とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

20 / 79
いろいろカオス

割と前に言いましたが食蜂に大幅な改変アリです

こんな出来ではありますがどうかお付き合いください

お気に入り登録もありがとうございます

では#13、どうぞ


#13 水着とカレーと思い出と

夢を見た

 

吹雪の中の視界に見えるのは二人の人影

一人は白かった

かろうじて人間だとわかったが、その表情は吹雪にかき消され、見ることは叶わなかった

 

一人は黒かった

その姿は自分の変身した姿に似ている、というかそっくりだ

しかし放つその威圧感に足が止まる

 

「なれたんだね」

 

白い人影が言った

 

「究極の力を、持つ者に」

 

黒い人影がピクリ、と反応する

やがて吹雪も少し止み、黒い人影の顔が見えた

そこにはいたのはクウガだった

しかし自分が知るクウガではなく、パッと見の外見は真っ黒だ

全身は黒く覆われ、手足に鋭利な刃もある

しかしその顔は、どことなく優しさを感じさせる

 

やがて白い人影もその姿を異形へと変える

一見の外見なら黒いクウガによく似ていた

だが纏っている雰囲気は、クウガのそれとはまったく違う

 

そしてゆっくりと手を黒いクウガに向けると、黒いクウガの身体がボウッ、と勢いよく燃え上がる

しかし効果は薄いのか、黒いクウガも同じように開いた手を向けると、白い怪人の身体が燃え上がった

お互い燃えている状態で歩を進め、距離を詰める

やがて二人はその炎を振り払い―――真っ向から殴り合う

 

そこからは凄まじいの一言だった

互いを殴る度に血渋きが巻き起こり、雪が積もった地面を濡らし朱へと染めていく

下手な技術などはなく、本当に純粋な―――力と力のぶつかり合い

その激闘を見ていると、息をするのも忘れそうになる

やがて黒いクウガの一撃が白い怪人の腹部にあるベルトを捉えそれを砕いた

しかしお返しと言わんばかりに白い怪人も黒いクウガのベルトに拳を叩きこみそれを砕く

 

何時しか互いの変身は解けて、そこには二人の人間がただただ殴り合っていた

 

一人は楽しそうに

暴力による痛みを愉しみながら一人は自分の笑顔の為に拳を振るう

 

一人は悲しそうに

暴力による痛みに堪えながら一人は誰かの笑顔の為に拳を振るう

 

最後に、お互いの拳がそれぞれの顔面に直撃し、血を吐いた

それっきり、二人はばったりと倒れた

 

どちらが勝ったのかは、自分にはわからなかった

 

 

ふと、目が覚めた

 

「…夢?」

 

ものすごくリアリティがあった気がする

季節は冬ではないというのに身体が寒さで一瞬震えたくらいだ

 

「…黒い、クウガ…」

 

夢の中で見たその姿が忘れられない

戦いながらその人は泣いていたのだ

その状況の中でも、黒いクウガは誰かの笑顔のために拳を握っていたのだ

偉大な人だ、とアラタは呟く

天地がひっくり返っても自分はその人を超えることなどできはしない

 

「…俺は、自分が出来る無理をしよう」

 

世界を笑顔になんてできない

だからせめて自分の友達の笑顔だけは守り抜こう

そう決意を新たにした、何気ない朝だった

 

◇◇◇

 

「…水着のモデル?」

 

制服に着替えて朝食のアンパンをかじっていた時に御坂美琴から電話を受けた

内容は率直に言って水着のモデルをやらないか、というものだった

 

<ええ。後輩の子に頼まれちゃって…他にも初春さんとか佐天さんも誘ったから、アラタも誘おうかなって>

「…いや、別に問題はないけど…。大丈夫か? 俺モデルとかやったことねぇぞ」

<私だってやったことないわよ。…けど、息抜きと思ってさ>

 

息抜き、と言われてふむぅとアラタは唸る

確かに先日エライ事を体験し(インデックスの諸々事情)て割とヘビィな出来事が続いている

これはこれでまたいい機会かもしれない

 

「わかった。参加する」

<あんがと。そんじゃ、待ち合わせ場所は―――>

 

その後待ち合わせと集合時間を決めて、短く雑談して電話を切った

そして考える

水着モデルと言えば当然ながら女性が来る

それに一人だけ男子という構図はなんか嫌だ

そう考えたアラタは一人の友人に電話をかけた

 

 

<分かった。参加させてもらおう>

 

電話の向こうで風間が答える

 

<最近休みが取れていなかったからな。ヒカリも喜ぶ>

 

「ありがとな。正直一人で女性陣の中に行くのはちょっとこそばゆいからさ」

 

いつものメンツだろうけれどそれでも水着姿を見るのはなんか恥ずかしい

別に邪な気持ちなどはまったくない

断じてない、うん

 

<気持ちは分かる。明日は俺ものんびり楽しませてもらおう>

「うし。んじゃまた明日」

 

<おう>と短く挨拶をすると風間は電話を切る

アラタも同様に通話を切ってそれを机に置き、今日は寝ようと背伸びをした直後またピリリ、と電話が鳴った

そしてディスプレイに表示された名前を見て

 

「…操祈からだ」

 

なんでだ、と思い至って思い出す

そう言えば彼女が本を持ってきてくれたお礼に自分のお出かけに付き合ってほしいという約束をしていたのだった

 

<はぁい。夜分にしっつれい、貴方のアイドル食蜂操祈ちゃんだゾ?>

「切るぞ」

<早い早い早い! もぉちょっと話してよぉ!>

 

電話の向こうでわたわたとする操祈に対してアラタは再び携帯を耳に当て

 

「夜分ってわかってるなら手短に用件を言ってくれ。寝たいんだ」

<わかってるわよぉ。…それでね、用件は明日私と出かけましょうって事なんだけど>

 

そう言われて表情を曇らせるアラタ

時間の指定も彼女がするという話だったのを忘れていた

そしてタイミングも悪い

先約があるからと言って断るのは流石に気が退ける、かといって別の日にしてもらうのも彼女に悪い

そう考えて

 

「そうだ操祈、こっちから提案があんだけど」

<? 提案?>

 

 

待ち合わせのとあるビル内部

 

『うわぁぁぁ…!!』

 

そんな初春と佐天の簡単の声が耳に届く

二人が驚くのも無理はない

実際美琴自身もこのビルの内装に驚いていたのだ

 

見かける人はいかにもなエリートサラリーマンやタイトスカートを着込んだOLなどがおり一流企業という風格が見える

 

「お友達まで読んでいただいて、ありがとうございます」

 

隣にいる泡浮万彬に美琴は笑顔を作りながら

 

「気にしないでよ、こういうのはみんなとやった方が楽しいし」

 

少数でするより大勢でワイワイやった方が楽しいと美琴は感じている

対戦ゲームを一人でやるより二人で実際に戦った方が楽しいのと多分同じだ

 

「でもいいんですか? 私たちが水着のモデルなんて」

 

「大丈夫ですわ。どんな幼児体型でも科学の力でチョチョッと解決ですの」

 

「はうっ! ヒドイです白井さん…!」

 

初春にそう黒子がバッサリ答える

幼児体型、と聞いて美琴は自分のある一点に視線を落とす

…いや、少しはあるはずだ、うん

それに黒子も似たような体形ではないのか、と突っ込もうとしたがなんとなくやめておいた

 

「お待たせしましたー」

 

そんな時横合いから一人の女性が歩いてきていた

担当メーカーさんである

 

「今日はよろしくお願いします。…あれ、まだ何人か来て…」

 

「? お兄様なら遅れて―――」

 

 

「―――まぁ、白井さん」

 

 

「ぬがっ。…この声は」

 

黒子が若干ながら顔を歪ませ、声の方を見る

釣られて美琴や初春、佐天、泡浮、湾内が視線を動かし

 

「なぁ!?」

 

美琴も同様に声を荒げた

いや、黒子の時よりひどいかもしれない

 

「あらあら大勢いますわね? 社会科見学か何かかしら?」

 

「婚后光子…」

 

名前を言われた婚后がなぜだか着物を着込んでおり、手には扇子を持っている

その隣にいるのはアラタや黒子の同僚で先輩でもある固法もいる

しかし問題なのはそこではない

 

「なんだ。皆来てたのか」

 

その隣にいる風間大介とその相棒ヒカリ、そしてその隣にいる鏡祢アラタ…

そこまでは別に問題ない、許容範囲だ

しかしその隣は、まったく予想出来ない存在だった

というか、なんでそこにいるのかが分からなかった

 

「食蜂…!?」

 

常盤台の女王様で知られるあの食蜂操祈がアラタの隣にいたのだ

 

「悪い美琴、遅れた」

「あらぁ、御坂さんもいらしたのぉ?」

 

甘ったるい語尾に美琴は「え、えぇ」と狼狽える

正直に言って美琴は食蜂操祈という人間が苦手なのだ

派閥とかそういうのがどうでもいい美琴は女王様というキャラな操祈はどうも気が合わない

…しかし最近の食蜂からはそう言った噂を聞かない

現に初春や佐天らとなじんでいるし、たまに見かけたときにいつも肩からかけているバッグが見当たらなかった

 

「てか、まっさか固法もいたとはねぇ?」

「通ってるジムの先輩に頼まれてちゃって。私もまさかアラタがいるなんて思わなかったわ」

 

訝しむ美琴の視線に気づくことなくアラタは自然に固法と会話し始めた

 

「美琴から誘われてね。…ま、場違いだとは思うけどさ」

 

「そんなことないですよ。男性用水着もちゃんとございますから、エンジョイしてください」

 

担当メーカーの言葉に軽く安堵する

今日は珍しく水遊びが出来そうだ

 

「さっ、各々の自己紹介も終わったことですし、参りましょう」

 

バッと扇子を広げて婚后が担当さんと共に歩き出す

最初から最後まで黒子の婚后を見る目がジト目だったが気にしないことにする

 

「…ところで白井さん、あの人お知り合いなんですか?」

しかし初春が聞いてしまった

 

その問いに黒子はうなだれながら

 

「…知り合いたくはなかったでしたけどね…」

 

◇◇◇

 

担当さんによってそれぞれ試着室へと案内された

当然ながら男女別々である

 

「どれでもお好きなのをお選びください」

 

そう言って担当さんは席を外す

改めて男子水着部屋を見回すがなかなかの種類を揃えており、短パンのような水着と言えど抵抗が違ったり、普通に私服としても使用できそうなほどのクオリティを誇っているのだ

 

「…風間、お前はどんなの着るんだ?」

「別に。普通に水で遊べれば問題ないだろう」

「いや、それはそうなんだけどさ」

 

そんなやり取りのあと風間は適当に水着を吟味してから一枚を手に取り試着室へと入っていく

決めるの早、などと思いながらアラタも一枚一枚水着を見ていく

 

「…こんなんでいいか」

 

結果アラタが手にしたのはシンプルなデザインの短パンタイプ水着だった

それに水の抵抗が少ないTシャツを着こみ、上から半袖を羽織る

そして鏡を見て一言

 

「…あれ、これプール場とかにいる監視員じゃね?」

 

笛でもあれば完璧だ

しかしあったものなんだから問題はないと思うのだ

だって好きなの選んでいいって言ってたし

 

「…お前、バイトでもするのか」

 

同じタイミングで着替え終えた風間も似たようなそうでないような感想を口にする

苦笑いと共に振り返ると、そこにはどういうことか全身タイプのぴっちりした競泳水着を着た友人、風間大介が立っておられました

 

「…なんだ?」

「い、いや」

 

てっきり普通の水着かと思ったら競泳水着とは思わなんだ

…相変わらず予想の斜め上を行く男だこいつは

 

「…今なんか失礼な事考えてなかったか」

 

「いいや。考えてないって」

 

 

その後、担当さんの後ろをついていくとやがて広い空間へとたどり着いた

部屋を一言で表すならただただ広い部屋、である

 

部屋の中には今のところ男性陣(つまり二人)しかおらず女性陣はまだ来ていなかった

特にすることもないので二人で雑談でもしながら待っていると再び担当さんが戻ってきた

今度は着替え終わった女性陣も一緒だ

んで、開口一番

 

「…ぶっ!ちょ、大介!! なんてもん着てんのよ…! ぷぷっ!」

 

ヒカリがおもっくそ笑い始めた

まぁ普段の風間を知るものならこんな水着を着込むなど思いもしなかっただろう

事実、ほかのメンツも苦笑いである

 

ちなみに初春は花柄のワンピースに、美琴はシンプルなスク水タイプ(別にスク水ではない)、泡浮も美琴のと似た感じであり、青い模様が可愛らしい

佐天はビキニタイプだが腰から右足にかけてパレオと呼ばれる布を巻いている

身体のラインがはっきりと出ており、色気がある

…佐天に限らず、この場の女の子はほんのちょっと前まで小学生なんですよね、と考える思考を放棄した

んで黒子は…ぶっちゃけ一言で言うなればエロいである

しかしそれはスタイルが良い女性が着ればの話であり、ぺったんな黒子が来てもただの変態としてしか見れない

…まぁそれはそれで失礼なわけだが

 

「…つか水着でも変態って…。ブレないなお前は」

「まぁ。それは褒め言葉と受け止めておきますわお兄様」

 

今日も黒子は平行運転

苦笑いを浮かべ今度は固法へと視線を移す

まず一番最初に目に入ってきたのは白い生地に黒い玉模様に包まれたモノだった

年代的に同年齢でそこそこスタイルは良いと思っていたがここまでとは

下手になんか口にすると気まずくなるのでだんまりを決め込むことにした

 

大介の相棒、ヒカリは初春と同じようなワンピースだった

しかし初春以上に少しフリフリが多い気がする

そして黒子の学友婚后光子

彼女は大胆な赤い水着でお腹や横のお腹を見せつけるデザインで色気がある

最後に食蜂操祈

彼女は青いしましま模様のビキニを着ており、体のラインがはっきりと出まくっている

その発育の良さから本当に中学生かこいつは、と何度思ったか

 

「あらぁ? 私の身体にアラタったら釘づけかしら?」

「アホな事言うな。…ところでここで撮影すんですか?」

 

食蜂をスルーしつつ担当さんに聞いて見る

モデルというからにはカメラマンさんがいるのかとも思ったがそう言った人もおらず、そもそもこの部屋は何にもない

 

「あぁ。それなら大丈夫です」

 

そう言って担当さんは手に持ったリモコンをぽちっと押した

と、次の瞬間何もなかったその部屋が、南の島のような海へとリデザインされる

 

「このスタジオは様々なシチュエーションを再現できるんです」

 

ポチ、とスイッチを押すたびに繁華街や教室、あげく北海道などの景色が映し出されていく

学園都市パネェ

 

「…この砂、触れるぞ」

 

地面に手を伸ばした風間がサラサラと砂を弄ぶ

見た感じでも砂の質感はまさしく本物そのものであり、ホログラムとは思えない

 

「撮影はすべて自動で行われるので、皆さま自然体で楽しんでくださいね」

 

 

『え?』

 

全員の言葉が重なる

もう一度言おう

 

学園都市パネェ

 

 

自然体で遊んでと言われても正直何をすればいいか分かったもんじゃない

しかし婚后は椅子に座り様々なポージングを作ったりしており、撮影してくださいと言わんばかりなポーズをしている

ていうかノリノリだ

 

その一方で美琴と黒子は何やら追いかけっこをしているようで、あれはあれで自然体だと思う

 

「なるほど。あれが自然体ってわけね」

 

と国法が納得し

 

「流石御坂さま…」

 

と湾内と泡浮が尊敬の念を向ける

 

「…んじゃまぁ、我々も見習いますか」

 

軽くその場で準備運動したアラタが呟いた

まぁ要はだ

 

思いっきり楽しめ

 

それでいいのである

 

 

まずビーチ

 

各々にビーチバレーを楽しんだり、美琴が黒子に向かってヘッドロックを極めていたり、なんだか棒付きアイスをやたらエロく舐めてる婚后を尻目にアラタは木の下で陽向ぼっこ、もとい日陰ぼっこをしていた

 

大介も固法の付近のハンモックで横たわりながら本を読んでいる

 

「あらアラタ。貴方はここでのんびりとぉ?」

 

「皆テンション高いからな。とりあえず体力の温存って奴だ」

 

様々なシチュエーション、と言っていたからまだまだこんなものではないだろう

こういった海と言った状況は学園都市の外にでも行かなければ体験できないため、こういった科学力で再現できるこの会社は凄まじいの一言だ

 

「じゃあ私も隣に失礼してぇ…」

 

そう言いながらいそいそと食蜂が付近に腰掛ける

 

その後は別に会話などはなく、ただ静かな時間が過ぎていく

まぁ耳には黒子の断末魔というか喘ぎ声というかわけわかんないのが聞こえてきたが気のせいだとしてスルーする

 

そんな声を聞きながらたまに吹きすさぶ風を肌で感じていた

 

 

 

次はプール

デザイン的には屋外に作られていると言った感じだ

 

そんなプールサイドにて

 

まだ美琴と黒子が追いかけっこを続けていた

 

「…飽きないなお前ら」

 

「私はうんざりだけどねっ!」

 

苦笑いと共にこめかみをひくつかせながら美琴は答える

そして美琴に向かってダイブをかます黒子の顔に手刀を叩きこんだ

「あふっ」と短く嗚咽を漏らした後、黒子は地面へと突っ伏し、ビクビクと痙攣させる

…少し怖い

 

「まぁそんなお前らだから安心して見てられるというか…」

「アンタも黒子に追いかけられればわかるわよ。…それと、なんかその水着って監視してる人みたいよ?」

 

風間にも言われたことをさらりと美琴にも言われた

…自覚はしてたがそこまでなのだろうか

 

「自然体って言われても、ここにまで来て黒子の相手すんのも疲れるわよ…。全然休めない…」

「…気持ちはわからんでもない」

 

これほどではないにしろ普段の美琴は割と苦労人である

 

「…なんか飲み物持ってくるか。何が良い美琴」

「なんでもいいわ…」

 

軽く息を吐く美琴に苦笑いで応えるアラタ

そんなんでもどことなく楽しそうな表情を浮かべる美琴は内心では満更でもないのだろう

 

 

次なる場所はキャンプ場

 

「…またぶっ飛んだ場所の転換ねぇ?」

 

目の前のテーブルにはたくさんの野菜に飯盒、ジュースや牛乳などの食材が積まれている

ためしにちらりと手をやるとこれもしっかりと触れる

手に取って感触を確かめてみるとこいつは本物だ

 

「すみません」

 

と、その時担当さんが部屋の中に入ってきた

表情に申し訳なさそうな笑みを浮かべて

 

「実はカメラのシステムがエラーを起こしてしまいまして…すぐ直ると思うんですけど…それまで休憩しててください」

 

「はぁ…あ、けどこの食材は」

「あ、好きに使っていただいて結構ですよ、本物ですから」

 

笑顔と共に担当さんはててて、と戻って行った

…何だか妙に取り残された気分になってきた

アラタは適当に玉ねぎを手に取り、この中で一番年長者である固法に視線を向ける

 

「…どうする? 固法」

「そぉね。…この人数でこの食材と言ったら…カレーしかないでしょう!」

 

 

固法の一言で一行はカレーを作成することになった

幸いにも食材は結構な量があるからメンバー分作るのに苦労はしないはずだ

 

「ねぇ、アラタ。…そのぉ、私料理したことないんだけどぉ…?」

「え? マジでか。…意外だな」

 

食蜂のカミングアウトに少々面食らった気分になる

女王様と言われてるなら料理のひとつや二つさらっと作れると思ってたんだが

 

「あ、あの…」

 

そんな食蜂のカミングアウトに便乗するかのように、婚后も遠慮がちに手を上げる

 

「その…恥ずかしながら、わたくしも料理したことなくて…」

「大丈夫ですわ婚后さん。わたくしたちも作り方わからりませんから…」

「えぇ、作り方を教えてもらいながら、ゆっくり料理していきましょう?」

 

そんな婚后に湾内と泡浮がフォローをいれる

二人に励まされたことが火種となったのか、婚后も「そ、そうですわねっ」と少し力を入れなおしたようだ

 

「んじゃ、楽しくみんなで作るをテーマに作ろっか!」

 

固法の号令に合わせその場の皆が「おー!」と元気よく返事をした

それと同時にふと思った疑問を口にする

 

「ところでごはんはどうするんだ?」

「え? それはもちろん飯盒で―――」

「いや、火がないんだけど」

 

かちり、と何度かガスボンベのスイッチのオンオフを繰り返しているがウンともスンともいわない

こういった機材の確認は大切だと思い見つけたは良いが一向に火がつく気配はない

そんなガスボンベを固法に見せる

彼女はそのボンベを見ながらテーブルに置き、何かを閃いたように手をポン、と叩いた後美琴を見た

 

「…へ?」

 

ライス部分は美琴に決定しました

 

 

「大介、私甘いのがいいな」

 

各々に野菜を切っている作業の中、ヒカリがぼそりと呟いた

 

「甘いの? …あぁ、甘口とかか」

 

ヒカリは基本的甘いのを好む

別段風間はそこまででもないのだがどちらかというと辛いのは少々苦手だ

 

「…甘口とか辛口とか、分けた方がいいかもな。アラタ」

「ん?」

 

とんとんと向かいのテーブルで食材を切っているアラタに風間は言葉を向ける

向けられたアラタは一度包丁を置いて風間の方へと視線をやった

 

「どした風間」

「いや、お前は辛いカレーを作ってくれ。好みで分けられるようにしたいんだ」

「あぁ、なるほどね。確かに甘いカレーは好きなのもいるかもしんないし…わかった、一通り切ったら取り掛かるよ」

「助かる。辛さは任せるぞ」

 

そう風間が言うとアラタは「任せれた」と返答して再び野菜を切る作業に戻って行ったのを確認すると風間はヒカリに向き直り

 

「俺もカレー作りに取り掛かる。ヒカリ、野菜切るの頼んでいいか」

「合点っ」

 

ヒカリにそう言った後、風間はテーブルに置かれたカレールーの確認に取り掛かる

先ほど返事したヒカリも危なかっしい手つきではあるものの、ゆっくりではあるが野菜を切る事に集中し始めた

 

 

「ぐぬぬ…」

 

御坂美琴は飯盒相手ににらみを利かせていた

ブロックを縦におき、金網を間に乗せてそこに飯盒は佇んでいる

美琴はそんな飯盒に両手を翳し集中していた

ご飯を炊くために

 

(気をつけろ私…油断すると吹き零れる…!)

 

両手から発せられる微弱な雷により、内部に熱を加えてお米を炊いているのだ

しかし機械ではなく完全な手動なため、少しでも加減を間違えるとその時点でお陀仏なのだ

 

「御坂さぁん。もう一つ頼めるかしらぁ」

「え!? まだあるの―――ってあぁ!?」

 

食蜂の声に居を突かれて、完全に気を取られた

一瞬の力みが飯盒にダイレクトに伝わっていき内側ふじゅる、とお米が零れ落ちた

 

「ご、ごめぇん…また持ってくるから」

 

苦笑いと一緒に噴き出た飯盒の持ち手を持つ

よいしょと立ち上がる食蜂を見て何気なく美琴は彼女に向かって口を開いた

 

「…あんた、変わったわね」

「? そぉかしら。なるべくいつも通りを心がけてるんだけどな」

 

小さい笑みと共に食蜂は戻っていく

彼女の後ろ姿を見ながら同様に微笑を作り美琴は呟いた

 

「変わったわよ。…少しだけど、笑うようになってる」

 

 

「やっぱり、にんじんはいちょう切りですよね」

 

「え? カレーの時は乱切りじゃないの?」

 

一方こちらは甘口用の野菜を切っている初春と佐天

ちなみにいちょう切りとは読んで字のごとくいちょうの葉っぱみたいに切る事である

そして乱切りとは食材の大きさを揃えずにアバウトに切る事、つまりはだいたいな感覚で切る事を指すのだ

 

「ふぇ? いちょうの方が可愛いと思うんですけど…。火の通りだって早くて」

「ちっちっち。わかってないなー初春。カレーの野菜は大きすぎず小さすぎずが基本でしょう?」

 

その言葉にむむ、と初春は反応し

 

「うちのカレーは細かく切ってルーと一体化させて食べるんです!」

 

今度は佐天がむむむ、反応する

 

「細かくなんてありえない!ジャガイモもちゃんと面取りして、見栄えよくする方が大事じゃんっ!」

 

ちなみに面取りとは材料の角を削り取る事で、この用語は建築業でも使われる

 

「見栄えよりも味が大事ですっ!」

「味だって美味しいんもんっ!」

 

一触即発

そこまでヒドイものでもないが二人にも譲れないものがあるのだろう

むむむむむ、と二人は互いを見つめて

 

「アラタさんはどっちがいいと思いますか!? もちろん小さい野菜ですよね!?」

「いやいや! ここはやっぱり大きい野菜ですよね!?」

 

あまりにも唐突に話を振られたアラタは「え?」と一瞬戸惑ったような声を上げるがすぐにうーんと考えて

 

「…半分半分でいいんじゃね?」

 

割と現実的な事を言ってその場を纏めました

 

 

「…終わった」

 

長きに渡る飯盒との戦いがようやく停戦を迎えた

何しろ人数が人数だ、飯盒の量もそれなりにあったが黒子の地道な応援(?)のおかげで何とか乗り切れた

カレーの方もほとんど準備が完了し、後は煮込むだけだそうだ

 

「お疲れさん。美琴」

 

カレーの場所からアラタがこちらの方へ歩いてきた

両手にはコップがあり、中には水が淹れてある

 

「ほら、水。黒子も」

「ありがと」「感謝ですわ」

 

正直に言って全くと言っていいほど給水が出来なかったから、持ってきてくれた水には素直に感謝だ

コップに口をつけて一息に喉に流し込む

程良い冷たさの冷水が喉を通り嚥下していく

 

「万が一火がなくても、これでご飯はばっちりか?」

「そうね…。正直に言えばもうやりたくないけど」

 

電気で炊かねばならない状況が来ないことを切に願う

 

「そっちは? どう? カレーの出来栄えは」

「まぁ普通だよ。可もなく不可もなく、な。辛口と甘口があっけど、どっちがいい?」

「じゃあ甘いのにしよっかな」

「わたくしはそれらを混ぜて中辛にしますわ」

「ちょ、ようやる…。まぁ同じルーだし、問題ないか」

 

コップの中にある水を飲み干してようやくひと段落つけた

そして思う

 

「…たまには、こうやって皆で料理とか作るのもいいわね」

「そうですわね。…つい先日幻想御手(レベルアッパー)事件を解決したとは思えないくらい平和ですの」

 

それを言ってしまったらアラタは本当に先日偉い目に遭ってたりするのだが

下手に口に出すとまた余計な心配を抱かせてしまうので心の中に留めておくことにする

 

「…続くといいな。こんなのが」

「えぇ。…そうね」

 

どことなく呟いただけだがどこかしんみりとした空気になってしまった

いてもたってもいられなくなったアラタは軽く咳払いをして

 

「ほら、そろそろカレーが出来んぞ。行こうぜ」

 

空気を変えるかのようにそんな事を美琴と黒子に言う

それに答えるように二人は立ち上がり、黒子は先導して

 

「先に行ってお皿やらを確保に参りますの」

 

と言って行ってしまった

別段競争などはしていないが、彼女がなんとなくそうしたかったのだろう

 

「アラタ」

「ん?」

 

不意に声をかけられる

アラタは一祖立ち止まり美琴を見るが、彼女は止まることなく彼の顔を見ながら隣を歩き過ぎ

 

「無茶しないでよ。…いろいろと、ほどほどにね」

 

そう美琴は笑みと共にアラタに言った

言われたアラタは少しきょとんと言ったような表情のあと笑顔を作り

 

「あぁ。わかった」

 

そう短く返した

 

―――そうだ、自分は大丈夫

何があっても、彼女の笑顔は守りきろう

彼女だけではない、自分を取り巻くすべての人たちの笑顔を守るために

それを脅かすものたちに対して、この拳を振るおう

 

 

ここまでいろいろあったもののカレーは見事に完成した

木でできたテーブルに人数分のカレーとその中心に余った野菜で作った簡素な野菜サラダ

割とバランスは取れていると思う

ちなみに魚介類もあったので、甘口のカレーはそういった魚類を混ぜたシーフードカレーとしてある

そんな訳なので黒子は普通に甘口シーフードを選びました

 

「それじゃあっ、いただきますっ」

 

固法が両手を合わせそう言った

他の人らも固法に習い両手を合わせて「いただきますっ」と口をそろえる

そして皆それぞれ自分の前にあるカレーにスプーンを持っていく

 

「…お、なかなかちょうどいい辛さだな」

「まぁ皆食べるからな。いろいろ試行錯誤したけど」

 

アラタが担当した辛口カレーはおおむね好評だった

ここが自分宅だったら正直このカレーはもっと辛くしていたと思う

どうでもいいがアラタは辛党だ

 

「細かい野菜も味が出ていいね」

「大きいのも美味しいですっ」

 

先ほどまで野菜論争をしていた初春と佐天も和解し、それぞれ感想を言い合っている

 

「それはそれとして、アラタって意外に料理できるのねぇ?」

「一人暮らしだし少しは出来ないとな」

 

当麻だって出来るんだし

そしてそれを言ったらプロ並みの腕前を持つ天道だっているのだ

もしこの場に天道がいたら「プロ以上と言ってもらいたいね」なんて言われそうだが

 

「このシーフードカレー、甘さの中にも魚介の美味しさが凝縮されてますわっ」

 

婚后が笑みを浮かべもう一口、二口とカレーを口に運んでいる

それに合わせるように泡浮と湾内も頷いた

同様に今度はヒカリもカレーも口に運ぶ

 

「くぅ…! 大介のカレーはやっぱり美味しいなぁ…」

「基本通りに作っただけだ。この程度はお前にだってできる」

 

どこまでも大介は謙虚だった

 

そして自分の前にあるのは辛口のカレーだ

さっきも言ったがもう少し辛くつくろうと思ったが皆も食べるという事なので今回は無難にレシピ通りに作成した

アラタはカレーにスプーンを入れ、一さじすくい、そして口に持っていく

程良い辛みと野菜の美味しさが口内に広がっていく

…うん、自分的にはもう少し辛い方が好みだ

 

「うーん…皆で作るカレーもさ、なかなかいいわね」

「そうですわね」

 

美琴の呟きに黒子が同意する

口には出してはいないがアラタもそれには同意したい

と、皆がわいわいしながら食事をしていたその時だった

 

<お待たせしましたっ。システムが復旧しましたから、撮影を再開します>

 

「え!? もう!?」

 

慌てた様子で美琴が椅子から立ち上がった

そんな彼女をいさめるように担当さんの声は響く

 

<あ、食べてて大丈夫ですよ。…とりあえず、一枚っ!>

 

そんな担当さんの掛け声と共に、軽く混乱状態になりながら一同は適当に集合する

皆で作ったカレーを持ちながら撮影したその写真の人たちは、それぞれとてもいい笑顔をしていた

 

 

そんな撮影も終わりさて帰ろうとした矢先の事である

うっかり着替えの所に置き忘れてきてしまった携帯を取りに戻っていた時にそれは起こった

 

「…っと、あったあった。完全に忘れてたよ…気づいてよかった」

 

無事携帯の回収を終え、さて戻ろうか、となったときそれは視界に入ってきた

先ほどまでみんなで撮影していたホワイトルーム(仮名)である

今後こういった施設に来るかなど分からないし、興味もあったアラタは戻る前にそのルームを焼き付けておこうと何気なく足を踏み入れた時、それは視界に映ってきた

 

「うー…やっほーっ!」

 

そこには誰だお前と突っ込みたくなるくらいにハシャギまくる御坂美琴の姿が

しかも彼女は自分が来訪したことにまだ気づいていない

 

「んー…やっぱりこの水着可愛いっ! あっはははっ!」

 

彼女が来ている水着は撮影していた時のスク水タイプでなく、フリフリのついた水玉模様の水着を着用していた

そして悟る

あぁ、やっぱり撮影の時は我慢してたんですね

 

「きゃははっ、そおぅれっ! ははは―――は!?」

 

目があった

静まる美琴、黙るアラタ…なんて声をかければいいのでしょうか

 

「―――!」

 

徐々に美琴の頬が羞恥に染まっていく

まるでトマトだ

やがてゆっくりと、かつ徐に手を上げる動作を取った

なんだろう、と最初は思ったが、すぐに察した

その手の周りを飛び交う青い閃光によって

 

「―ぅ――と…――!!」

 

彼女は恥ずかしさのあまり声も上げられないようで

そしてこれは避けてはいけないんだろうなぁ、と頭の中で思いながらアラタは友人の言葉を借りた

 

 

 

「不幸だァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 

彼の空しい叫びと共に、そのルーム内に彼女の雷撃が響き渡った

その一撃を受けた時、彼の体の中にあるアマダムが反応したが、それに気づくことはなかった

それどころではなかったからであるが

 

いずれにせよ、これで水着のモデル撮影は終了した

皆の心に、楽しい思い出と、笑顔を刻みつけて

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。