Harry And Warriors   作:魅珠

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第2話

 九月一日キングズ・クロス駅、九と三/四番線ホームにて。

 

 一ヶ月振りに学校へ戻る生徒や新入生の家族で賑わっていた。

 

「マリウス、マイラ。体に気をつけるんだよ。月に一回は手紙を」

「これ車内で食べな!」

 

 そう言うのは、こちらの世界での両親。

 

 心配性な父、ユアンの台詞を遮った男勝りな母、アマリリス。

 

 二人とも魔法省で働いている。新薬研究所という所らしい。

 

 今日も仕事なのだが、本当は休みを貰った二人だったが母は根っからの働き者で、この後すぐに仕事に行ってしまう予定だ。

 

 マイラは、アマリリスからランチセットの入った袋を貰った。

 

「クリスマス休暇には帰るんだよ!」

「「うん」」

 

 俺達は頷けば、それに満足した母は、じゃあねと言って父を引きずるように去ってしまった。

 

 言い忘れたが、マイラと俺は二卵性の双子である。

 

◇◇◇

 

 列車は、ゆっくりと走り出し景色が建物から緑が変わる頃に、その人物はやってきた。

 

―ガラッ

 

「よぉ、一ヶ月振り」

 

 もう制服に着替えてるマラドーナに俺は早くないか?と思ったが、どこかその顔は、にこやか過ぎて気持ちわるい。

 

 てか、「よくここがわかったな」と言えば「勘がいいから」と、返ってきた。

 

「見よ!この監督生バッチ!!」

「わぁ、凄いね」

「調子に乗りすぎてエステルに減点されればいい」

「酷ッ」

「マラって、うっかりなところあるもんね」

「マイラまでッ!?」

 

 二人の容赦ないツッコミにマラドーナは打ちひしがれ、床にorzの状態で通行人を妨げていた。

 

 つーか、監督生とか面倒なだけだろ。

 

 三年後、校長から送られて来たら送り返してやろうと誓った。

 

 あっという間に復活した張り切っているマラドーナから視線を逸らし、流れる外の景色を眺める。

 

「くぁ」

 

 嗚呼、寝足りないな…

 

◆◆◆

 

 お昼の一時過ぎ、車内販売のおばちゃんが通り掛かった。

 

 去年は手持ちが無かったから諦めたけど、今年は父さんから少しだけお金を貰ったから買えると思うとワクワクした。

 

 ランチの後に食べよう。何がいいかな。

 

 百味ビーンズ、蛙チョコ、大鍋ケーキ。

 うーん、どれにしよう。全種類は買えないからな。

 まぁくんは眠たそうだし勝手に決めちゃっていいか。

 

「これと、これ下さい」

 

 蛙チョコを四箱とその他色々を購入。

 

「マーくん、起きて。お昼にしよ」

「んー」

 

 ランチの入った袋を手渡せば寝坊ながらも兄は、もそもそと食べはじめる。

 

「(寝ながら食事って、さすがマーくん)」

 

 不意にコンパートメントの扉を控えめに叩く音が聞こて、マイラは扉の方を見た。

 開けてやると、丸顔の男の子が泣きそうな顔をして立っていた。

 

「どうしたの?」

「…あの、ごめんなさい、僕のヒキガエルを見なかった?」

 

 ネクタイが黒いのを見て、どうやら新入生らしい。

 特急に乗り込んでから今までの記憶を思い返すが、蛙は見ていないと告げれば少年は泣きだした。

 

「な、泣かないで」

 

 うゎん、どうしよう!

 

「名前は?」

「へ? 僕の?」

「ヒキガエルの名前」

「と、トレバー」

 

 マリウスは鞄から杖を取り出すと呼び寄せの呪文を唱えた。

 

「アクシオ、トレバー」

 

 すると、どこからか黒い物体が飛んできて、それはマーくんの手に収まった。

 蛙を彼に渡すと、今まで泣き顔だったのがパァっと明るくなった。よかった。

 

 

◆◆◆

 

 ホグワーツ特急がホグスミード駅に到着した。

 

 叢雲は三年目を待っていた。三年生になってからようやっと行けるホグスミード村、悪戯専門店ゾンコ!

 そんなワクワクを押さえきれないのは仲間達も同じらしい。

 

 馬なし馬車に乗って、ガタガタ道を揺られながらフレッドとジョージ、リーと俺の四人で今後の悪戯について論議していると、あっという間にホグワーツ城に到着した。

 

 大広間に入ってグリフィンドールのテーブルの方へ歩いて行くと、何人もの懐かしい顔に再会した。

 

「やぁ、久しぶり。マリウス、マイラ。休暇はどうだった?」

「叢雲も相変わらずだな、俺たちは日本に旅行に行ったよ」

「お土産、後で渡すね」

「おう」

 

 

「やあやあ、叢雲」

 

 パーシー・ウィーズリーに声を掛けられた。

 制服には監督生バッジがキラリと輝いていた。どんだけ磨いたんだよ……と、思う。

 

「監督生おめでとうごさいます、先輩」

 

 マリウスは顔色を変えることなく社交辞令を述べる。うん、流石な猫かぶり。

 

「まぁ、当然のことさ。君達も何か困ったことがあったら僕に言ってくれよ。な」

「なんたって僕は監督生だからねぇ」

「、ッマラドーナ!!」

 

 パーシーの台詞を遮ったマラドーナは笑った。

 

「君が監督生とか、目を疑いたくなるよ」

「それほとでも~」

 

「「「(褒めてない……)」」」

 

 マリウスとマイラと叢雲の心の呟きが一致した瞬間だった。

 皮肉を込めて言ったパーシーだったが全く動じていないマラドーナであった。

 あ、パーシー悔しそう。

 

 

 

 

 

「諸君、そろそろ新入生が来る頃じゃ」

 

 ふと見れば、教授達はもう揃っていてその中にマロンの姿がある。手を振れば振り返してくれた。

 ダンブルドア校長の一声で、ざわついていた生徒達の声も段々と小さくなる。

 

 そういえばヒキガエルを探していた新入生は無事にペットを見つけられたのだろうか?と、すれ違った時に聞かれた事を思い出す。

 まぁ後で聞けばいいか。

 

 大広間の入口の方を見ると、扉が静かにゆっくりと開いた。

 マクゴナガル教授に続いて入場して来る新入生は、皆一様に緊張した面持ちだ。

 はて、自分の時はどうだったか。

 

 一年生全員が大広間に入り終わると自然に入り口の扉が閉まり、毎年恒例の組み分け帽子による歌が始まる。

 

 

 

私はきれいじゃないけれど

人は見掛けによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組分け帽子

私は彼らの上を行く

君の頭に隠れた物を

組分け帽子はお見通し

被れば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住う寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君は誠の友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

被ってご覧!恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手に委ね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!

 

 

 

 拍手の後、いよいよ新入生の組み分けになる。

 早速マクゴナガル教授に名前を呼ばれる。

 

「アボット・ハンナ」

 

 一番最初って勇気いるよな。アシュランス・叢雲、俺も一番だったのは余談だが。

 

「ハッフルパフ!」

 

 右側のテーブルから、歓声と拍手が上がる。

 

「ボーンズ・スーザン」

「ハッフルパフ!」

 

 次々と組み分けが行われる中、在校生たちは拍手を挟みながら静かに見守る。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー」

 

 ふわふわ髪の女の子、ハーマイオニーが緊張した顔で帽子を被る。少しの沈黙の後、

 

「グリフィンドール!」

 

 叫んだ帽子の声に、グリフィンドールのテーブルから大きな歓声が沸き起こる。

 ハーマイオニーは、ぱぁっと明るい笑顔を見せた。

 

「グリフィンドールへ、ようこそ!!」

 

 グリフィンドールのテーブルに駆け寄り、パーシーにそう声をかけられたハーマイオニーは、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ロングボトム・ネビル」

 

 あ、さっきのヒキガエルの子だ。

 椅子へ歩いて行く途中で見事に転んだネビルに、叢雲は無性に応援したくなった。

 

 椅子に座って組み分け帽子を被ったネビルは、誰が見ても気の毒なくらいに緊張している様子。大丈夫か、あの子。

 組み分け帽子は時間をかけて考えているようだ。1番長いんじゃないだろうか。

 

「グリフィンドール!」

 

 溜めに溜めたせいか、グリフィンドールの生徒の中に立ち上がるやつがちらほら。

 

 そんなネビルは、どこか嬉しそうな表情をしている。…あ、帽子を被ったままこっちに来ようとして、慌てて戻って次の子に渡した。

 

「マルフォイ・ドラコ」

 

 あ、フォイフォイの番か。某掲示板のアレを思い出す。

 

「スリザリン!」

 

 その後も順調に組み分けが進んでゆく。そして例の“生き残った男の子”の名前が呼ばれた。

 

 この物語の主人公。

 

「ポッター・ハリー!」

 

 大広間がざわつく。

 ヴォルデモートを撃ち破った英雄に祭りあげられた可哀相な少年に俺は見えた。

 ヴォルデモートの脅威というのが、いかに大きかったのが伺える。

 同級生や先輩の中にも親、親戚が犠牲になり殺されたやつも少なくはない。

 

「……グリフィンドール!」

 

 割れんばかりの拍手大喝采に俺は耳栓をしといて良かった、と思った。

 

 双子が「ポッターを取った!」と叫んでいる中、あまりの大歓迎ぶりに困惑したように歩いてきた。

 

「ウィーズリー・ロナルド」

 

 最後のほうまで残っていたウィーズリー家六男坊ロン。

 

「グリフィンドール!」

 

 パーシーと双子が、ホッとしたような表情をしたのを俺は見た。兄弟っていいね。

 賑やかになりそうだ。

 長かったは組み分けは終わり、食事が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

 これも毎年恒例ダンブルドア校長の祝辞。マロン除く転生者以外の出席者全員が拍手し歓声をあげた。

日本の学校の厳粛な入学式とは全く違い、こちらは随分賑やかだ。

 ……と、こちらレイブンクローのテーブルからの解説である。

 

 ふと、照明……違った。蝋燭の火が暗くなったかと思えば天井に浮かぶ文字。

 

―Welcome to the Hogwarts!!―

 

 花火の音と光が大広間中に降り注ぎ、生徒や教授達(一部除く)の大歓声が沸き起こった。

 

―我等、悪戯仕掛人 今年もよろしく!!―

 

 どうやら、この演出は彼等の仕業らしい。

 

「今年も、か…」

「宜しくない」

 

 顔を険しそうにして言うチルドに、ユーロは苦笑した。

 

◇◇◇

 

 食事やデザートも終わり、テーブルにあった料理が消える。

 

「全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。

新しく闇の魔術に対する防衛術を担当することになったクィリナス・クィレル先生

それからマグル学の担当はマロン・トゥリエル先生じゃ、拍手を」

 

 二人が立つと、拍手が沸き起こった。

 

「マグル学のカリキュラムが大幅に変更になったので選択している生徒は最初の授業で説明を受けるように。

ここからは注意点じゃが…特に一年生、校内にある森には入ったらいかん。これは上級生の何人かの生徒たちにも特に注意しておく。

管理人のフィルチさんから授業の合間に廊下で魔法を使わないように、という注意がありました。

今学期は二週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください。

…最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません」

 

 広間にいた、ごく少数の生徒がざわめき立つ。隣にいた監督生の先輩方が難しい顔をしている。

 

「おかしいね」

「ああ」

「どうして立入禁止なのか必ず理由を説明してくれるのに。森には危険な動物が沢山いるからわかるし、知っている。せめて監督生の僕らに訳を言ってくれてもよかったのに」

 

「…」

「…」

 

 俺とチルドは顔を合わせた。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

 ダンブルドアが声を張り上げた。

 

「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」

 

―――

 

 

ホグワーツ ホグワーツ

ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

教えて どうぞ 僕たちに

老いても ハゲても 青二才でも

頭にゃなんとか詰め込める

おもしろいものを詰め込める

今はからっぽ 空気詰め

死んだハエやら がらくた詰め

教えて 価値のあるものを

教えて 忘れてしまったものを

ベストをつくせば あとはお任せ

学べよ脳みそ 腐るまで

 

 

 みんなバラバラに歌い終え、とびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟が最後まで残った。

 ダンブルドアは二人が歌い終わった時、誰にも負けないぐらい大きな拍手をした。

 

「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ」

 

 感激の涙をぬぐいながらダンブルドアが言った。

 

(…すみません、僕には感動要素がわからない)

 

「さあ、諸君、就寝時間。かけ足!」

 

 食事の後の歌と駆け足って酷じゃないだろうか。

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