とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
しかしあくまでもメインは超電磁砲ですので本当にたまにしか書かないかもです
<本当に、ごめんなさいっ!!>
電話の声が申し訳なさそうにそう言った
行く場所のほとんどは外れだったし今日はもう帰ろうか、と神那賀と話していたとき、アラタの携帯が震えだした
基本的にマナーモードにしているので結構気づきにくいのだが今回は割とそれがしっかりと感じ取れる
ディスプレイに表示された〝公衆電話〟の文字
誰だろうと思って耳に当てるとそれは佐天だった
一体なんだろう、と思い聞いて見るととんでもない事を彼女は言ってのけたのだ
〝私…
最初こそ言っている意味が分からなかったが話を聞いていくうちにアラタは現状を理解する
何気なくネットサーフィンをしていた偶然見つけてしまったこと
自分たちは何気なく言った保護する、と言う言葉を聞いて怖くて言い出せなかったこと
この事を言い出すのはかなりの勇気を振り絞ったであろうか
それでも打ち明けてくれたことに深く感謝する
「いいよ。ちゃんと言ってくれたしさ…あ、けど後で反省文くらいは書いてくれよ」
<…ありがとうございます。ほんとに、ごめんなさい>
さらに電話の向こうで謝る佐天
「…とにかく今日はもう家に帰れ。公衆電話からかけてんだろ? あと、美琴たちには黙っておくから」
<え、でも…>
「…このまま黙ったまんまだったら多分軽蔑してた。…けどお前は話してくれたじゃんか。それがどれだけ勇気のある行動かオレは知ってる」
<…アラタさん…>
「んじゃあ。また明日、な」
<…はい!>
最後に元気のいい佐天の返事にアラタは安心し、携帯を切る
そんな彼の近くにいた神那賀はアラタが携帯を閉じたのを確認したのを見ると
「終わったの?」
「あぁ、神那賀も今日はご苦労様。…結局全部無駄足だったがな」
あの後神那賀の協力も借り、リストにある所を虱潰しに当たっては見たのだがどれも不発
とどのつまり徒労に終わってしまったのだ
「今日はもう神那賀も帰って休め。なんだかんだで疲れたろう」
「そうね。…そうさせてもらうわ」
そう言うとうーん、と背を伸ばすと小さく欠伸をする
そして神那賀は踵を返して
「じゃあねアラタさん…また明日ー」
そんな言葉を言いながら神那賀は手を振って歩いて行った
その背中を見送りながらアラタも携帯で時間を確認する
時刻は夕刻、ちょうどいい時間帯だ
「…俺も帰るか」
誰にでもなく呟いてアラタも真っ直ぐに帰路につく
そんな帰り道、視界の先に見知った人物の背中が入ってきた
あの特徴的なツンツン頭はまさしく―――
「当麻」
「ん? …おー、アラタじゃんか」
カバンをぶらりと下げてこちらを見る友人、上条当麻
その表情にはどことなく疲れが見える
「今日は補習か?」
「おうともよ。…全く、今日は本当に不幸だぜ。小萌先生の補習はあるは、変なシスターが干されるわで…」
…え? どんな状況それは
ていうかシスターってなんだよ
思わずそんな疑問を聞いて見ると
「あ、いや。その…今日の朝そんな不思議体験みたいなのがあったわけでして」
「へぇ…。まぁいいや。とにかく帰ろうぜ、たまにはお前んちでゲームとかするか」
「お、いいね。受けて立つぜ」
そんな今どきの高校生の会話をしながら二人は歩を進める
その先に、何が待っているのかを知らずに
◇◇◇
そんなこんなで学生寮にご到着
「…ん?」
変化に気づいたのは上条当麻だった
釣られてアラタも当麻の視線の先を見る
そこは当麻の部屋の前…もっと言えばその部屋の扉の前
アラタが見た光景は今まで見た事のないみょうちくりんな光景だった
白いドラム缶型の清掃ロボットが当麻の部屋の前でうぃーんうぃーんと屯している
なんだこりゃ
それがアラタが思った素直な感想である
しかし隣の当麻は「……あー」と小さく呟いたのちまた小さく笑みを作った
「…なんだ、知り合いでも倒れてるとか?」
「あ、まぁ…そんなもんだよ。ほら、今日の朝の不思議体験の主役さ」
まるで意味が分からんぞ
とはいえ当麻の知人ならそれはアラタにとっても友人だ
先に当麻がその清掃ロボットに歩み寄るとき、鼻に妙な匂いが届いた
微かだからわかりにくいが、鉄の匂い―――
「―――え?」
故に最初に聞いたのはそんな当麻の戸惑いの声
気になってアラタもそれに駆け寄ってロボットをどかしそして―――
「…うわ、サスペンスか」
思わずそんな感想を口にしてしまった
それは純白な足首にまで届くワンピースみたいな服、すらりと長い銀の髪
服装からしてこれは多分本物のシスターなのだろう
しかし状況はそんな生易しいものでなく、深刻だった
血だまりに倒れた彼女は腰に近いあたりが鋭利な刃物で斬られている
それは一目見ただけで殺人未遂ものである
幸いにも彼女にはまだ息があった
―――本当に微かだが
「っくそっ!!」
それは上条当麻の叫び
当麻とこの子に何があるかはわからない
しかし理由が分からないが当麻は自分に責任を感じているのかもしれない
「なんだ! ふざけやがって! 誰に…誰にやられたんだお前っ!!」
「―――うん? 僕たち、魔術師だけど」
唐突に背後からかかる男の声
ゆっくりと二人が振り返るとエレベーターの隣の非常階段からその姿は現れていた
それは二メートル近い白人男性
しかし当麻やアラタよりは少し幼く見える
しかしその風貌は異様の一言
両手にはメリケンかと錯覚するほどの指輪をつけ、口には煙草を咥えて
おまけに右目の下にはバーコードのようなタトゥーまである
「…これまた派手にやってくれたね。神裂が斬ったって話は聞いていたんだが。まぁ血の跡はなかったから安心してはいたのだけど」
その台詞から察するに彼女はどこかで斬られて、命からがらここに逃げてきたのだろう
「…そうか…!」
脇にいる当麻が小さく呟いた
当麻は彼女がここに逃げてきたことに心当たりがあったのだろう
「…くっそ! 馬鹿野郎がっ!!」
それは当麻には似つかわしくない叫びだった
普段温厚で割と面倒くさがりな当麻が怒りを露わにしてるのだ
怒る当麻を余所にアラタがバーコード神父に向かって口を聞く
「…そっちの狙いはこの子かよ?」
「ごもっとも。それは僕たちの回収対象さ」
「…回収だぁ?」
「ああ。この国では、禁書目録っていうのかな。まぁ詳しく説明したって無駄だろうし? 簡潔に言うなれば十万三千冊の〝
「十万三千冊、だと…!? ふざけんな!んなもんどこにあるってんだよ!!」
ただ一人状況が呑み込めていない上条当麻が叫ぶ
確かに彼女の周りにはそのような本など一冊もないし、持っているような素振りも見せていなかった
第一そんなもの隠せるわけがないじゃないか
十万三千冊だなんて。それは図書館一つ分じゃないか
そんな当麻に応えるかのように、アラタが口を開いた
「頭ん中か。完全記憶能力って奴」
神父の眼が細くなる
「…へぇ、よく知っているね。そっちの男は何もわかっていないようだけど、君はあるのかな? 魔術の心得が」
「どうだか。ご想像にお任せするよ。…で、お前は何をしに来たわけ?」
訳が分からないといわんばかりの当麻を置いてけぼりにしつつ、アラタは会話を進める
…正直に言えば、当麻を巻き込みたくはないのだ
もう、遅いかもしれないが
「保護だよ。保護」
「…ほ、ご」
譫言のように当麻が呟く
頭で
この赤で染められた光景を前に目の前の神父は何を言った?
「あぁそうさ保護だよ保護。ソレにいくら良心とかがあったって薬物とかには耐えられない。拷問なんてもってのほかだ。そんな連中に預けるなんて心が痛むだろう?」
瞬間
「ざっけんな!! 何様だ!!」
「おい、当―――」
アラタの制止を聞かず、突発的に当麻は神父に向かって拳を握って駆け出した
対して神父は至極、冷静
「ステイル=マグヌスと名乗りたいところだけど、ここはFortis931と名乗っておこうかな?」
その時アラタのこめかみがピクリと動く
燈子から聞いたことがある、魔術師というものは名前とは別に、魔法名というものを持っているらしい
それは己の覚悟を現すと同時に、魔術をフルに使用するためには必要な事とかなんとか
そんな思考に埋没している内に当麻は着実に距離を詰めていく
「聞きなれないよね魔法名なんて。僕たち魔術師はなんでも魔術使用するときには真名を名乗ってはいけないそうだ。まぁ古い因果らしくて僕は理解できないんだけど」
あと三メートル
当麻の拳はあと数歩で届く位置
「重要なのはこの名乗りを上げたことでね? 魔術を使う魔法名、よりもむしろこれは、〝殺し名〟、かな」
当麻の拳が届く前に神父は咥えていた煙草を指に取りそれを水平に指ではじく
弾かれたタバコは手すりを越えて隣のビルに壁に当たり、火の粉を散らした
「炎よ」
呟いたその刹那、その火の粉を基点に炎の剣が顕現した
それをステイルと名乗った男は思わず立ち止まった当麻に炎の剣を叩きつける
炎剣は触れた瞬間に爆発し、辺りを熱波と閃光、爆炎と黒い煙に包みこんだ
「やりすぎたかな」
「おーおー。まさしくこりゃやりすぎだよ」
煙の向こうにいるもう一人の少年が応える
そう言えば彼は先ほどの少年のように突っ込んでは来なかったため炎剣の射程に入っていなかった
…しかしなんでこの男は冷静なのだろうか、とステイルは考える
目の前で友人が肉塊にされたのになぜこの男はここまで冷静なのか
「…ずいぶん余裕だね? 目の前で友達一人消し飛んだんだよ?」
「あ? 余裕じゃねぇよ。煙吸いこまないように必死だよ」
帰ってくるのはそんな下らない事ばかり
訝しむステイルの耳にその男が告げる
「―――つうかさ」
「うん?」
「あの程度で俺の親友を殺したと思っているのなら大間違いだぜ」
は? とステイルが言葉を返す前にそれは起きた
突如としてあたりに巻き散らしていた黒煙と火炎を吹き飛ばす竜巻のように殺したはずの少年が立っていた
全くの無傷で
「…ったく。そうだよなぁ、なにビビってんだよ。インデックスの〝歩く協会〟を破壊したのも、この右腕だったじゃねぇか」
彼はおそらく魔術なんてものを理解していないし、理解する気もない
だがしかし、たった一つの真実がある
それは所詮、異能の力だということ
「な―――!?」
ステイルは目の前の現象に混乱しながらもまた炎剣をぶつけるが、それもまた煙のように消されていく
まさか魔術か、と思案するがこんなクリスマスをデートの日と勘違いしてるとぼけた国にそんな魔術師いるわけない
それ以前にこの男からは魔力を感じることは出来ないのだ
「…ちっ、ならば!」
ステイルは舌を打ちながら懐に手を突っ込んだ
そして勢いよくその手を表に取り出す
その手には三枚の色のついたメダルだった
当麻がそれに警戒し、構えていると
「…斎堵みたいには出来ないが、せめて顕現させるくらいなら―――」
そう言ってステイルはその三枚のメダルを思い切り握りしめる
するとそれは三色のメダルは一枚のメダルへと変化し、ステイルは地面に叩きつけた
瞬間まばゆい光と共に変な歌のようなものが耳に聞こえてくる
<タカ! トラ! バッタ!>
<タトバ! タトバ タトバ!>
光が消えた当麻の視線の先にいたのは三色のへんな人型の何か、だった
しかしその風貌は彼が知っている都市伝説に似ている
「なっ!? 仮面ライダーだって!? なんでお前がそんなもんもってやがる!!」
「カメンライダー? なんの事だい。これは僕の友人が使用するメダルを媒介に魔力を注入して顕現させた
そう笑みを作りながら話すステイルはまた余裕を取り戻していた
その証拠にゆっくりと煙草に火をつけ、再び咥えていたのだ
「…」
流石にあれには当麻の拳は聞かない
徒手空拳をベースにする当麻にとってライダーなんてのは相性は最悪
そう判断したアラタは歩を進めだし、当麻の前に立つ
「…アラタ?」
「いや、ホントはバラす気なんかなかったんだけどさ。状況が状況だからさ」
「…は?」
当麻の言葉を無視し、アラタはオーズの前に出る
視界に入ったオーズには覇気がない
恐らくこのオーズとやらはステイルの意のままに動く戦闘マシンなのだろう
なら、俺が負ける道理はない
アラタはいつものように両手をかざす
かざした場所からにじみ出るように現れるベルト
「!? そのベルトは!!」
ステイルの声を無視しながらアラタはポーズを取る
そして自分を変えるその声を上げる
「変身!」
叫ぶと同時、ベルトのサイドスイッチを左手の甲で押す
キュイン、とそのような音がしたその次には身体に変化が現れる
赤い鎧に、紅蓮の複眼、そして黄金の二本角
その変化に当麻は驚きのまま口を開け、ステイルはまたもや混乱で思考が追いつかない
(馬鹿な…!! あれははるか古代に消えたハズだ! それがなぜ今…!)
そう考えるステイルを無視し、クウガは一気にオーズに向かって走り出した
「! 迎撃しろ、タトバコンボ!」
ステイルの一言を皮切りに三色のオーズ、タトバコンボが構えて迎撃態勢を取る
幸いにもここは学生寮という地の利を知っている
ここを十分に生かせばはっきり言ってこのオーズとやらは余裕だろう
相手に変身者がいれば別だが
まずクウガは走る勢いを利用し壁を走った
勢いがつけば案外いけるもので内心びっくりしてる自分がいる
そんなクウガを叩き落とそうとタトバコンボが拳を握りクウガ目掛けてその一撃を繰り出した
しかし馬鹿正直にその一撃を貰うクウガではない
貰う直前にその壁を蹴り、金属の手すりに飛び乗った
そしてその手すりに乗ったままクウガはタトバコンボの顔面に蹴りを叩きこんだ
その蹴りを受けて怯んだすきにクウガは手すりから降りてタトバコンボの首を掴む
瞬間叫んだ
「当麻!!」
クウガの声に反応した当麻はハッとする
道は一本道
道を封鎖していた変な奴はクウガ…というかアラタが押さえている
動くなら今だ
「おう!」
短くそう返答して一直線にステイルへと直進する
拳を握り、溜めた力を殴り付けるように駆ける
「! しま―――」
ステイルが反応するより早く、当麻の拳が彼の顔を捉えた
直撃ではあったが意識を奪うことは出来なかったが、こういったことには慣れてはいないのか、大きく仰け反った
その拍子に彼の懐からばさばさとなぜかコピー用紙が落ちてきた
そのコピー用紙にはインクで妙な字が書いてあり、それが何を意味するか当麻にはわからなかったが
「…へぇ、あんたルーン魔術の使い手か」
いつの間にかタトバコンボを倒していたクウガがステイルに向かって三枚のメダルを投げながらそう呟く
「けどコピー用紙にインクって馬鹿か。かっこ悪いし非効率的だぜ? …まぁ正直ルーン魔術なんざわかんねぇけどな。加工の仕方はテメェでやりな。…つうわけで、今回は引いてくんない?」
クウガは変身を解いてステイルを睨む
悔しいがこの男の言うとおりだ
ツンツン頭の右手は脅威だし、睨む男は意味が分からない
…大人しく立ち上がって、ステイルはゆっくりとその場を後にする
その背中を見送りながらアラタは夕闇に染まりつつある空を見た
(…また面倒な事が起きそうだな)
そして遠からず、それが当たってしまうことを、アラタと当麻は、知らない