夢幻の闇夢-ナイトメア-   作:利用規約

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PHASE5 夢の中の正しい世界④

「えっ……?」

 俺は、彼女の言葉に上ずったような情けない声を漏らした。

 彼女の口ぶりがまるで俺を知っている様な口ぶりだったからだ。

 もちろん初対面だ。俺が覚えている限り会った記憶はない。

「取りあえず今は、ここを切り抜けるのが先ね」

 彼女は、俺に優しい微笑みを浮かべる。

 白髪の少女は、長い白髪を翻しツインテール少女の方を向く。

 ツインテールの少女も予想外の出来事に驚いていたが、だんだんとその表情には怒りが浮かんでいた。

「あんたも『参加者』よね? 何のつもり?」

「名乗るつもりはないわ。悪いけどここは引いてもらうわよ」

 その言葉を聞いたツインテールの少女は、ケラケラと笑い始める。

「アハハッ。ここで帰る? できるわけないよね。こんな美味しそうな獲物が転がってるんですもの」

 人の事をまるで動物か何かのように言いやがる。

 自分はハンターにでもなったつもりなのだろうか?

 いや事実か。こんな情けない姿で転がっているんだ言い訳も何もない。

「そう。残念ね。これは、貴方への忠告でもあったのだけれど」

 白髪の少女の凛とした佇まいは変わらず、相手を静観していた。

「へぇ。まるでその口ぶり私よりも劣ってないって言いたげね」

「少なくとも貴方よりは、強いと思うのだけれど」

 ツインテールの少女の表情は、明らかに歪んでいた。

「調子に乗るな! この糞女!!」

 激号した少女の身体から、再び黒い線が張り巡らされていく。

 その線は不規則に飛び廻り、家の壁、天井、床様々なところに当たっては線を打ち付けていく。

「危ない!」

 白髪の少女は、足元で転がっている俺を庇うように立つ。

「あはははっ!!」

 ツインテール少女の高笑いが響く。

 やがてその線は、我が家を囲むように張り巡らされていた。

 それを比喩するならまるでジャングルジムか、アスレチックにあるようなロープの階段といったようなものか。

「ここはそんなに広くなくて助かったわ。もうここは私の戦場。私のための舞台よ。正直、勝ち目はなくなったわね」

 手に持った短めのワイヤーからは、ゴツゴツとした鋭いフックがついていた。

 ツインテールの少女は、薄気味悪い笑みを浮かべながらそれを振り回す。

 白髪の少女は、すぐ近くの黒い線に触れる。

「これはワイヤーね。それが貴方の能力?」

「鉄線舞《ワイヤーアート》は、体中からフック付きワイヤーを打ち出し操る事が出来る力。威力は身を持って知ってるよね獲物くん」

 獲物くんとは言い得て妙だ。しかし、俺の腹を抉ったのはそいつだったのか……。

 そう思った瞬間、一瞬だが俺は意識が飛びかけていた。

 ハハッ……。どうやら痛みはなくとも失血すれば意識は飛ぶようだ。

 よく見ればあたりは血の海だった。そりゃ身体から血の気も失せるというものだ。

「すぐだからもうちょっと生きててね」

 冷静な目で一瞬俺を見た白髪の少女。

「そろそろ終わりにしましょうか」

「余裕ぶってんじゃないよ!!」

 黒いワイヤーが彼女めがけて飛んでくる。

 目の前の攻撃をいとも簡単にかわす。

 ワイヤーの放たれた軌道は、あまりにも直線的だった。

 攻撃が少々早くても、分かってさえいれば避けるのは容易なのかもしれない。

「余りにも直線的ね。これでは避けてくれと言っているようなものだわ」

 白髪の少女は、淡々と話す。

 しかし、ツインテールの少女はさっきまでと打って変わって冷静だった。

 不意に笑みを浮かべる。

 その笑みに俺は、ゾッとした。そして直感的に通り過ぎたワイヤーの行方を見る。

 まさか……。

 俺は、必死で声を絞り出す。

「おい……っ! 上だっ……!」

 震えるように絞りでた、俺の声は彼女に届いたのだろうか。

「大丈夫」

 白髪の少女は、優しく囁く。

「負けないから」

 次の瞬間、頭上から迫るワイヤーはバラバラになり降ってきた。

「なっ……!?」

 白髪の少女の手には、細身のサーベルが握られていた。

 

 ここに、彼女たちの戦いの火蓋は切って落された。

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