とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
つまらないとは思いますが息抜き程度にご覧ください
ではどうぞ
学園都市
東京西部に位置する完全独立教育機関の事
そこには総勢二百三十万人もの人口(その八割は学生)が滞在し、日々自身の能力開発に打ち込んでいる
そんな学園都市の第七学区
この区は主に中高生の少年たちが多く住み、故に学生が多い
高級感あふれる〝学舎の園〟や逆に治安の悪い裏路地など雰囲気は様々である
「こ…困ります…!! やめてください!!」
そんな七区の一角
時刻は夜
夜と言ってもまだ七時前後の時間帯
一人の女生徒が数人の不良らに絡まれていた
学園都市と言えど半数が学生、こう言った輩も少なくはないのだ
「いいじゃんよぉー…夜道の一人歩きは危険だぜぇ?」
「そうそう、だから俺達が一緒に行ってやるって言ってんだよー…なぁ?」
そう言って不良の一人が女生徒の顔にずい、と自分の顔を近づけた
女生徒は「ひっ」と小さくかつ短く悲鳴を上げて若干顔を引く
そして小さく目を開けて周囲に助けを求めるべく視線を巡らせる
しかしその視線を合わせるものは一人もいない
当然の反応である
好き好んで面倒事を引き受ける人間などこの時代にそうはいない
「じゃあ、行こっか。さっさと」
言いながら不良の一人がその女生徒の手首を半ば強引に掴み歩き出す
「やっ、離してください!!」
彼女は力を入れてその男の手を振り払おうとする
しかし相手は男性、女性の力では到底適うはずもなくあっけなく連れられていく
「やっ…誰か…! 誰かぁ!!」
耐えきれずに彼女はついに声を上げた
誰でもいい、助けてと淡い期待を込めて
だが誰一人その声に答えるものはいなかった―――
◇◇◇
そんなもめごとつゆ知らず
一人の少年、鏡祢アラタはコンビニにいた
具体的な理由としては自分が所属している
まぁ早い話パシリであるのだが
適当に彼女たちが好みそうな弁当をチョイスして清算する
ちなみに代金は事前にもらっているのでかかった費用は多くはない
さっさと支部に帰ろう、そしてさっさと仕事終わらそう
そう心に決めてコンビニを出た矢先
不良に連れられてすすり泣く女生徒の顔が見えてしまった
「…」
どうやら今夜は長くなりそうである
決してやらしい意味はない、そう、決して
内心で深くため息をついてその不良に声をかけた
◇◇◇
「もしー、そこの見る限り不良のお方ー」
その声を聴いたとき女生徒はえっ、と短く驚いた
完全に諦めて、ただ無感情のまま歩いていたのだから
「…ぁあ!? んだよてめぇ」
ぎらり、と目を光らせて不良のリーダー格が睨みを利かす
たいていの一般人にはその一睨みで怯むのだが今回は相手が悪い
「彼女、嫌がってるじゃないか。だから離してあげられない? でないと―――」
そう言って彼はリーダー格に近づいて説き伏せようと言葉を続けようとしたその時にリーダー格が
「うぜぇんだよ!! この野郎がっ!!」
彼に向かってパンチを打ち出してきた
よけることは造作もないパンチだったが運悪く彼が持っていたコンビニ袋にそのパンチが掠ってしまった
「あ」
ばっさぁ、と音を立てて袋からお弁当がこぼれていく
「やばいやばい…!」
軽く焦りを覚えながら彼はお弁当をしまおうと手を伸ばす―――
が、そのお弁当は不良たちの足によって粉々に踏み砕かれた
バキバキ、と音を立てながら容器は砕け、おかずやご飯はコンクリートと不良グループの足に踏みつぶされていく
ブヂリ、と何かがブチ切れる音が脳内で聞こえる
「…おまえらは習わなかったのか」
「…あ!?」
「食べ物は粗末にしちゃいけないってさ…」
そういうアラタの顔は笑顔だった
彼の眼だけは笑ってなかった
◇◇◇
「じゃああとお願いします」
数十分後
アラタの通報を受けて付近にいた風紀委員が急行してくる
本来なら自分がしょっ引けば問題ないのだが今回は腕章を支部に忘れてしまっているので他の風紀委員にやむなく頼んだのだ
定例会に真面目に出ていないから顔を知られていないから、というものあるのだが
「じゃあ後はお任せを。ご協力ありがとうございます」
「はい。では自分はこれで」
短く挨拶をしてその場から立ち去ろうと踵を返したときに
「あ、あのっ」
女生徒に声をかけられた
なんだろうとかと思い振りかえり女生徒に視線を合わせる
「その…ありがとうございました…」
涙ながらにそう言われてアラタはすこしドギマギしたがすぐ冷静になってこう返した
「どういたしまして」
短くそう返すと今度こそアラタは帰路についた
「…あ、弁当どうしようか」
すっかり忘れていたことをいまさらになって思い出した
◇◇◇
「遅いですわよお兄様!!」
支部に戻ってきた直後に開口一番待っていたのは同僚である白井黒子からのそんな罵倒だった
まぁ当然であろう
七時前後に出かけて帰ってきたのが八時とだいぶ遅れてしまってしまったのだ
「仕方ないだろう。たまたま行先のコンビニでトラブルがあったんだから…」
「トラブル? …まぁだったら大目に見てさしあげないこともありますけど…。あ、お弁当買ってきてくださいました? 私はともかく初春がおなかペコペコでございますから…」
そういって黒子は首を動かして視線を移す
そこには机の上に顔を突っ伏してぶっ倒れてるもう一人の同僚、初春飾利
なんだか魂が抜け出てそうでちょっと怖い
「まぁ弁当もちょっとトラブルがあったから今回はこんなもので我慢してくれな」
そういってコンビニ袋をさかさまにして中に入っているものを出してゆく
ちなみに袋の中身はパン
メロンパン、アンパン、クリームパンと無難な三品
「…はて、わたくしたちお金渡したはずじゃ…」
「さっきも言ったろ? こっちもトラブル。…先に買った弁当なくしてちまってね。今度なんかおごるから今日はこれで勘弁。すまん、この通り!」
アラタはその場ですぐに膝を折り黒子の方に向いて礼をする
日本に古来から伝わる伝説の謝罪、〝土下座〟である
「そうなんですの? …はぁ…今日は厄日ですわねぇ…」
苦笑いを浮かべてパンに向かって手を伸ばす、と伸ばし切る前に黒子は初春に呼びかけた
「初春、貴方は何食べますの?」
「く…クリームパン…を」
絞り出したようなか細い声だった
◇◇◇
「あ、そうだ白井さん、明日の約束忘れてないですよね?」
「約束? あぁ、お姉様のことですのね」
「なんだ、なんかあんのか?」
残業も終わり支部の戸締りを終わってさぁ帰ろうと支部を出たときに二人が話し始めた
初春はくるりとアラタに向き直って満面な笑顔を作り
「実は、御坂さんと会わせてくれるように白井さんに頼んでみたんです。そしたら明日OKって出たんですっ」
そう言ってくるくるとまわる初春
「おぉ、よかったじゃん。美琴は有名人だしな。なぁ、くろ―――」
そう言いながら黒子を見てちょっと思考が止まった
なんか知らないが黒子がぶつぶつ呟いている
おまけ何やら黒い笑みを浮かべながら
(…あれは何か企んでる。絶対何か企んでる)
そう思わずにはいられない、そんな笑みだった
◇◇◇
黒子や初春と別れ自宅という名の学生寮へ歩いていく
アラタが通う高校には男子は男子寮、女子は女子寮に住まう制度となっている
責任もってお子さんを預かる、という決意の表れか
「ま、憧れるからなぁ。超能力って奴は」
夜空を見上げながらなんとなしに呟いてみる
超能力
誰でも憧れたことはあるだろう
漫画やアニメでよく見るそんな力を使ってみたいと思ったことがないとは言えないのはアラタだって同じだ
しかし現実は非情なもので、才能がないものには容赦なく
「まぁ、俺は割と楽しくやってますけどね」
そうして視線を正面に向けたとき懐に入れた携帯が震えだした
「あ、そういやマナーのままだったな。…まぁいいか」
通話ボタンを押して耳に当てる
聞こえてきたのは聞きなれた声色
<アラタ。聞こえるか、私だ>
「…橙子か、こんな夜分にどんな用事だ?」
<わかりきっているくせに。…例のヤツが現れた。いま位置を送る>
言いたいことだけを言ってブツリと電話は切れた
だが慣れたものなので携帯を畳みまた懐へと戻す
その後また携帯にメールが送られた
確認すると位置はここから割と近くで走ればすぐ到着する場所である
「…さて、行くか」
改めて携帯を戻し、メールで教えられた場所へと走り始めた
◇◇◇
薄暗い路地の中でゆらりと一人の人影が歩いている
その人影に明確な意思はない
その人影は、否、人影のようなものはおおよそ人間とは思えない姿をしている
緑色の皮膚に頭には蜘蛛の足のような装飾品がつけられており、第一印象は〝蜘蛛〟といったところか
彼は人影でなく、怪人と呼称すべきだろう
獲物はどこか、と本能のままに首を動かす
背後でガタリ、という物音がなった
蜘蛛の怪人の首がぐるんと振り向いた
視線の先には一組の男女
それは噂好きのカップルだった
たまたま見た都市伝説サイトに〝闇夜に怪人を倒す謎の人物〟なる書き込みを見て興味本位に裏路地を歩き回っていただけである
まさかこのような事態に遭遇するなどとは、思ってもいなかった
「ね、ねえ…逃げようよ…!?」
「わ、わかってる…!! け、けど、足が…!?」
言いようもない恐怖に二人の足は完全に止まっていた
このままではどうなることか、そんな少し先の未来すら考えられなくなるほどに
「…獲物ダ」
怪人が小さく、それでいてはっきりとつぶやいた
その一言だけでこれから何をされるか、明確に理解した
このままだと殺される
それだけは今完全に理解した
怪人が一歩、また一歩と歩み寄ってくる
ただそれだけの単調な動きがさらに恐怖を倍増させる
そして三歩目を踏み出した時だった
カップルの背後から一人の人影がその恐怖を破壊するかの如く飛び出して怪人に拳を叩き込んだ
「…え?」
女は目を見開き、男はポカンと口を開ける
現れたその人物は黒の素体に胸・肩・腕・膝の各部にフォームごとの装甲を纏い、赤い複眼とシンプルな外見をしている
なかでも特徴的なのは頭部の黄色い二本角
それはどことなくクワガタを彷彿とさせた
「早く逃げて」
二人して呆けているとそのクワガタの人物が話しかけてきた
「急げ。まだ間に合う」
「は、はい! いこう!」
「う、うん!」
男が女の手を引いて一目散に走り出す
その背中が見えなくなるまで彼は見送った後、再び殴り付けた怪人に視線を戻す
蜘蛛の怪人はゆっくりと立ち上がってこちらを見た
「…ガ」
「悪いな。こんな遅いからもういろんな人に迷惑かかる前に…」
彼は地面を適当に見回すと一本の鉄パイプを見つけた
それ蹴り上げてキャッチすると同時、彼の体が青く変わり始める
変わると同時に赤かった複眼も青く変わり夜の路地に発光する
「潰させてもらう」
鉄パイプを突きつけるとその鉄パイプが形を変える
流水のごとく悪鬼を薙ぎ払うその武器の名はドラゴンロッド
「さぁ、始めようか」
そしてその武器を所持する男の名はクウガ
のちに仮面ライダーと呼ばれる男の一人である
これは学園都市に住まう一人の男の物語
笑顔を守らんと戦うものの物語
クウガ以外も出てきますよ
まだだいぶ先になりますが…