とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
基本的には劇場版をメインですのであんまり本編は書かないかも
誤字脱字等ありましたら報告ください
ではどうぞ
#29 始業式
前日にそれは起こった
ゆっくりと部屋でくつろいでいたアラタの部屋を開け放ち、いきなり上条当麻が入ってきたのである
顔色を見ればそれがどういったものであるか等はすぐわかった
しかし問題はそれじゃない
内容は学園都市の外の行こうとしていることで
なんでも、インデックスの十万三千冊の魔導書を狙い、一人の魔術師は襲撃してきた
その名を
実際には知り合いである大切な人の為に、インデックスの持つその十万三千冊の一つの魔導書を狙って襲撃したらしいのだ
そしてその魔導書をコピーしようとするものの、魔導書の毒に身体が耐えることが出来ず、あえなく断念
そこに当麻の説得もあり、彼は当麻と共にその呪いの呪術師と一線交えるべく外に行こう、という話になったらしいのだ
それでもしよかったら…という事で鏡祢アラタも援軍を頼まれた
実際、そんな事情があるのなら断る理由もなく、アラタはそれを快諾、共に学園都市の外に出かけることとなった
しかし問題も多かった
そもそも学園都市の外に出かけるのにはちゃんとした許可証とかいうのがないといけない
とはいえ馬鹿正直にそんなもん申請していては時間がかかる
それを乗り切れたのが闇咲の持つ魔術のおかげである
なんでも彼の持つ魔術の一つにそれを持っているように見せかける術式があるのだ
それを用いてどうにかその堅牢な警備隊を突破
そして当麻を援護しつつ闇咲の知り合いを助けて、もう一度彼の魔術の力を借りて本日二度目の強行突破を敢行、成功し帰路についているわけだが
「…明日から学校だというに、お前は厄介事を運んでくる天才か」
「言わないでくれアラタ…」
まぁ助けられてよかったと思っているのだが
本日は始業式、いわば始まりの日である
アラタは割と暇を見つけて夏休みの
「…ハァ…結局終わらなかった。マジどうしよう」
「俺のを写せる範囲で写せよ。登校にはまだ時間があるからな」
「ホントに!? 助かるぜアラタ! 持つべきものは友達だよなぁ!」
「調子いいなおい」
そんな当麻を尻目に、学生寮に到着し各々の部屋の前に到着
「そいじゃちょっととってくるから、お前は朝飯の準備とかしとけよ」
「おう、ホント悪いな」
「気にすんなっての。困ったときはお互い様だ」
そう言って二人は自分の部屋へ入っていく
そう言えばインデックスは当麻の部屋に留守番してた記憶がある
危ない場所に連れてくのは危険だ、という当麻の判断で彼女を縄で縛り(これも闇咲の魔術の助力で縛った)、そのまま当麻の部屋で放置プレイされていたのだ
「…まぁ、それは俺の知るところじゃないよね」
被害を受けるのは当麻である
可愛そうな気もするが、そこら辺のフォローは出来ない
とりあえず課題のプリントを探すべく靴を脱いで居間に行こうとしたとき、ふと違和感を覚えた
―――居間に誰かいる
敵かどうかはわからない、が身構えていて損はない
いつでもアークルを顕現させるべく腰に手を添えつつ、じりじりと距離を詰めていく
時刻は明朝五時前後
うっすらと闇にいるその人影がこちらを向いた
ゴクリ、と唾を飲む
居間に入る相手の赤い瞳がアラタを見据え―――一気に駆けてきた
(なっ!?)
全くの予想外の行動にアラタは反応できず相手が繰り出すタックルをもろに喰らってしまった
なんとか足で踏ん張る事により、仰向けに倒れることを避けることが出来たが―――
「…うん?」
てっきり攻撃かとも思ってみたがそれは違う
仮に攻撃ならこの時に一撃を打ち込めるはずだ
だというのに相手はなんか妙に抱き着いてきてるような―――
気になって彼は電気をつけてみる
かちり、とスイッチを入れて明かりがつき、室内が明るくなる
今までよく見えなかった相手の姿が明かりに照らされてはっきりし―――
「なぁ!?」
そして驚く
なんてったって自分にタックルをかましてきたのは黒髪ロングの女の子だったのだ
そりゃあ驚くに決まっている
あまりの驚きにアラタは一度彼女を引きはがす
見た目ははっきり言って黒一色
黒いワンピースに履いているのはスパッツだろうか、逆にそれがなんかそそるような…
邪な方向に行きかけた思考を頭を振って正常に戻す
そして何よりも目に行くのが頭につけてる角である
そう言ったカチューシャなのだろうが、なんか変に似合っているのだ
「…え、あれ?」
そう言えばこの角、最近どこかで見た気がする
いや、最近ではない、ほぼいっつも見ているハズだ
よく一緒に飛んでくれる相棒のとか
そこまで考えてハッとする
そんな中黒髪の女の子はきょとんとしたままアラタを見る
クリ、とした赤い瞳は真っ直ぐにアラタを捉えていた
注意深く観察してみると、なんかペンダントのようなものを彼女はしていた
それは緑色の宝石をあしらったペンダント
奇しくもそれはいつもゴウラムに乗る際によく見るものとそっくりだった
そこまで考えて…目の前の女の子の正体に気づいた
「もしかして…お前…ゴウラムなのか…!?」
彼の口からその名前を聞くと本当に、本当に嬉しそうに女の子は笑った
「やっと名前を言ってくれたね、クウガ」
◇
とりあえず件の課題を当麻(なぜか歯型があった)に渡し再びアラタは部屋に戻る
そして携帯を取り出し、一人の知人に連絡を求める
<やぁアラタ。そろそろ来るんじゃないかと思っていたよ>
「その口ぶりからすると、やっぱりお前知ってたな」
連絡相手は蒼崎橙子
伽藍の堂のオーナーであり、人形師であり、魔術師でもある彼女はくくっと笑いながら返答していく
「なんだよ、いつゴウラムは人型に超変身できるようになったんだ」
<私に聞かれてもな。おそらくその宝石の力のおかげだと私は睨んでいるのだが>
彼女の話によるとその緑色の宝石はクウガのアマダムと同等の力を持つものらしい
確かにそれなら人型になれるかもしれないが…それにしたって唐突過ぎる
<夜なんとなくガレージに行ったらそうなっててな。お前に説明しようと尋ねたらいないものだから、そのまま置いてきたという訳だ>
「やっぱりお前かよ! どうすりゃいんですかこれ!」
<そう言われても…。そうだ、これからはお前が彼女の面倒を見ろ>
「えぇ!?」
まさかの同棲提案
<わかってるだろう? クウガであるお前にゴウラムが必要なように、アイツにもお前が必要なんだ。…ガレージで待機しているゴウラム、どことなく寂しそうなんだぞ?>
「そ…そう…なのか」
そう言ってちらりと居間でテレビを見ているゴウラム(黒髪ロング)に視線をやる
自分からの呼び出しがあるまで、ずっと彼女は一人だったのだろう
実際、一緒に飛んでいるときのゴウラムはイキイキしているような…気がした
断言できない自分がとても憎らしかった
<まぁ、可愛い妹分だ。可愛がってやれ>
「…わかったよ。オレが預かる」
そう橙子に言うと任せたぞ、と言ったのち通話を切った
携帯を閉じてそれをポケットに仕舞うと改めてアラタはゴウラムの所へ歩いて行った
そこでふと思い当たる
(…待てよ、そうなるとゴウラムって呼ぶのかわいそうじゃないか? せっかく人型になれるようになったんだからちゃんと名前を付けないといけないか? いやでもゴウラムってのも本名だしなー)
こういったいらんことで悩めるのもは平和の証か
そこでふと時間を見るともうそろそろ学校に登校する時間帯ではないか
これはまずいと思ったアラタは鞄に適当に筆記用具やら通信簿やらをブチ込み上履きの入った袋を用意する
「ゴウラム」
「ん? なぁにクウガ」
「…二人だけとか、美琴たちや当麻とかの前でならいいけど、あんまり大勢の前で言わないでくれよクウガって」
そう彼女に言うとハッとした様子でうん、と頷いた
そんな何気ない仕草にちょっとときめいたのは内緒である
「とにかく学校言ってくるから、悪いけど留守番頼まれてくれないか?」
「うん、いいよ」
二つ返事で彼女は了承してくれた
そこでアラタはもう一つお願いをすることにする
「そうだ、隣の部屋にインデックスっていう子がいるはずだから、もしよかったら話し相手になってくれないか?」
「インデックス? あ、あの時のシスターちゃんの事?」
ゴウラムとインデックスは一応面識がある
面識と言ってもその時のゴウラムは人間体ではなかったが
「うん、分かった。任せてよ」
「OK。…ほんじゃまぁ、行ってくるから」
アラタは人間体となったゴウラムに向かって手を振った
それに応えるようにゴウラムも手を振って
「うん、行ってらっしゃい」
どこか背中のあたりがかゆくなるのを感じながら、アラタは部屋を後にした
◇
部屋を出ると同じタイミングで当麻も部屋から出てきていた
顔を合わせるとよぉ、なんて言葉を言いながら挨拶をしつつ、当麻は課題をアラタに返す
「サンキュ、とりあえず出来る所だけはやった。…あとは祈るばかりだ」
これは後で聞いた話だが彼の課題は闇咲逢魔の襲撃に伴いほとんどが紛失してしまってるらしい
おかげで残っているのは普通授業分だけの課題だけとかなんとか
「流石にインデックスは留守番か」
「そりゃあな。色々考えないといけないからよ…。とりあえず、帰ったらどっか遊びに行くってインデックスと約束したんだけど…お前も行くか?」
「そん時までなんもなかったら行く。風紀委員の仕事とかは行っちまったらいけないけど」
そんな言葉を交わしつつ、二人は学校への道を急いだ
…しかし線路上にカラスが小石を置いた、なんてしょうもない理由で学校へと走る電車が止まっていたらしく、アラタのビートチェイサーで学校に走って行ったのは別の話
◇
当麻が部屋を出て早五分
インデックスは速攻で暇になっていた
つけっぱなしのテレビには目もくれず三毛猫のスフィンクスを弄っていたインデックスはやがてその動きを止めて
(…暇かも。追いかけたいかも)
そんな欲求に駆られるが、それで自分の都合を押し付けては当麻やアラタに迷惑をかけてしまうだろう
立場が逆なら分かり易い
たとえば自分が聖ジョージ大聖堂から召喚命令を受けたとしよう
そんな中、暇だからー、という理由で当麻が後を追ってきたとしたら
それは確かに嬉しい
嬉しいけど―――困る
魔術の専門家としての顔を見知った人間に見られるのは割と恥ずかしいものだ
それと同じで今彼の後を追って行ったら困るかもしれない
そう思うと無邪気に追うのも気が引ける
そうだ、ここは大人しくお留守番してよう
帰ってきたら遊びに連れて行ってくれるって言っていたんだし
再び決意を新たにし、スフィンクスをいじくってゴロゴロしようとしたところで
「…あれ、そう言えばお昼ご飯は?」
呟いて彼女の動きがフリーズする
インデックスに料理を作るスキルはない
スナック菓子の類も完全に三毛猫が食い散らかしてしまっているために買い置きはもうない
「…こ、これは単純明快大ピンチかも」
そう言ってインデックスは今しがた当麻が出ていった扉にちらりと視線を見やるとまたいきなりその扉が開いた
思わず身構えるがそこに立っていたのは黒い髪に角みたいなカチューシャを付けた黒いワンピースを着た女の子がいた
「あ、インデックス。久しぶり」
女の子はどうやら自分の事を知っているらしい
しかしインデックスとしては目の前の少女とは初対面のはずなのだが
そこでふと、インデックスは彼女の首にかけてあるペンダントに気が付いた
それはいつぞや背中に乗った背中に合った宝石と酷似していた
「…あーっ!? 貴女、いつかの
「うん、元気そうで何よりだな。改めて初めまして、私はゴウラム」
◇
見た目の年齢が近いこともあってか二人はすぐに仲良くなった
ほどなくしてインデックスは当初の目的を思い出す
「そうだ、当麻にお昼ご飯貰わないと!」
「あれ、インデックスも学校に用があるんだ?」
彼女の口ぶりから察するとゴウラムもようがあるのだろうか
インデックスのそんな視線に気づいたのか、ゴウラムはすっと手に持っていたコンビニ袋を見せると
「クウ―――アラタがお昼忘れてさ、届けようと思ったんだけど…そうだ、よかったら一緒に行く?」
「え? い、いいの?」
「うん。一緒に行こう、あの人たちに会いに!」
ゴウラムはインデックスの手を取り、扉を開け放つ
眼前に広がっていたのは―――上条当麻と鏡祢アラタの待つ、外の世界