とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
お気に入りしてくださった方たちや感想をくださった方たちにも深く感謝を
それでは#11
どうぞお楽しみください
一七七支部にてキーボードを叩く音が単調に響く
先ほどまで映像を見てはいたのだが唐突に砂嵐に見舞われて一切の情報が入ってこないのだ
「だめですわ! どのカメラも死んでしまっていますの…!」
どう操作しても画面の中の映像が砂嵐のまま変化がない
ためしに電話ならどうかとも思ったがこちらもつながらない
暫く考えてそして黒子は徐に立ちあがり扉へ向かって歩き始めた
「待ちなさい」
が、何かを察したのか固法にその腕を掴まれた
「お姉様とお兄様を放ってはおけません!!」
「その怪我で何が出来るっていうの!」
言われた時黒子は苦い表情をした
黒子は
「二人を信じなさい。あの二人ならきっと…!」
固法に諭され黒子は顔を歪ませる
こんな時に何にも力になれない自分に腹が立つ
そして同様に固法も心配なのだ
なんでもっとうまく立ち回ることが出来なかったのだろう、と自分を責めたくもなる
そんな時、唐突に扉が開かれた
「カ・ガーミンっ! 日頃頑張っているお前に親友の俺が励ましに―――あれ」
「…開けて早々迷惑をかけるなツルギ」
重苦しい空気をぶっ壊すように現れたのは神代ツルギと天道総司の二人だった
天道とツルギは何やらポリ袋を携えており中には食材が入っている
「…貴方たち、今お仕事中なのよ?」
「だからそんなお前たちに晩御飯をだな…。む? スィ・ライン、なぜ涙目なのだ」
ちなみにスィ・ラインとは黒子の事である
「えっ、あ、のっ」
「カ・ガーミンもいないな。遠出でもしてるのか?」
取りつく間もなくツルギはテーブルにそのポリ袋を置いた
そしてふとテーブルの上にあったパソコンを見てしまった
「む? …天道」
「どうした」
ツルギに促され天道も同様にポリ袋を置き、その画面を見た
なんてことのない砂嵐
そしてここにはいないアラタ
理由はわからないがこの二人は何かをモニターしていたという事になる
そして涙目の黒子
「…固法」
「…何?」
天道は固法へと向き直る
向けられた固法は半ば苦笑いを浮かべている
これから何か聞かれるか、もうわかっているようだ
しかしあえて天道は問いかける
「何があった」
「…はぁ」
半ばあきらめた様子で固法は椅子へと背中を預ける
…なんだってこう鋭いのだこいつらは
◇
「それは本当かクォノーリ!?」
事情のあらましを聞いたツルギが椅子から立ち上がる
同様に天道も椅子から立ち上がった
「おそらく事実だろう。…あいつは、一般人である俺たちをできるだけ頼らないようにしているからな」
「…本当は白井さんを行かせてあげたいけれど、彼女は怪我が治ってなくて…あんまり無茶させられないのよ…」
言いながら国法はちらりと黒子に視線を向ける
向けられた黒子はじっと下を向いたままでスカートの裾を握りしめている
どことなく天道はツルギに視線をやる
同じようにツルギも天道の方を向いていた
…考えている事は同じようだ
二人はそのまま椅子から離れドアへと移動していく
「ちょっと!? どこに行くの!」
「わかってるだろう。友人を手伝いに行くんだ」
「先に断わっておくが止めても無駄だぞクォノーリ」
念を押された国法はむぅ、とその場で押し黙った
それになんとなくではあるがそう言われるだろうと思っていた
自分だって美琴とアラタは心配なのだ
やがて固法はふぅ、と一つため息をつき
「…お願いするわ、二人とも」
「わたくしからもっ! どうか、お姉様とお兄様を…!」
二人からの言葉を受けてツルギと天道は笑みを浮かべこう返した
「任せろ。俺たちは天の道を往き総てを司る男と」
「神に代わって剣を振るう男だ」
◇
一方で美琴たち
今現在目の前で起こっていることに正直ついていけなかった
「胎児…?」
「おい、こんな能力見た事ないぞ…」
しかしあんなの
「■■■■■■――――――ッ!!」
言葉にならない奇声をその胎児はまたあげる
その余波により、周囲の瓦礫やら何やらが吹き飛んできた
「あぶねぇ!」
翔太郎の叫びと共に反応してアラタは美琴の手を引いて大き目な瓦礫に身を隠しその衝撃波を何とかしてやり過ごす
少ししてその衝撃波が終わったとき、タイミングを計った美琴が雷を掌に形作る
「こんっのぉ!」
そして一直線に胎児に向かって雷を撃ち出した
その雷は確かに直撃した
だが直撃した破損個所が内側から再生されていき、どういう訳だかその箇所から手が生えた
「うえ!?」
「どうなってんだ! しかもなんか…でかくなってねぇか!?」
翔太郎の言葉にアラタは注意深くその胎児を見る
よく見ると確かにその胎児は最初に見た時より一回り大きくなっている
…というか絶賛増大中だ
そしてふと、ぎょろりと赤い目が三人を捉えた
その瞬間、胎児の周囲に氷塊が生み出され
「やばい逃げろ!」
正直に言えば翔太郎が叫ぶ前に本能が行動を起こしていた
反転し、一気にダッシュする
直後その場所には氷塊が叩きつけられる
しかしその氷塊は立て続けままに生み出され再び叩きつけられ追っかけてきている
今はただ逃げることが先決だ
「御坂さんっ!」
「アラタさんっ!」
ふと自分たちを呼ぶ声が聞こえた
その方向へ視線を向けると意識を取り戻した佐天と初春の姿があった
「二人とも!?」
「馬鹿、なんでここにっ…! 美琴っ!」
その時の動きは早かった
アラタは美琴に視線を送ると一度振り向き追いかけてくる氷塊に向かって雷を放った
そしてそれを背に受けながら今度は翔太郎に視線を送る
アラタと翔太郎は一気に二人に駆け寄って余波から守るように自分の身体を盾にする
「無事か、二人とも」
アラタが問いかけると佐天と初春の二人は大きく頷いた
どうやら特に目立った外傷はないみたいだ
「エレキガールッ! 気をつけろ! 追って…来てない?」
振り向いて胎児の動きを確認してみればどういう事か胎児はこちらを追っかけてはきてなかった
それどころか、まるで何かにすがろうとしている赤子のように生まれた両手を動かしている
それはどことなく、悪夢にうなされているようにも見えた
そんな思考の最中にも胎児はどんどん大きくなっていく
いつしか胎児は一回りも二回りも大きくなっており橋の上にその姿を現した
そして橋の上から聞こえてくる銃声
しかしその銃撃に意味はなくむしろ撃たれているたんびにまた大きさを増しているようにも見える
◇
同様に橋の上で怪人を殲滅していたキックホッパ―とパンチホッパーの二人も橋の上から姿を見せたその胎児に驚いていた
「矢車さん! あれ!」
「あぁ! 俺も確認した!」
そして同じような感想を二人は思っていた
〝なんだあれは〟である
「何はともあれ、一度黄泉川のとこに戻るぞ」
「はい!」
◇
「天道!」
こちらはバイクで走っていた二人組
固法からだいぶアバウトな場所しか聞いていなかったが、遠くから視認したその胎児のようなもので確信が持てた
「あぁ! 飛ばすぞ!」
天道はそう言葉を飛ばし、さらにエンジンをフルスロットルさせる
そんな天道を追うようにツルギも速度を上げた
◇
「ふっははは…」
警備員が胎児と銃撃戦を繰り広げている最中、木山春生は自嘲気味に笑みを浮かべた
「…すごいな」
思わずそんな感想を呟いていた
まさか自分からあんな化け物が生まれ出でるとは思わなんだ
学会にでも発表すれば表彰ものだ
…もはやあれは自分の手に負えるものではない
それは同時に、あの子たちを助ける術が失われたという事だ
「…おしまいだな」
これまでやってきたことはすべて泡と消えた
もう二度とあの子たちを目覚めさせてあげることは叶わなく―――
「諦めないでくださいっ!」
絶望しかけていた木山に一人の女の子の声が聞こえた
木山がその声の方へ首を向けるとそこには初春飾利の姿があった
いや、初春だけではない
佐天も、翔太郎も、美琴も、アラタも、皆いた
彼らの眼には、まだ色があった
・・・
「AIM拡散力場の…」
美琴の聞き返しに木山は頷いた
「恐らくは集合体だろう。…仮に、AIMバーストとでも名付けておこうか」
「…AIMバースト…」
「
「…つまり、アイツは一万人の思念の塊…みたいなものなのか?」
翔太郎の言葉に木山はゆっくりと頷いた
「まぁ、そういうことだ…」
そして徐に、今も叫びをあげている胎児―――AIMバーストを仰ぎ見た
…
実際、アラタだってクウガという力に覚醒しなければ使用していたはずだ
身体検査で下された結果を見て、悟ってしまうのだ
能力者なんてものは、夢でしかなかったんだと
どんなに頑張っても、この
才能ある人間は才能ない人間を食い物にし、己の欲求を満たすためだけに虐げられる
何時しかそれが日常となってしまうほどに
だから縋るしかできなかったんだ
間違っているとわかっていても、力に、縋るしか
…あのAIMバーストはいわば被害者たちの心の叫びだ
憧れ、妬み、羨望、夢…
そう言った想いの類が具現化したもの
そう思えると、あの胎児の姿をしたものがかわいそうに感じた
「…あれはどうすれば止められる?」
それぞれの決意が込められた瞳が木山に向けられる
その中で言葉を発したのはアラタだった
「…それを私に聞くのかい? 今更何を言っても信じるとは―――」
「手錠」
木山の言葉を遮って佐天が木山の前に手を見せた
「…私と初春の手錠、外してくれたの、木山さんでしょう?」
「…気まぐれだよ。…まさかそんなもので私を信じようなんて…」
「そうです!」
今度は元気のいい初春の声が木山の言葉を遮った
そして真っ直ぐ木山の眼を見て
「…子供たちを救うのに、木山先生が嘘つくはずないですもん」
その初春の顔を
「信じます! 木山先生の事」
―――せんせいの事信じてるもんっ―――
今眠っている枝先の純真な笑顔と重なった
「…聞いてたのか? 二人とも」
アラタの問いに佐天と初春は苦笑いと共に首を縦に動かした
「…全く」
木山の呟きにみんなが顔を向ける
その視線を受けながら木山は口を動かした
「…AIMバーストは
「…! 初春、あれ!」
「はい!」
佐天に促され初春は自分のポケットをまさぐる
そして取り出された掌の上にあったのは一枚のチップ
「
「…試す価値はあるな」
翔太郎の言葉に頷く
―――希望が見えてきた
そして美琴とアラタはちらり、と何気なく橋の上を見る
視界の先に見たのはAIMバーストに向かって銃撃を繰り返してる姿だ
◇
銃撃をしている最中、聞き覚えのあるサイレンの音が黄泉川の耳に届く
音の方へ向けるとそこにはガードチェイサ―から降りてこちらに走ってくるG3の姿が見えた
「馬鹿! 遅いじゃんよ!!」
「すみませんっ! なるべく急いできたつもりなんですが…!」
言いながらG3はスコーピオンを構え、うごめく触手に向かって発砲する
しかし効果的な感じではなさそうだ
「くっ…!」
これはだいぶ手間がかかりそうだ
内心眞人はそう呟いた
そんなG3の耳に聞きなれた声が耳に届いてくる
「ライダーパンチ!」
「ライダーキックっ!」
そんな声と共に触手が吹き飛ばされていく
「ようやく来たか立花!」
「間に合ってくれたか!」
キックホッパーとパンチホッパーだ
それぞれがG3の隣に立ち、例の胎児を見つめている
「隊長、影山さんも…ご無事なようで!」
心を奮い立たせながらG3はスコーピオンを握りなおした
◇
「あいつは俺たちが引き受ける。お前らはそれを持って
翔太郎に促され初春は頷く
そして初春は佐天の方を向き、また頷きあった
その頷きを見て翔太郎はダブルドライバーを巻きつける
そして美琴とアラタに視線を向けた
向けられた二人も同様に大きく頷いた
少し時間が過ぎた後、三人と二人はそれぞれ反対方向へと駆け出していた
その背中を追いながら木山は苦笑いを浮かべ
「…本当に、根拠もないのに…」
かくいう木山も、信じていないわけではない
彼らなら、或いは
◇◇◇
「っくそ!! 減らない…!」
あれから何度もスコーピオンを放ってはいるが触手が減る気配はない
というか増えてきているように感じられる
「鉄装さんっ! 黄泉川さんを連れて少し後ろにっ!」
「わ、わかりましたっ!」
自分の後ろにいる鉄装にそう言ってG3はさらに前に出る
「流石に、堪えるな…!」
「でも、まだまだ…!」
肩で大きく息をするキックホッパーとパンチホッパーを尻目にG3は考える
思えば二人はだいぶ前から戦闘を繰り返していたのだ
当然、疲労も蓄積されている
「…どうする…!」
G3は考える
そんな時―――
「でやぁぁぁっ!」
そんな叫びと共に自分の前に雷が迸った
眼前の触手が薙ぎ払われ、G3の隣にスタリ、と着地する一人の女の子
「二人とも! 遅いわよ!」
「スパイダー〇ンみたいに壁走れないんだよ俺たちは!」
やがて遅れて彼女の隣に二人の男が走り寄る
いや、一人知っている
「鏡祢くん!?」
「わっ。その声は、立花さん…!?」
思わぬ来客に驚いたがそうも言っていられない
ここに一般人が来ては
「ようやく見つけたぞカ・ガーミンっ!」
しかし予想とは裏腹に逆にどんどんと人が増えてくる
…一体どうなっているんだ
「少々探すのに手間取ったぞ鏡祢」
「天道…ツルギまで!? なんで…」
「水臭いぞカ・ガーミン。友情とは富にも勝る最高の宝だ。手伝わない訳にはいくまい」
「…ったく。…ありがとよ」
そう言ってアラタは笑顔を見せる
…いやそうではなくて
「何をしてるんですか! ここは貴方たちのような子供が来ていい所では―――」
「いいんだ」
言葉の途中でキックホッパーに止められた
意味が分からずにG3はキックホッパーを見る
彼はずい、と前に出て
「アラタ、あの胎児が向かっている先の施設、なんだと思う」
不意に投げかけられた問いに考えながらその場のメンツは胎児の先にある施設を見た
そこはいかにもな工場施設
正直言ってわからないのでキックホッパーの答えを待った
「原子力実験炉だ」
その呟きを聞いてゾクリとした
間に合わなかった場合の事など考えたくもない
これは、本当になにがなんでも止めなくては―――
「ちょ、何やってるのあの子!」
唐突に鉄装の叫び声が場を支配する
向けられた視線の先には階段を駆けあがる佐天と初春の姿があった
「…逃げ遅れたのか!?」
「そいつは違うぜ」
影山の呟きを翔太郎が否定する
え? と向けられた疑念に美琴が付け加える
「彼女たちはもう、人質でも、逃げ遅れた人でもない」
「矢車さん、お願いがあるんです」
そう言って事情を説明する
キックホッパーはそれを聞いて頷いて快諾してくれた
「…よし、行きますか、ダンナ、天道、ツルギ」
アラタがそう言うと言われた三人はそれぞれ笑みを浮かべ頷いてくれる
「…何を…?」
G3―――立花眞人の視線はつらいがそんなことを言ってはいられない
時は一刻を争う
<STANDBY>
ボゴンと地面から這い出るかのようにサソードゼクターが現れ、ツルギの手へと飛び、それを受け止める
同様に空から飛翔してくるカブトゼクターを天道はキャッチし、翔太郎はメモリを起動させる
そしてアラタも腰に手を翳し、アークルを顕現させた
その後右手を左斜め上に、左手をアークルの右側へと移動させ、それを開くように移動させ、そして各々に叫んだ
『変身ッ!!』
叫びと共にツルギはヤイバ―にサソードゼクターをセットし、ゼクターニードルを押し込み、マスクドの過程をキャンセルする
同じようにベルトにセットした天道もカブトゼクターのホーンを倒し、マスクドの過程を省略して変身する
<Change Scorpion>
<Change Beetle>
青い複眼と緑の複眼が点滅し、カブトは天を指し、サソードは剣を構える
<CYCLONE JOKER>
風と共にその姿を変えた翔太郎もダブルへと変身し、軽く手をスナップさせる
そしてアークルのスイッチを押したアラタも同様に姿を変える
赤い複眼、二本の角
今、G3の前に広がっているのはすべて都市伝説で噂となっていた仮面ライダーたちの姿
「…鏡祢くんが、クウガ…!?」
驚くG3をスルーしつつ美琴はクウガの隣に並び立つ
一度向けられた視線に美琴は小さい笑顔で返し、再び前を前を見る
仮面ライダーたちの視線の先にAIMバースト
その
「行こう、皆」
クウガの声に応えるかの如く、彼らは一斉に駆け出した
昏睡している人たちに、
次回
完結