夢幻の闇夢-ナイトメア-   作:利用規約

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PHASE13 夢を忘れられる時間③

その日、いつもとは違う出来事があった。

「今日、先輩の家に行きます」

 突然そんなことを芽衣が言い出したのは、下校途中たまたま出くわした時だった。学校外で会うのも珍しいのに唐突にそんなことを言い出すものだから何かあるのかと勘ぐってしまうが、芽衣のことだ、どうせくだらないことっでも思いついただけだろう。

 

 学校からの帰り道。

 俺と芽衣は、一緒に下校していた。

 たまたま出会っただけなのだが、家に来ると強く主張されてしまったので断る理由もなく連れ帰ることになってしまった。

 普段から一緒に下校することなんてなかったし、家に来たことすら一度もない。本当に突拍子もない出来事だ。

 生憎、その理由はまもなく知ることとなったが。

「なんでさ?」

 一応言っておくが俺と芽衣は、いわゆる恋人という関係にはない。

 ただの同級生。学校というコミュニティのひとつの付き合い方で言うなら、友達といったところだ。

「なんででしょう?」

「いや、俺が聞いてるんだけど」

「なんでですか?」

「俺に質問するな」

「ふふん、理由なんていいじゃないですか。そこに家があるから行くのです!」

 大きく両手を広げ、高らかに言い放った。

 周りの目があるからやめてもらいたい。

「ダメカナ?」

 無垢な笑顔で、俺に訊ねてくる。

 まぁ、別に「ダメダヨ」という理由はない。正直、五月蝿いからあまり来て欲しくはないんだけど、芽衣といれば夢のこと少しでも忘れられそうだとは思えた。

「別にいいけど」

 仕方なくだ。言わされたようなもんである。

「やたっ。じゃあこのまま行きましょう」

 軽い足取りで、ずんずん歩いて行く芽衣。

 てか、俺より前行ってるけどもうちの家の場所なんて知らないだろ。

 ・・・・・・。

 しかし、何か引っかかるんだよな。

 芽衣の奴はうちに来る理由をはぐらかすし、ただ遊びに来たいだけという可能性もあるが・・・・・・、今までそんな話をした事もないしな。

 なにか企んでいるような気がしないでもない。

 たとえそうだったとしても芽衣が考えそうなことと言えば、程度の知れたイタズラが関の山だろう。――学校の屋上でなんどとなくその手のイタズラを仕掛けてきたことがあった。結局、いつも漫才のような落ちで終わるのだが。

 ――面白くもないのでその話はまたどこかで。

 まぁ、単純に理由なんてなくて、いつもの気まぐれみたいなものかも知れない。

「そう言えば俺、同級生の女の子を家に連れ込むのは初めてだな……」

 俺は芽衣に聞こえない声でつぶやいた。

 そう考えると俺は少し恥ずかしくなってきた。なんて言うか言い方がいかがわしいじゃないか!

「何してるんですか! 早く行きましょう、道が分からないじゃないですか」

「お前がさっさと行くのが悪いんだよ」

 やっぱり芽衣はあてもなく進んでいたらしい。

 うーん、気構える必要はなさそうだ。やっぱり妹とさして変わらない。なんというか子供っぽかった。

 

 途中、他愛ない会話をしながら帰った。

 一人の時よりも早く家に着いたような気がする。実際はまったく反対なのだが。

 閑静な住宅地の一角にある家。

 少なくとも築二十年は経つだろうが、その外観はまだまだ美しいいものだ。

「ほうっ、なかなか立派な家で」

「別に普通の家だと思うぞ」

「そんなーご謙遜を。私の家に比べたらふん転がしと赤とんぼですよ」

「さて、聞こう。その心は?」

「トイレ貸して下さい」

 俺は、手早く家の鍵を出して開ける。

 最初に玄関に入って靴を脱ぐ。

 来客用スリッパを、履きやすい向きに向けてセットする。

「さぁ行け! 入ってすぐ右の扉だ」

「おじゃましまーす」

 芽衣は、駆け足で靴を脱ぎスリッパを履く。

 そして玄関の自分の靴を整え始めた。

「律儀だな。漏るぞ」

「それ以上言ったら、セクハラですよ」

 そう言って芽衣はトイレの中へ消えていった。

 俺は玄関先で笑いを堪えるのに必死だった。

 

「ちなみに聞くが、俺の家に来たのはトイレのためか?」

「先輩、女の子になんてことを言うんですか! トイレはもちろん大事な要素のひとつですがそれ以上に大事なものだってあるんです!」

「あ、俺の部屋二階だから」

「聞いてませんね」

 芽衣を俺の部屋がある二階に連れて行く。

「付いて来いよ。よそ見するなよ」

「どこ行くんですか?」

「お前こそ人の話し聞いてねぇーじゃねーか! 俺の部屋だよ」

「え、いきなり連れ込みますか!?」

 芽衣が驚いた素振りを見せた。

「え、俺の部屋ダメだった?」

「ダメとかダメじゃない以前に、いきなり女の子を自分の部屋に連れて行くのはNGだと思いませんか! 変態ですか、ヤル気満々なんですか!」

 彼女が饒舌にダメ出しをする。

 てか、来たいって言ったの自分なのに、なんで俺は怒られているのだろうか。

「じゃ、じゃあリビング使う?」

 俺は、上りかけた階段を降りて一階のリビングに向かおうとする。

「いえ、別に先輩のお部屋で大丈夫ですよ」

 思わず俺はズッコケそうになった。

「そうなの?」

「はい。少しからかっただけですよ♪」

 

 はぁ、早く帰ってくれないかなぁ……。疲れる。

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