とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
駆け足だね
今回中途半端な所で切ったかも
申し訳ない
相も変わらずな出来ですが誤字脱字あったらお願いします
それではどうぞ
※どうでもいい近況
なんかこたつからカーテンのシャーってなるヤツが六個くらい出てきました
しかしカーテンを調べても取れた様子はない
何があったのだ母よ
すっかり空は真っ黒に染まってた
今日は三日月、笑う口にも似た細い月の光は弱すぎた
御坂美琴は一人手すりに両手をついてぼぉ、と遠い街を見ていた
美琴はす、と掌を出すとそこから青白い火花が散った
雷、と聞くと物騒なイメージがあるが美琴にとってそれはとても暖かい光だった
初めて使えるようになった日の事を、彼女は今でも覚えている
布団に潜って一晩中ぱちぱちとしていたものだ
星の輝きに似た、青白い閃光
成長して大きくなったら星空なんかも出来るのかな、と本気で考えたこともあった
子供の頃の
今となっては、そんな幻想を語る資格すらないのだ
「…筋ジストロフィー、か」
唇が言葉を紡いだ
筋ジストロフィーとは不治の病の一つだ
原因は不明、かかったら少しづつ筋肉が動かなくなっていく病気だ
それは徐々に体中の筋力を奪っていき、やがては死に至らしめる
当然、彼女は筋ジストロフィーではない
そして知り合いにその病気にかかった知人もいない
しかしそんな生き方は辛いだろうな、と思う
生まれた時から思うとおりに身体を動かせずやがてベッドの上からも動けなくなっていき、どんなに手を伸ばしても誰も掴んではくれない
そんな人たちを助けてみないか、とある研究者が言った
キミのと力を使えば助けることもできるかもしれない
そう言って研究者は握手を求めてきた
かつて幼かった少女はその言葉を信じて疑わなかった
素直に助けられるなら、と思った善意から彼女は自分のDNAマップを提供したんだ
だけど最近になってそれを用いて
当然、最初は信じなかった
いや、信じたくなかった
だが、現実は無情だった
軍用に作られた彼女たちは後はボタン一個で無限に作られる状態だった
しかも彼女たちは兵器としてでなく、使い捨ての実験動物にされることだけを目的とされたんだ
「…なんでこんなことになっちゃったんだろう」
そんな事は分かってる
幼かった自分が不用意にDNAマップを提供したからだ
あの研究者の言葉が嘘だったのか、健全な研究が歪んだのか美琴には分からない
しかしはっきりしているのは一つ
助けたい、と思った善意は
二万人もの
だから、それを止めたいと彼女は願う
命を懸けてでもこの狂気を止めないといけないと思った
別に命を懸けることがカッコいいとも思わないし、死を望んでるわけでもない
実際、身体は震えているし指先は血の気が引き、冷たかった
思考もうまくまとまらない
出来るなら一言叫びたかった
助けて、と叫びたかった
だがそれは絶対に許されない
脳裏にふと、一人の少年の姿が浮かぶ
誰よりも笑顔を重んじ、人知れず誰かの笑顔を守っているもの
見えない所で傷ついて、それを感じさせないように振る舞う自分の友達
もしも、仮にだ
美琴がこの街に潜む〝闇〟に気づいて彼に助けてと叫んだら来てくれたのだろうか
きっと来てくれた、と思う
けれど自分だけ助けを求めるのは卑怯だ
美琴のせいで一万人近い
残っている一万人にしても死の線に立たされていることに変わりはない
そんな罪を背負う人間が
両手を血で汚した化物が助けなんて求められない
求めてはいけないんだ
「…助けてよ」
故に、彼女の声は孤独の中でしか呟けない
ボロボロなその声は闇へとかき消されていく
「助けてよ…!」
誰でもいい、この暗闇から連れ出して欲しかった
しかしそれは許されないことだ
届かない声色は、つらつらと美琴の口から零れていく
その時、ふとみーと嘶く猫の声が聞こえた
彼女は視線を下に落とす
そこにいたのは小さな黒猫だった
闇とは違う、優しいぬくもりを感じさせる小さい黒猫
どこから来たのだろうか、と美琴が思っているとカツ、と地面を蹴る足音が聞こえた
ハッとなって美琴は顔を上げる
「よぉ」
灯りなく、三日月の光だけが照らす闇の鉄橋に
鏡祢アラタは現れる
少女の叫びを聞いて駆けつける、
◇◇◇
シリアルナンバー10032号、御坂妹は繁華街を抜けて工業地帯にある一角を目指し歩いていた
ゆっくりと街灯が並んでいる通りを歩きながら実験内容を頭の中で思い出していた
別に恐怖なんてない
憎悪もないし、あきらめもない
彼女の顔にあるのはただ本当に無表情
他人が見ればそれはぜんまい人形がテクテク崖に歩いているように見えるだろう
別段、御坂妹は命の大切さが分からない人種ではない
目前で死にかけの人がいれば自分の取りえる行動を選択し適切な判断をする行動力はある
だが、それを自分に向ける、当てはめることが出来ないだけ
材料や機材があればボタン一個で作られる身体に
彼女の単価は金にして十八万円
少し性能の高いパソコンだ
製造技術が向上されれば早々にワゴンセールに放り込まれるくらいに
だからこそ、理解できないことが御坂妹には一個だけあった
夜道を歩きながらふと思う
路地裏で複数のミサカと遭遇した二人の少年は驚いて息を止めていた
二人の言葉を思い出す
―――お前は、誰なんだ
その言葉はまるで御坂妹に対しての言葉ではなく
―――じゃあ、そこで何をしている
まるで何かを否定して欲しくて投げかけた言葉のような感じがした
それほどまでに認めたくなかっただろうか
二万人の
分からない、理解できない
一体何を言っていたのだあの二人は
理解できないものを考えても仕方ない、と御坂妹は結論付ける
だけど、どうして、あの二人の顔を思い出したんだろうか
本当に価値などないなら思い出す必要もない
昨日踏んづけたガムを覚える必要もないくらいに
今これから行われる実験について考えていたはずなのに、どうして脱線してしまったのか
「…、」
御坂妹には、分からなかった
たったそれだけのことなのに
◇◇◇
「よぉ」
彼女を見つけて、いつも通りに声をかけた
声を聞いて振り向いた彼女はいつも通りの顔をしていた
「あら、アラタじゃない。アンタも夜風にでも浴びに来たの?」
いつも通りすぎて、辛かった
「美琴、もういいから」
その言葉を言ったとき、一瞬彼女の表情が消えた気がした
しかし瞬きするときにはいつもの彼女になっていた
「いいって何がよ。言ってる意味がわかんないんだけど? 別にイイじゃない夜遊びくらい―――」
「全部!」
不意に声を荒げたアラタにビクリ、と美琴は肩を震わせた
そして次の瞬間、彼はポケットから紙の束を取り出した
「全部、分かってる。だから無駄な事は省こうぜ」
「――――――――――――――――――っ!」
その紙の束を見て、美琴は固まった
肌で感じていたのだ
日常が、粉みじんに砕けた事を
アラタの胸を痛む
しかしそれを自分の手で砕き、彼女の下に歩もうとしたときに
「…なんでこんな事しちゃうかな」
遮るように美琴は言った
「それ持ってるってことは、部屋に上がったって事でしょう? …全く、プライバシーの侵害よ? 侵害」
そう言う彼女の顔はいつも通りだった
その吹っ切った笑みが、何よりも辛かった
「…ねぇ。一個聞いていいかな」
「何を?」
「それを見て、アンタは―――貴方は私を心配してくれたの? 許せないって思ったの?」
妙に明るい声で、そういった
それは糾弾しに来たと分かっていると言いたげな、世界に味方なんて誰もいないと言っているような
「心配したに決まってるだろう」
低い声色で呟く彼に、美琴は少しだけ笑んだ
「…ありがとう。嘘でもちょっと、嬉しいかな」
そう言う彼女は笑っていた
まるで全部諦めたような、そんな顔を浮かべて
「嘘じゃない」
「…え?」
「嘘じゃないって、言ったんだ」
静かに言ったその言葉だが、僅かに美琴は肩をまた震わせる
真っ直ぐ言われたその言葉に、思わず美琴は目線を逸らしてしまった
「ねぇ、聞いた? あの子たち、何食わぬ顔で自分たちの事
たっぷり間を取った後、ポツリ、と彼女は呟いた
「実験動物。それがどんな扱い受けてるか知ってる? …酷いもんよ?」
彼女はぐ、と唾を飲むように喉を嚥下させる
「あの子たちをそんな状況に招いたのは、私だから」
そう言った彼女の顔は、ひどく疲れているように見えた
そこまで聞いたアラタは、ふと一つの疑問を抱いた
今までのレポートとか地図を見る限りでは、彼女はその実験を潰そうと外部から妨害しているように思える
少なくとも彼女は、―――言い方は悪いが―――気にくわないヤツがいるなら自らカチコミに行くような人間だ
実際、テレスティーナの時は彼女は自ら乗り込んでいったのだ
それをしないのは、出来ない理由があるのか
「超電磁砲を百二十八回殺せば、
静寂の中で、不意に彼女が呟いた
「けど百二十八人も用意なんかできないからその劣化コピーとして、二万人の
そう言って彼女は一つ息を吐き、
「私に、それだけの価値がなかったら?」
纏っている空気が凍りつく
彼女が言っている意味が理解できなくて/理解したくなくて
「私にそんな価値がなかったら。研究者たちにそう思わせることが出来たら」
そう言って彼女は笑う
「実際に樹形図の設計図の演算結果でも、私は逃げに徹しても百八十五手で殺される。だけどもっと早く私が殺されたら? 初手で敗走し、無様に頭を垂れることしか出来なかったら?」
本当に楽しそうに、笑う
「それを見た研究者はこう思う。樹形図の設計図の予測演算はすごいけど、それでも機械に頼る事なんて間違ってたんだ、って」
その笑みは、酷く、ボロボロで
思わず拳を握りしめる
彼女は
ハッタリでもして研究者にシミュレーションに間違いがあったと思わせるもの
しかしそれは同時に、自らを散らすもの
「だけどそれに意味はない、仮に誤魔化せても、また演算し直されたら―――」
「それは大丈夫。樹形図の設計者はね、二週間ぐらい前にどこかからの攻撃で破壊されてるの。上は隠してるけどね。だからもう再演算は出来ないわよ」
二週間前、という単語にアラタは思い出す
確かその時、インデックスを止めるために当麻と共に戦い、インデックスの一撃が空を裂いたことがあった
恐らくその時に、破壊したのだろう
アラタは確認するために、問うた
「…お前、死ぬ気なんだな」
えぇ、と美琴は頷いた
「そうすることで、残った
えぇ、と彼女は頷いた
そして美琴はゆっくりと歩き始めて、改めてアラタと向かい合う
「さ、分かったらどいて。私は行くわ、もう実験の場所は調べてある。戦う前に、私が割り込んで終わらせる」
だからどいて、と彼女はまだ優しい声色でいった
「―――断る」
アラタの言葉に、驚いたように彼の顔を見返した
「…なんですって?」
「断るって言ったんだ」
退くなんてできるはずがなかった
自分のやる事は、彼女の説得
ここで折れてしまったら、今まさに死ぬかもしれない戦いをしている親友に顔向けできない
「言葉の意味わかって言ってんでしょうね!? 私が死なないと残りの
「そんな訳ないだろ。仮にそう思っているなら、最初からこんなことに来るか」
「じゃあなんで―――!?」
「決まってる。お前に死んでほしくないからだ」
彼は真っ直ぐ美琴を見据えてそう言った
それは偽らざる本心だった
「―――な、何言ってるの…、アンタ、馬鹿じゃないの!? 聞いてなかったの!? 私が死ぬ以外実験を止める術はない!! だから、私が―――」
「確かにお前はそうかもしれない。…けれど、お前は残された人たちを考えたことがあったのか」
え、と美琴は口ごもった
「黒子、涙子、飾利、固法。数えるだけでお前の死を泣く人はいる。黒子なんて確実に報復しに行くぞ。お前はそれでも―――」
黒子の性格からして、美琴が死んだりなんかしたら間違いなくそうするだろう
本当に殺されるかなどは流石に分からないが、少なくとも無傷ではないはずだ
「―――私は、皆の事見えてるわよ」
「…何?」
「分かってる! …これは私の自分勝手な事だって。…だけど、それでも―――私は行かなくちゃいけない」
そう言って美琴はアラタを見つめ返す
その眼が、総てを物語っていた
「ごめんね、アラタ」
本当に、本当に小さく彼女は呟いた
その言葉はアラタに届くことはなかった
「…さぁ、今度こそどきなさい。それとも力づくで私を止めるならそれでいい。…私は、もう退けないの」
バヂリ、と彼女の身体から雷が迸る
そこでアラタは悟る
悟ってしまう
あぁ、もう彼女に言葉は、届きそうにないという事に
確かに変身して彼女と戦えば簡単に彼女を降すこと出来るだろう
しかしそれでは意味がないのだ
だから、アラタは彼女の眼を見て言ってやった
「―――断る」
「…なっ―――!?」
「どかないし、俺は戦わない。…何があっても」
その言葉と態度に、流石に彼女も怒りが募ったのか激昂する
「戦いなさいっ! 言ったじゃない、私を止めたいなら力づくで止めなさい! アンタが無抵抗なら、躊躇なく撃ち抜くのよ!?」
砲弾のように放たれる憎悪が混じったその言葉
だがやっぱりアラタはこう答える
「それでも…断る」
「―――!」
信じられないように美琴はアラタを見る
彼女はアラタを凝視ながら
「馬鹿、じゃないの! 馬鹿じゃないの!? もうこれ以外に道はない! だから私はアンタだって撃ち抜ける! こんな地獄でそんな…そんなひよった言葉が通るわけ―――」
「それでも俺は…お前とは戦わない」
美琴の言葉は彼には届かない
彼はそのまま棒立ちのまま美琴を見た
立ちはだかると同時、戦う意思など全く見えない
「く、っそ…!!」
彼女は内側に帯電しきれなくなった雷を放出するように雷を奔らせた
その雷はアラタの顔のすぐ横をかすめていく
それでも、彼は動かなかった
彼女を止めにきたのに、戦っては意味がない
そもそもこういう時に、助けを求めてくれない彼女に、今更ながら苛立った
「―――戦いなさいって、言ってんのよ」
そう言って彼女は拳を握りしめ雷を帯電させる
「戦う気がないならここから消えなさい!! 半端な―――中途半端な気持ちで人の願いを、想いを踏みにじんなっ!!」
それでも、アイツは動かなかった
半ば激情に駆られる思いで彼女は、雷を放った
彼女の手から放たれた特大の雷は―――彼の身体に直撃した
◇
操車場は戦場と化している
恐らく今回もこの実験は
まるで機械のように繰り返される単純な作業
それを浅倉涼はコンテナの上で傍観していた
自分の仕事はこういった実験場に部外者が侵入してこないかを見張る事である
最もこの仕事は最近になって通達されたことだ
なんでも以前の実験にうっかり部外者が侵入してしまったらしく、今後そう言ったことがないように、との事らしい
それで今、浅倉はここにいる
「浅倉、そっちはどうだい」
「今回もワンサイドゲームになるかな」
そう呟いてくるのは仲間である芝浦と手塚という人物だ
分かり易く言うなればこの二人は舎弟に近いものがある
実際舎弟なのは芝浦だけで手塚は違うのだが
「あぁ。そうなるな」
そう言って浅倉は一つのデッキを取り出した
蛇のようなマークが描かれたそのデッキ
「出来れば、無駄な殺生は避けたいがな」
「仕方ないでしょ、降りかかる火の粉は払わなきゃ」
そう言って二人もそれぞれのデッキを取り出す
芝浦にはサイの、手塚はエイのようなマークが描かれている
「…ん?」
そんな時、芝浦が声をだす
「おい、手塚。…あれ、部外者じゃん?」
「…みたいだな」
どうやら芝浦は侵入者を発見したようだ
それに応えるように手塚は芝浦の見た方へ視線を向けて頷く
「マジか。さっそく仕事かよ」
「いや、お前が出向く必要はない。俺たちで片付けてくる」
「そうそう。アンタはこのままこの実験を見ててよ、三人くらい俺たちだけで十分だって」
そう言って芝浦は嬉々として走って行く
そんな芝浦を追うように手塚は彼の後を追っていった
「ったく。…けどま、いいか」
二人がしくじるとは思っていない
その時は、そう思っていた
◇
「…あ―――」
思わずそう呟いてしまったのは終わった後の事
彼はその場に倒れて動かない
彼の身体からは焼け焦げたような煙さえ出ているほどだ
それだけで十分だ
それだけ、で
「―――あ、ぁ…」
嘆いてももう全てが遅かった
アイツはもう動かない
雷の一撃は彼に直撃し、その身を地面に倒れ伏した
「…わ、たしは」
例え自分が消えても、貴方だけは巻き込みたくなかった
彼だけは陽だまりの中でいてほしかったんだ
みー、と黒猫がないた
ふらり、と美琴は振り向く
その先に怯えきった黒猫がこちらを見ていた
威嚇するでもなく、ただその幼い瞳が語っている
なんでこんなことするんだ、と
信頼を裏切って急襲すればもっと安全に事を終えることも出来たかもしれないのに
「アラタ…」
決まってる
美琴はアラタを心から信じてた
彼の隣は、安心できるから
「…ごめん。私もすぐ―――そっちにいくから」
だがもう彼はいない
他でもない自分自身が消したのだと思うととても胸が苦しむ
だけど、その事への謝罪は、あの世で聞くことにしよう
美琴は一度アラタを見て、何かを振り切るように倒れている彼の身体を通り過ぎて
「―――おい」
彼の声を聞いた
信じられないようなものを見る目で、美琴はアラタが倒れている場所へ振り向いた
そこに―――彼は膝を付いてこちらを見ていた
「―――!」
言葉が出てこなかった
どうして、と思った
そこまでボロボロなのに、なんで
戦わない、と、彼は言った
彼の執念は、助けてと叫んだ少女に今もなお、手を伸ばす
「…なんで?」
思わずそんな言葉を呟いた
レポートを読んでだけで事情が分かるわけでもない
善意でDNAマップを提供した事とか、それが軍事目的に使われていた事とか、助けたいと強く思った気持ちが、二万人の
そんな事情を、アイツは知らない
知らなくても、立ち上がってくれたんだ
「もう、やめてよ…!」
わがままをする子供みたいに美琴は首を振った
彼が立ち上がってしまっては、
けれどそれを邪魔する目の前の男を彼女は倒さなければいけない
だがほんの些細な一撃で本当に彼が死んでしまうかもしれない
「もう、やめてよ…っ!」
だから彼女は叫ぶ
そのまま倒れていてほしかった
倒れていてくれればもう誰も傷つかない
彼が美琴を諦めればもう誰も傷つかない
見限ってくれれば、この苦痛から解放されるのに
「立たないで!! お願いだから…!」
美琴の言葉を無視して、彼は立ち上げる
「なんでよ!? アンタは、これには関係ない…! 私が死ねば全部終わる! ここから先に救いなんてないのに! なのに…! なのになんでアンタは立ち上がるの!?」
それは彼女の心からの叫び
どうして、と美琴は叫んだ
その声を聞いた目の前の男は応える
「どうして、だぁ…?」
その後、僅かばかりに笑みを浮かべてこう言った
「―――友達を助けるのに、理由なんているのかよ」
ふと、涙腺が熱くなる
結局はそれだけの事だったんだ
どんなに言葉を並べても、どんなに理由を作っても
目の前の―――鏡祢アラタという男は、たったそれだけで駆けつけてくれる
「…ここからは、雨しか降ってないのよ…?」
「その雨だって必ず止むさ。…そんでもってその雲の向こうには、青空が広がってんだ」
涙なんて、とっくに枯れたと思ってた
だけどそうか、とも美琴は思った
まだ涙を流せるくらいには、
◇
「ははっ!! イイねイイね最高だねェッ!! 面白れェぞお前!! さすがに一万回も殺されてりゃ悪知恵の一つくらいは思いつくってかァッ!?」
そう
彼の顔は心底楽しそうに見えた
平たく言えば、彼に触れるものは全て反射されるというチートじみた能力だ
「おら、死ぬ気で避けなきゃマジで死んじまうぞ?」
そう言って
いつでも殺せるのに、わざわざ手を抜いて放った蹴りの直撃を貰った御坂妹はゴロン、と数メートル転がりながら仰向けに転がった
「ごっ、が、はっ…!?」
肺から息を吸うように息をし、御坂妹はちらりと
だらだらと、その引き裂かれた嗤いから流れ行く唾液を手で拭ってる
どれだけされても彼女は彼を恨むことなどない
彼女は己の命に価値を見出していなかったからである
一体十八万円の身体は殺され、その遺体はまるでゴミのように掃除される
所詮、それだけの事
そんな時、ふと何かに気づいたように
ふと、ゆっくりと自分の後ろを振り返り、何かを確かめるようにそれを見た
「…?」
仰向けに倒れてるとちょうど
しかし彼は動かない
やがて、呟く
「おい。この場合実験てのはどォなるンだ」
そう呟くように彼は訪ねてきた
何を言ってるのか分からず、彼女は地を這って彼が何を見ているのかを確認した
操車場の外周近辺、コンテナの隙間に、一人の男が立っていた
上条当麻が立っていたのだ
「離れろよ、お前」
当麻は剣を突き刺すように
触れば怪我をするような、そんな怒気を彼は纏っている
「聞こえねぇのか。御坂妹から離れろって言ってんだ」
そんな言葉に
「おい、ミサカってのはお前の原型の名前だろ。それを知ってるっつうことはお前の知り合いってことだろ。…頼むぜ、無関係な一般人連れ込ンでンじゃねェよ」
興ざめしたと言わんばかりに彼は告げる
「ったく。…てか浅倉は何してンだ? こういうのを防ぐために今日はアイツらがいるンじゃ―――」
「ぐだぐだ言ってねぇで、とっとと御坂妹から離れろよ! 聞こえてねぇのか三下ぁっ!!」
落雷のような怒号が、その場に炸裂した
その声に反応したのか、
「…あいつら、わざわざ一人逃したのか」
しかしあの男、よくあんな啖呵を切れるものだ、と内心感心していた
だが
当然だ
最強に君臨する
◇◇◇
「わざわざ逃しちゃっていいの?」
芝浦はそう目の前の男三人にどうでもよさげに言葉を投げた
それに対してトイカメラをぶら下げた青年、門矢士は答える
「問題ない。あんな奴に負けるほど、アイツは弱くない」
それに対して手塚が言った
「…
その手塚の言葉に、今度は帽子を被った探偵、左翔太郎とその相棒、フィリップが返答した
「最強なだけで、無敵じゃねえんだろ」
「だったら、彼にも十分勝てる見込みはあると思うけどね」
そんな二人の言葉に、
「…ぷっ!」
芝浦は腹を抱えて大笑いを始めた
「あーはははっ!! 冗談最高に上手いねオタクら! あんなヒョロッとしたヤツが
「…全面的にこいつに同意するわけではないが、それでも彼が勝てる確率は低いと思うぞ」
「へぇ、君の考えには僅かでも彼が勝つと思ってくれているんだね」
そんなフィリップの言葉に、僅かながらに手塚は笑う
「まぁな。…俺もおかしいとは思ってるのさ。…けど、仕事だからな」
そう言って手塚はデッキを前に突き出す
するとそのデッキは輝きだし、彼の腰にバックルが現れる
バッと彼は右手を突き出し、叫んだ
「変身!」
デッキをバックルにセットすると彼の身体はガラスが割れるような音と共に鏡像が重なった
名前は、ライア
「ま、部外者には消えてもらわないとね。変身!」
同様に言いながら芝浦もデッキを突き出し、同様に輝きだす
そしてガッツポーズをするように右手を動かしデッキに挿入する
手塚と同様に鏡像が重なりつつ、鏡が割れるような音がした
そこにいたのはサイのような姿のライダーだった
名前は、ガイ
「…たく、世知辛いな」
「全くだ。…だが翔太郎、お前ここでどうやって変身するんだ」
そう言ってディケイドライバーを装着し、開きながら士は翔太郎に聞いた
対する翔太郎は待ってましたと言わんばかりに、あるドライバーを取り出す
「その辺は抜かりはねぇ。…フィリップには悪いが、今回は俺一人で戦う」
普段変身する際、外に二人でいるときは鳴海亜希子という女性にソウルサイドであるフィリップの身体を安全な所に運んでもらっていた
しかしもうその人は照井竜の所に嫁いでいるのでそれが出来ないのだ
だが翔太郎はもう一つ、ドライバーを持っている
「ならそれでいい。…行くぞ」
「おうよ。聞き分けの悪いガキと、融通の聞かない仕事人にお仕置きだ!」
そう言って士はカードを取り出し、翔太郎は一本のメモリを用意する
「変身」
言って士はディケイドライバーにカードをセットし、ディケイドライバーを閉じる
<KAMENRAID DECEDE>
ディケイドライバーからそんな電子音声が聞こえ、士の身体を変えていく
九つの残像が重なっていき、彼はディケイドとなる
その隣で翔太郎はメモリのスイッチを押し、そのメモリを起動させる
<JOKER!>
そのメモリを翔太郎は左手でドライバーへセットし右手を自分の前へと動かしてその指をジェイのように開く
「俺―――変身」
そして再び左手でそのドライバーを開くように動かした
<JOKER!>
その電子音声と共に、彼の身体は黒い装甲に纏われていく
赤い複眼と黒いボディに身を包んだその姿は―――
「仮面ライダー…ジョーカー」
彼は左手をスナップし背後にいるフィリップへ声をかける
「相棒、お前は当麻を追っかけてくれ! こいつらは俺たちがなんとかする!」
「あぁ、無理しちゃダメだよ翔太郎、門矢もね」
そう言ってフィリップは駆け抜けた
彼の背中を見届けてジョーカーはディケイドを見る
「…行くか。ディケイド」
「あぁ、行こうぜ」
短くそう言い合って、二人は目の前のライダーに向かって走って行く
「じゃあ軽くいきますかぁ!」
「…足元をすくわれるそ」
妙に気合の入ったガイをたしなめるようにライアは言った
そして向かってくるジョーカーとディケイドを迎え撃つ
◇◇◇
その場で睨み合っていると、当麻の隣に一人の人影が飛来した
ふと、その人影を当麻はちらりと見やる
降りてきたのは鏡祢アラタだったのだ
その視線にアラタも答えるように見返した後、ふと空を見た
そこにはゴウラムに乗った、心配そうな表情で見つめる御坂美琴の姿があった
そんな美琴にアラタはぐ、と親指を立てる
その仕草に、美琴は頷いて、ゴウラムが少し離れていく
「…ンだよ、また来客って奴ですかァ? 今日はなンだ、ハロウィンパーティかっつの」
「浅倉はアイツをやれ。…俺はこの三下を潰す」
今現在
それもそうだ
あんなちょっとコンビニ行ってくるみたいな感覚でケンカを売られてはたまったものではない
「あぁ…さっさと愉快なオブジェにでも変えてやれ」
そう返しながら浅倉はゆっくりと蛇の紋様が描かれたデッキをゆっくりと突き出していく
そしてゆったりと右手を動かし…半月を書くようにさらに動かす
「変身!」
現れたバックルに浅倉はデッキを挿入し、その身体を紫色のライダーへと変えていく
その名は王蛇
変身を終えた王蛇は大きく首を回すように動かしつつ、当麻の隣の男を睨む
「…任せるぞ、当麻」
アラタは腰に手を翳し、アークルを顕現させながら隣の当麻に声をかけた
当麻は右手を握り直して、
「あぁ、任されたぜアラタ。お前も無茶はすんなよ」
「おうよ。そっくり返すぜその言葉…変身!」
ギイン、とアマダムが輝きその姿を変えていく
しかしその姿は普段とは角が短く、装甲も白かった
先ほどのダメージがまだ残ってるのか、彼はグローイングフォームへとその姿を変えたのだ
しかし特に気に留めた様子はなく、当麻から離れつつクウガは王蛇へと身構える
それと同時に、当麻も
応えるように―――
デッキライダーは鏡がなくても変身できる仕様です
ミラーワールドはあるにはありますがディケイド仕様(どっからでも入れどっからでも出れる)
しかしあんまりミラーワールドは使わないので意味はないかもしれない
バロンの登場に胸を躍らせつつではまた次回