とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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グダグダ注意
今回から禁書編


そしてシスターズ編導入部
短いがお許しを

ではどうぞ



妹達編
#24 ある夏の一日


夏の夕暮れにて

 

上条当麻は路上に立つ自販機の前に突っ立っている

その傍らには鏡祢アラタ

傍らに立つ彼は笑いを堪えているように見えた

 

「…なぁ、今目の前で何が起きてるんでせうか」

「さぁな。…つうか分かってるだろうが」

 

ああそうだ

アラタに聞いたのは目の前の不幸(げんじつ)から逃れたいだけである

喉が渇いた当麻は道端に設置してあった自動販売機に二千円をブチ込んだ

何故二千円かというとどういう訳だか今どき珍しいお札、二千円札を当麻は所持していたからである

千円札が多い昨今、二千円札を持っている当麻もすごいがそんな二千円札を読み込んだ自販機もすごいのだが

話を戻す

その二千円札を滑り込ませたまではよかった、うん、よかったんだそこまでは

だがしかしそれを取り込んだ自販機は全くうんともすんともアクションを起こさない

あれ、と思った当麻は釣り銭レバーをガチャガチャさせるが時すでに遅し

 

率直に言おう

上条当麻は自動販売機に二千円札をゴックンされたのである

うん、可愛く言っても駄目だ

 

「…もしかしたら思いっきり叩けば出てくるとかないかな?」

「出てくるだろうな。警備ロボットが」

 

アラタの指摘にがっくりする

そう、ここで八つ当たりみたいにこの自販機に手を上げれば警報が鳴り響く展開を読めない当麻ではない

肩をがくりと落とす当麻とそんな当麻の背中を眺めている二人の後ろから革靴の音が聞こえてくる

 

「おいーす。…あれ、飲まないの?」

「うっす美琴。まぁちょっと待ってくれ、今うちの友人が懸命に闘っているのを内心で笑いながら応援しよう」

「ヒドイ! 俺にはこれに生活が懸かってるかもしれないのにっ!!」

 

声をかけたのは女の子だった

無化粧な整った顔立ち、半袖の白ブラウスとサマーセーター灰色のスカートを着こなしている

それは名門中学常盤台のものだ

名前は御坂美琴

美琴はすっかり夏の暑さにまいってるような表情で当麻を見やる

 

(…アラタ。誰だこの人)

(あ、そうだった。…忘れてたぜ)

 

当麻本人に問われそう言えば、とアラタは思い出す

上条当麻は記憶喪失である

何故記憶喪失になってしまったのかの説明は省くが、彼には七月二十日以前の記憶がないのだ

 

(御坂美琴っていうんだよ、俺の友達。お前とも割とフランクな関係だからそこんとこよろしくな)

(マジでか。上条さん的にはお前に女の子の友人がいたことに内心驚きたい)

(引っぱたくぞテメェ)

「ちょっとー? 何さっきからこそこそ話してんのよー」

 

美琴の声が聞こえる

慌てて当麻はアラタとの内緒話を中断し彼女に向かって

 

「え、えっと! な、なんだっけ!」

「御坂美琴だと何度言ったら―――…もういいや、この暑さの中で突っ込んだら余計暑くなる」

 

いつものように雷でも放とうと思っていたのか一瞬彼女の周りには雷が迸った、がこの暑中に観念したのかそれを断念する

 

「ともかく買わないならそこどいてどいて。私はその自販機に用があんのよ」

 

と、言う事は彼女もその自販機にマネーを投入すると言うのか

そのことに引け目を感じたのか当麻は美琴に言い出す

 

「あ、えっと。その自販機飲み込むらしいぞ?」

「知ってるわよ? …あれ、アンタ知ってたんじゃないの?」

 

そう言って彼女が見たのは鏡祢アラタである

え、と内心驚きつつ、信じられなーいと言った表情でアラタを見つめた

 

「お、俺を裏切ったな!?」

「いやいや。聞かれなかったからさー」

 

どこぞの白いアクマスコットみたいなことをさらりと言いやがりましたよこの人は

や、確かに聞かなかったけどもさ

 

「この自販機に裏技があるのよ。お金入れずともジュース出す裏ワザが」

 

その言葉に当麻は冷や汗をかいた

何故ならその裏ワザはものすごく不安な予想しか生まないのだ

その証拠にアラタは普段から見慣れているのかやれやれと言った様子

そしてそんな当麻の不安は見事に的中することとなる

 

「ちぇいさーっ!!」

 

そんな掛け声と共に繰り出された上段回し蹴りが件の自販機の側面にぶち当たる

その後ゴトン、と取り出し口に何かが吐き出された

缶ジュースである

 

「古いからかは分かんないけどね、ジュース固定してるバネが緩んでるらしいのよねー。この方法、何が出てくるか分かんないギャンブルなのが難点なんだけど」

 

因みにスカートの下は短パンだった

そんな様子にも一切ガッカリとかせずアラタは苦笑いしている

そして悟る、こいつ見慣れてやがる、と

 

「あれ、そういやさっきガチャガチャしてたのって…アンタ、飲まれたの?」

 

すっかり忘れそうになっていたことを思いっきりぶり返してきやがりました

それに応えることなく当麻はズーンとしている

 

「…まぁ知んなかったししゃあないか。それで、いくら呑まれたのよ」

「あぁ、今時珍しい二千―――」

「やめてよして言わないで三段活用!! そんな事言われた日には上条さんはもう立ち直れないッ!!」

 

しかしアラタはもうほとんどを口に出していたわけで

おまけにそいつはがっつりと美琴の耳に入っていて

 

「は? 二千円…? なんでそんな中途半端な…ってっもしかして、二千円札!? 嘘、まだあったのそんな都市伝説みたいなお札!? ちょ、そりゃ流石に自販機だって飲み込むわよそんなレアな札来たらさ! あはははっ!」

 

思わず腹を抱えて笑ってしまった美琴を苦笑いで見守るアラタ

その近くでうわー! と頭を抱える当麻

あぁそうだ、だから二千円なんて言いたくなかったんだ

スマイルゼロ円な某ハンバーガーショップの女性店員さんでもこんなお札出されたら流石にその笑顔が凍りつく

 

「はははっ…。おっけー、じゃあその二千円札が出てくることを祈りつつ。あ、けど千円札二枚出てきても文句言わないでよねー」

 

そう言いながら美琴は自動販売機の硬貨を入れる口に手を添えた

しょぼんとしている当麻を尻目に、ふとアラタは疑問に思ったを事を口にする

 

「ところでどうやってお金を取り出すんだ?」

「んー? それはねー…こうやって」

 

一度笑顔を見せたあと朗らかに彼女は添えた掌から雷をぶっ放した

 

ほぼゼロ距離なその雷は確実に自販機を捉える

人ひとりでは持てないようなその自販機はまるでぶるぶるするブレードのように揺れまくる

そして金属の隙間とか何やらからいかにも壊れとるわいと自己主張するようになんかヤバい煙をもくもくと湧き出てきた

 

当麻は真っ青になった

アラタは苦笑いするしかなかった

 

「…あれ? そんな強く撃つつもりなかったけど―――あ、なんかいっぱいジュース出てきた。わ、これって確実に二千円以上の量よこれ」

 

アラタは無言で彼女の手を取り、そして同時に当麻と一緒に走り出した

理由など言うまでもない

ここまではっきりわかったオチなんて考えるまでもないのだ

 

「あっと、ちょっといきなり何すんのよアラタっ!」

「ここから先の展開が読めないお前でもないだろうが…」

 

走りながらやれやれといった様子でアラタは美琴に言い返す

 

数秒の後

自動販売機は蹴られた恨みじゃーと言わんばかりに警報を大音量で叫びだした

 

 

どこまで走ったかは覚えてない

時間にしておおよそ十分くらいはトマラ〇ナーみたいに走っていたと思う

ふと気は付くと三人は繁華街のバス停留所、そのベンチに腰を下ろしていた

何気なく空を見る

飛空艇に取り付けられた大画面は、筋ジストロフィーの病理研究を行っていた水穂機構は業務より撤退したことを表明しました、なんてことを垂れ流す

 

「ちょっと。ジュース持ちなさいって。もともとアンタのやつでしょこれ」

「俺はお金入れてないから全部当麻のだな」

「鬼かアンタら! てか熱っ!? なんであったかいおしるこが混じってんの!?」

「誤作動狙いだからね。選べないのよ」

「まあガラナ青汁とかいちごおでんとかやってこないだけで十分幸運だよ」

 

マジか、とがっくり肩を落とす当麻

学園都市は大きく言い換えると実験都市でもあるのだ

数ある大学や研究所等で制作された商品のテストとして街中にはゴミの自動処理とか自動で走る警備ロボットとかの実験品に溢れかえっている

 

「あ、このヤシの実サイダー貰っていい?」

「…うまいのかそれ」

 

当麻の腕の中にあるそんなサイダーを引き抜きつつ、当麻は疑心の眼差しでそのサイダーを見る

 

「えぇ。結構イケるわよこれ」

「じゃあ俺もなんか貰おうかなー」

 

選べない、というギャンブル性をを逆手に取り、アラタは目を閉じて何が取れるか分からない、というそういった賭けに出た

正直に言って分の悪い賭けかもしれない、しかしそんな賭けも嫌いじゃない

 

「これだ!」

 

そう言ってアラタが当麻の腕にある膨大なジュースから引き抜いた一本は―――

 

「チョコレートドリンク?」

「…うわ、甘そーなの引いたわね」

 

甘そー、ではなく間違いなく甘ったるいだろうと予想できる逸品を発掘した

ていうかなんでこんなもん作ったんだよこんちくしょー

チョコレートという素材なんて甘いに決まってるじゃないか、なんだ、固形化に飽きたのか学園都市

だから液状化などに走ったのか、ちまちま食べるでなく一気に喉に流し込みたいのかこんなものを

 

「あ、そだ」

 

とりあえず冷蔵庫にこいつをブチ込んで未那にでもあげてやろう、と心に決めながらふと思い出したことを口にした

 

「枝先の具合はどうだ? だいぶ回復してきたんだろ?」

「あぁ、枝先さん? えぇ、もうそろそろ退院もできるだろうって」

「そっか。よかった」

 

枝先絆理

彼女は美琴とアラタの共通の友人である

彼女との出会いのいきさつは省くが、ある研究者が行った実験により意識不明の重体に陥ったのだが、美琴やアラタ、そして太陽の子らの活躍によりその研究者は拘束され、枝先とその友人の子供たちも意識を取り戻したのだ

現在は長年寝たきりだった身体を満足に動かすべく入院しリハビリに励んでいるらしい

一度お見舞いに行く機会があったのだが、その日は燈子に面倒事を押し付けられ赴くことが出来なかったのである

 

そんな二人の会話を当麻は眺めていた

気さくな関係とはなんとなく知ってはいたがすっごい仲が良さそうなのだ

特にそれといった他意などはなく思ったことをそのまま当麻はぶつけてみることにする

 

「なぁ、つかぬ事聞くけどさ」

「うん?」

 

アラタが振り向く

それに合わせて美琴もヤシの実サイダーを飲みつつ当麻に視線を向けた

 

 

 

「もしかしてお二人は―――恋人とかってやつ?」

 

 

 

ぶふぉあ! と盛大にむせる

美琴も美琴で思いっきりむせかえり思わず胸をとんとんと叩く始末である

 

「な! 何言ってんのよアンタ!」

 

思わず美琴は掴みかかりそうになる、がジュースを持っていたことに気づきそれを断念する

 

「こ、こいつとはあれよ! 遊び仲間みたいなもんよ! そうよ、友達よこいつとは! …だ、だよね?」

 

何故同意を求める

けほけほ、とアラタは席をしながら彼は

 

「まぁ、そんな感じだな。それとも戦友って言った方がいいか?」

「そうね、戦友ね! …うん、戦友」

 

なんでか自分でいって僅かばかりにしゅん、とする美琴

どうかしたのだろうか、と思ってなんとなく聞いてみようとするが先に当麻が口を開いた

 

「わ、悪かったって。変な事聞いちまったよ」

 

流石にここまでテンパるとは思わなかった当麻は手でどうどうと言ったジェスチャーをしつつ、

 

「お姉様?」

 

不意に耳に届いた無機質な声が彼らを貫いた

ベンチの後ろ、振り返ると―――もう一人

 

〝御坂美琴〟が立っていた

 

 

「は?」

 

一番驚いたのは鏡祢アラタである

お姉様、などと彼女を呼ぶのは黒子くらいしかいないと思っていたが

結構付き合いは長いと自負していたがまさか彼女に妹―――双子?―――がいるとは思わなかったのだ

服装、体つき…どこをとってもそこに立っていたのは御坂美琴だ

だが、ふとアラタは自分を姉と言った妹を睨んでいる美琴を見た

よく見ると僅かばかりに震えているようで、おまけに驚いているようにも見えた

 

一触即発

そんな空気を破壊するべく口を開いたのは上条当麻だった

 

「えっと…どちらさま?」

「妹です、と間髪入れずに答えました」

 

なんか変な口調だな、と素朴な疑問を心にしまう

それ以前に変な口調でしゃべる人物は割と自分たちの周りに結構いるのな、と気づくのは後の話

 

と、そこまで黙っていた御坂美琴が唐突に声を荒げた

今まで聞いたことないくらいの怒声が

 

 

 

「なんでアンタがこんなとこ歩いてんのよっ!!」

 

 

 

思わず当麻と二人、その叫びにのけぞった

劈く言葉に驚きながらアラタは美琴を、当麻は妹の方をそれぞれ仰ぎ見る

それっきり、美琴は黙った

違う、黙ったわけではない

待っているのだ、妹の返答を

嵐の前の静けさ、とはこの事か

 

やがて直立不動のまま、妹はぼんやりと呟く

 

「何か、と聞かれれば、研修中です、とミサカは簡潔に述べます」

「けん、しゅう…!?」

 

息を詰まらせ、彼女は視線を逸らす

 

「嘘…! だって、研究所は大堂さんたちと―――!!」

 

そう言った呟きは、アラタと当麻の耳には届くことはなかった

 

「研修? 妹さんは風紀委員にでも入るのか?」

「え? けどそんな情報は―――」

 

「アラタ!!」

 

その叫びに、思わずたじろいだ

すぐに美琴は「ご、ごめん」と言った後、彼女は妹の手を掴み

 

「…私ちょっとこの妹と話すことがあるから…、その…またね」

「? いえ、ミサカにもスケジュールが―――」

「―――来なさい」

 

そう言った美琴の声は驚くほど平坦だった

ちらり、と美琴は当麻に視線をやって、アラタに視線をやる

そこにいた彼女は、いつもと同じ彼女の表情(カオ)

 

「そんな訳だから…じゃあ、また」

 

たどたどしく口にした彼女は妹を連れて駆け足で走って行く

当麻はベンチに腰掛けて、空を飛ぶ飛空艇を眺めながら

アラタは今も去っていく彼女の背中を見送りながら

 

「複雑なご家庭…なのか?」

「さぁ…な」

 

今も走る彼女の背を見ながら、アラタはそんな事しか呟けなかった

 

 

終わったと思ってた

思わぬ所からの協力もあり関わっていた研究所も可能な限り破壊し、そういった実験は終わったと思っていた

 

しかし、アイツはなんといったのだ

研修だって?

 

その言葉から連想されることは一つ

 

それは―――終わってなんかいないと事実

 

今度はあの時とは違って、しっかり四人を見据えてる

視界にちゃんと入ってる

それでも―――自分は戦うと決めたのだ

 

「お前は表にいるからこそ輝く女だ」

 

そう彼らから言われた言葉を思い出す

 

表、か

こんな実験に無意識に関わっていたと知れたらアイツはどんな反応をするのだろう

そう考えかけて首を振る

 

巻き込まないと決めたのだ

先ほどのツンツン頭と一緒にアイツはいる方が似合っている

 

いつも笑顔を守ってくれてるように

少女は彼の笑顔を守りたいんだ―――

 




響鬼の登場を期待していた人申し訳ない

いずれちゃんと出てくるから待ってくれ!

ではでは
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