とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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サブタイトルなんも考え付かなかった
今回も相変わらずグダグダではありますが楽しんでくれたら幸いです
あとペガサスフォームは少しオリジナルが混じってます

バトライドウォーはやって損はないゲームですぜ
特にカブトがカッコいい


#12 AIMバースト 決着

伽藍の堂一階のガレージにて

 

久しぶりにバイクの手入れやチューンナップでもするかと思った蒼崎燈子は一階のガレージに足を運んだ

ふと視線をやるとブルーシートを被った何かがやけにガタガタと動いてるのが目に行った

 

「…今日は珍しくざわついてるな? 青子が持ってきた日以降ちょくちょく動いていたが…」

 

それでもこのブルーシートの中にいるこいつは時折起動してはアラタを助けに行き、何度も勝利に導いてくれたものだ

そんなこいつがガタガタしているという事は

 

「…そうか、呼んでるんだな。お前を」

 

察した様子で燈子はそいつにかかったブルーシートを引っ剥がすとガレージのシャッタ―を開ける

 

「行ってこい。お前の主の下に」

 

燈子が促すと頷くかのように赤い瞳が輝く

そして羽を羽ばたかせ、そのシャッターから飛び出していった

 

 

地上へと飛び出した一行はまず美琴が砂鉄で作り出した剣で先制する

放たれた砂鉄の剣はAIMバーストの触手を容易く切り裂いた、がやはり効果はなくすぐに再生師元に戻ってしまう

しかしそれでもこちらに気を引くことには成功したようだ

 

「アンタの相手は私らよ―――て、うわ!?」

 

 

言葉など通じんと言った様子でAIMバーストは美琴の方へと波動のような一撃を放つ

慌てた様子で美琴を含めたメンバーは散り散りに回避行動を取った

 

「っくっそ! こっちの話は聞かない感じか!」

「聞いてくれたら幸運だがな。…む、見ろカ・ガーミン!」

 

サソードに促されクウガは彼が指差した一点を見た

視界に入ってきたのは先ほど美琴に切り落とされた触手の一部だ

その触手が何やらウネウネとうごめいていき、そこから成人男性サイズの土人形が生み出された

分かり易く言うなればゴーレムだ

 

「…おいおい、あんなの聞いてないぜ?」

<けどやるしかない。行こう翔太郎>

 

短い会話をした後ダブルがその土人形に向かって走り出し、一体に飛び蹴りをかます

それに続くサソードを尻目にしながらクウガはAIMバーストの方を見る

AIMバーストは自らの頭上で気のようなものを溜めていたところだった

恐らくこの周囲に向かって放つ攻撃のはずだ―――

 

「! まずい!!」

 

思わず振り向いたがもう遅い

付近一帯に放たれた光弾の一発は今まさに階段を駆け上がっている佐天と初春の所へ―――

 

「クロックアップ」

<clock up>

 

その呟きが聞こえたと思ったらその瞬間カブトの姿は消えていた

間に合ってくれるといいのだが―――

 

 

「え?」

「危ない初春!」

 

ドンと突き飛ばされたと感じた時に耳に爆発のような衝撃音が入ってきていた

思わず前のめりになって倒れてしまい、足や手に軽い痛みが走る

 

「い、たぁ…」

 

痛みに堪え視線を向けるとばらばらにひしゃげた階段の手すりや、何かの破片などが周囲に散らばっていた

どうやら下に続く階段がその瓦礫に阻まれてしまったようだ

そして自分の近くに佐天の姿がないことに気づく

 

「! 佐天さん!?」

 

彼女の名前を叫ぶ

どこか、どこかと思いながらきょろきょろと周辺を見回して

 

「初春ー!」

 

阻まれた向こう側から佐天の声が聞こえた

 

「佐天さん!? 無事なんですか!?」

「あたしは大丈夫! それより初春! ワクチンの方は大丈夫!?」

 

えっ、と呟きながら彼女はポケットに手を入れてそのプログラムを取り出す

…うん、どうやら目立った傷はないようだ

 

「先に行って! 初春! あとはあんたに託すわ!」

「え!? でも―――」

「今はもっと優先すべきことがあるでしょう! アンタが助けるの! 昏睡してる人たちを!!」

 

確かにここで止まっていたらAIMバーストと戦っているあの人たちを危険にさらしてしまう

なら自分に出来る事は、足を動かすことだけだ

初春は力強くそのプログラムを握りしめ、意を決したように再び会談を登り始めた

 

「…頼んだよ、初春」

 

呟きながら初春は先ほどの衝撃から庇ってくれた人の後ろに改めて身を隠す

 

「…ごめんなさい天道さん。手間をかけさせて」

「気にするな。人が歩くのは人の道、それを拓くのが天の道だ」

 

そう言いながらカブトは周囲を確認する

どうやらさっき放った光弾にゴーレムを生み出す触手の一部が組み込まれていたのだろう

 

「安心しろ。お前は必ず守る」

 

そう言われて思わず佐天は顔を赤くする

…どうしてこういう人たちはナチュラルに恥ずかしい台詞を吐けるのか

 

 

階段から抜けて初春は辺りを見渡した

視界には数分前に乗っていた木山の青い車が見える

 

「私だって風紀委員(ジャッジメント)なんだ…!」

 

戦える力がなくても、抗える力がある

そう自分を奮い立たせてまた足を動かしたとき、また爆発音が鳴り響く

どうやら左側の壁にまた光弾のようなものが直撃したようだ

 

その音に足をもつれさせてその場に初春は転んでしまった

だけどプログラムは守り切れた

 

「はは、アラタに似て無茶をする」

 

声が聞こえた

声の方に振り向くと自分を庇うように緑色の仮面ライダーがAIMバーストを睨んで立っていた

その周囲には灰色の仮面ライダーとG3もいる

 

「怪我は?」

 

灰色のライダーに問われない、と首を振る

 

「ならプログラムも無事ですね」

 

G3の言葉に初春は力強く頷く

 

「…よし、何とかして移動するぞ」

 

緑色のライダー…キックホッパーの視線の先には警備員(アンチスキル)の車両がある

木山のとの交戦ですべて破壊されたと思っていたが幸か不幸は一台だけはその被害を受けることなく静かにたたずんでいた

 

あの車両ならこのプログラムのデータをこの都市中に流せるかもしれない

 

しかし、AIMバーストはそれを許してはくれないらしく、再び頭上に再び何やらエネルギーを溜め始めた

 

 

「いい加減にっ!!」

 

半ば怒りと共に放たれたその雷撃はAIMバーストの頭上に溜められていたエネルギーごと焼き尽くす

だがその攻撃にも意味はなくすぐ再生されていく

けれども問題はない

注意を引くことが重要なのだ

 

「そろそろこっちにも振り向いてくれねぇか?」

 

美琴の左隣にはダブル

彼は左手をスナップさせ軽くそれをAIMバーストの方に突きつける

 

「あいつらに、罪を数えろたぁ言えねぇしな」

<彼は被害者みたいなものだからね。彼らに罪はない…>

 

右の複眼が点滅し、彼の相棒が呟く

 

「だからこそ、俺たちが立ちはだかるんでしょ」

 

その呟きにクウガが応える

その声にダブルは仮面の下で軽く笑む

 

「さぁエレキガール、止めてやろうぜ。俺たちが」

 

「えぇ。…みっともなく泣き叫んでないで、真っ直ぐこっちに向かってきなさいっ!」

 

美琴の叫びに呼応するかのように、またAIMバーストは嘶いた

 

 

クウガ、美琴、そしてダブル

彼らはAIMバーストを足止めしているが、依然効果はなし

カブトは階段の途中で土人形と交戦しているし、サソードは地上で同様に土人形と戦っている

 

その戦いの光景を見ながら木山はゆっくりと橋の下から歩いてきて思考を走らせていた

 

(…ワクチンプログラムを何とか都市中に流すことで、幻想御手(レベルアッパー)のネットワークを破壊する。…あの子たちがうまくやれば、あの暴走を抑えることが出来るはずだ)

 

だが…、とそこで思考を区切り、再び木山は歩き始めた

 

 

<TRIGGER!>

 

<CYCLONE TRIGGER!>

 

「たぁぁぁっ!!」

 

トリガーマグナムから放たれた風の弾丸は空を飛び、AIMバーストに当たり、破損させる

だがやはり自己修復され、その攻撃は無意味なものとなる

 

「くっそ! やっぱりか!」

<このままでは防戦一方だ…>

 

そんなダブルの隣を駆け抜け、クウガが前に出る

AIMバーストはクウガに狙いを定めて一斉に触手を伸ばし始めた

伸ばされた触手を手刀で斬り、蹴りで払い、拳でクウガは砕いていく

だがいずれも全く効果はなく、再び再生されていく

 

「あちゃー…全然効かねぇな…」

 

そのまま何度か触手に向かって徒手空拳を繰り出すがやっぱり再生されてしまう

 

「屈んで!」

 

「え!?」

 

美琴の声が聞こえた時にはもう眼前に大量の砂鉄で生成された鞭みたいにしなるブレードが迫ってきていた

 

「おうわっ!?」

「っぶねぇ!?」

 

当然範囲にはクウガはもちろんの事、ダブルも入っていたらしくクウガを見て同じように屈む

自分たちの頭上を通る砂鉄の剣は空を切り、そのままAIMバーストの腕に該当する部分を切り落とす、がやはり腕は再生され、切り落とされた腕からはまた変な土人形が生み出された

 

「おい! 何しやがんだ!」

「ちゃんと忠告したじゃない」

「雑すぎるわっ! 危うく真っ二つになるとこだったわぁ!」

 

ダブルが立ち上がると同時に美琴に詰め寄りプチ口論となる

クウガとしては美琴の無茶な振る舞いにも慣れてしまっているので正直何にも思わないのだが

 

「状況見てダンナ。今味方同士でそんなこと言い合っても仕方ないじゃないですか」

<アラタの言うとおりだ翔太郎。最大の障害は目の前にいるんだから>

 

右の複眼が点滅しフィリップが彼を諌める

翔太郎の方もわかっていたのか軽く深呼吸し再びAIMバーストへと向き直った

 

「…けど、ホントにどうすんのよ。はっきり言ってキリないわよ」

 

穿っては再生され、切断しては再生され、引きちぎっても再生される

おまけにそこから変な土人形は生まれるわで収拾がつかない

 

「あの嬢ちゃんたちがプログラム届けるまで凌ぐしかないだろ? やれるとこまでやんないとな…ん?」

 

呟きながら空を見たダブルが訝しんだ

どうやら何か見えたようだ

 

「…ダンナ?」

 

自分たちに接近してくる土人形を破壊しながらクウガが聞いた

同じように怪訝な表情を浮かべながら美琴は寄ってくる土人形に雷撃を放つ

 

「…アラタ、知り合いが来たぜ?」

 

その空を彼は親指を指す

指された方向を見ると黒い影がこちらに向かって一直線に飛翔してくる

その影の姿はよく見るとクワガタのような…いや、クウガはそれを知っている

こういった戦いの前、幾度か空を飛ぶ怪人と戦ったことがあった

その時に何度か助けてくれたのがあのクワガタのような自立機械―――

 

「ゴウラム!」

 

確かそんな名前だったはずだ

ゴウラムと呼ばれた大き目なクワガタは一度美琴やダブルの付近を回るとクウガの前に浮遊する

その佇まいはまるで乗れと言っているように

 

「…こんな機械初めて見た…」

 

珍しそうに甲のあたりをぺたぺたと触れる美琴

心なしか嬉しそうに見える

 

「ダンナ、俺たち空からけん制してみる」

「わかった。なら、使いなっ!」

 

言葉と共にダブルはクウガに向かってトリガーマグナムを投げ渡す

それを受け取ったクウガは頷いて叫ぶ

 

「超変身!」

 

言葉と共に今度は赤い姿が緑色へと変化する

緑色の鎧をベースに複眼も緑色へと変わり、手に持つマグナムも緑色特有の武器であるボウガンへと変換されていく

 

「行くぞ、美琴」

 

「え? えぇ!」

 

クウガが先に乗り、その手を美琴へと伸ばす

美琴はその手を取り、彼に引っ張られる形でゴウラムの上へと乗った

 

「地上は任せときな、お前らは上から注意を引いといてくれ」

「えぇ! …うし、行くぞゴウラム!」

「うえ!? ちょ、ま―――」

 

クウガが言うとゴウラムは羽を開き羽ばたかせ上空へと瞬いていく

その時同時にエレキガールの叫ぶような声が聞こえた気がしたが気のせいだろう

 

「…よっし、行くぜフィリップ!」

<あぁ。行こう翔太郎>

 

そう言いながらダブルは一本のメモリを取り出して、起動させる

 

<METAL!>

 

そしてトリガーメモリを抜き、それを差し込みドライバーを開く

 

<LUNA METAL!>

 

そんな電子音が鳴り響き、右は黄色のまま、左半身が鉄のような色へと変化し、背中から一本の武器を構える

それはメタルサイドのウェポン、メタルシャフト

 

「…っし、行くぜ!!」

 

ルナの力で伸縮するメタルシャフトを振るいながらダブルはAIMバーストへと駆けていった

 

 

階段の途中での戦闘

 

幸いにも動きが単調な土人形を倒すのは造作もないことだった

しかし問題はいくら斬りつけても斬りつけても治ってしまうのだ

流石は人形と言ったところか

おまけに場所が場所なだけにライダーキックが使えない

使ってもいいがそれでは佐天を巻き込んでしまう確率もある

 

「ならば…」

 

カブトはクナイガンを構え、静かに態勢を低くする

何か来ると予想したのか土人形が少し身構えた気がした

しかしそれを杞憂と判断したのか二体同時に接近し始める

その時、先にカブトが動いた

 

クナイモードとなった刀身にエネルギーを込め、通り抜け様にアパランチスラッシュをそれぞれの胴体に叩きこんだ

深々と斬られた二体の土人形は再生能力を失ったのか、それとも再生するためのエネルギーが切れたのか、土人形はその場で崩れ落ちた

 

「…怪我はないか。佐天」

「は、はい。おかげ様で…」

「そうか。それは何よりだ。…行けるな?」

 

カブトがそう問いかけると佐天は力強く頷いた

これ以上の心配はなさそうだ

 

「―――頑張れよ。佐天涙子」

 

そう言い残してカブトは手すりを飛び越えて、地上で戦っているサソードの方へ加勢すべく駆け出した

その背中を見ながら佐天は瓦礫を見やる

瓦礫は通れないほどでなく、少しばかり小さくなっている気がする

戦っている最中、カブトが切りつけてくれたのだろうか

だとしても有難い

 

「よし。行こう!」

 

自分を奮い立たせるかのように呟いて、彼女はその瓦礫の上を走る

何もできなくても、構わない

今動くことが重要なんだ―――

 

 

「ツルギ!」

 

サソードの耳に聞きなれた声が届く

その方向へ視線を向けるとカブトがこちらに向かって走ってきていた

走りざまにクナイガンにて土人形を切り裂いていきながらカブトはサソードの隣へと駆け寄った

 

「天道!」

「一気に決めるぞ、準備はいいか」

「あぁ! 問題ない!」

 

言葉と共に二人は必殺技の構えを取る

カブトはゼクターのスイッチを押し、サソードはサソードテイルを一度抜いて、再び挿す

 

<One two Three>

 

「ライダーキック」

「ライダースラッシュ!」

 

<Rider Kick>

<Rider slash>

 

そう電子音が鳴った後、カブト自分の前方にいる数体の土人形へと回し蹴りを繰り出し、その背後では同じように数体の土人形に向かってサソードヤイバーを振り抜いた

 

それぞれの動作が終了したあと、サソードはヤイバーについた血を払うように空を切り、カブトは天を指す

 

「あとはアラタたちを待つだけだ」

「あぁ。任せたぞ、カガーミン」

 

 

「…空からでもあんま効果なし、か」

 

いくつか射撃してはみたが案の定効果はなし

同じように美琴も雷を売っては見たが結果は変わらずだ

 

「それでも、やんないといけないでしょ? 初春さんたちがやってくれるまで」

「あぁ。…行けるか?」

「…ふふ、誰に言ってんのよ?」

「はは。…そうだったな!」

 

お互いに言い合いながら迫ってきた触手にクウガはボウガンを撃ち込む

このボウガンは弓に当たる部分があるのだが、それを引かずに引き金を引けば威力が低いがけん制程度の弾丸が放てるのだ

 

触手がすべて破壊された後、今度は氷の刃が周囲に展開される

いくつもの刃がこちらに向かって放たれる中、美琴は焦ることもなく、雷を展開しそれを砕いていく

ゴウラムもまだ問題はなさそうだ

…大丈夫、まだいける

 

 

警備員(アンチスキル)の車両にて

 

「ああ、そうだ。手段は問わない、これから送る音声データを学園都市中に流すんだ!」

 

変身を解いた矢車が携帯を使用して指示を飛ばしている

これが成功しなければもう勝算はない

 

「転送! 完了しました!」

 

初春の声が耳に届いた

よし、後は―――

 

「責任はすべてこの矢車が持つ! とにかく流せ!」

 

矢車のその指示のあと、学園都市中に単調な音が響き渡った

 

 

曲と言われれば十人中十人は首をかしげてしまうだろう

とても曲とは言えないただシンプルな一つの音を聞かせられればそれは曲でなく音だ

だがこの音はただの音ではない

 

「…なんだ? このなんだかわかんねぇ歌でも曲でもねぇ音は?」

<いや…これはもしかしたら―――?>

 

思考に埋没しようとしたその時だった

直前までに迫っていたAIMバーストの触手に一瞬気づくのが遅れ、囚われてしまったのだ

 

「のわっ!? しまったぁ!!」

 

ご丁寧に両手までしっかり巻きつかれている

これではメタルシャフトが振るうことが出来ない

万事休す、か

 

「ダンナ!」

 

空中からこちらを視認したクウガがその場からボウガンで触手を狙い撃つ

触手の縛りから解放されダブルは地上に降り立った

それと同時に一度彼らは地上に着地する

 

「すまねぇアラタ! だけどいくらやっても再生するんじゃあ…っ!?」

 

言葉を言いかけてダブルは驚いた

ボウガンを放たれて破損した場所が治っていないのだ

 

<やはり! これは治癒プログラムだよ翔太郎! ダメージを与えるなら今だ!>

 

フィリップの言葉になるほど、と納得する

幻想御手(レベルアッパー)も音声ファイルならそれを治すのも音声ファイルなのだろう

そしてそれが意味することとは―――

 

「初春さんたちやってくれたんだ!」

「あぁ! ったく…すげぇよホントに」

 

つまり今のこの時ならば、AIMバーストを倒せるはずだ

しかしこの大きな巨体を一度にダメージを与えるなら―――

 

「美琴!」

「えぇ! これで、戦闘終了(ゲームオーバー)よっ!!」

 

クウガの叫びに呼応して美琴が高威力の雷撃を放電する

その大きな体に放たれた雷は真っ直ぐにAIMバーストを捉え、身体全体を焼き尽くす

声にならない叫びをあげてAIMバーストは身体を黒くしながらその場に崩れ落ちた

 

「…はぁ」

 

ようやく終わったと感じた美琴は短くそう息を吐いた

そんな背中をいつの間にか赤いのに戻っていたクウガが軽く叩く

 

「お疲れ」

「あんたもね…そっちお半分こも」

「誰が半分こじゃあ!」

 

ダブルの声を聞きながらどこか笑みを浮かべる自分がいる

とにもかくにもこれで

 

「気を抜くな!!」

 

終わったと思った矢先、木山の声が耳に届いた

いや、というかなんで彼女はここにいるんだ!?

 

「まだ終わっていない!」

 

木山の言葉に三人はもしやと思いAIMバーストの方へと向き直る

そして予想通りAIMバーストはまだ動きを止めていなかったのだ

 

「そんな!? ネットワークは壊したんじゃ…!?」

 

「あれはAIM拡散力場が生み出した一万人の思念の塊…、常識は通用しない!!」

 

「はぁ!? 話が違うじゃねぇか!」

 

倒したと思っていたのにこれじゃぬか喜びもいいとこだ

あんなの、一体どうやって倒せば…

 

「核だ! 力場を固定させている核が、どこかにあるはずだ…! それを破壊できれば…!」

 

―――ユルセナイ…―――

 

「!? …今の、は…」

 

不意に唐突に聞こえたエコーのかかった声に美琴たちは一度動きを止める

それはおそらく、幻想御手(レベルアッパー)使用者の心の声…

 

―――毎日、馬鹿にされて―――

―――レベルゼロって、欠陥品…―――

 

「…」

 

思わず美琴は押し黙る

彼女は努力で超能力者となった人だ

だから、なんとなくだが気持ちが分かるのだろう

 

「…私、佐天さんに謝んないと」

「…え?」

「無責任にあんな事いって…さ。気にしてるかもしれないのに」

 

苦笑いと共に美琴はそう呟く

恐らく、自分の知らないところで何かがあったのだろう

それを聞くのは野暮だと感じたクウガは何も聞かなかった

やがて意を決したように美琴はいまだ行動を続けるAIMバーストを仰ぎ見る

 

「下がって。…巻き込まれるわよ」

 

そして木山に向かってそう言った

 

「構うものか! 私には、あれを生んだ責任が―――」

 

「教え子」

 

「…え?」

 

ダブルの言葉に木山は目を丸くする

 

「…あんたはよくても、あんたを待ってる教え子たちはどうする気だ?」

 

「…っ」

 

木山はそう言われて少し顔を俯かせる

彼女が今まで行動してきたのはすべて今なお眠っている子供たちの為だ

その子たちが起きたとき、一番に見せなければならないのが彼女自身の笑顔でなくてはいけないのだ

 

「…こんなやり方以外なら俺たちもいくらでも協力する。ねぇダンナ」

「あたぼうよ。子供は未来の宝だぜ?」

<ふふ。調子がいいんだから>

「当然あたしだって。…だから、こんなところで諦めないで」

 

二人のライダ―と御坂美琴が一度顔を見合わせる

そして少し視線を合わせてお互いに頷くとまずクウガがゴウラムに乗って上空へと飛翔する

その後でダブルがメタルシャフトを構えた

 

「それにね、アイツに巻き込まれるんじゃない。…アタシらが巻きこんじゃうって、言ってんのよっ!!」

 

言葉の途中に美琴らに放たれた尖った触手が貫かんと伸ばされる時、美琴の手から放たれた雷がその触手を焼き尽くす

そのまま放たれた雷は力場のようにAIMバーストを取り囲み、少しずつではあるがダメージを与える

しかしそれでも決定打には至らない

だが

 

超電磁砲(レールガン)、まだ行けるよね?>

 

美琴の死角から来る触手の攻撃をダブルが伸縮するメタルシャフトで援護しながらそう問いかけた

対する美琴はニィ、と笑みを浮かべて

 

「あったりまえじゃないっ!」

 

その言葉と共にAIMバーストを包んでいる誘電力場がさらに出力を増していく

彼女の電撃は直撃してはいない

美琴が強引にねじ込んでいる電気抵抗の熱で、表面から焼いているのだ

その戦いを見て確信する

 

「私と戦ったときは、全力ではなかったのか…!!」

 

しかしAIMバーストは意地があるのか、妬かれた表面を再生させながらいくつもの触手を束ねて大きな手を作り出す

 

「気づいてやれなくて悪かったよ」

 

<METAL MAXIMAMDRIVE>

 

シャフトにメモリを挿入し、その場でブンブンと振り回す

するとシャフトから生成されていく黄色の輪刀がダブルの周囲を飛び回った

 

「<メタルイリュージョンッ!!>」

 

放たれた光輪は弧を描きながらその大きな手を切り裂いた

 

<頑張りたかっただけなのさ。彼らは>

 

だがまだAIMバーストは抵抗をやめない

今度は周囲に氷の刃をつくりだし、地上の二人に目掛けて撃ち出した

 

「だったら、もう一度頑張ってみよ?」

 

そう言いながら彼女が周囲に放たれる雷撃は撃ち出された氷の刃を打ち砕く

泣いている子供をあやすように、美琴は優しい目でAIMバーストを見つめながら、一枚のコインを弾いた

その隣でダブルはメモリを変える

 

<LUNA TRIGGER!>

 

ルナトリガーへとチェンジしたダブルは美琴の隣でマグナムを構える

 

「頑張れんなら、頑張ろうぜ。他人の事なんか気にすんな」

「そうだよ。こんなところでくよくよしてないで、自分に嘘つかないで―――」

 

自分の手元に落ちてくるコイン

それを見ながらダブルはトリガーメモリをトリガーマグナムへと装填する

 

「―――もう一度っ!!」

 

飛来したコインを音速の三倍で撃ち出す美琴の代名詞

それが超電磁砲(レールガン)

その一撃に合わせるようにダブルも引き金を一気に引く

 

「<トリガーフルバーストッ!>」

 

真っ直ぐ突き進む超電磁砲に添えるように放たれたいくつもの光弾が重なり合い一つの弾丸となってAIMバーストの腹部を突き破る

やがてそれはAIMバースト内部にある核に衝突し、そのまま貫いて体外に排出した

しかしその核を破壊するまでには至らず、ヒビを入れてコインが先に砕けてしまった

だが特に焦ることない

もう一人、私たちには仲間がいる

 

 

「これで決めるぞ!」

 

ゴウラムに指示を飛ばし、スピードをアップさせる

速度が上がる中、貫かれた核をクウガは全力で視た

するとまばらな線共に、中心に点があるのが分かった

ならば狙うのはそれ一つ

ある程度速度が出て、態勢を立て直しそして先に自分が飛び出す形で一気にジャンプし、空中で一度回転させ、右足を突き出した

それに追うようにゴウラムも後に続き、彼のすぐ隣に鋭い角を前に出す

 

「おぉぉぉりゃぁぁぁっ!!」

 

咆哮と共に紅蓮の炎を纏ったマイティキックに、ゴウラムのゴウラムアタック

高所からの飛び込みを利用し速度を増したその蹴りはゴウラムの補佐もあって、ヒビの入ったAIMバーストの核に直撃し、それを砕き割った

 

ズドォン、と地面に砲弾のように着地したクウガは自分の周囲を飛ぶゴウラムを撫でながら

 

「…大丈夫、きっとできるさ」

 

昏睡してる人たちを励ますように呟く

レベルゼロの気持ちはわかる

だけど、それでも、俺たちには明日が待っていてくれるのだから

 

 

「…」

 

言葉が出てこなかった

目の前で起こる圧倒的な力を前に木山はただ黙った見ているしかなかった

 

「…これが、超能力者(レベル5)…!」

 

想像などは浅すぎた

自分が予想していたのとは圧倒的に、違うものだった

 

「そして、仮面ライダー…」

 

学園都市を、守るもの

 

 

「…やったな」

「あぁ。流石は我が親友」

 

事の成り行きを見守っていたツルギと天道は口々に言葉を呟く

長い事あったが、これで幻想御手(レベルアッパー)の方はひと段落しそうだ

 

 

「倒した…!」

 

感極まった様子でG3が呟く

本当に彼らはやってくれたのだ

いや、彼らだけではない

 

「…はふぅ~」

「うを! ちょ、初春!」

 

気が抜けたの背中に倒れそうになった花飾りの女の子を支える黒い髪の女の子

彼女たちの力なくしては止めることは出来なかっただろう

 

「お疲れ様じゃん。立花」

「えぇ、黄泉川さんも、お疲れ様です」

 

そんな黄泉川の後ろではそれぞれ変身を解いた影山と矢車の二人が車両に背中を預けていた

その近くではへたん、と鉄装が地面に足をついて息を吐いている

二人はここまで変身しっぱなしだったからか疲れがたまったのだろう

 

それは眞人も同様だった

そして一つ、目標もできた

仮面ライダーを名乗るには自分はまだほど遠いだろう

けれどいつしか彼らの隣に並べるような、そんな存在になれるように

 

 

全てが終わった夕刻

木山の腕には手錠があった

当然である

彼女は幻想御手(レベルアッパー)事件の容疑者なのだから

 

「…どうすんだ。子供たち」

 

口にするのを躊躇ってどもる美琴の代わりにアラタが問いかけた

木山は一瞬ポカンとした表情になるがすぐに小さい笑みを作り

 

「当然諦めるつもりはない。刑務所だろうとどこであろうと、私の頭脳はここにあるのだから」

 

…心配は杞憂のようだ

安堵した美琴、初春、佐天と顔を見合わせそれぞれ小さい笑顔を作る

 

「ただし」

 

そんな空気を割るかのように木山が口をはさんだ

 

「今後も手段を選ぶつもりはない。気に入らなければ邪魔しに来たまえ」

 

そう言って木山は警備員の車両に乗り込んでいく

…相変わらず、そしてたぶん曲げる気はないだろう

 

「昏睡してた人たちも、起きてきたらしいぜ」

 

先ほどスタッグフォンで連絡を取っていた翔太郎がそんな事を報告してくれる

 

「ホントですか!? …佐天と初春のおかげだぜ」

「うん。本当、お疲れ様」

 

二人に言われ、両名は赤面する

 

「そ、そんな。私なんて途中からなんもしてないし…」

「励ましてくれたじゃないですかっ佐天さんはっ! あの言葉で私勇気もらったんですから!」

 

どうやら自分たちの知らない間にまた絆が強くなっていたようだ

そんな時美琴がばつが悪そうに

 

「その、佐天さん」

 

と口をはさんだ

言われた佐天はきょとんとした顔で美琴の顔を見る

 

「…ごめんなさい」

「ふぇ!? なんで急に謝るんですか!?」

「…前に、レベルなんて関係ないって、私言ったじゃない? …あの時、その…自分勝手な言葉を押し付けて…」

「…御坂さん」

 

謝る必要なんてないのに

あの時の自分はただ必死だったんだ

なんの能力もない自分が許せなくって、そして能力に憧れた

けれども一人の男性が気づかせてくれたんだ

 

「大丈夫ですよ御坂さん。…それに本当に大事なのは、能力じゃないって…知ることが出来ましたから」

 

そう言いながら彼はアラタの後ろ、少し離れた場所にいる天道の方へ視線を向ける

その視線に気づいた天道はわずかに微笑みを作り、応えるかのように天へと指を向けた

 

「…天道となんかあったのか?」

「別になんもないですよアラタさん。…ふふ」

 

問われた佐天は空を仰ぎ見る

その仕草に初春と美琴、アラタは一度顔を見合わせる…けれども佐天がとても嬉しそうに笑っているから変に追及するのはやめておいた

 

「…鏡祢。ではそろそろ帰ろう」

「俺と天道で料理を振る舞う予定だったのだ。もちろんウィハールやサ・テーン、ミサカトリーヌにも我々の料理を振る舞ってやろう」

 

なんか名前がすっごい事になっている

ツルギらしいといえばらしいのだが

 

「…けど、そだな。今日はもう戻るか」

 

アラタのその一言でその場の連中はひとまず一七七支部へと戻ることとなった

恐らく黒子辺りが心配してるに違いない

 

 

 

―――こうして、一万人もの能力者を巻き込んだ幻想御手(レベルアッパー)事件は、ひとまず幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

その夜

支部からの帰り道

帰還してからダイブしてきた黒子を美琴と共に制裁し、天道が作った(ツルギは独創的過ぎたのか受けなかった)ラーメンに舌鼓を打った後特に気にするでもなくコンビニの前に寄った

強いて言うなれば明日のご飯を購入するためだったのだがふと気づく

 

「…あれ?」

 

妙に人が少ない、否、少ないのではない

〝いない〟のだ

こういった時間帯にはまだまだ夜これからですよと言わんばかりに学生諸君がわんさかいるハズだ

それなのに誰もいない、という事は異常だ

不自然な人の消滅、微かに頭をよぎる違和感…

導き出される結論は

 

「…また魔術か?」

 

教訓

一難去ってまた一難

確かに一つの騒動は終わったが、これからもう一つ始まりそうだ

 




今回で幻想御手(レベルアッパー)編は終了です
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