Harry And Warriors   作:魅珠

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第10話

 うっかりハグリッドが口を滑らせてから、ハリー達は図書室に毎日通い、ニコラ ス・フラメルが何者なのか調べているのをよく見掛ける。関係のありそうな書物を片っ端から読むものの、「ニコラス・フラメル」という単語すら出てこないようだ。

 錬金術士関係の本にあるにはあるが、教えてやれないことがちょっとばかし惜しい。 

 

 そういえば。

 ハリーはクリスマスはホグワーツで過ごすと決めているだろう。プリペッド通りのマグルの家に帰っても楽しいことなど何も無いし逆に辛い。何より学校にはロンも残るのだ。彼にとって絶対に楽しいクリスマス休暇となるだろう。

 

 休みが近いせいか殆どの生徒達は、休みをどう過ごすかそんな話題ばかりだ。

 

 大広間の飾り付けをフリットウィクと数人の監督生とでしてゆく。あらかた終わった頃、大広間の廊下が騒がしくなった。

 遠く離れた場所からでも耳に届く程の怒鳴り声が。セブか。

 

 やはりと、そちらへ視線を向ければ、立ち去るセブルスの後ろ姿があった。彼の後をついて行くドラコ達。そして大広間に入ってくるハリー達とクリスマスツリーを引きずるハグリットに話し掛けた。

 

「お疲れさま、ハグリット」

「おう!エステル。ツリーを持ってきたぞ!これの飾り付けも宜しく頼む」

 

「トゥリエル先生!」

「先生、ロンが減点されたんです。全く!不公平だわっ!!」

「あんまりだ!」

「待って、待って!何があったのか順番に」

 

 トロール事件以来ハリー達三人に懐かれたエステルは、嗜める。ハリー達は、我慢の限界だったのだろうセブルスへの愚痴を矢継ぎに吐き続けている。とりあえず、三人を落ち着かせて話を聞いた。

 

 ああ、セブルスが悪いと。あの人らしいやり方に苦笑いした。

 

 不公平だわ、と呟くハーマイオニー。

 自分の寮の生徒は怒らないで、他の寮を減点する理不尽さに。

 

 それにしても三人は、何処に行くところだったのだろうか。明日から休みなのに。

 ああ、図書室かと納得する。

 勉強道具や分厚い本を持っていたのが何よりの証拠だ。

 

 

 

「みんな調べ物でもしてるの?」

「はい、ニコラス・フラメルについて調べているんです」

「……」

 

 エステルは平然と。しかしハグリットは気まずそうに、二人は視線を合わせた。

 

「なぜ、フラメルなんか調べてどうするの?」

「ニコラス・フラメルとは誰なのかを知りたいだけなんです」

「お前さん達は!全く、はぁ……」

 

 ハグリットが溜息を吐いた。

 

 この三人が未だにニコラス・フラメルについて調べているとは。ここ最近は静かだったから、つい諦めたとばかり思っていたが、図書館で調べているみたいだ。

 

 言ってあげようかと決めた先、彼等は既に背を向けて大広間から出て行くところ。

 

 隣でハグリットがニコラス・フラメルのことを漏らしてしまったことに謝っているが、いや私に謝られてもと思う。

 

 明日からは冬休み。クリスマス休暇だ。セブルスに許可貰ったし、薬学の教室で幸運の液体製作を予定していた。

 

◇◇◇

 

 避けられている。誰に?クィリナスに。

 

 彼は『あの人』から聞いたと思う。クィディッチの呪いの一件以来、クィリナスはエステルに対し、よそよそしくなった。普段の挨拶はするが、避けられていると誰が見てもわかるくらいに。

 

「(まぁ、わざとだけどね)」

 

 朝食をとりに自室から出たところで、ホグワーツの周りが白銀の世界になっている気づく。

 

 同郷組のエステル以外、皆は自宅へ帰るらしく。マラドーナと叢雲は家族と過ごす予定を嬉々として語っていた。

 

◇◇◇

 

 次の日の朝、自室のベットの脇にはプレゼントの山が、できていた。

 

 色鮮やかにラッピングされた箱がいくつか。カラフルと宝物のようにキラキラと暖炉の炎に照らされて輝いていた。一つ一つ手に取り、丁寧に開けてゆく。

 

 マリウスからは金色の羽ペンとインクセット。一緒に「液体製作頑張れ」と書かれたメッセージカードが添えられ苦笑を漏らす。

 

 マイラからは、もこもこの手袋とマフラー。柔らかくとても暖かそう。休暇はこれをつけてホグズミートに買い物に行こうかな。

 

 ふと、銀のリボンとエメラルド色の包装紙に包まれた箱に目が行った。差出人不明のそれは、杖で調べても呪いの類は無く。誰からだろうと思いつつ警戒しながら何てことはない。

 

 深い緑色の生地のワンピース。お洒落に蝶の銀の刺繍が袖を一回り。

 

 ぱらりと落ちたカードを拾う。

 

──……Eu te amor    L・V──

 

 ただ一言、添えられていた。

 

「L・V……?」

 

 はたして、そのイニシャルを持つ知り合いなど、いただろうか。暫く悩み、結局わからず思考を破棄した。

 

◇◇◇

 

 残りのプレゼントは放置し、エステルは先に朝食を摂りに大広間へ向かった。

 

「「メリークリスマス! トゥリエル先生!」」

「メリクリ。フレッド、ジョージ」

 

 大広間に入ってすぐに双子がいた。叢雲と中の良い彼等とは叢雲を通して面識がある方だ。

 

 教員席には一際大きなツリーが陣取り、キラキラと輝き星の飾りの先端からは冷たくない雪が吹き出している。あれは私のオリジナルだ。

 

 長いテーブルは取っ払れ皆で一緒の席に座っているとは、新鮮味を感じる。

 ご馳走を沢山食べて、クラッカーを引いて楽しんでいるハリー達を眺めては微笑んでいたらしい。

 

「セブ、ワイン」

「うむ……」

 

 いつも不機嫌なセブルスも、今日はどこか笑っている気がするのは気のせいではないと思う。至近距離にいる私だけが知る所存だ。

 

 それから休暇が終わるまで、幸運の液体の調合のため地下の薬学教室に引きこもる。五階にある部屋に戻るのが面倒だからセブルスの部屋に泊めてといえば鉄拳が下された。ケチ。

 

 そして元気がないハリー。原因は、おそらく……みぞの鏡か。毎晩鏡の元へ出向いているんだろう。映ったその先に思いを寄せて。

 

 夜、エステルはハリーがいるだろう、みぞの鏡がある部屋を訪れた。まだハリーは来ていないようだ。

 エステルは鏡を覗いた。いけないと思いつつも好奇心には勝てず。

 

「(まさか、)」

 

 この世界で生を受ける前に過ごした、世界が映っていた。

 隣で微笑む彼がいた……。

 

「……っ!」

 

 守れなかった、彼の命。

 味方だった者の手によって流れゆく紅い波、最期の光景がフラッシュバックして…。

 

 自然と足は、鏡から遠ざかった。

 

「トゥリエル先生?」

「ハリー、」

 

 振り返ればハリーが透明マントを片手に持って立っていた。

 表情は悪戯がバレて気まずいような顔をしていた。

 

「ハリーには、何が映るの?」

 

 この鏡に。

 

「家族が映るんだ。ロンには見えなかったみたいだけど、きっと今も家族がいるからだ。僕には、僕のパパとママが見えるんだ。本当だよ!」

 

 必死に訴えるハリーにエステルは微笑んだ。

 

「そっか、私には親友が映ったよ……大分昔に死んでしまったけれど」

「やっぱりこれは死んだ家族や友達を見せてくれる鏡なんだ!」

 

泣きそうになった。

 

「僕も最初は戸惑ったけど、ここに来れば家族に会える。これは間違いないこと、現実なんだ」

「違うよ、ハリー」

 

 エステルの言葉に聞く耳持たずハリーは食い入るように鏡を覗いたまま。

 

「ハリー」

 

 ビクッと肩が跳ね上がったハリーは「僕、気がつきませんでした」と冷や汗をかいた。ハリーの横にアルバスが来て、みぞの鏡について説明を始める。

 心の一番奥底にある、一番強い『のぞみ』。

 

 エステルはもう一度鏡の中を見た。

 相変わらず微笑む彼が映っている。

 

「(後悔しろ、ということか……)」

 

 

 

 

 

「……さて、そのすばらしいマントを着てベッドに戻ってはいかがかな」

 

 アルバスの説得が終わり、ハリーが立ち上がり寮へと戻っていった。

 遠くからみぞ鏡のを見つめ、瞼を閉じた。

 

「エステル、ステキなクリスマスプレゼントをありがとう。厚手のウールの靴下は 、わしが一番欲しかった物じゃよ」

 

 アルバスはそう言って、優しくエステルの肩を抱きしめた。皺くちゃの手が頭を撫でて、押し止めていた涙が一筋こぼれ落ちた。

 

 彼は二度と戻ってはこない。

 彼との過去を、思い出を一番に縋っているなんて。わかってはいたが、こうも突き付けられたら辛いな。

 

◇◇◇ 

 

 新学期が始まる一日前には殆どの生徒が帰ってきた。エステルは帳簿を見ながら生徒たちが城に入って行くのを確認していた。

 

 生徒たちの話題はもっぱら休暇中の話題で盛り上がった。ハーマイオニーはホグワーツに入るなりハリーとロンが迎えいてた。彼らも休暇中の出来事を話した。

 

「どうせならニコラス・フラメルについて見つけられれば良かったのに……」

 

 そう言って悔しがるハーマイオニーにエステルは苦笑した。

 

 図書館ではフラメルは見つからないと殆ど諦めかけていたが、ハリーだけは食い下がっていた。

 新学期が始まると彼は再び本を漁るようになる。クィディッチの練習もあるのにとマロン含め感心していた。

 

 

 ある日、調べ物をするため図書館を訪れた。

 目当てのものが載っていそうな本の棚の周りを歩いていると……

 

「トゥリエル先生」

 

 声がした方へ顔を向ければ、ハリー達三人が相変わらずニコラス・フラメルについて調べていた。

 

「こんにちは、勉強熱心ね」

 

 そう言えば三人は、ぎこちなく笑った。

 

 突然、棚の奥から誰かの悲鳴が聞こえた。何事かと慌てて棚を廻れば、

 

「ロングボトム君!?」

 

 そこには両足がピッタリくっついたままのネビルが倒れていた。彼の正面では杖を持ったドラコとお付きの、二人が高笑いをしいたが、私を見た途端その顔はみるみるうちに青ざめてゆく。

 

「Mr.マルフォイこれはなんですか?」

 

 すぐに足縛りの呪いだとわかったが敢えて問う。

 教師の登場に少しだけ慌てたドラコが口をモゴモゴさせただけで言い出す気配はない。

 

「……スリザリン3点減点」

 

 エステルは表情は出さぬがカンカンだった。ドラコの行いは自己を中心に考えすぎている。杖を取り出し呪いを解く呪文を唱え、ネビルを自由にしてから彼らと向き合った。

 

「どんな理由があるにせよ一方的にけしかけるのは感心しませんね、Mr.マルフォイ」

「……」

 

 彼は私から目をそらすと、何も言わずにその場から立ち去った。追いかけるように後の二人も図書館から出て行った。

 

「(ふぅ……)」

「ネビル、大丈夫?」

 

 ハーマイオニーがネビルをロンの横に座らせた。

 

「マルフォイ……誰かに試してみたかったって…」

「マクゴナガル先生に報告しましょうよ! 悪質すぎるわ!」

「これ以上面倒になるのは嫌だ」

 

 憤るハーマイオニーに、ネビルが弱々しく呟いた。

 

「ネビル、あいつをのさばらせておくのか? 立ち向かわなきゃ」

「僕がグリフィンドールに相応しくないなんて、僕が一番感じてる」

 

 ロンの言葉にネビルは傷ついたように答えた。もう荒みきっていて、見ていると気の毒だ。どう声をかけていいか迷って顔を見合わせていると、ハリーが自分のポケットに入っていた蛙チョコの箱を差し出して慰めるように言う。

 

「きみは帽子に選ばれてグリフィンドールに来たんだ。マルフォイはどうだ? 腐れスリザリンじゃないか」

 

 ネビルは蛙チョコを開けながら弱々しく微笑んで立ち上がった。中に入っていたカードをハリーに渡した。

 

「ハリー、ありがとう。僕はもう寝るよ。カードはあげる。集めてたよね」

 

 ふらふらと男子寮に向かうネビルをマロンは心配しながら見送った。ハリーたちがニコラス・フラメルを見つけたと騒ぐのを聞きながら。

 

◆◆◆

 

「フラメルを見つけた! どっかで名前を見たことがあるって言ったよね。ホグワーツに来る汽車の中で見たんだ。聞いて……『ダンブルドア教授は特に、1945年、闇の魔法使い、グリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の12の利用法の発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名』」

「あっ!」

 

 ハーマイオニーは思わず声を上げ、飛び上がった。ちょっと待ってて、と彼女は脱兎のごとく女子寮への階段を駆け上がっていった。ロンとハリーが見交わす間もないうちに、巨大な古い本を抱えて矢のように戻ってきた。

 

「この本で探してみようなんて思いもしなかったわ」

 

 興奮しながら囁くハーマイオニー。

 

「ちょっと軽い読書をしようと思って、随分前に図書館から借り出していたの」

 

 軽い?と口走るロンに黙ってて、と言うなり、ハーマイオニーはものすごい勢いでページを捲り始めた。

 

「確か6章の最後のほうだったわ」

 

 記憶を頼りに、やっと探していたものを見つけた。

 ハーマイオニーは小さな声で本を読み上げた。

 

「ニコラス・フラメルは、我々の知る限り、賢者の石の創造に成功した唯一の者! 賢者の石。それはあらゆる金属をも黄金に変えて、飲めば不老不死になる『命の水』の源だ」

 

 しかし、ハリーとロンからはハーマイオニーが期待したような反応がなかった。

 

「何、それ?」

「まったく、もう。2人とも本を読まないの?ほら、ここ……読んでみて」

 

 ハーマイオニーは2人に本を押し付けた。そして2人が読み終わると口を開いた。

 

「ねっ? あの犬はフラメルの『賢者の石』を守ってるに違いないわ! フラメルがダンブルドアに保管してくれって頼んだのよ。だって、2人は友達だし、フラメルは誰かが狙っているのを知ってたのね。だからグリンゴッツから石を移して欲しかったんだわ!」

「金を作る石、決して死なないようにする石! スネイプが狙うのも無理ないよ。誰だって欲しいもの」

 

◆◆◆

 

「僕、試合に出るよ」

 

 翌朝、ハリーは2人にそう伝えた。

 

「出なかったらスリザリンの連中はスネイプが怖くて僕が試合に出なかったと思うだろう。目にものを見せてやる……僕たちが勝って、連中の顔から笑いを拭い去ってやる」

「グラウンドに落ちた貴方を、私たちが拭い去るようなハメにならなければね」

 

 ハーマイオニーが言った。

 しかしハリーの言葉はやはり強がりだったらしく、試合が近づくにつれて不安は募っていった。

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