とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
申し訳ない
前回のウィザードでのディケイドの台詞の少なさに早くも絶望しかけた私
けど次回は本人も出るし大丈夫だよね
誤字脱字ございましたらご報告を
それではどうぞ
春上衿衣は
そんな事を聞いたのはほんのついさっきだった
「私と絆里ちゃんはね? 同じ施設にいたの。…人見知りで友達がいなかった私だけど…、絆理ちゃんとだけは仲良くなれた。精神感応でいつも話しかけて来てくれて…。だけど、別の施設に移されて…それっきり」
恐らくその別の施設というのが木山春生が担当した施設なのだろう
そしてそこで、枝先絆理はある実験に巻き込まれた―――
「この頃ね? また聞こえてくるの。…助けてって」
彼女はネックレスについたロケットを見ながら呟いていく
「苦しいって…言ってるのに、どこにいるのか、どうしていいか分かんないの。助けたいのに…何にもできない…!」
彼女は目尻に涙を浮かべていく
自分の無力に気づいていながらも、彼女はそれでも助けたいと願った
枝先絆理の悲痛な声を聞きながら、春上は自分を嘆いて…
「大丈夫です! お友達は、必ず見つけてみせます!」
そんな春上を励ますように初春は声を上げる
「なんてったって! 私は風紀委員なんですから!!」
「…初春さん…」
初春はそう言って笑顔を浮かべる
こう言う明るい子がいるから、きっと一七七支部は活気づいているのだろう
黒子がボケて初春がツッコみ固法が纏め、アラタがボケてまた誰かがツッコんで
「そうだよ! こう見えても初春は優秀な風紀委員なんだから!」
「そうですわねぇ、初春は優秀ですわねぇ」
「ちょ! 白井さん! なんですかその含みのある言い方!」
突っ込みを入れつつ初春は笑顔を作りながらまた春上に顔を向けて
「…ですから、安心してください。…必ず見つけてみせますから」
「初春さん…、ありがとうなの…」
そう言う春上はどことなく涙目だった
そしてネックレスを彼女は優しく、それでいて強く握りしめて
◇
初春と佐天をそばに残し、アラタと美琴、黒子の三人はテレスティーナを室外へと呼び出した
そして先ほど感じた事を美琴は伝えていく
「
どうやらその事件の事も彼女は知っているようで、案外話は早かった
「…その犯人、木山春生の過去を知る機会がありまして…その中に、枝先さんの姿が」
そう言いながらアラタは確認するように美琴をちらりと見た
応じるように美琴はゆっくりと頷く
「…暴走用の法則解析用誘爆実験…。そんなものが…」
「その実験に関わってたのが木原って言う人らしいんですけど…」
美琴の呟きにテレスティーナはピクリと反応した
そしてすぐに顎へと手をやって
「…もしかして、木原幻生…?」
「? 誰です、その人は」
アラタが問い返すとテレスティーナは頷いて
「割と有名な科学者よ。いわゆるマッドサイエンティストね。…その人なら、人体実験を行使してもおかしくないわ。…今は消息不明らしいけど…。けどその実験が本当なら、ポルターガイストの原因はその子供たちなのかもね」
「…どういう、ことですか」
彼女は頷きながら解説してくれた
簡単に言ってしまえば、その眠っている子供たちかもしれない、という仮説
「けどその子供たちは今も眠ってるって…」
「意識がないまま能力が暴走しているとしたら?」
「…!」
意図的、ではなく無意識に
だとするなればその子供たちは自分の意思とは関係なく能力を暴走させてしまっているという事なのか
その考えを否定できない自分に少し苛立った
「…その子供たちは、今どこに?」
テレスティーナの問いに首を振る
事件の後、警備員が捜査してはみたのだが、見つけることは出来なかったのだ
テレスティーナは「そう…」と言いながら徐にマーブルチョコを取り出して
「なら、最初は探すとこからね。…今日のラッキーからは青…」
そう呟きながら彼女は筒の容器をシャカシャカ振る
そして自分の掌に中身を一粒
出てきた色は青だった
「ふふ。幸先いいわね」
そう言うと彼女はそのチョコを口に放り込んだ
相変わらず、その行動の意味が分からない
運試しかなんかだろうか
◇◇◇
「ちょ、ちょっと待ってください、え、となると…枝先さんが木山の元生徒さんで、その子供たちがポルターガイストの原因…てことですか?」
帰り道の電車内で
先ほどの事を佐天と初春に話した
そのことには初春はどこか苦い顔を浮かべ、佐天は素直に驚いた
「…仮説だけどな。場所も特定できてないし、…そこの所は…初春に頼りたいんだが…」
すなわちそれが何を意味するのか
それは…春上衿衣の友人を疑うという事だ
先ほど春上の疑惑が解けてすっきりしそうになった二人の間にまた気まずい空気が流れる
初春は、黙ったままだ
「…、」
「う…初春…?」
恐る恐ると言った様子で佐天が問う
しばらくして、彼女は
「もちろん探します。…だけど、春上さんの次はその友達を…疑うんですか?」
言葉にされると辛いものがある
アラタはそれに返す言葉が見つからず、ただ時間が過ぎるのを待った
待つしか、出来なかった
◇◇◇
初春飾利が怒るのも無理はない
優しいから、というのも理由になるかもしれない
そして自分とアラタは結構な付き合いになる
だから、彼女は裏切られた気持ちになったのだろう
黒子は「風紀委員としてお兄様は間違っていませんわ」と励ましてくれた、があまり気休めにもならなかった
心遣いは嬉しかったがそれについてはどうにもすんなりと頷けなかった
確かに風紀委員として間違っていないだろう
しかしそれはあくまで風紀委員として、だ
人間としては、褒められたものではない
「…悩んでも仕方ないか」
割り切ったつもりだった
しかし全然割り切れてなどいなかった
彼女が何を言ってきても、ポーカーフェイスを貫こうと思ったのに
存外、自分もメンタルが弱いと思い知る
アラタは適当に服を脱ぎ捨てるとお風呂場に入って適当に身体を洗う
そしてまた服を着るとアラタはベッドに横たわった
◇
翌日、アラタは一七七支部へ顔を出さず、そのまま第二左探偵事務所へと向かった
今自分があの場にいては、また空気を濁らせてしまうと思ったからである
「木山春生の供述によると、被験者は約十名。皆植物状態になってしまい、医療機関に分散して収容された…ってう話だけど」
「だけど、入退院を繰り返して消息を絶ってんだろう?」
翔太郎の言葉にフィリップが頷く
そしてフィリップはふと近くの椅子に座っているアラタを見た
彼は何食わぬ様子で資料を見ており、パッと見の外見なら普段通りと変わらない
「…翔太郎、どうしたんだいアラタ」
「俺たちにはわからねぇよ。…ああいうのは、当人で決めねぇとな…っと」
翔太郎はコーヒーを淹れ終わると一つをフィリップに渡し、もう一つを自分の前に置く
そして三つ目のカップにガムシロを入れかき混ぜるとアラタに向かって持っていく
「息抜きも必要だぜ? ほら」
「あ…、ありがとうございます」
そう言ってアラタは笑みを浮かべてカップを受け取る
笑ってはいたが、どことなくその笑みをぎこちなかった
と、そんな時彼の携帯が鳴った
「…っと…すいません」
断りながらカップをテーブルに置き、アラタは携帯を取り出した
番号は非通知だった
「はい、もしもし」
<あ、鏡祢君? 私よ、テレスティーナ>
電話の相手はテレスティーナだった
しかしどうして番号を知っているのだろう、とは疑問に思ったがきっと学校でも調べたのだろう、と勝手に結論づけて応対する
「はい…どうしました?」
<えぇ、…その、驚かないで聞いてね?>
そこで電話口でテレスティーナがある事実を告げた
それを聞いたアラタは
「…えぇ!?」
驚かないで、と言われたが驚かずにはいられなかった
◇
テレスティーナに言われた場所に行くとあるカフェテラスについた
そこには佐天と美琴もいて、同じ席にはテレスティーナも座っていた
美琴はアラタを見たとき、何か言おうとしたが、結局黙ったまま、なにも言わなかった
アラタも席に座り、美琴がさっそく本題を切り出した
「…それで、木山春生が保釈されたって」
そう、本題はそれだ
木山春生の保釈
「えぇ。例の話を聞こうと思って、拘置所に行ったの。そしたら…もう、ね」
「…いくらなんでも早すぎる」
「あれだけの事しておいて、保釈が認められるんですか?」
彼女がしでかした罪はとてもじゃないが軽いものではない
だというのに保釈が認められるとは到底思えない
「…子供たちに繋がる糸が、切れたわね」
「…あれ? でも木山って…子供たちを助けるためにあんな事件起こしたんですよね? それなのにその子たちを利用するってのは…」
「おかしくないでしょう?」
そんな佐天の疑問を容赦なくテレスティーナは斬った
彼女はコーヒーのカップを皿に置きながら
「学生達の能力の憧れさえも、利用するような女よ?」
どこか冷めた瞳でテレスティーナは言った
だがそう言われると頭の中に疑問が残る
元はと言えば木山春生は昏睡した子供たちを助けるためにあのような事件を起こしたのだ
学生たちの憧れを利用こそすれ、いくらなんでも子供たちを利用するような真似をするだろうか
対峙した時、感じた眼光からは鬼気迫る感情をアラタは感じたのだ
他の三人が黙る中、アラタは一人、考えていた
◇
「はい、息抜きも、必要ですわ」
「…ありがとうございます白井さん」
一七七支部にて
パソコンの前に付きっ切りな初春に黒子はコーヒーを差し出す
初春は伏し目がちになりながらそれを受け取る
「…、お兄様の事…あんまり責めないでください」
黒子はそう呟く
もちろん初春だってわかってる
アラタだって本心でそう言っているわけじゃない
けれど、たとえ捜査であっても友人を疑うという行為が許せなかった
そんな自分を気遣ってかは分からないが、だから彼は今日を顔を出せなかったのだろう
「早く子供たちを見つけます。…アラタさんとも…仲直りしたいですし…」
「…そうですわね。でも体調の管理はしっかししてくださいな?」
そう言うと初春は少しだけ笑いを見せながら「はい」と頷いた
そして彼女は再び画面に向けて―――
「待って」
黒子が気づいた
「? 白井さん?」
「このAIM拡散力場の共鳴による…RSPK症候群の集団発生の可能性…」
◇
同時刻
「共鳴?」
「あぁ。同じ系統のAIM拡散力場が共鳴する…って言うんだよ。この論文は」
フィリップはばさり、と紙を纏めながら
「まず一人の能力者が暴走した能力者に干渉されるとする。その後で同系統の能力者がどんどん干渉して共鳴していくって具合だね。それでいて、この同系統、というのが厄介でね」
これに関して、御坂美琴を例に例えてみよう
彼女の能力は大まかに言うと雷を操る力だ
それを細かくすると電場を操る力と磁場を操る能力を秘めている
故に彼女は複数の能力者と共鳴するのだ
「これは行方不明になってる子供たちにも同じことが言える。もし、その子供たちが皆、暴走してしまったら…影響力は凄まじいことになる。数字に換算して、おおよその七十八パーセント」
「七十八って…もうそれじゃあ、学園都市が壊滅しかねないじゃんか!」
フィリップは頷く
この学園都市の大半は能力者…
似たような能力者なんて探せば溢れかえるほどいるだろう
それはが全て共鳴などしてしまったら―――
考えるだけで恐ろしい
「け、けどこの論文が正しいってことは…」
「執筆者を見てごらん」
そう言ってフィリップはもう一枚紙を渡してきた
恐らくそれに執筆者が乗っているのだろうか
渡された紙を見て、そしてそこに映っている男を見て驚愕した
「この男…!?」
乗っていたのは木原幻生その人だったのだ
「僕たちもあの時彼女の記憶を見てしまったから、彼がどんな人間かはわかってるつもりだ。…それでも、最初にこの論文を見つけた時は驚いたけれどね」
木原幻生
木山があのような事件を引き起こしたきっかけを作った張本人―――
「念のため、この男についてもちょっと調べてみた。今現在は消息不明。関連していた研究所も全部封鎖されていたよ。…ただ、一件だけ見覚えある研究所があった」
そう言ってまた一枚の紙を渡し、ある写真を指差した
指された研究所は木山の記憶に出てきたものだった
「たぶん誰もいないかもしれないし…もしかしたらいるかもしれない。…行くかい?」
フィリップはそう声をかける
答えはもう決まっていた
◇
時刻はすでに深夜
すっかり寝静まった学園都市をアラタはビートゴウラムで駆け抜ける
何故ビートゴウラムにしたかというと、なんとなく一人では寂しかったからだ
「…悪いなぁ、こんなことにつき合わせて」
別に帰ってくる言葉などあるわけでなく、ただ思いつきでゴウラムの装甲を軽くなでる
もともとは馬に装着する鎧らしいがゴウラムは半ば強引にビートチェイサーに装着してくれているのだ
思えばこのゴウラムは青子が持ってきて以来、いつも自分を助けてくれた
未熟だったころから…今に今まで
「いつもありがとうな。ゴウラム」
ガラになく物思いに耽ってしまった
急いで例の研究所に急ぐとしよう
そう自分に言い聞かせてアラタはハンドルを切る
礼を言ったとき、ゴウラムの赤い目が輝いた気がしたが、アラタは気づくことはなかった
…
「…ついた」
しばらく走らせてると件の研究所の入り口に辿り着いた
案の定入り口はテープでふさがれており、塀の高さも結構なものだ
常人ならば入る事は難しいだろう
アラタは少し後ろへ下がって距離を取ると一気に駆け出した
なんとか手をかけることが出来れば…と、思ってるうちに塀のてっぺんに手が届く
ここからは腕の力だけでいけるはず…
「よっと…! ゴウラム、ちょっと待ってな」
そう言って飛び降りて施設に入ろうとした時だ
バヂィンッ!! とやけにでかい音と共に突如として研究所の明かりがついた
灯りだけではない、恐らくこの分ならセキュリティも復旧しただろう
もしかしたら中に誰かいるのか、と思いやっと上った塀をまた飛び降りて、ふと誰かの視線に気づいた
「よっす。アラタ」
そこにいたのは予想もできない人物
顎に生えたひげがワイルドな―――
「伊達さん!?」
「おう。戦うおでん屋、伊達明だ」
◇
思えばおかしいと思ったのだ
いつもいるはずの場所にたまにいないときがあったし、屋台があっても本人がいないときが多々あったし、ここ最近になってその頻度が増したし
「ていうか、なんで伊達さんがいるんですか」
「そいつは後で話すぜ。…そら、出てくるぜ」
そう言いながら伊達は入り口に視線をやった
テープをくぐって出てきたのは見知った二人の女性だった
「木山、春生に…美琴…」
「アラタ…アンタ、なんで…」
恐らく美琴も一七七支部でこの情報を得たのだろう
そしてこんな夜遅くにいるという事は、多分黒子にも言っていないはずだ
「伊達くん。来ていたのか」
「あぁ、ドクターに様子見て来てくれって頼まれてよ」
「そうか。…なら、そこの彼も連れて行こう」
木山はそう言うと自分の青い車に美琴を乗せる
「うし、行こうぜアラタ」
気さくな様子で伊達は乗ってきたバイク、ライドベンダ―に腰掛けた
何が何だかわからないがとりあえずそれに従うことにした
◇
木山の車と伊達さんを追っかけていたらある病院へとたどり着いた
「伊達さん…ここは?」
「まぁ、ついてきな」
伊達にそう言われアラタは彼の後をついていく
美琴も募る疑問があるようでどこか納得していない表情で木山の後ろを歩いていた
しばらく歩くとある部屋についた
壁にかけられたセキュリティを操作し、木山は中に入っていく
そしてその部屋に入って最初に視界に入ってきたのは
子供たちだった
「っ!」「これって…!!」
アラタと美琴は息を呑んだ
目の前に広がっている光景はなんだ?
いや、それ以前に、なんでこんな場所に―――
「ポルターガイストを起こしてたのは、やっぱりアンタだったのね!?」
美琴が確信を突くように声を上げる
それに対し木山は相変わらずひょうひょうとした態度で
「…そうだ」
「っ!!」
頭に血が上った
美琴は雷を迸らせ、アラタも拳を握ろうと―――
「けどよ。そいつにはちょっとばっかり事情があんだ」
それを遮ったのは伊達明だった
「なぁ。ドクター」
伊達はそう言うと自分の後ろに立っていた人に視線をやった
彼が視線をやった人物は、アラタもよく知っている医者だった
「…
忘れるものか
このインパクトのあるカエルの顔は早々忘れるものではない
「あと、ここは病院だから…電撃は勘弁願いたいね?」
美琴はしばらく呆然としていたが少しして「あっ…!」と彼の事を思い出した
「あの時の…」
「御嬢さんは、久しぶりだね。アラタくんは、あの時以来かな?」
あの時、とは上条当麻が記憶を破壊された際の時だ
今も覚えているあの何もない笑顔
「…なにが、…一体何がどうなってんのよ!!」
その場にいた美琴が意味が分からないと言った様子で声を荒げる
それはアラタも同じだった
巻き起こった事柄が多すぎて頭の理解が追いつかないのだ
「木原幻生」
そしてそれを説明するように医者は話し始めた
「彼が、総ての始まりなんだね?」
・・・
―――あえて問いましょう。我々の究極の目的とはなにか!
そう壇上に立って話しているのは木原幻生
医者はその時にいた一人として彼の話を聞いていた
―――学園都市が存在するその理由とは何なのか! それは人類を超えた存在! レベル6の想像に他なりません!!
彼の後ろの画面が切り替わる
膨大なデータを背に、原生は続ける
―――暴走能力者の脳内では通常とは違うシグナルデータが形成されて、様々なホルモンが異常分泌されています。それらを採取し、凝縮形勢されたものこそ、この能力体結晶です! これを特に選ばれた能力者に投与すれば、レベル6を生み出せるのです…! この結晶こそ、長らく閉ざされてきた〝神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの〟…SYSTEMへと至る、道を照らしだす、科学の灯なのです…!
・
ある道で、医者は問うた
「あんなもので、本当にレベル6は作り出せますかな」
「もちろんだとも」
即答された
「…本当かい? いたずらに意識障害を招いたり、かなり重い副作用なんかを起こすのではないかな?」
「実験は確実に成果を上げている」
「そのために、一体どれだけの犠牲を払ったんだい?」
その時見せた笑みは本当に狂気に満ちた―――それこそ子供たちなぞどうでもいいと言い切るほどの
「犠牲ぃ? なんの事ですかなぁ。私の研究に犠牲者などいない。いるわけがない! フフフ…ハハハ…ハーッハッハッハッ―――!」
・・・
「彼がその存在をどう認識してたかはわからない。犠牲者はいたんだよ」
冥土帰しはどこか遠い目で
「
「…もしかして」
「あぁ。アラタの予想通りだぜ。木山ちゃんの子供たちは、その結晶体の実験体にされたのさ」
「あの時君たちに話した、暴走能力の法則解析用誘爆実験は建前…。君たちが見たあれは、その結晶の投与実験だ」
馬鹿げてる
そう素直に思った
レベル6などというくだらない欲の為に、こんな年端もいかない子供たちが被害に遭っていいわけがない
「…っ!」
美琴はただ口を閉ざして拳を握りしめる
彼女も憤ってるのだ
こんなふざけた実験に
「幸い、子供たちを集めるのに時間はかからなかった。…こう見えてドクター、けっこう顔効くんだぜ?」
「こう見えてもは余計かな?」
「っと失礼。…んであとは、目覚めさせるだけだったんだけど…専門家の話が聞きたくってさ」
だから、木山が保釈された
裏でそんな事があったなんて想像もできなかった
「無理を言ったのは私だ。伊達君と先生には感謝している。ここの施設を使えたおかげで、目覚めさせる目途が立った」
「それで助かるっちゃ助かるが、別の問題があんだ」
そう言って伊達は苦い表情をする
たがて彼は重い口を開いて
「覚醒が近づくにつれて、AIM拡散力場が異常値を示しちまった。…どういう事か、わかるよな」
伊達の問いにアラタは頷いた
すなわちそれは、能力の暴走である
…そしてRSPK症候群の同時多発を引き起こし、
「木原幻生の研究は進んでいた。…僕が知っていた能力体結晶なら
「この子たちを眠りながらにして、暴走能力者にしてしまってた」
「じゃあ…目を覚まそうとすると…ポルターガイストが起こる…?」
美琴の声に木山はゆっくり頷いた
「…ほかに手はないのか?」
「暴走を鎮めるワクチンソフトを開発してる。…だが、それにはファーストサンプルと呼ばれる最初期の被験者から精製された成分の解析がどうしても必要なんだ。…そのデータを探すためにあの研究所にいたんだよ。…結局、何も残ってなかったが」
ギリ…、と木山は拳を握りしめる
僅かばかり、震えさせながら
「だが諦めるものか…! あのデータは結晶の研究において必要不可欠。それだけのものが廃棄されるはずがない…! 私は…必ずそれを見つけ出してみせる…!」
声色は本物だった
ここでは顔色は窺うことは出来なかったが、その背中からは鬼気迫るものを感じる
だが、もしもだ
「…見つからなかったら?」
美琴が聞いた
躊躇って口にするのを拒みそうになりながらも彼女は問うた
「…覚醒させる」
「言ってる意味は、分かってるよな」
この子たちを目覚めさせるという事は、RSPK症候群の同時多発を引き起こし、共鳴し合い…かなりの大規模なポルターガイストが起きる
それがどんな意味を持っているのかなど、分かりきっていたことだった
「分かっている。だがこれ以上…眠らせておけないんだ」
「正気なの!? 学園都市が崩壊するかもしれないのに―――!」
「これ以上放っておけない!! 今もこの子たちは、苦しんでいるんだ!」
「だからって!! …だからって…!!」
美琴が俯いた
彼女だって木山の気持ちは痛いくらいわかる
不可抗力とはいえ、彼女は木山の過去を覗いてしまったのだから
だからこそ、悩んで―――
「そんな事はさせない―――。絶対に」
そう言った空気を断ち切るように、一つに凛とした声が響いた
出入り口の自動ドアが開いていく
そこに立っていたのは無数の駆動鎧を従えたテレスティーナだった
「…貴女は…!?」
「…ごめんなさい。後をつけさせてもらっていたの」
アラタと美琴にそう詫びると彼女はまっすぐ歩いていき木山の前に立つ
「先進状況救助隊です。子供たちを保護します。…大人しく従ってくださると嬉しいのですが」
「…それは命令かい?」
「えぇ。令状も用意しましたが、出来れば自発的に従っていただく事を望みます」
そう言って彼女は近くにいた伊達明に令状と思わしき紙を渡した
伊達はしばらくをそれを吟味し
「…マジモンっぽいなこりゃ」
「…ぐ…!」
木山は舌を打った
彼女としてはあまり信用してはいないのだろう
否、得体の知れない奴らに子供たちを引き渡すのが心苦しいのか
「安心してください。我々は人命救助のスペシャリスト。治療する設備は整っています」
「しかし…!」
「我々は貴方では閲覧できないような情報も、合法的にアクセスすることが可能です。先のお話に合ったファーストサンプルと言った情報も、入手できる可能性が高いのです」
「…!!」
全くの事実を言われ木山は黙った
歯を食いしばりながら、わずかに身体を震わせて
その仕草を肯定と取ったのかテレスティーナは指示を飛ばす
「…保護しろ」
彼女を指示を筆頭に後ろに控えていた駆動鎧が子供たちを保護しようと歩いていく
頭では理解していたが、本能では理解していなかった彼女は駆動鎧の前に立とうとして
御坂美琴に阻まれた
「…何の真似だ?」
「気に入らなければ邪魔しろ、って言ったのは貴女よ」
「どけ!! この子たちを救えるのは…私だけ―――!」
「救えてないじゃないっ!」
木山がハッとした
そして目を見開いた
木山だってわかってた
ここまでして、誰も救えていないことに
ただそれから目を逸らしていただけで
「
言葉にされて思い知る
それでも、木山は認めようとはせず、顔に手をやる
「もう少し…! あと少しなんだ…!」
「枝先さんはね、…〝今〟助けを求めているの。春上さんが…私たちの友達が…その声を…聴いているのよ…」
その言葉に、木山春生は茫然とし、だらん、と顔にやったその手を下ろした
そしてテレスティーナが、言った
「運び出せ」
◇◇◇
病棟入り口前
トレーラーに入れられ運ばれていく子供たちを見て、ふと空を見た
瞬く星は変わらず、空を彩っている
「…アラタ」
背後に気配を感じた
気配の主などわかっている
それは御坂美琴だ
「…どうした」
「これで…いいのよね」
彼女は迷っているようだった
恐らく、木山の前に立ちはだかったのも、苦渋の決断だったに違いない
木山春生にどのような決意を持ってあの言葉を言ったのか、アラタにはわからない
「本音を言うとね、私もわかんないんだ…これでよかったのかなって…おかしいよね。あんなコト言っておいて今更さ…」
彼女の言葉は震えていた
何か言葉をかけようと彼女の顔見たとき、アラタは固まった
頬を伝うしずく
目尻にたまる水
彼女は、泣いていた
号泣というほどでもないが、それでも泣いてることにかわりはなかった
「…ごめん」
手で拭いながら美琴は無理やりに笑おうとする
それを見ているのが、たまらなく辛かった
「とりあえず送るよ。後ろに乗りな」
僅かに震える彼女の頭を優しくなでると美琴は一瞬ビクリ、とした
そして今度は無理にでなく、自然な笑顔が見れた
「…うん」
そう言って笑った彼女は、
どこにでもいる普通の女の子にしか見えなかった
一期終盤です
こんな作品ではありますが、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます
どこにRXを出すか悩みつつ、また次回