とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回は相変わらずぐだってしました

ちょっとオリジナルかもしれません

ではどうぞ


#6 能力(チカラ)とちから 後編

翌日

 

起きてすぐ顔を洗い適当に高校の制服に着替えた後、アラタは大介の待ち合わせの場所に向かう

ちなみにその待ち合わせの場所は、美琴に誘われた場所、セブンスミストである

 

ほどなくしてセブンスミストの入り口が見えてきた

その入り口にはすでに風間が立っており暇を持て余すように本を読んでいた

おまけに

 

「遅いぞお前」

 

「…なんでいんの?」

 

どういう訳かヒカリも風間に同行していたのである

あって早々敵意むき出しの彼女の頭を風間はこつんとド突きながら

 

「一緒に行くって聞かなくてな。仕方ないから連れてきた」

 

そう言ってちらりと風間はヒカリの方を見る

するとヒカリはちらりと風間の方を見やるとアラタを見てフンとそっぽを向いた

 

「…やれやれだな。留守番が嫌だったとか?」

 

「かもしれんな。…そら、お前の連れが来たみたいだぞ」

 

大介が指をさした方向に見知った顔が三人ほど

美琴、佐天、初春の三人である

黒子は予定があったのか、それともまだ何か調べたいことがあったのかその彼女だけはいなかった

 

初春はこちらを視認すると「アラタさーん」と言いながら手を振ってその数秒後

 

「!?」

 

彼女の表情がフリーズした

具体的には風間の姿を確認したときに、だが

 

初春だけにとどまらず、佐天、揚句に美琴まで驚愕の顔をしていた

 

「…あんたの言ってた友人って…」

 

「あぁ、風間大介。俺の同級生だ」

 

そう言った瞬間、初春と佐天がアラタに食い付いた

目をこれでもか、と言わんばかりに輝かせて

 

「あ! アラタさん大介さんと知り合いなんですか!?」

「普段は予約しないと入れない超高級なお店の美容院の!?」

 

「…お、おう」

 

その剣幕にちょっと引いてしまった自分がいる

…やはり普通は予約しないといけないんだろうか

 

「初めまして。俺は風間大介。〝バーバラKAZAMA〟を経営している。そして、こっちは―――」

 

「ヒカリです。大介さんのお手伝いやってますっ」

 

思いっきり猫をかぶって挨拶する風間家の居候、ヒカリ

実際ヒカリの見た目は普通に可愛い部類に入る

性格を除けばきっと将来は良いお嫁さんにでもなれると思う

 

ヒカリがそれぞれ挨拶を交わし、自己紹介が済んだ後いざ彼はセブンスミストへ入っていく

そんな彼らを眼鏡をかけた少年の視線が捉えていた

彼の視線の先には初春の右腕につけられている風紀委員の腕章

 

「―――」

 

セブンスミストに入っていく初春をただ眼を細めて睨んでいた

 

「…僕を救えなかった風紀委員は」

 

彼の手には子供向けのカエルの人形

それは探せばどこにでもありそうなごく普通な人形だった

彼はそれを握りしめ呟く

 

「―――要らない…!!」

 

◇◇◇

 

そんなわけでセブンスミストに入店

セブンスミストははっきり言ってしまえば服屋である

正直言えばアラタは服にはあんまり興味がない

しかしせっかく誘ってくれたのでどうせならなんかジャンパーでも買ってみようかな、と思う今日この頃

 

「ういはるー! ヒカリさーん! こっちこっちー!」

 

どういう訳か今日の佐天はテンションが高い

久しぶりに初春と一緒に買い物ができるからだろうか

そんな佐天を見ながら、美琴は初春に問いかける

 

「初春さんはどこか見たいとことかある?」

 

「うーん…特に決めてないんですけど…」

 

「ヒカリは?」

 

それに便乗し、風間もヒカリに問いかけた

問われたヒカリはうーん、と考える仕草をしたあと

 

「あたしも今のところないなー」

 

「うーいーはーるー! ちょっとちょっとー!」

 

いつの間にかぐんぐん先に進んでいる佐天が手を振りながら初春を呼ぶ

苦笑いをしながら初春は

 

「な、なんですかー!?」

 

そう言って初春は佐天の下へと走って行く

ちらりと佐天が入ったコーナーを見てみるとそこは女性ものの下着コーナー

これは流石に一緒にはいけない

女物の下着コーナーに男子二人って気まずすぎる

 

そんなわけで一度美琴とヒカリと別行動を取る

別行動と言っても付近の服売り場にとどまるだけなのだが

 

正直買うものがないと暇でしょうがないが、セブンスミストは洋服の種類が豊富で見ているだけでも時間を潰せるほどだ

 

しかし何が悲しくて男二人で洋服を見なくてはいけないのか

口に出すとたまらなく空しくなるのでお互いあえて口を閉ざす

というか誘ったのは自分か

 

「お、アラタに風間じゃん」

 

二人して洋服を見ていたらまた聞きなれた声

声の方向に振り向くとそこには我らが友人、上条当麻の姿が

 

「…当麻、なんでここに」

 

「一番無縁そうな奴がどうして…」

 

「それが出会い頭に級友に言う言葉ですか!?」

 

今までならこれくらいふざけるのは普通なのである

しかし今回は違った

 

「お兄ちゃ~ん」

 

そう呼ぶ幼女の声が耳に入ってこなければ

アラタと風間は二人してその声の方へと首を動かす

その視線の席にはサイドポニーの幼女が一人

 

一度彼女の存在を確認した後、ぎぎぎ、とロボットみたいに再び当麻へと視線を戻す

 

「…お前、いくら、出会いがないからとか言っておきながら…!」

 

「その…それは流石に、なんだ…まずいんじゃないか?」

 

「なんて考えしてやがりますかアンタたちはっー!!」

 

当麻の怒号が耳に入る

まあいきなりロリコンのような視線をされてかつそんな事を言われれば嫌にもなろう

しかしそう判断してしまいそうな状況だったという訳で

 

「俺はただ、この子が洋服店探してるから、ここまで案内してきただけだ!」

 

全力でロリコン疑惑を否定する当麻

まぁそんな気はしていたわけだが

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、あっち行きたい」

 

そんなことを話していると幼女、もとい少女が当麻の服の裾を引っ張り向こうを指した

 

「っと、わかった。…まぁそんなわけだから、…頼むから変な噂流さないでくれよ?」

 

「わかってるって。んじゃ、またな」

 

「おう、またな。アラタ、風間」

 

そして少女に手を引かれていく当麻の背を見送りながらアラタと風間はふぅ、と息を吐く

アラタが一言

 

「…あんな女の子にもフラグ立てるとはな」

「フラグかどうかはしらんが、まぁ当麻は誰にでも優しいし、人付き合いもいいからな」

 

故にとある高校には隠れ上条ファンがいたりする

しかしそれを言ってしまえばここにいるアラタや風間、ここにはいないツルギや天道にもそんな隠れファンがいるのだが、本人たちは気づいていない

 

 

先ほどの衣服コーナーに戻ってみると何やら美琴がとある寝巻の前でがっくりしていた

ちょうどその時戻ってきた初春、佐天、ヒカリに視線でどうしたのと問いかけてみるが彼女らも事情は分からないようだ

 

不思議に思ったアラタは皆を代表し

 

「…どした?」

 

と聞いてみた

 

すると美琴は少し疲れたような苦笑いを浮かべながら

 

「…なんでもない」

 

と返すのだった

 

◇◇◇

 

お昼ご飯はどうしようか、という話になったその時だ

初春の携帯がけたたましく鳴り響いたのは

 

「…初春さん、携帯鳴ってない?」

 

「え? …あ、本当だ」

 

ヒカリの指摘を受けて初春が携帯を取り出した

通話ボタンを押して耳に当てたその瞬間

 

<初春!! 虚空爆破(グラビトン)事件の続報ですの!!>

 

あまりの声量の大きさに一瞬怯んでしまったがその単語を初春は聞き逃さなかった

 

<学園都市の監視衛星が、重力子の加速を観測しましたの!>

 

「!? か、観測地は―――」

 

<今近くの警備員を急行させるよう手配していますの! 貴女は早くこちらへ戻りなさい!>

 

聞く暇もなく黒子は言葉をまくし立てる

時は一刻を争う

思わず初春にしては珍しく

 

「ですから! 観測地は!」

 

そう声を張り上げて問いかけた

その声を聞いた電話の向こうの黒子はその観測地の場所を答える

それは想像もできないような場所―――

 

<第七学区の洋服店、セブンスミストですの!!>

 

「セブンス、ミスト…」

 

確かにそれは危険だ

しかし逆にそれはチャンスである

ちょうど自分はいまセブンスミストにいる

迅速に避難誘導すれば怪我人はゼロにできるはずだ

 

「ちょうどいいです! 今、私そこにいますから、直ちに避難誘導を開始します!!」

 

そう告げて初春は携帯を切り、ゆっくりとこちらの方を向く

彼女の表情は先ほどまで見せていた遊びの表情は消えうせ、仕事の顔となっている

 

「落ち着いて聞いてください。犯人の次の目的が分かりました! この店です!」

 

「な、なんですって!?」

 

美琴がそう驚いた声を上げる

無論驚いたのは美琴だけではない

アラタも、ヒカリも、表情に出してこそいないものの風間も少しながら動揺している

 

「御坂さん、風間さん。すみませんが避難誘導を手伝ってくれませんか?」

 

「え、えぇ」「わかった」

 

「あ、あたしは―――」

 

「佐天さんは、ヒカリさんと避難を」

 

「―――うん」

 

当たり前といえ少し寂しくなってしまった

自分の親友ががんばっているのに、自分は何にもできない

そんな自分に、ちょっとだけ、嫌悪感…

 

「…初春も、気を付けてね」

 

短くそう言うと初春は少しだけ笑んで避難誘導に向けて走って行く

 

その背中を見送りながら、佐天はどこか複雑な表情を浮かべて―――

 

 

そのまま爆弾が仕掛けられたことを伝えるとパニックになりかねない

だから店内の人に事情を話し、電気系統のトラブルとしてお客を外に避難させることにした

 

つつがなく避難誘導も終わり、アラタは店内でほかに遅れた客がいないか歩き回って探す中

 

「アラタ!!」

 

出入り口の方から走ってきた美琴、当麻、風間の三人が焦った表情でこちらに向かっているのが見えた

 

「お前ら! なんで戻ってきた!」

 

「悪い、けど、あの子がいなくって…」

 

「…あの子?」

 

当麻が言うあの子とは、恐らくあの女の子の事だろう

もう避難したものと思っていたのだが、この様子からすると、まさか―――

 

「いないのか!?」

 

「そうみたい、アラタ、探すの手伝って!」

 

「わかった! 俺はこの事をいったん初春に伝えてくる! 探すのはその後でいいか?」

 

「あぁ、構わない」

 

風間に後押しされアラタは初春の下へと走り出す

一度初春の下に行く、と言ったのは理由がある

それは先日フィリップから聞かせられた、とある情報によるものだ

 

「…もし本当に狙いが風紀委員なら…!」

 

自分も確かに風紀委員だ

しかし、狙いやすさで言えば

真っ先に狙われるのは―――

 

「間に合ってくれ…初春!」

 

 

「…」

 

初春は周囲を見渡しほかに人がいないか確認する

どうやらこの周辺に爆弾らしきものは見当たらない

とりあえず、当面の危機は去った、と思っていいだろう

 

「初春!」

 

そう自分を呼ぶ声に初春は視線を向ける

そこには自分に向かって走ってくるアラタの姿が見えた

彼の姿を確認して少しだけ安堵している自分がいる

それに少し気恥ずかしさを感じながら自分の下へと近寄ってくるアラタに報告をする

 

「アラタさん、避難誘導が終わりました」

 

「あ、あぁ…そのことはお疲れさん…じゃなくて、まだ一人、女の子が残ってるんだ。…疲れてるとこ悪いけど、一緒に探してくれないか?」

 

「えぇ!? ホントですかそれ!」

 

「残念ながらマジだ。だから―――」

 

「お兄ちゃーん!」

 

そんな会話を交わしていると、件の女の子がこちらに向かってとてとてと走ってきていた

両腕にカエルの人形を持ちながら

当然初春もアラタもその女の子の安否が確認できただけで安堵していたがアラタはそれに違和感を覚えた

 

…あの子、あんな人形をどこで貰ってきていたのか

それ以前にここは洋服店のはず

子供向けのコーナーがあったとして、あんなのはなかったし、それ以前にあったとしても購入などできない

つまり―――

 

「眼鏡をかけたお兄ちゃんがこれを渡してって」

 

女の子が差し出したそのカエルの人形を初春が受け取ろうとして

その人形が不意に歪んだ

 

「!!」

 

刹那で判断した初春はその爆弾を自分たちの後方へと投げ飛ばしその女の子を守るべく自分の身体で包みこんだ

 

ここに今、自分と初春しかいない

当麻がいれば彼の右手でどうにかなったろうがそんなことも言っていられない

ならばとるべき行動は一つ

 

幸いにも初春はこちらを見てはいない

これなら気兼ねなく変身できる

 

アラタは腰に手をかざす

すると彼の腰に身体の内側から浮き出るようにベルトが顕現した

そして右手を左斜めへと突き出し、左手をベルトの右側近辺にと手を動かし、その両手を開くように移動させる

 

「…変身!」

 

そして右手を左手の方へと動かし、ベルトのサイドスイッチを左手の甲で軽く押した

 

 

外からでも分かるくらいにその爆発は大きかった

周りの人々がざわつく中、介旅初矢は一人ガッツポーズをしながらその場をゆっくりと離れた

 

徐々に人混みが少なくなっていくなか、介旅は心の中でほくそ笑む

 

(いいぞ…すごい、素晴らしいッ…!!)

 

少しずつではあるが確実に自分はより強大な力が使いこなせるようになっている

疑心暗鬼で使用したが、どうやら大成功のようだ

 

「…くっくくくく…くはははは…!」

 

堪え切れなくなって介旅は人気の少ない路地裏に入りながら笑いを吹き出した

もうすぐだ…あと少し数をこなせば…!!

 

「無能な風紀委員も、あの不良共も…!! みんな纏めて―――ぎゃ!?」

 

唐突に背中を思いっきり蹴り飛ばされた

介旅はみっともなくその辺にぶちまけられていた空き缶や空のペットボトルの中へと突っ込んだ

訳が分からない、と言った様子の介旅は地面に両手をついて身体を起こす

 

「よぉ爆弾魔。…分かるよねぇ…俺が言いたいことは」

 

目の前には男がいた

自分と同じくらいの背丈に、乱雑に切りそろえられた前髪

腕には風紀委員の腕章があった

 

「な、何の事だか。僕にはさっぱり―――」

 

「けど残念だったなぁ。あの爆発、確かに結構な威力だったけど…死傷者ゼロの、怪我人ゼロ。…つまり被害者なしだ」

 

「な…!! そんなバカな!! 僕の最大出力だぞ!! …はっ…」

 

自分で言って失敗した、と介旅は直感する

それでは自白するようなものではないか

 

「…ほぉ?」

 

案の定男の目が鋭く光った

大丈夫だ、急いでこの男を始末すれば―――

 

「い、いやぁ…外から見てもすごい爆発だったんで…」

 

介旅はちらりと自分の近くにぶちまけられたアルミのスプーンが入ったバッグを見やる

開けられたバッグの中から一本だけスプーンの柄が飛び出していた

 

「中の人は―――」

 

言いながら介旅はそのスプーンの柄を掴みとり

 

「無事じゃないんじゃないかってさぁ!!」

 

そのスプーンをその男に向かって投げつけた

こうも至近距離だと自分にも被害が及んでしまう

それを危惧してか爆発の威力は弱めにしなければ―――

 

そう思いながらスプーンは歪んでいき、男の近くで爆発する

 

ドォォォォン! と大きな爆音が鳴り響き、やった、と介旅は確信する

 

しかし

 

「…」

 

その煙の中から出てきたのは男ではなかった

そうだ、自分は知っている

たまに見た都市伝説のサイトでよく見かける

 

「…仮面、ライダー…!」

 

呟くと同時、介旅はまた蹴っ飛ばされた

ごふ、と肺から息を吐き出しみっともなく後ろに転がった

 

「ふ・・・ふふふ…! まさか都市伝説のヒーロー様とはね…」

 

憎々しげに介旅は呟く

その言葉に憎悪と苛立ちを募らせながら

 

「いっつもこうだ。何をやっても、力で地面に、捻じ伏せられる…!!」

 

その言葉を聞いてか聞いていないのか、二本角の赤いライダー、クウガはゆっくりと歩いてくる

その道中、その姿が人間の姿へと戻っていく

それはさっきと同じ男だった

 

「…殺してやる…!! お前みたいなのが悪いんだよ!! 風紀委員(ジャッジメント)だって同じだ!! 力のあるヤツは、皆そうだろうがぁっ!!」

 

「じゃあ聞くが、お前はその状況を打破するために、努力したことはあったかよ」

 

「努力、だと…!」

 

コツコツと男は近づいてくる

そして自分の胸ぐらをつかみあげ

 

「お前はただ、力のせいにしてただ現実から逃げてるだけだろうが!! 子供みたいに駄々こねて! そんなんで今が変わるわけないだろうが!!」

 

「…!!」

 

男の剣幕に介旅はヒッ、と声がうわずってしまう

睨みつけるその眼力に、まるでナイフで突き刺されてような錯覚さえ覚えるほど

 

「まだ幼い子供まで巻き込みやがって…!! 力、力ってほざく前に、ちったぁ努力しやがれ!! このクソヤロウがぁ!!」

 

バキリ、とその狭い路地裏に鈍い音が響いた

介旅は茫然とした表情でその場に座り込み、アラタはそんな彼を一瞥すると、踵を返し歩き去っていく

 

後ろを振り返る事は、なかった

 

◇◇◇

 

アラタからの電話を受けてその路地裏に黒子が急行するとそこには戦意を失い佇んでいる犯人と思しき男が座り込んでいた

 

どういう経緯があって彼がこんな状況になったのかは気になったが黒子はそれは些細なことだと切り捨てた

 

男を連行したあと、黒子は爆発現場へと戻ってきた

ちなみに初春たちは無傷だったらしくその報告を聞いたときは心から安堵した

そしてその現場を改めて見直す

 

その焼跡は妙で、初春たちのいた場所のみが無傷という変な跡だった

 

「…初春はお兄様が守ってくれたといっていますが…お兄様ってそう言った能力ありましたっけ…?」

 

◇◇◇

 

夕刻の帰り道

アラタは一人、学生寮への帰路についていた

 

ちらり、とアラタは先ほど爆弾魔を殴り付けた右手を見やる

少しだけ赤く腫れタその右手を夕日が照らす

 

「アラタ」

 

声が聞こえた

後ろを振り向くと美琴がこちらに走ってきていた

 

「爆弾魔、貴方が捕まえたんだってね。黒子が言ってたわよ」

「まぁ実際に捕まえたのは黒子だけど。俺は動きを止めただけだ」

 

そっけなく答えるアラタに美琴はちょっと違和感を覚えた

その違和感で思い出したことを直接美琴は聞いてみることにした

 

「…ねぇ。一個聞いていい?」

 

「ん? なんだ?」

 

初めて聞いたときはおぉ、と思ったが冷静に考えるとアラタは無能力者(レベル0)って本人が言っていたのを美琴は聞いていたではないか

何かテーブルのようなものを盾に使ったのなら問題はないかもしれないが付近にそんなものはなく、仮にあったとしてもあの爆発を防ぐことはできないだろう

じゃあどうやってアラタは初春とその女の子を守れたのだろうか

 

「…アラタって、無能力者、だよね?」

 

確認するように美琴は声を絞り出す

聞かれたアラタ本人は普通に「あぁ」と頷いた

 

「…じゃあ、どうやって初春さんと女の子を守ったの? …あの爆風、とても防げるなんて思えない」

 

それを聞かれたとき、アラタはどんな表情をしていただろうか

間髪入れず美琴は言葉を続ける

 

「あんた、もしかしたら何か隠してんじゃないの? 事件の有無に関わらず、結構眠たそうだし、たまに怪我してるし…私たちの知らないところで―――」

 

「美琴」

 

低く、それでいて普段のアラタが決して出すことはない声色に一瞬ビクッと身体が震えた

アラタは美琴に視線を合わせ、静かに言う

 

「…いつか話す。…だから、今は何も聞かないでくれ」

 

どこか儚げで、そして切なさが垣間見えるその横顔に、美琴はそれ以上何も聞けなかった

そして直感で美琴は悟る

 

―――あぁ、こいつはまた一人で背負ってるんだな

 

力になってやれるかはわからない

それでももう彼は友達なのだ

アイツは無駄に明るく振る舞うから普通にしていては彼の悩みはわからないだろう

けどせめて、自分だけはわかってあげれたらな、と思わずにはいられなかった

 

…けれどこんなことを今考えてもしかたない

 

「ねぇ、アラタ」

 

「ん?」

 

「ゲーセンいかない? 息抜きと、変な事聞いたお詫びも兼ねて」

 

「え、別にいいけど、お前門限は―――」

 

「いざとなったら黒子呼ぶわ! ほら、行くわよ!」

 

困惑するアラタの手を引いて美琴は足早に駆け抜ける

ただ引っ張られるアラタは前を行く美琴を軽く苦笑いをしながらついていく

 

底抜けに明るい彼女の気遣いに心から感謝しながら―――

 

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