の反射的な動作に、あらあら、と声を上げるだけでした。

 無言で撫で続ける彼女の優しさに、ちょっと恥ずかしくなり、頬が熱を持ってしまいます。

 だから私は恥ずかしさを誤魔化す為にも彼女から目を逸らしながら、

 

「こ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますね!」

「柔らか天国……!」

 

 とりあえず不埒者(クラウス)は大空へと蹴飛ばしておきました。

 

 

  ●

 

 

 高町恭也の体力と精神はもはや限界に達していた。

 あれから1時間ほど、己の家の末妹を探し続けて町内を全力疾走していたが、手掛かりはゼロ。

 この周辺には影も形もない。

 末妹であるなのはの身体能力ではそれほど遠くにはいけない筈だ。

 それでも見つけられないという事は、

 

……何らかの事件に巻き込まれたのか……!?

 

 クソッと俺は近くにあった電柱に拳を叩きつける。

 

……何が御神の剣士だ……!守るべき時に大切な妹を守れず……!

 

 いや、と俺は自分の顔を片手で覆って、沸騰した頭を冷やす。

 悲観的になってはいけない。

 もしかしたらどこかの家に御邪魔しているだけかもしれない。

 そう。例えば見知らぬ人に声をかけられてホイホイと付いて行ったり――、

 

「そっちの方がダメだろう……!?」

 

 思わず崩れ落ちて、地面を叩いてしまう。

 駄目だ、ネガティブな発想しか出て来ない。

 仕方がない。此処は1度自分達とは別行動をしている父さんに連絡してみよう。

 もしかしたら父さんの方で見つかっているかもしれない。

 淡い希望と共に立ち上がり、携帯を入れたズボンの後ろポケットへ手を入れた時だった。

 

「あれ?お兄ちゃん?」

「!?」

 

 聞きなれた妹の声――なのはの声が俺の耳に届いたのだ。

 急いで振り向いてその姿を確認する。

 

「なのは!?」

「にゃはは、ごめん……し、心配かけちゃった、かな?」

「どうも」

 

 申し訳なさそうに身を縮めるなのはと無表情に片手を上げるなのはが居た。

 んん?何かおかしいぞ?

 

「……なのは?」

「えと、なぁに、お兄ちゃん?」

「……なのは?」

「いいえ、シュテル――いえ、なのはです」

 

 やはりなのはらしい。

 しかも2人ともなのはらしい。

 いかん、なのはが2人になった幻覚が見えてしまっている。

 なのはを心配し過ぎたばかりになのはが増殖してしまったようだ。

 

……ははは、そんなまさかなのはが増える訳がないだろう。

 

 疲れているんだろう、と目を服の袖で擦って改めてなのはを見る。

 ほうら、そこには1人のなのはが――、

 

「やっぱり2人居る……!」

 

 俺はその場に再び崩れ落ちた。

 

 

  ●

 

 

 目の前で両手を両膝を地面について項垂れるお兄ちゃんを見ながら、私は溜息を1つ。

 それから隣に並んでいる相変わらず無表情なシュテルへ半目を向けて、

 

「シュテル、なんで嘘吐くの?」

「いえ、その方が面白そうだったので……というかそろそろ師匠を返して下さい」

「やだ。私がユーノ君は家までおぶっていくの」

 

 ふーんっとシュテルに対してそっぽを向きます。

 ちなみに横目で見たシュテルの服装は先程まで着ていた黒いバリアジャケットではなく、

 私と同じ黄色い長袖の上着に橙色のフレアスカートといったものとなっていました。

 髪型とその無表情っぷりを除けば本当に私そっくりです。

 でも私そっくりだろうと何だろうと、ユーノ君は渡しません。

 彼女が現れた直後に行った行動を思い返しながら私はユーノ君を支える手に力を入れます。

 わぁ、ユーノ君のお尻柔らかい。

 そんな風に私が顔を緩ませていると、シュテルも半目を返して来ましたが、彼女は頷き、

 

「ふむ……まぁ良いでしょう。あとでまた補充するので」

「何を?」

「師匠成分を」

「させると思うの?」

「止めれると思いますか?」

「やだなぁ、シュテルったら。ふふふ」

「いやですね、ナノハ。ははは」

 

 私達の乾いた笑い声が響きました。

 それはさておき、

 

「とりあえずお兄ちゃんをこっちの世界に連れ戻そうか」

「そうですね……って、おや?」

「な、なのはー!?」

 

 闇の向こうから駆けて来る影が1つ。

 あれは、

 

「お姉ちゃん?」

「良かった、居た!ってなんかなのはが増えてる!?」

 

 黄色いリボンで腰辺りまで伸ばした髪を縛った姿が特徴的な女性は私達を見た瞬間、目を見開きます。

 その女性――私の姉である高町美由希さんはかけた眼鏡を1度外して磨いて、再度付け直しました。

 それに対して、やはりシュテルは無表情のまま片手を上げ、

 

「どうもなのはです」

「あ。私もなのはだよ?」

「やっぱりどっちもなのはだー!?」

 

 お姉ちゃんも頭を抱えてその場に崩れ落ちました。

 私がまたも半目を向けるとシュテルは顔を逸らしました。

 そうしていると、

 

「おーい!そこに居るのは、なのはかー!?」

「あ、お父さん」

 

 今度はお兄ちゃんと良く似た雰囲気を持った男性――お父さんである高町士郎さんが闇夜から現れました。

 息を切らさずに駆け寄ってくるお父さんは私達を見た瞬間、目を見開きますが、

 

「良かった。無事だったかなのは……心配をかけて。そっちの子は、お友達か?」

 

 シュテルを軽く横目で見ると、迷わず私の両肩を掴んで来ました。

 シュテルはそんなお父さんの様子が予想外だったのか、僅かに眉根を寄せながら片手を上げて、

 

「私もなのはです」

「ん?……ふむ?姿も声も良く似てはいるが、俺は騙されないぞ。ははは」

「ふぎゅっ」

 

 ぐわしぐわしと豪快にシュテルの頭を撫でるお父さん。

 どうやらお父さんにはシュテルの戦法は通用しなかったようです。

 お父さんは一頻りシュテルの頭を撫でて満足したのか、表情を真剣なものにすると、

 

「さて、見つかったのは良いが……この子とその背中の子はどうした?」

「あ。えと、は、話せば長くなるんだけど……」

「ふむ……?」

 

 どこから話したものだろうか、と私が目を泳がせてしまいます。

 するとお父さんはそんな私の様子から察してくれたのか、両腕を組み、

 

「……何やら込入った事情がありそうだな……よし、詳しくは家で話そう」

「あ。う、うん」

「ほら、恭也、美由希、行くぞ。正気に戻れ」

「ハッ!?俺達は何を……!?」

「あ、あれ?なんかなのはが2人居た幻覚が見えて……ってやっぱりいるってあいたぁ――!?」

 

 ギャー!とお姉ちゃんが頭を抱えましたが、そんなお姉ちゃんの頭をお父さんがチョップで叩き、

 

「美由希、そっちはなのはの友達だ。全く、自分の妹を見間違えるとは……また修行のやり直しだな」

 

 ギャー!とお姉ちゃんが今度は違う意味で頭を抱えました。

 

「じゃ、帰るぞ、なのは。あぁ、お友達も家に帰るのなら恭也に送って行かせるよ?」

「あ、いや、出来ればそっちの子……シュテルも連れて行ってあげたいんだけど」

「む?」

 

 お父さんは私がおずおずと述べたお願いに首を傾げます。

 それはそうでしょう。

 いきなり断りもなしに夜外出した娘が見知らぬ男の子と女の子を連れて帰って来たらどんな親だって怪訝な顔をせざる得ません。

 かく言う私が未来の"私"から得た知識から現状を判断しても――あ、結構普通に受け入れそうですね。

 駄目です。未来の"私"は不測の事態に慣れ過ぎていて普通の基準にはなれそうにありません。

 閑話休題。

 兎にも角にもなんとか受け入れてくれないか、と私とシュテルを交互に見るお父さんの言葉を待ちます。

 暫くお父さんは考え込む様に、うぅむ、と唸ると、

 

「うん、そっちの子も何か関係があるんだな。よし、連れて来なさい」

「あ、ありがとうお父さん!」

 

 私は頭を下げて、お父さんにお礼を言います。

 その際、私の背中に盛大にユーノ君が頭をぶつけて変な声を漏らしました。

 ちょっと痛かったですけど、これくらいならご褒美ですよね。うん。

 

「シュテルも良かったね。一緒に来ていいって」

「……気持ち良かった……」

「はれ?シュテル?」

 

 振り返ってシュテルを見ると、何やら彼女は自分の頭を両手で撫でて何か呟いていました。

 無表情のままその場でその動作を続ける彼女に近づいて、耳を傾けてみます。

 すると、

 

「それに……あったかい、ですか……これが両親の温かみというものなのでしょうか……」

 

 彼女が小さな声でそんな言葉を漏らしているのが聞こえました

 私はその内容に、思わず呆然としてしまった後――すぐに笑みを浮かべながら彼女を肩で小突きました。

 

「ふぁっ!?」

 

 あ。可愛い驚き声だなぁ。

 そんな感想を抱きながら私はニヤニヤとして彼女に擦り寄ると、

 

「ふふ、シュテル。なんだか知らないけどシュテルってお父さんっ子?」

「ち、違います……クッ、不覚です。駄ナノハに隙を見せるとは……」

 

 彼女は私の肩を振り払いながら、心底悔しそうに目を伏せました。

 って、

 

「ま、また駄ナノハって言ったぁ!?」

「ふん。"アチラ"のナノハとは似ても似つかないあなたは駄ナノハで十分でしょう?」

「じゃあ、あなたは駄シュテルだよ!駄シュテル――!!!」

「誰が駄シュテルですか……!?」

 

 ムキーッと私とシュテルは互いのおでこをぶつけ合います。

 が、そのぶつかり合いは数秒も続きませんでした。

 数秒も経たない内に肩を引っ張られて、引き剥がされたのです。

 見ればシュテルの肩をお姉ちゃんが掴み、私の肩は、

 

「お、お兄ちゃん?」

 

 呆れ顔のお兄ちゃんが溜息を吐きながら掴んでいました。

 お兄ちゃんは呆れながらも肩越しに振り向いた私の目をしっかりと見据えて、

 

「なのは、あとで事情はしっかり聞かせて貰うからな」

「あ、う、うん……ひぎゅっ!?」

 

 いきなり頭部を押さえつけられる圧迫感。

 私の頭を覆って撫でるのは大きな手。お父さんの手でした。

 頭を押さえつけられ細められた視界の中、見れば、お父さんはとても清々しい笑顔で、

 

「じゃ、家に帰って事情を聞こうか……あぁ、勿論、説教もな?」

「あっちが本物のなのはです」

「ハッハッハ、お説教時間2倍だな?」

「ほんますいませんでした」

 

 私は即座に頭を下げました。

 頭が始点から終点まで移動するのに1秒もかからぬ高速のお辞儀でした。

 精神が身体能力の限界を突破した瞬間でした。

 あと、一家の大黒柱には敵わないなぁと再度認識し直した瞬間でもありました。

 

 

 

 ちなみにこの時、シュテルもお父さんに頭を撫でられて幸せそうにしていたのはまた別の話なのでした。

 




まずはここまで見てくださった方々に最大限の感謝を。

次回は文字数をガッツリ減らすと言ったな。あれは嘘だ。
いや、減らしたかったのですけど、キリが良いところまで進めるには
この文字数にせざるを得なかったのです……!
早く次の日に移らないと延々と動物病院から脱出出来そうにありませんでしたしね。

というわけで、今回は超展開祭りでした。
うーん、オリヴィエとクラウスが全く活躍出来てないなぁ。
出来るとしても次回の戦闘辺りからかな?
なのはさん祭り過ぎて今回は完全に主役を食われてますよね、これ……。

ともあれ、次回こそは主役を取れる様にオリヴィエさん@がんばります。
次の話はオリヴィエさんパートかなぁ。
ではでは、次回も頑張りますので、ご感想、ご指摘等いただければ幸いです。

それでは、また次回。
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