とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回で妹達編は終わり
相変わらずな出来ですがあしからず

次回から劇場版に取り掛かろうと思います

後一方通行に若干の改変ありです

誤字脱字ありましたら報告してください

ではどうぞ


#28 誰がために

当麻は拳を握る

彼の隣で、クウガはゆっくりと身構える

 

そんな二人を、御坂妹はただ見ていた

あの人は何をしようとしているのか

分かってる

彼は一方通行(アクセラレータ)と戦おうとしているのだ

彼だけではない

 

姿を変えたアラタ自身も、戦おうとしているんだ

こんな、劣化コピーの自分の為に

 

「何を―――しているのですか? とミサカは問いかけます。こんな替えの効く模造品の為に、貴方たちは何を―――」

 

 

 

「うっせぇよ! ミサカっ!」

 

 

 

そんな御坂妹の言葉をクウガは一言で切り捨てる

彼に続けて、当麻も言葉を紡いだ

 

「替えとか模造品とか、そんなの関係ねぇんだよ。俺たちは〝お前〟を助けるためにここにいんだよ! 他の誰でもないお前の為に戦うんだ! それでいいじゃねぇか!」

 

あの二人が何を言ってるのか御坂妹には分からなかった

御坂妹の言葉は何一つ嘘はなかったはずだ

この身体はいくらでも替えの模造品

一人減ったら一人足し、三人減ったら三人足せばそれで済むような存在のはずだ

それなのに

 

「お前はこの世界で一人しかいねぇだろう!?」

「なんでそんな簡単な事もわかんねぇんだっ!?」

 

血反吐を吐くように叫ぶ彼らの言葉はどういう訳か、彼女の心に届いた

別に、彼らの言葉を信じたという訳ではない

自分の命など、いくら消えても問題なんてないのに

そんな、道端の石ころ同然の命を、守ろうとしてくれる人たちがいる

 

「今からお前を助けてやる」

「お前はそこで休んでな」

 

 

士に言われた言葉を思い出す

 

―――いいか、最強だなんて言われているが、無敵じゃない

 

当麻は拳を握る

 

―――聞くところによると、そいつは今まで負け知らずらしいじゃないか…恐らくその勝利は自分の能力に頼り切ったものだ…掻い潜って何とか一撃を叩きこめば、勝機はある

 

ちょうど距離は十メートル前後

全力でいけば、三歩から四歩で詰める距離のハズだ

 

当麻は息を吸い、一方通行(アクセラレータ)目掛けて勢いよく駆けだした

 

しかし、一方通行(アクセラレータ)はその場を動かない

それどころか拳すら握らない

しかし彼は笑みをやめない

 

そしてトンと、柔らかくリズムを刻むように彼は足で砂利を踏む

 

瞬間、彼の足元で砂利が爆発した

 

言うなればそれは砂のショットガン

 

「!」

 

気づいた時にはもう遅かった

咄嗟に顔を庇った瞬間、轟音と共に大小さまざまな小石が当麻を襲う

 

「遅ェ」

 

言いながら一方通行(アクセラレータ)は手を下から上に振り上げた

刹那、まるで弾丸のような風が当麻に向かって一直線に飛び交った

 

「そんな速度じゃ百億年遅ェぞオラァッ!!」

 

その風を避ける当麻に向かって一方通行(アクセラレータ)は砂利を蹴り上げた

三段のように放たれた小石はまたも当麻に襲い掛かる

 

「っぐ!」

 

のた打ち回る当麻に向かって今度は鋼鉄のレールを飛ばしてきた

あんなものを喰らっては確実に死に至る

 

それでも当麻はレールの着弾地点を予想し転がり続けることしかできない

 

(っくそ…! 全然近づけねェ!)

 

 

互いが互いをにらみ合っている

クウガの赤いようなオレンジ色のような複眼が王蛇を捉え、王蛇の仮面は白いクウガを捉えている

 

「お前のお仲間はだいぶ苦戦してるみたいだなァ」

 

王蛇は言う

 

「そもそも、本当に勝てると思ってるのか。一介の一般人がアイツに」

「勝てるさ。…こんなくだらないことに関与しなきゃ強くなれないショボイ最強よりはな」

 

その言葉を聞いたとき、思わず王蛇は仮面の下で笑ってしまった

そして思う

 

「お前…マジで面白れぇよ―――!」

 

王蛇は牙召杖ベノバイザーを持ち、一直線にクウガに向かって駆け出した

そのままベノバイザーをクウガの顔目掛けて突き出してくる

 

クウガは首を動かしてその一撃を躱しつつ、そのバイザーを取り、相手の胸元にその拳を叩きつける

しかし―――

 

「…お前、舐めてんのか」

 

確実に捉えたハズなのに、まったく効いていなかった

否、何となくわかっていた

 

この白い姿は自分の覚悟が足りない時や、自分の身体にダメージが残っているときになってしまう姿だ

いわば、クウガの不完全体と言ったようなものだ

 

「っく、そぉ!」

 

そのまま数発、拳を叩きつける

しかし、まったくと言っていいほどダメージを与えることなどできなかった

 

「パンチってのはなぁ…こうすんだ!!」

 

お返しと言わんばかりに腹部に放たれた王蛇の拳はドゴム、と直撃する

ガハッ、と空気を吐き出し地面に膝を付いた瞬間に王蛇のつま先がさく裂する

そのまま大きく仰け反ってクウガは地面を転がった

 

「おい。もっと俺を楽しませろ…そんなんじゃ飽きが来るぜ?」

 

牙召杖を回しながら王蛇はゆっくりと歩いてくる

その姿はまさしくチンピラのそれなのだが、逆にそれがしっくりきているかのような気がする

接近してくる王蛇を睨みながらクウガは態勢を立て直した

 

闘志はまだ、消えていない

 

 

目の前で二人が戦い始めても、まだ御坂妹は理解していなかった

否、出来なかったのだ

 

他の誰でもない自分の為に戦ってくれているという事に

 

「なぜ…です、と、ミサカは自分に問いかけます」

 

二人は言った

お前を助けたいんだ、と

 

「こんな…模造品(わたし)に…価値なんて―――」

「価値ならあるよ」

 

ふと声が聞こえた

その声に御坂妹は振り返る

そこ立っていたのは

 

「初めましてだね。…僕はフィリップ。…あの二人の知人さ」

「ち、じん…、なれば早くあの二人を止めてください、とミサカは懇願します。このままでは殺されてしまいます、ともミサカは付け加え―――」

 

「大丈夫。…彼らは死なないよ。負けもしない」

 

だがそうフィリップはそう断言する

―――わからない

どうしてここまで頑なになれるんだ

 

「意味が分かりません、とミサカは言います、どうして、こんな―――」

「もうそれはナシだよ。…そこまで君は誰かを想えるんだ。君には十分価値がある」

 

価値

私に価値なんて見出したのか、と彼女は思う

 

「そうだろう? 君は彼らを心配している。そんな思考が出来るなら…君はもう人形じゃないんだ」

 

言いながらちらり、とフィリップは自分の隣を見る

そこにはちょうどゴウラムから飛び降りた美琴の姿があった

 

「…だから君も、阻止しようと奮闘したんだろう?」

「…私がやったことは、あんま意味なかったですけど」

 

そう言う美琴にフィリップは首を振った

 

「意味はあったよ。…君がそう行動を起こしたから、この子には命を懸けてまで守る価値があると言えるんだ」

「…なら、いいんですけどね」

 

僅かに笑みを作りつつ、美琴は御坂妹へ駆け寄った

倒れる彼女に肩を貸しながら、彼女へと言葉を紡ぐ

 

「お姉様…」

「信じましょうよ。…あいつらを」

 

 

「行くぞ―――」

 

そんな言葉と共に繰り出される鋭い蹴りをディケイドは手で弾きながら、反撃の機会を伺う

赤い色が目立つ目の前のライダーは戦闘にも慣れているのか、ときおり放つこちらの攻撃もすかさず対応してくる

 

「お前は―――なんでこんな事に協力する」

 

ライアの拳を受け止め、ディケイドはすかさず打ち込む、がそれを受け止められる

そんな時、ふとでディケイドは問うてみた

ライアはディケイドを蹴りで距離を離しながらライアは口を開いた

 

「そうだな。…、あの少女たちの運命を見ている」

「…運命、だと」

 

ライアは頷きながら

 

「あの少女の運命を、見届ける。…もっとも、もう決まっているのだが」

「その決められた運命を、お前から変える気はねぇのか」

 

そうディケイドは聞く

しかしライアは首を振った

 

「運命を変えることなどできない。…決められた定めは曲げる事など出来はしないんだ」

「…なるほど。だいたいわかった」

 

この男には、言っても恐らく無駄だろう

運命を変える事などできないなどと信じているこの男は

 

「…わかった、だと?」

「あぁ。決められた運命、とお前はいったな」

「それが…それがどうした」

 

ディケイドはライドブッカーをソードモードに変形させ、剣先をライアに突きつけた

 

「それはお前が変えようとしないだけだってな」

「…なに!?」

「変えられるかもしれないのに、お前は探していないだけの…臆病者だってな!」

「―――貴様!」

 

激情に駆られるようにライアはVバックルから一枚のカードを引き抜き、それをエビルバイザーへとカードを装填した

 

<スイングベント>

 

突如現れた鞭をライアはとり、それをディケイドに向けて振り回す

それをディケイドはソードで斬り捌き、ライアへ接近していく

 

「変えられない運命なんてない! お前ほどの男が気づいていない訳ないだろ!」

「っく…!」

 

鞭と剣

異様な組み合わせの鍔迫り合いが巻き起ころうとしたその時、大きな爆発音が耳に届いた

 

 

「ッはは、おかしいのねアンタらも! あんな人形に価値なんてあるわけないのに!」

 

肩に重そうなパーツをつけているにも関わらずガイの動きは早かった

しかしそれに追いつけないジョーカーではない

 

「そんなもんは、お前が決めるもんじゃねえだろ!」

 

鋭い蹴りがガイを捉える

それにガイは両手を使って受け止める

 

「けれどあんたでもないよねぇ! それ決めんのもさぁっ!!」

 

そのまま両手を前に突き出しジョーカーの体制を崩す

大きく吹き飛ばされたジョーカーはそのまま地面を後ろに転がりつつ態勢を立て直した

 

「ッてゆうか、これってゲームなんだって、なんで分かんないのさ」

「…ゲーム、だと…!?」

 

ジョーカーの仮面の中で翔太郎のこめかみがピクリと動く

この男は、今なんといった

 

「ゲームだよゲーム。…これはさ、一方通行(アクセラレータ)のゲームなんだよ。アンタだってRPGやったことくらいあるでしょ? 一匹一匹スライム倒して経験値溜めてさ、それで一杯になったらレベルアップってやつ」

 

ゲーム

目の前の男はそう言い切った

ジョーカーはただ拳を握りしめる

 

「…ふざけんな」

「ハァ…?」

 

「人を殺すようなゲーム…認めてたまるかって言ってんだ! そしてそれをゲームって言い切るてめぇみてぇなガキもな!!」

 

それを聞いたガイは仮面の下でほくそ笑む

そして徐にvバックルから一枚のカードを取り出して

 

「…言ってくれるじゃん」

 

左肩のメタルバイザーへ投げ入れた

 

<ストライクベント>

 

瞬時に彼の右手に角のようなガントレットが現れた

 

しかしジョーカーは憮然とガイに向かって身構えるだけだった

睨むようなその眼光は以前にもまして鋭くなっているほどである

当然だ

殺し合いをゲームと言い切るこんな男を、翔太郎は許す事はできなかった

 

そうしてガイに向かって駆けだそうとしたその時、大きな爆発音が耳に届いた

 

 

「けっ、ごほっ!」

 

当麻は息を吐き出すように咳をする

 

一方通行(アクセラレータ)が攻撃に使ったコンテナの中身は小麦粉だったのだ

たまたまだったのか、もしくは最初から小麦粉だったのかは分からないがそれを見た一方通行(アクセラレータ)は粉塵爆発という攻撃方法を思いついたのだ

 

粉塵爆発とは、濃度などによって、火花などの火源からエネルギーを与えられ、熱と圧力を発生しながら急激に爆発することだ

石炭微粒子による炭塵爆発がよく知られているが、このほかにも小麦粉、砂糖、プラスチック粉、有機物の微粉末、金属粉末、洗剤などきわめて広範囲のものが粉塵爆発をおこす…らしい

 

どうにか爆発から逃れることは出来たものの、彼が身体に受けたダメージもゼロではない

新鮮な空気を大きく吸い込み、当麻は息を整える

そして後ろを振り返った

 

そこに一方通行(アクセラレータ)は歩いてきていた

己が作った炎の中を悠々と歩いてきていた

 

「ははっ。あァ死ぬかと思った。喜べ三下、テメェ世界初俺を死ぬまで追い詰めた男だぜ?」

 

歌うように言う彼の声に僅かながら恐怖する

それでも、まだ立ち向かうという意思は残っていた

そんな当麻を見て、本当に興味なさげに彼は言う

 

「…お前、身構えてどうすンだ?」

 

小首をかしげる子供みたいに一方通行(アクセラレータ)は首をひねった

 

「お前絶対的な差ってわかってンのか? そもそも近づいたところで何ができるってンだよ。…まぁそれでも? お前は頑張った方だと思うぜェ? この俺を前にまだ息してンだからなァ…」

 

一撃

たった一撃―――…叩きこんでどうになる?

もし腕を戻す前に掴まれたり、触れられたりでもしたらそれでおしまいだ―――

 

いや! と当麻は心の中で首を振る

その一撃を与えることすらできないまま諦めるなんてできない

助けると決めた以上、自分から逃げ出すようなことはしたくない

 

「お前は頑張った…本当に頑張ったよ。だから―――イイ加減楽になれッ!」

 

そう言って一方通行(アクセラレータ)は両足を蹴り、一直線にこちらに向かってきた

 

ここだ、と当麻は直感的に感じ取る

相手に向かうことが出来ないのなら、相手が来るのを迎え撃てばいい

それを行うタイミングはここしかない、と強く当麻は拳を握る

 

そしてこちらに向かってくる相手の顔を見据え―――その拳を打ち出した

 

 

爆音を耳にし、咄嗟にクウガは振り返った

しかし、すぐに目の前の相手に意識を向ける

 

「…ほぉ? お仲間が死んじまったのかもしれないのに、余裕だな」

「あいにく俺は信じている。…ああ見えてタフなんでな」

 

仮面の下でアラタは笑った

そんな笑みを感じ取ったのか王蛇は大層不機嫌と言わないばかりに舌を打ちながら、バックルから一枚のカードを取り出し、ベノバイザーに装填した

 

<ソードベント>

 

そんな電子音声が鳴った後、彼の手に金色の突撃剣が現れる

王蛇はそれを手に、クウガへ向かって行った

クウガは両手を開き、相手がこちらに来るのを待つ

幸いにも相手の剣は切るような形でなく、叩きつけるような形状をしていたのが救いか

もっとも、剣先で繰り出されれば斬られてしまうが

 

「らぁっ!!」

 

そのまま片手で振り下ろされたその一撃をクウガは両手を交差させて受け止める

そして両手の甲を滑らすように接近させる

 

彼女は自分を模造品と言った

材料があればいくらでも作り出せる人形

 

クウガはそれを否定する

仮にそれで新しい御坂妹が生まれたとしても、〝今、ここ〟にいる御坂妹はそれで終わりじゃないか

 

自分たちと触れ合った彼女を覚えている

猫のノミを取ってくれた彼女を覚えてる

この世界に、奪われていい命なんてあるはずがない

 

これ以上、妹達(シスターズ)の死を望んでいない人たちがいる

それ以前に、約束したんだ

 

助ける、って

 

拳を握る理由なんて、それだけで十分なんだ―――

 

そう強く願いながらアラタは拳をより一層力強く握りしめる

瞬間、彼の両腕の白い小さな宝石が赤く輝いた

 

「でぇいやぁぁぁっ!!」

 

そのまま勢いを利用しクウガはその拳を放つ

王蛇は特に防御もしなかった

する必要もなかったからだ

 

この白い奴の非力さでは、自分を怯ませることもできない

そう考えていた王蛇の考えは脆くも崩れ去る事となる

 

ドゴム、と胸部に直撃した

その痛みは、先ほどとは比べ物にならないくらいに強力な痛み

 

「―――っ!!?」

 

思わず大きく王蛇は後ろへ仰け反った

明らかに威力が向上しているのだ

 

「ぐっ!? が…!?」

 

地面に膝を付きながら王蛇は目の前のクウガを睨む

視線を向けた時、クウガは大きく右足をひいており、両手を開いていた

そして―――一直線に走ってくる

 

「!」

 

本能的にマズイと察知したのか素早く王蛇は立ち上がって両手で防御態勢を取った

一撃目、どうにかその一撃を防ぐことは出来た

しかしそれでも僅かに押されてしまう

 

付近に着地した白いクウガはその場でもう一発飛び蹴りを放ってきた

 

二撃目、今度は防御が間に合わずもろに身体に喰らってしまった

直撃を受けた王蛇は今度は大きく後ろへ吹き飛ばされる

幸いにもこちらの蹴りは最初のパンチと同じようにあまりダメージはなかったことが救いだったか

 

しかしクウガは止まらなかった

再び蹴りの体制を取り、こちらを見据える

その時、彼の足が一瞬赤く光った気がしたが、王蛇はそんな事気にする様子などなかった

 

すでに立ち上がったときには、もうクウガはこちらに向かい跳躍しており―――

 

三撃目

 

紅蓮に纏われた白いクウガの蹴りは王蛇の顔面にぶち当たり、彼を大きく吹っ飛ばす

 

スタリ、と着地したクウガは肩で息をしながら地面を転がった王蛇を見る

そこに倒れていたのは、変身が解除された浅倉の姿があった

 

 

エライ爆発音が聞こえた気がするが、ディケイドは気にしないことにした

 

今は目の前の男を倒すのが先だ

 

「ふん!」

 

振るわれる鞭をライドブッカーソードで斬りはらいつつ、咄嗟にブッカーをガンモードに切り替えてライアに向かって銃撃を行う

ライアはその場から跳躍を行い、ディケイドの背後を取った

背を取られたディケイドはすかさずライアを撃とうとガンモードを向けるが、その手がライアの持つエビルウィップに弾かれる

 

「っ!」

 

その隙を逃さずライアはさらに連続攻撃を仕掛ける

丸腰となったディケイドは数発貰ったが、すぐに後ろに飛んで距離を取る

 

「…ったく…やるじゃねぇか」

 

仮面の下で士は笑う

それと同時に苛立ちを覚える

どうしてこんなに力があるのに、お前は動かないんだ、と

 

徐に一枚のカードをディケイドは取り出した

 

龍のような、それでいて炎ような色のそのカードは―――

 

「見せてやる…願いに準じた男の変身した姿を!」

 

それをディケイドはドライバーに差し込んだ

 

<KAMENRIDE RYUKI>

 

かがみの割れるような音と共に、ライアと同じように残像が重なる

ライアは思わず身構えたがふと気づくとそこにディケイドの姿はなかった

代わりに、赤いドラゴンのような仮面ライダーが、そこにいた

 

名を仮面ライダー…龍騎

 

「…シャ! てな」

 

ディケイド龍騎は自分の顔の前で拳を握り―――ライアに向かって駆けだす

相手の行動に一瞬驚きそうになるがすぐに手に持つエビルウィップを振るう―――がディケイド龍騎はそれをスライディングして回避し、相手の足に蹴りを叩きこんだ

 

すかさずディケイド龍騎は自分の身体を押すように地面を叩く

その威力を利用して、スライディングの体制からライアの腹部を蹴りつけた

 

「うぐ!?」

 

腹部に痛みに耐えながらライアはエビルウィップをその辺に放り投げた

同時にもう一枚、カードを取り出す

 

それはエイの紋様が刻まれたカードだ

 

「…ケリをつけよう」

「上等だ」

 

同じようにディケイドもカードを取る

カードのデザインは違うが、同じように龍の紋様が書かれている

 

そして―――二人はカードを入れた

 

<ファイナルベント>

<FINAL ATTACK RIDE RYU RYU RYU RYUKI>

 

そんな電子音声が鳴り、二人にモンスターが現れる

 

一体はエビルダイバーという、エイの形を持つモンスター

一体はドラグレッダーという、竜の形を持つモンスター

 

ディケイド龍騎はそのまま宙へと飛び、ドラグレッダーも彼の周囲を飛び交う

それに合わせてライアも自身の周りを飛び交うエビルダイバーの背に飛び乗った

 

ドラグレッダーが放つ炎と共に繰り出されるドラゴンライダーキックを、ライアのハイドべノンが迎え撃つ

 

お互いの必殺技が激突して、立っていたのは―――

 

 

「…まぁこんなもんか」

 

 

ディケイド龍騎だった

自分の背後では倒れているライアの人間体の姿

もぞもぞと動いている所から恐らく気絶してはいないのだろう

 

ディケイド龍騎はディケイドへと戻った後ドライバーを開き変身を解く

士はちらりと背後の彼を見たが、特に言葉をかけず歩き出す

 

その背中を、手塚は朦朧とした意識の中で見つめていた

 

 

「ははっ! あんな爆発じゃ生きてなんかいないんじゃない!?」

 

ストライクベントによって生み出されたメタルホーンを振るいながらガイはジョーカーを追い詰めていく

とはいってもその攻撃はなかなか当たらず、ほとんどが避けられるか、捌かれるかで正直ガイはイライラしていた

 

そもそもこういうライダーへと変身し、戦うことも彼にとってはゲームと一緒なのだ

戦って経験を積み強くなる

弱い奴を潰すのは楽しいし、強い奴を屈服させるのはもっと楽しい

 

目の前のライダーもそれと同じだ

綺麗事を吐く偽善者、あんな人形を助けるなんてどうかしている

 

一方通行(アクセラレータ)も派手にやるよね、あんな奴とっとと潰して、ゲームに戻ればいいのにさ!」

 

「いちいちうっせぇよ!」

 

下から繰り出された唐突な蹴りがガイの右手を捉える

大きく右手を弾かれ隙を晒したガイはジョーカーの拳を顔面にもらった

 

「ぐっ!?」

 

「ゲームとか…人形とか…! 俺はお前みたいな、遊び感覚で戦うような奴が一番腹立つんだ!」

「なっ! …アンタだってそうじゃないのか! こんな力を手に入れて…遊ばない方がどうかしてる!」

「ふざけんな! この力は…この力は誰かを守るためのもんだ! お前と一緒にすんなっ!」

 

言葉と共に放たれたジョーカーの蹴りはガイの胸部に当たる

ぐ、とガイは胸を抑えつつ彼が言った言葉を頭の中でリピートした

 

誰かを、守る

 

ガイにはそれが分からない

今まで自分の為に使ってきたこの力を、誰かのために振るうなど考えたこともなかった

 

「バッ…バカか! なんだって顔も知らない奴なんかの為に―――」

「そうかい、案外悪くないぜ。誰かに感謝されるってのは」

 

徐にジョーカーはメモリを引き抜き、ドライバー横のマキシマムスロットへと装填した

そしてそのスロットを軽く叩き―――

 

「大人の一発お見舞いしてやる! 頭冷やしなぁ!」

 

<JOKER! MAXIMUMDRIVE>

 

そうしてジョーカーは勢いよく走り始める

 

「何が大人だ…! この野郎!!」

 

釣られるようにガイも紋様が刻まれたカードを肩のバイザーへ投げ入れる

 

<ファイナルベント>

 

その音声と共にガイの背後にサイ型のモンスター〝メタルゲラス〟が現れる

改めてガイはメタルホーンを構え直し、ゲラスの方に飛び乗った

 

乗ると同時にゲラスはジョーカーの方へ駆けだした

駆けだすゲラスの方に乗りながらガイはジョーカーへホーンを突き出し、ヘビープレッシャーを繰り出す

そのヘビープレッシャーを迎え撃つように拳を突き出し、ライダーパンチを繰り出した

 

角と拳

二つの一撃が交差し、周囲に爆発が巻き起こる

 

もくもくと煙が張れる中、そこに立っていたのは黒い人影

男性はロストドライバーを閉じ、メモリを抜いて変身を解く

そして被っていた帽子で自分の周囲にある煙をパンパンと払ったあと帽子を再びかけ直す

 

「…ま、せいぜい迷いな。…俺が言うほどでもねぇが、若ぇんだから」

 

自分の後ろで倒れている芝浦に、翔太郎はそんな言葉を投げかける

そして一度倒れた彼を振り返りながら、翔太郎は前に向かって歩き始めた

 

 

幻想殺しを宿した右手は躊躇なく一方通行(アクセラレータ)の顔面に突き刺さった

 

ぐしゃり、と彼の顔に当たった当麻のパンチは一方通行(アクセラレータ)を吹っ飛ばし彼を砂利の上へと倒れさせた

 

「あ…は?」

 

一方通行(アクセラレータ)本人も理解していなかっただろう

恐らくなんで自分が空を見ているのかも

もそり、と一方通行(アクセラレータ)は起き上がり殴られたところに振れて粘つく赤い液体を見た

 

「―――な、ンじゃこりゃァァァ!?」

 

殴られた!? 

この俺が―――!?

 

否、あり得ないと一方通行(アクセラレータ)は心の中で自問自答する

第一自分に振れる全てのもののベクトルを一方通行(アクセラレータ)は操作できるはずだ

ならなんで殴られた?

 

(…ハイになりすぎて無意識に全身の反射を切っちまったのか?)

 

そう自分に結論付けて再び彼は当麻へと向き直る

 

「はっ、はは! イイねェ! 愉快に素敵に決まっちまったぜオイオイヨォ!」

 

いいながら一方通行(アクセラレータ)は再び当麻を破壊しようと手を伸ばす

そうだ、さっきのは何かの間違いだ

テンションが高すぎたせいで引き越したアクシデントだ

このまま手が相手に触れればその時は今度こそアイツの身体は粉微塵に吹き飛ぶはずだ

 

当麻はゆっくりと右手を動かす

その右手は一方通行(アクセラレータ)の手に触れた

 

パン、と緩やかに一方通行(アクセラレータ)の手が弾かれた

 

「―――!?」

 

今度こそ一方通行(アクセラレータ)は確信する

しかし確信したときにはもう上条当麻の右手は目前にまで迫っており

 

バガン、と再び一方通行(アクセラレータ)の顔面にぶち当たる

 

それでも彼は目の前の男を殺そうと両手の毒手を伸ばす

しかしその手は触れる事かなわず、いとも簡単に避けられる

身体を大きく動かして、或いはその右手で弾かれて

 

「っくそ! なンなンだよその右手は!!」

 

能力に頼っているか、否か

 

結局はそれが二人の明確な違い

 

一方通行(アクセラレータ)は戦っているわけではなくただひたすらに殺しているだけだ

見についた能力があまりにも一方的なばかりで、彼は戦い方を覚えようとはしなかったのだ

 

実際よく見ると彼の構えは適当で足の運びもめちゃくちゃだ

しかし、それすらも気にする必要もないくらい彼のチカラは強すぎた

技術や努力は言えば足りない人間が己を補うためのものに過ぎない

 

しかしそんなものを必要としないくらい、一方通行(アクセラレータ)という能力は圧倒的だった

上条当麻という、イレギュラーが現れるまでは

結局の所、士が言っていた通りだ

 

一方通行(アクセラレータ)は最強なだけで、無敵ではない

 

その針の穴のような隙間に勝機は見える

 

「三下がァァァッ!」

 

咆哮と共に一方通行(アクセラレータ)の足は地面を踏む

巻き上がる砂利の向きを変え放たれた砂利のショットガンは今度はいともたやすく避けられた

顔面を狙ったその攻撃は低く身を屈めただけで避けられてしまった

そしてその身を屈めた状態で当麻は拳を強く握り、渾身のアッパーカットを一方通行(アクセラレータ)の顎へと突き刺さる

 

「つまんねぇことに手ぇ貸しやがって」

 

当麻は紡ぐ

 

「な―――に!?」

 

慣れない足に力を込めながら一方通行(アクセラレータ)は言葉を聞いた

 

妹達(シスターズ)だって生きてんだぞ。毎日毎日…必死になって走ってんのに…なんでお前みてぇなヤツに喰われ続けなきゃいけねぇんだ…!」

 

生き、てる?

 

(あいつらは―――人形だって―――)

 

そう科学者は言った

だから何も気に病むことはないとも

 

けれど―――この男は―――浅倉とも対峙しているあの男も―――この人形を助けるために立ち塞がって…

 

絶対的な力が欲しかった

最強の座を狙う馬鹿どもが、挑む気すら起こさなくなるような存在になれば、また、あの輪の中に―――

 

 

―――おい、アクセラレータ

 

 

不意に頭に響く声

それは浅倉亮の声

 

―――最近上手いコーヒーが出たらしいぞ、買いに行かないか

 

手塚孝之の声

 

―――なぁ、ゲームしようぜ。イイじゃん、手の反射くらい切れんだろ?

 

芝浦篤の声

 

「歯ァ食い縛れよ最強―――」

 

なんでこんな簡単な事気づかなかった

こんな自分を友と呼んでくれる存在は―――こんな近くにいたのに

 

「俺の最弱は…少し響くぞ」

 

当麻の拳は襲い来る

しかし一方通行(アクセラレータ)は特にアクションを起こさなかった

 

(あァ…何やってンだァ…俺はァ…)

 

なんて、無様

 

一直線に突き出された上条当麻の最弱は、一方通行(アクセラレータ)を吹き飛ばす

華奢な身体は地面に叩きつけられ、彼は手足を投げ出して、ゴロゴロと転がった

 

◇◇◇

 

夢を見た

 

燃え盛る教会の中、一人の刑事がコウモリの怪人とライフル一つで戦っていた

しかし相手は怪人、力の差は歴然で全く歯が立たない

おまけに刑事はコートを着ていたためか、炎が刑事のコートに燃え移ってしまった

 

絶体絶命

そう思ったとき、入り口から一人の男性がバイクごと突っ込んできた

バイクは勢いを殺しつつ、横に倒し強引に止めてそれを怪人に向けて滑らした

そのままバイクは怪人に当たり、ガソリンにでも引火したのか、激しく爆発しさらに炎上する

 

「刑事さん!」

 

バイクに乗っていた青年は来ていた服を脱ぎ、刑事に燃え移っていた炎を消そうと刑事にばさばさと服を当てる

消されながらも刑事は言う

 

「なぜここに来た!?」

 

刑事は嫌だったのだ

一般人であるその青年が戦おうとしてることや、力を手に入れたからって中途半端に関わろうとしている事が

そんな思いとは裏腹に、青年は叫ぶ

 

「戦います! オレ!」

 

襲い来るコウモリ怪人に挑みながらも彼は刑事の方へ飛ばされる

そんな青年の胸元を掴み、

 

「まだそんな事を―――!?」

 

しかし青年は刑事を振り切り、コウモリの怪人と相対しながらまた言葉を紡いでいく

 

「こんな奴らの為に! これ以上、誰かの涙は見たくない!!」

 

青年は言う

 

「皆に笑顔で、いてほしいんです! ―――だから見ててくださいオレの―――」

 

 

 

―――変身ッ!!

 

 

 

そして青年は戦いの運命をたどる事となる

仮面の下に、その涙を隠しながら―――

 

◇◇◇

 

「ハッ」

 

ふと、目が覚めた

 

似たような夢をどこかで見たような気がする

だけど、なんでこんなリアリティある夢を見るのだろうか

 

「…てかここどこだっけ」

 

見慣れない場所に戸惑いつつ、何があったかなと思い出す

そうだ、思い出した

 

確か昨日当麻は一方通行(アクセラレータ)と、自分は紫色の仮面ライダーと戦ったのだ

そしてその戦いが終わった後に、御坂美琴やフィリップから念のために病院に行った方がいいと言われたのだが、それを断ろうとして半ば連行されるように美琴に二人は連れられて―――検査入院という形で今に至る

 

「起きたか、アラタ」

 

ふと視界に入ってきたのは蒼崎橙子だった

彼女は病室であるにも関わらず、窓を開けて堂々と煙草を吸っていた

 

「…あの、ここ室内なんですけど」

「細かい事は気にするな。ちゃんと窓を開けてるだろうが」

「いえ、そういう事でなく。…まぁいいや」

 

この人がこんななのは今に変わったことではない

それに今は、何となく煙草を吸う橙子を見てどこか安心している自分がいる

 

「それで、何の用さ」

「何。一応見舞いに来たんだよ。と言っても、杞憂だったがな」

 

橙子は煙草を携帯灰皿にブチ込んで改めてアラタに向き直った

 

「それとなアラタ。お前無茶しすぎだぞ」

「え?」

「昨日は無茶しすぎと言ったんだ。とにかく、今日一日は変身するな。ゆっくりアマダムを休ませてやれ」

 

そう言って橙子は懐から缶ジュースを取り出し、それをアラタに向かって投げ渡す

唐突に投げられたものの、それを何とか受け取り、その缶ジュースを適当に置く

因みにオレンジジュースだった

 

「…まぁ、そうさせてもらうよ」

「分かればよろしい。後で未那や黒桐夫妻に会いに行ってやれ。心配してたぞ」

「おっけー。…いろいろとありがとう」

 

そう言うと橙子は短く手を振って出口へと向かっていく

そして橙子が扉を開けた時、一人の女の子と鉢合わせした

 

「あっと…、すいません」

 

それは御坂美琴だった

同様に橙子もそれが美琴だと確信するのに時間はかからなかった

 

「いや、こちらこそすまない。…これからも、あのバカを支えてやってくれ」

「え?」

 

美琴にそう言って橙子は彼女の隣を歩き過ぎる

そんな橙子の背中を、美琴は戸惑った表情で見つめていたが、すぐに意識を切り替えて室内に入っていく

 

「…お見舞いにきたよ」

 

そう言って小さく笑みを浮かべる

その笑顔は若干疲れたような感じがしたが、それでも本当に笑っていた

 

「はいこれ。お見舞いのクッキー。一応、デパ地下とかで高そうなの選んできたから美味しいと思うけど」

「そっか。…ありがとう」

「あぁ、それから。アンタの友達だけど」

「ん? 当麻がどうしたって?」

 

美琴は花瓶の花を整えつつ、アラタに言葉を紡いでいく

 

「ついさっき退院したわ。アンタに比べると、怪我少なかったみたいだしってあの医者が言ってたわ」

「そうか」

 

アラタはそれを受け取りながら言葉に頷き、先ほど橙子にもらったジュースの隣にクッキーは入った袋を置いた

 

「そだ、さっきの人ってだれ? 知り合い?」

「そんなところだ。俺の恩人」

 

短くアラタはそう答えると大きく背を伸ばした

その時思い出したように、美琴が口を開いた

 

「実験」

「ん?」

「中止になったってさ。あの子から聞いた。…それでさ、少しの間研究所の厄介になるって」

 

後から当麻に聞いた話によると、もともとのクローン体に薬物投与して急成長させた彼女たちはもともと短命だった彼女たちの寿命はさらに短くなってしまったらしい

そう言った状態を治すべく、研究施設の世話になって寿命を回復させる、とのこと

 

「そうか。…なら、守れたんだ」

「…うん」

 

けど…、と美琴はスカートの裾をぎゅ、と握る

 

「…それ以外の妹達(シスターズ)は…救えなかった」

 

自分が不用意にDNAマップを提供したせいで、二万もの妹達(シスターズ)を死すべくしてこの世に生んでしまった

その重荷は、これからも背負って行かないといけない

世界が許しても、それだけは永遠に背負って生きていかないといけないのだ

 

「けどさ、お前が提供しないと…妹達(シスターズ)は生まれる事すらなかった。その実験は間違ってはいたが、彼女たちが生まれた事だけは誇っていい」

 

「…私のせいで、一万人以上の妹達(シスターズ)が殺されたのに?」

 

「それでもだ。辛いことに辛いって言って、そんな当たり前の事も生きてないとできない。生まれてこないとできないんだよ。…だからきっと妹達(シスターズ)は恨んではいない。あの実験は歪んでたが、それでもこの世に生を受けた事だけはきっと、感謝してると思うんだ」

 

アラタの言葉に美琴は顔をあげた

彼は少しだけ美琴に向かって笑いかける

 

「だからお前は笑っていい。あの子たちはお前が一人で塞ぎこむことを望んじゃいない。妹達(シスターズ)は他人の痛みを笑ったりなすりつけるような子たちじゃないと思うし…何より、お前は笑った方が可愛いしね」

 

◇◇◇

 

そんな病室の入り口にて

 

「やれやれ…」

 

先ほどの発言以降、室内が妙な空気になってしまい入るに入れなくなってしまったのだ

しかしそれは、平和の証でもあるのだが

 

「まぁいいか。この世界は面白そうだ…、退屈はしなさそうだな」

 

呟きながら門矢士は歩きはじめる

 

かつて世界の破壊者と呼ばれ、今は気ままな旅を続ける仮面ライダー、ディケイド

 

科学と魔術が交差するとき、その瞳は何を見る

 

◇◇◇

 

病院の入り口にて

御坂妹は黒猫を抱えながら左翔太郎と、そしてその相棒フィリップと話をしていた

内容は実験が中止になったことと、自らの身体の調整のために一度研究所に身を置く、という事だ

 

「そうか。よかったじゃねぇか。これで一件落着だ」

「うん。ようやく一息ついたね」

「…いろいろとご迷惑をおかけしました、とミサカは礼をしながら謝罪の言葉を述べます」

 

そう言ってお辞儀する御坂妹を翔太郎は手で制す

 

「気にすんなって。こっちが好きにしただけなんだからよ」

「ですが…」

「気にしないでって本人が言ってるんだ、大丈夫だよ。翔太郎はハーフボイルドだからね」

「ハーフじゃねっつの。ったく」

 

そんなやり取りに、小さく、本当に小さく御坂妹は笑った―――そんな気がした

 

「それでは、とミサカは小さく手を振りながら踵を返します」

「おっと、もう行くのか?」

「えぇ、とミサカは答えます。これからあのツンツンの人たちに礼を述べたあと、研究所に向かうつもりです」

「そうか。じゃあね、御坂妹。機会があったらまた会おう」

「―――えぇ、とミサカは力強く頷きます」

 

そう言って黒猫を抱え直した御坂妹は手ってと走って行く

そんな背中を見ながら翔太郎は帽子を被り直す

フィリップも顎に手をやりつつ、

 

「…じゃあ、僕たちも帰ろうか、翔太郎」

「あぁ、そうだな」

 

そうして二人も帰路につく

またこれから、何でもない日々が始まるのだ

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