とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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注意

一話とは思えないほどに長くなってしまいました
ぐだぐだ
文法おかしいグロンギ語
最初しか出番ないクウガ

相変わらずです

そんなのでよかったらどうぞ


幻想御手編
#1 電撃使い


シャン、とロッドを振るい蜘蛛の怪人の足を払う

 

蜘蛛の怪人は「ガッ!?」と短く声を上げて転倒するが、そのままの状態で口から糸のようなものを吐き出し、クウガの動きをとめようと試みる

 

「あぶなっ」

 

青いクウガは軽く跳躍し蜘蛛怪人の頭上を飛び越えると再び怪人の方へ向き直り再びロッドを構える

 

蜘蛛怪人は立ち上がって態勢を立て直すとそのまま青いクウガへと襲い掛かった

しかし手慣れた様子でクウガは怪人の腕にロッドを通し腕の自由を奪うとその遠心力を利用して自身の前方へと投げ飛ばす

 

「ガァァァ!?」

 

どしゃぁ! と勢いよく音を立て背中を強打し苦しそうにもがく怪人を尻目にクウガは

 

「…さて、終わりだ」

 

クウガは仮面の中でゆっくりと瞳を閉じる

少し閉じたのちカッ! と目を見開いた

仮面の中の瞳は蒼く煌めき、輝きをおび、クウガの複眼は闇夜に強く輝いた

 

そしてあらためてドラゴンロッドを構えて力を込める

よろよろと立ち上がった蜘蛛怪人を深く見据えてつぶやく

 

 

 

「…視えた」

 

 

 

完全に立ち上がったタイミングを見計らってクウガは前へ駆け、そしてその胸部に視えたその点に向かってドラゴンロッドと突き出した

 

ビュン、と放たれたドラゴンロッドは風を斬りその怪人の胸部にヒットする

 

その部分を中心に怪人の体に波紋が広がり、ベルトが砕け、体が崩れ始める

 

ジャグサバビ(やすらかに)べルセ(ねむれ)

 

ベルトが砕けると同時に怪人の体も砂のように消え去った

 

シャン、とロッドを振るいまた調子を整える

 

「…慣れねぇな。この目は」

 

自身の能力は直死魔眼(イーヴルアイズ)

目で視た線、点をなぞる、突くと対象を(コロ)す能力を保持しているが、いかんせんアラタは使いこなせていない

ごくたまにしか使わないようにしているのだ

おまけになぜか身体測定(システムスキャン)には引っかからず、レベルは0と謎の能力

 

「…それにしてもワームとかこんなのとか…増えてきてるな…。気をつけないと」

 

ぼそりとつぶやくとクウガは路地裏の闇へと消えていった

 

その後ろ姿を路地裏に設置されていたカメラが静かに眺めていた

 

◇◇◇

 

翌日の事

 

昨日の事を手短にメールで済ますとアラタは制服を着こみ冷蔵庫へと直進する

ガチャリと冷蔵庫の中を確認…するが質素な冷凍食品しか入っていない

 

「…朝はコンビニかなー」

 

適当につぶやくとまた大きく背伸びをする

背筋がピンと伸び多少といえど若干ながらも眠気が消え意識もはっきりとしてくる

 

「…今日は特に何もないから―――」

 

全力で休もうかなと考えた直後携帯が勢いよく鳴り出した

まるでこちらの行動を先読みして先手を打ったようなタイミング

 

「…えーと」

 

浮かび上がる不吉な考えを振り払いつつ携帯を開き通話をしようと耳に当て部屋のドアを明けて一歩踏み出したその瞬間だった

 

「ナイスタイミングですのお兄様!」

 

「え」

 

驚く余韻に浸る間もなく突如現れた黒子によってアラタはどこかに一緒に空間転移(テレポート)させられた

 

◇◇◇

 

「もっと穏便にできねーのかお前は!」

 

「急いでいらしたのです! それくらい大目に見てくださいまし!」

 

現在空中を黒子と一緒にテレポートで移動中

白井黒子の能力はレベル4の空間転移(テレポート)

 

自身や触れたものを瞬時に移動させる

距離・重さ・個数・発動条件などに制限があり、テレポートの精度は転移させる物体の重量に関係なく、飛距離が限界値に近いほど甘くなるらしい

加えて上記のとおり触れたものに限られるが、複数の物体を転移することも可能

なお彼女の場合、連続で自身を転移させる際の直線での移動は時速に換算すると、約288km/hほど

このことから自身の連続転移では、一度テレポートしてから再度行うまでに1秒ほどのラグがあるようだ

 

「で、暴漢だっけ!?」

 

「えぇ、先ほど初春から連絡がありましたの! 場所は―――」

 

「あぁなるほどな、そこならもう大丈夫だ! 黒子、先に行け!」

 

「わかりましたわ!」

 

そこで会話が途切れいったん黒子は低空へと移動しアラタを地上にやると再び黒子は転移を再開しその場から消えた

それと同時にアラタは目的地に向かって走り始める

 

ここからなら急げばすぐ到着するはずだ

 

◇◇◇

 

「ここら辺のはずだけど…」

 

付近にたどり着いてきょろきょろと見回す

そういえば場所は聞いたが詳しい詳細までは聞いてなかった

今度からは短く詳細でも聞こうかな、と考えたその直後だった

 

バリバリバリバリ!! と雷のような音が耳に聞こえてきたのだ

 

「わわ!?」

 

思わず体がビクッとなる

それと同時に顔が青ざめていくのをしっかりと感じていく

 

「…嫌な予感」

 

そんな感覚を感じながら音のなった方へ足を向けた

 

そして目にした光景は案の定な光景だった

 

〝彼女〟の雷撃にやられぶっ倒れる暴漢と思しき数人の不良とその中心に一人の女性…〝彼女〟である

 

「…やっぱりお前か」

 

「んあ…? あ、アラタじゃない」

 

前髪にバヂリと雷を迸らせ、友達に会ったような気軽さで彼女…御坂美琴、通称〝常盤台の超電磁砲〟はアラタの名前を口にするのだった

 

◇◇◇

 

「…何度申し上げればわかってくれますの」

 

ぐたーといった様子で黒子は呟いた

アラタとほぼ同じタイミングで駆け付けて腕章を見せつけて彼女特有の決め台詞を言い放った後に彼女の存在に気づき顔が驚きに染まったのは記憶に新しい

ついさっきの事なのだが

 

「仕方ないじゃない、先に手を出してきたのはあっちだし。だいたい学園都市だって名前負けしてるのよ。街中にいろんなセキュリティ張り巡らしてもああいう馬鹿はいなくならないし」

 

言いながら彼女は自販機の前に止まった

軽く靴の履き心地を確かめながらつま先をとんとんと叩く

 

「お姉―――え」

 

黒子は一瞬戸惑ったがすぐにまた驚愕の色に染まる

対してアラタはまたか、といった表情で美琴の行動を見守った

 

「ちぇいさーっ!!」

 

次の瞬間、美琴はその自動販売機の側面に回転回し蹴りを叩き込んだ

がたがたん、と音を立てて自販機は取り出し口に黒豆サイダーなるものを吐き出した

ちなみに美琴はスカートを履いているが、その下には短パン着用済みなので問題ない

 

「結局、私らの生活には関係ないじゃん」

 

そのまま慣れた手つきで黒豆サイダーを取り出してプルタブをかきょ、と開けて口をつける

…ところで黒豆サイダーってどんな味なのだろうか

無難な巨峰ソーダのようなものしか飲まないアラタには予想できない

 

「相変わらずお嬢様の欠片もないな」

「うっさいわねー。あんたには問題ないじゃない」

「まぁね。そっちの方が付き合いやすいし」

 

そんな軽口をたたきあう美琴とアラタ

一方で黒子は両膝を抱えたままに

 

「お姉様…またスカートの下にそのようなお召し物を…」

 

彼女も彼女で変わらない変態クオリティ

黒子は美琴を慕ってはいるが少々行き過ぎてレズっているのだ

 

その発言を聞いた美琴は「ぶっ!?」とむせてしまい軽くせき込んで息を整えた後

 

「どこ見てんのよアンタ!! この方が動きやすくて―――」

 

そう言って黒子に近づこうとしたときに、サイレンのような警報が耳に届いてきた

警備ロボットだ

 

恐らく自販機に蹴りをブチ当ててしまってセンサーか何かに引っかかってしまったのだろう

それに気づいた黒子はアラタの手首をつかみ、残った右手で美琴の手を掴むと付近に位置する高層ビルの屋上に空間転移した

 

その場に残ったのは駆け付けた警備ロボットと美琴が落とした黒豆サイダーの容器だけだった

 

◇◇◇

 

「ま、派手に動くのもほどほどにな」

 

「…わかってるわよ」

 

屋上の手スリによっかかってる美琴はむすーとした表情で呟き返した

 

その光景を見ていた黒子は笑みを浮かべながらふと空を飛ぶ電子飛行艇を見て

 

「あらいけない。急ぎませんと」

 

その声につられて美琴も空を見上げる

 

「あぁ、そういえば今日、身体測定(システムスキャン)の日だっけ」

 

 

「じゃあまた後でなー」

 

「えぇ。じゃあまたいつものファミレスでね」

「それではまたー」

 

身体測定(システムスキャン)に向かった美琴と黒子にいったん別れを告げたあと時間を潰そうと練り歩く

 

第二左探偵事務所にでも顔だしてみようか、とも思ったがまた依頼(ペット探し)かなんかを手伝わされたら面倒だ、と結論付けてそこはなし

 

じゃあ伽藍の堂か、とも思ったが確実に燈子に面倒事を押し付けられる予感がしてならないのでこれもなし

 

「…」

 

むむむ、としばらく歩きながら考えた結果

 

「操祈はどうかな」

 

操祈―――食蜂操祈とは常盤台のもう一人の超能力者(レベル5)の名前である

知り合ったのは四月の頃でその時軽く一悶着あったが今回は割愛させてもらう

 

「…いや、今常盤台じゃ身体測定やってるからな…これもなしだ」

 

結局候補はすべてなし

仕方ないので無難にコンビニで時間を潰すことにした

 

◇◇◇

 

警備員(アンチスキル)のとある施設

 

「…ふう」

 

一人の男性が訓練終わりのベンチに腰掛け疲れたような息を吐く

 

「…気が重いなぁ」

 

男性の名前は立花(たちばな)眞人(まこと)

学園都市の警備員(アンチスキル)に所属する一介の青年である

 

「ため息なんてついて珍しいじゃん?」

 

「あ、黄泉川さん」

 

そんな様子の眞人に対して一人の女性が声をかけた

その女性の名前は黄泉川愛穂

彼の同僚にして緑のジャージの上からでも分かるナイスバディの持ち主である

 

「どうしたよ。悩みがあるなら聞くじゃん?」

 

「いえ…悩みというわけじゃないですが…その今日決まったことに実感持てなくて」

 

「決まったこと…あぁ、G3ユニットの事?」

 

G3ユニット

最近毎夜ごとに出没する怪人やドーパント、そしてそれを退治する戦士…それらに対抗するべく作られたパワードスーツ型の強化ユニットである

ベースはその退治する戦士であるがいかんせんデータが少なく、ほとんどがオリジナルの産物である

 

「けど問題ないじゃんよ。体力レベル的にもお前さんが適任じゃん?」

 

「別にそれは問題ないんです。与えられた仕事は責任もって果たしますし…けど、いざもらってみると…」

 

そんなことを言うと黄泉川は眞人の肩をバシッ! と勢いよく叩いて

 

「痛っ!?」

 

「細かい事でくよくよすんなよ! 安心しろって。私や鉄装、影山さんや矢車隊長だってサポートしてくれるじゃんよ。だから、一人で気負うな」

 

そう言って軽く笑みを浮かべる

こういったさりげない心遣いが黄泉川のいいところだ

 

「…えぇ、ありがとうございます」

 

今はその小さな心遣いに感謝をしつつ、目の前のディスプレイを見た

その画面には暗い路地裏で戦う二本角の男の映像が映し出されていた

 

◇◇◇

 

ファミレス〝Joseph's〟

ちなみに読みは〝じょせふ〟である

某奇妙な冒険とは関係はない

多分

 

で、現在

暇をつぶしたアラタは身体測定を終えた美琴と黒子と共にそのファミレスにいた

そのテーブルの一角

 

「私のファン?」

 

美琴はほおづえを突きながら黒子の言葉を聞き返した

 

「あぁ。昨日言ってた奴か」

 

「えぇ。一七七支部でわたくしたちのバックアップを務めている子ですの。一回でいいからお姉様とお会いしたいと事あるごとに」

 

言われてみれば結構な頻度で聞いていたような気がする

その時はほかの作業に没頭していたのであまり気にならなかったが

 

「…はぁ」

 

対する美琴はあまり乗り気じゃないのか小さくため息を吐く

だが彼女の場合は仕方ないと言える

何せ彼女は〝常盤台の超電磁砲〟と言われ尊敬と敬意の念を込められている

いわば常盤台の中では本物のお嬢様なのだ

 

「お姉様が普段ファンの子たちの無礼な振る舞いに参っているのは存じてますわ。しかし、初春は分別をわきまえたおとなしい子」

 

言いながら黒子はカバンから一冊の手帳を取り出した

恐らく今回の事記した予定帳なのだろうか

 

「ですからここは黒子に任せ―――」

 

しかし美琴はその手帳に違和感を持った

それはアラタも同じだった

昨晩に見せた黒子の変な笑いは違和感を持たせるには十分だ

アイコンタクトで合図を送る

伝達が終わると同時美琴は黒子からその手帳を奪い取った

 

「っあ!? ちょ―――」

 

慌てて手帳を取り返そうと手を伸ばす黒子をアラタが顔面を抑えて制する

 

「…初春を口実にしたお姉様たちとのデートプラン…? …ほお。つまり大人しくて分別をわきまえたその子を利用して、自分の変態願望をかなえよう、と」

 

「あ…、あの…その…」

 

だらだらと黒子の額から汗が溢れ出てきた

恐らく焦りからの汗

 

「…な事だろうと思ったよ」

 

昨日は友達思いだなー、と思っていたのに

…しかし初春を利用してまで美琴と親睦を深めようとしたその姿勢にだけは感服する

見習いたくはないけど

 

「読んでるだけですげーストレス溜まるんだけどぉ!!」

 

そう言って美琴は黒子の両ほっぺをみょーん、と伸ばし始めた

ひとしきりみょーんとした後に美琴は落ち着いたのか座りなおすと

 

「…まぁ黒子の友達なら、仕方ないか」

 

やれやれといった表情で美琴はテーブルに置かれた水を一口飲む

 

「まぁ初春が良い子なのは俺も認めるからさ。大目に見てあげてくれ」

「アラタがそう言うなら。…けど黒子の友達でしょう? 最初から仲良くするつもりよ、…て、黒子?」

 

半ばフリーズした黒子

数秒経って「おーふたがたぁ!!」と言いながらアラタと美琴の間にジャンプしてきた

ていうか座ったままの状態からどうジャンプしたのだろうか

 

「おわ!? ちょ、やめなさいって!!」

「そうだぞ!? さすがに迷惑―――」

 

そう言って何気なく窓の外を見た直後青ざめた

 

なぜなら初春が友人であろう女の子と一緒にこんな光景を見ていたのだ

さらに

 

「お客様…」

 

「え?」

 

「あの…ほかのお客様のご迷惑になりますので…」

 

一人の黒子(バカ)のいらん行動により、本来ならなかなか言われない言葉を言われた

 

とりあえず二人で一発殴っておいた

 

◇◇◇

 

ファミレスを出て初春とその友人に合流

美琴とアラタはそれぞれ右手と左手を軽くプラプラさせているが理由は頭をさすっている黒子を視れば明白である

その様子を初春と友人は苦笑いで見ていた

見てるしかなった

 

「えぇ…では、改めてご紹介しますわ…」

 

さすりさすりと頭をさすりながらぴっ、と手を初春の方へ向ける

 

「こちら、柵川中学一年…初春飾利さんですの」

 

言われた初春ははっ、となった感じで表情を赤く染めながら緊張した様子で

 

「はっ、初めまして…初春飾利、です…」

 

憧れの人に初めて会うのだという緊張からかあまり凝った紹介などでなく、シンプルなものだった

そして黒子は初春の隣へと視線を移す

しかし黒子はその友人と面識がないから紹介のしようがない

 

「それからそちらは…」

 

故に言葉が詰まってしまった

 

「あ、どーもー。初春のクラスメイトの佐天涙子でーす。なんだかわかんないけど、ついてきちゃいましたー。ちなみに能力値は無能力者(レベル0)でーす」

 

皮肉たっぷりに自分のレベルをアピールする佐天

そんな佐天をまずいと感じたのか初春は「佐天さん何をっ!?」と驚いた様子で彼女を咎めようとするが

 

「佐天さんに、初春さん…ね」

 

美琴は確認を取るように二人の名前を暗唱すると改めて二人を見て

 

「あたしは、御坂美琴。んでこっちは―――」

「鏡祢アラタだ。よろしくな」

 

そう二人して親しみやすい笑みを佐天と初春に向ける

てっきり何か言われると思っていた二人は若干拍子抜けした様子で

 

「…よろしく」

「おねがいします…」

 

そう思わず返答していた

 

「ごほん」

 

皆の自己紹介が軽く済んだところで黒子がわざとらしく咳払いをする

割って入ることで主導権を握ろうと踏んだのだ

 

「では…つつがなく紹介も済んだところで…。多少の予定は狂ってしまいましたが、今日の予定はこの黒子がばっちり―――」

 

全部言い切る前に美琴のげんこつとアラタのローキックが同時にヒットした

頭と弁慶の泣き所同時に衝撃をもらってしまい「はうあっ」と短く嗚咽を漏らしながら黒子はうずくまった

 

「…ったく。…まあこんなとこにいてもしょうがないし…」

「てっとり早く遊ぶなら、無難なゲーセンかな」

「そね。そこにいこっか」

 

行き先が三秒で決まってしまった

 

そんなあっけなくていいのだろうか、と考える初春と佐天の心配をよそに美琴は持っているカバンを肩にかけ、準備万端

 

「おら黒子。行くぞ」

「お、鬼ですわお兄様がた…」

 

そしてまた美琴いまだポカンとしている二人に向かって小さく微笑んだ

 

◇◇◇

 

「まったくもう、お二人ったら…ゲームや漫画などではなく、もっとこうお琴とか書道とか…お上品な遊びを学んだりとかはなさりませんの?」

 

そう前を歩く黒子はぐちぐちとまるで小姑みたいにぶつくさ言う

 

「っさいわね…だいたい、茶とかのどこがあたしらしいのよ」

「そうだぞ。つぅかそんな美琴気持ち悪ぃ―――あたっ」

 

言葉の途中で腹部に軽い痛み

美琴に肘で腹をド突かれたのだ

 

「それはそれでムカつくんだけど?」

「いた、痛いって。ごめ、ちょ、さーせんっ」

 

そんな光景をすぐ後ろで見ていた初春と佐天はちょっと驚いた様子で眺めていた

 

「…なんかさ、全然お嬢様じゃなくない?」

「上から目線でもないですしねぇ…」

 

少なくとも佐天は最初こそ彼女に好印象はなかった

常盤台の名門に通うお嬢様

上から目線でとっつきにくそう…

それが名前を聞いたときに思った最初の印象だ

 

しかし蓋を開けてみればそんなものは微塵も感じさせないほどの気さくな人となりに親しみやすい明るさ

少なくとも自分が思っていたお嬢様のようなイメージは完全に払拭された

 

「…ん? なにそれ」

 

ふと初春を見てみると手にチラシが握られていた

チラシを覗き込むように佐天が首を伸ばす

 

「新しいクレープ屋さんですよ。なんでも先着百名にゲコ太ストラップがもらえるらしいですね」

 

そのチラシの真ん中右らへんに大きく件のゲコ太ストラップのイラストが大きく書かれていた

 

「わ、なにこのやっすいキャラ。今どきこんなのに食いつく人なんて―――」

 

そう佐天は言いかけてどしん、と目の前を歩く美琴とぶつかってしまった

 

「あ、すみませ―――え?」

 

しかし美琴は佐天の謝罪に耳を貸すことなく受け取ったチラシをくいるように見つめていた

それはもう真剣に

 

「…御坂さん?」

 

初春の呼びかけでやっとはっ、となった様子で初春に振り返った

 

「へ?」

「なんだ、どうした美琴…ん? クレープ屋に行きたいのか? それとも、その特典の方が目当てかな?」

 

「えっ!? そ、そんなわけないじゃない!! わ、私は別にゲコ太なんか―――」

「あらあら? お兄様は別にゲコ太と言ってはおりませんのに…?」

「―――はっ!?」

 

最後の最後に地雷を踏む美琴だった

 

◇◇◇

 

そんなわけでふれあい広場に到着した御一行

そのクレープ屋は移動式のクレープ屋らしくこのたび、このふれあい広場に新規オープンしたらしい

それで現在はオープンフェアで先着百名にゲコ太ストラップがもらえるとかなんとか

 

しかし今現在このふれあい広場には結構な数の子供たちが溢れ返りそうなくらいいた

おそらく今度学園都市に入ってくる子供たちであろう

その証拠にバスガイドであろう女性が

 

「休憩は一時間ですー! あまり遠くに言ったら駄目ですよー!」

 

と大声で注意を言っていた

 

「タイミングが、悪かったですね…」

そんな微笑ましい光景を見ながら初春は呟いた

これは先に席を確保した方がいいかな、と考えた黒子は

 

「先にベンチを確保してきますわ」

「あ。じゃあ私も」

 

それに初春も便乗し、二人は列を離れる

離れる際、アラタの後ろに並んでいた佐天に初春たちはこう告げた

 

「佐天さん、私たちの分も、おねがいしますねー」

 

唐突に言われた一言に佐天は「え?」っと素っ頓狂な声を上げる

しかしそこに黒子の追撃

 

「お金は後で払いますわ―」

 

そう言って二人は先にベンチを確保しに向かってしまった

取り残される佐天、美琴、アラタ

ちらり、と佐天は美琴を見る

彼女は腕を組みながらまだかな、まだかー、っと言った様子で人差し指をパタパタさせてる

 

「…え? 何?」

 

佐天の視線に気づいた美琴は若干イラついてるような感じがした

恐らくなかなか進まないこの列に少々イラついてるのだろう

 

「い、いえ…その、順番変わります?」

 

佐天がそう言うと美琴はパァ! と笑顔になるがすぐさま表情を戻し

 

「べ、別に順番なんて! 私は、クレープさえ買えればそれで―――」

 

そう言いながらも彼女の視線は先ほど購入したときにストラップをもらった子供たちに目が行っている

それをちょっとうらやましそうに見てるのだ

 

「…はぁ」

 

思わず苦笑いをしてしまった

想像と全然違う表情をするものだ

 

「ちょっととっつきづらいか?」

 

「へっ?」

 

不意に前を並んでいたアラタが彼女に声をかけられた

 

「それともちょっとイメージと違うって感じか?」

 

「えと…、そうですね。ちょっとびっくりっていうか…驚いたっていうか」

 

たはは、と佐天は笑みを作る

そのしぐさにアラタははは、と笑いながら

 

「まぁ最初に見たら驚くよな。思ってるのと全然違うんだもん」

 

けどさ、とアラタは続ける

 

「それがあいつのいいところだと思うんだ。親しみやすいというかさ」

 

「はい。それは…私も同じです」

 

そんな雑談を交わしていると順番がアラタに回ってきた

 

「そだ、俺黒子の分買うから、佐天は初春の分頼めるか?」

「全然大丈夫ですよ」

 

短く交わすとアラタはクレープを適当に頼む

少し待つと店員のお姉さんがクレープを二つ持ってくる

アラタはそれを受け取ると今度はお姉さんがゲコ太ストラップを差し出してきた

 

「どうぞ。最後の一個ですよー」

 

「はい、最後の―――え? 最後?」

 

その直後背後でガクンッ、と勢いよく膝が崩れる音が聞こえた

当然ながら美琴である

 

「美…美琴?」

 

アラタがゆっくり声をかけると猫みたいな目になっていた

若干潤んでる

よほど入手できなかったのが悔しかったのか

 

「あぁ…ほら、俺のやるから」

 

「え!? いいの!?」

 

「お、おう」

 

そう答えると美琴はアラタの手を握りしめて

 

「ありがとぉぉぉぉぉ!!」

 

普段の彼女から想像できない感謝が聞けた

それはもう全力のありがとうにちがいない

 

◇◇◇

 

「ほらお姉様ぁ、遠慮なさらずにぃ」

「入らないって言ってんでしょ!! 何をトッピングに納豆と生クリームなんか…!!」

 

現在初春らが座っているベンチの目の前で美琴と黒子が追いかけっこをしている

その光景を微笑ましく見ながら三人は手に持ったクレープをついばむ

 

ちなみにベンチに座っているのは佐天と初春、その付近に立っているのはアラタだ

 

「よかったですね」

 

「え?」

 

ベンチでもふもふとクレープを食べている初春が不意に佐天に話しかける

彼女は一度クレープを食べるのを止めそのまま続けた

 

「御坂さん。お嬢様のイメージとはちょっと違ったけど…、思ってたよりずっと親しみやすい人で」

 

初春に言われまた改めて黒子と戯れている(?)美琴を見て

 

「…うん、そだね」

 

そう静かに同意した

 

「けどあんたの友達にはついていけないかも…」

「ははは…」

 

そう話している二人を見ながらアラタも同様に笑みを零す

微笑ましいなぁ、とかそんな事を考えながら

 

「…ん?」

 

おもむろに怪訝な表情をした初春がとある一点を見つめた

見つめた視線の先には銀行があった

しかし現在時刻は真っ昼間、銀行ならまだ経営していても問題ないはずなのだがどういうわけか防犯シャッターが降ろされている

 

「どうした、初春」

 

「いえ…あそこの銀行…どうしてまだ昼間なのに、防犯シャッター降ろしてるんでしょう…?」

 

そんな初春の何気ない一言に戯れていた二人も、佐天もアラタも初春が見た視線の方向に移す

 

じ、と見ていたその数瞬後

 

 

ボォゥン!! と激しい音と共に防犯シャッターが内側から吹き飛んだ

 

 

 

『!?』

 

 

 

広場にいた人々に戦慄が走る

それが強盗なのは誰が見ても明らかだった

 

「初春! 警備員(アンチスキル)への連絡と、怪我人の有無の確認! 急いでください!」

 

「は、はい!!」

 

こういう時の黒子の対応力は高いものがある

食べかけのクレープを一息に食べ切り、そう指示を飛ばすと初春らが座っていたベンチを乗り越え、道路に着地した

 

「俺も行くぞ、黒子」

 

アラタも同様に飛び越えて、黒子の隣に着地する

それと同時に二人はポケットから風紀委員(ジャッジメント)の腕章を取り出すと右腕にそれを通す

 

「黒子! アラタ!」

 

思わず美琴は二人の名前を呼んだ

あわよくば手伝おうとも思っていたのだが

 

「っと、美琴、気持ちは嬉しいがここから先は風紀委員の仕事だ」

「ですからお姉様は今度こそ、お行儀よくしていてくださいな」

 

そう言って小さく笑みを作る二人を見て、美琴は二人を送り出す

〝二人なら問題ないか〟

そう確信して

 

 

「おら、ぐずぐずすんな!!」

 

もくもくと黒い煙が立ちこもる銀行の中から五人の男性が出てきた

全員口元にスカーフを巻いておりそれぞれがバッグを持っておる

恐らくその中に現金を入れてあるのだろう

 

「さっさとしねぇと―――」

 

「お待ちなさい!!」

 

しかしみすみす逃がすはずもなく、その男たちの前に黒子とアラタが立ちはだかる

黒子は右腕にかけてある風紀委員(ジャッジメント)の腕章を見せつけながら高らかに言い飛ばす

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!! 器物破損、および強盗の現行犯で、拘束します!!」

 

対して言われた側の強盗グループはそれぞれ顔を見合わせたあとまたアラタと黒子を見る

その行動の意味が分からない二人も一度顔を見合わせたのち、同じように強盗グループを見た

 

その後

 

『あーひゃっはっはっは!!』

 

全力で爆笑された

 

「ひゃひゃひゃ!! なんだよこのガキども!!」

「風紀委員も人手不足かぁ!!」

 

笑いまくる強盗たちを尻目にアラタはちらりと黒子の方へ視線をやりながら

 

「…ガキだってさ-、黒子が」

「いえ、こういう場合お兄様も入るのでは」

「…だよね」

 

一通り笑い飛ばした強盗グループのうち、三人が一斉に走り出してきた

恐らくすぐ突破できるとふんだのだろう

 

「黒子、先行くぜ」

「ええ、どうぞ」

 

黒子と短いやり取りをしてアラタはそいつらが近寄ってくるのを待つ

 

「おら兄ちゃん、そんなとこにいっと、怪我すっぞ!!」

 

まるでテンプレのようなセリフを言いながら強盗の一人がアラタめがけてパンチを繰り出してきた

 

「…そんな定番なセリフは」

 

自分に飛んでくるパンチを片手でばしっと受け止める

その時強盗の表情が驚きに染まるがアラタは動くのをやめない

 

「そぉぉぉいっ!!」

 

そのまま腕へと掴み直し相手の体重を利用して勢いよく放り投げる

一本背負いの要領だ

 

「のわぁぁぁ!?」

 

ビタンっ!! と大きな音を立て強盗は地面にたたきつけられた

そのままかくんと気を失う強盗

最後に男を見下ろしながらアラタは言う

 

「死亡フラグだぜ?」

 

そして同様に驚いている残り二人の強盗に視線を移す

アラタは余裕たっぷりに手先でちょいちょい、と指を動かす

 

「あ…の野郎!!」

「ぶっ殺してやる!!」

 

挑発につられて我を忘れた様子の二人がアラタに向かって一直線に突っ走ってくる

…想像以上に釣られたものだ、と内心で苦笑いしながらアラタはそいつらを見据える

 

先に仕掛けてきたのは自分から見て右側の強盗

走りから勢いをつけて持っていたバッグで殴り掛かってきた

 

「ほっ!!」

 

そのバッグを受け止めて逆にその遠心力を利用してバッグを奪い取りそのまま自身も回転して相手の側頭部にそのバッグをブチ当てた

 

「~~~!?」

 

声にならない悲鳴を上げながらバッグを喰らった強盗はゆっくりと倒れ伏した

 

「…痛そう」

 

自分でやっておきながらそう呟く

 

「この野郎!!」

 

仲間が倒された怒りからか最後の一人がこちらに駆け寄ってくる

そんな奴に

 

「ほら」

 

現金の入ったバッグをそいつに向かって放り投げた

 

「うえ!? ととと」

 

わたわたしながら落とすまいとそのバッグを自分の手の上で弄ぶ

そしてなんとか落ち着いてそのバッグを抱いてふぅ、と一息ついたところで

 

「ご苦労さん!!」

 

顔面を思いっきり殴りぬけた

 

これで残る強盗は単独で動いた三人は捕まえた

 

あとは二人

 

◇◇◇

 

「…すごい…」

 

佐天は思わずそんな声を漏らしていた

最後だけはなんか納得できないがそこまでのながれには見とれてしまうものがある

その光景を佐天の隣で同じように見ていた美琴はこれなら大丈夫か、と安心した

そんな時だ

 

「ダメですって! 今広場から出たら!」

「でも!」

 

初春とバスガイドが言い争っていた

いや、言い争う、というよりは初春が必死にバスガイドを止めているという感じだ

 

「どうしたの?」

 

気になった美琴と佐天はその二人に向かい歩み寄る

 

「それが―――」

「男の子が、一人いないんです!」

 

初春の言葉を遮ってバスガイドがそう言った

その言葉に初春と佐天は「えぇっ!?」と声を上げてしまった

てっきりみんな避難していたものと思っていたのに

 

「ちょっと前に、忘れ物したってバスに取りに行ったっきり…」

 

それは非常にまずいことだ

もし強盗との確保戦で巻き込まれでもしたら大けがをしかねない

 

「じゃあ、私と初春さんで―――」

「私も行きます!!」

 

美琴の提案に佐天は自分も行くと主張する

一般人だからという理由だけで残されるのは嫌だった

 

「…わかった。手分けして探しましょう」

 

◇◇◇

 

一方黒子はアラタが相手したのとは別の二人と対峙していた

強盗の一人が掌を差し出すとその上にボゥッ!! 火の玉が現れる

 

「今更後悔してもおせぇぞ」

 

それは発火能力(パイロキネシス)

飛んで時のごとく、炎を生み出す能力の事

 

(…発火能力者(パイロキネシスト)。なら…)

 

まず黒子は大きく右側に走り、半円を描くように移動する

それを逃走と取ったパイロキネシストは

 

「くそ…逃がすかよっ!!」

 

掌に具現化した炎を黒子めがけて投げつけた

その炎は確実に黒子を追いかけて、直撃する―――寸前に黒子が消えた

 

「消えた!?」

 

「こちらですわよ」

 

ハッと気づいたらもう黒子は目の前にいた

そしてまた消えたと思ったら後頭部に激しい痛みが駆け抜ける

一度意識が朦朧としたときにはもう自分は地面に倒れており、目前に黒子が立っていた

 

現れた黒子はふとももに巻きつけてある小さなベルトに仕込んである爪楊枝サイズの鉄針を取り出すとそれを袖や裾に縫い付けるように空間移動(テレポート)させていく

 

そしてその様子を見たパイロキネシストはやっと気づいた

 

空間移動能力者(テレポーター)!?」

 

「これ以上抵抗なさいますなら…鉄針(これ)を、体内に直接空間移動(テレポート)させますわよ?」

 

そう言って手に持った鉄針をちらつかせながら黒い笑みを見せる

 

「…あんま脅すなよ?」

 

そこに先ほどぶちのめした三人を引きずりながらアラタも合流した

 

「わかってますわよ。ふりですわ、ふり」

 

「…ホントかよ」

 

苦笑いを浮かべるしかなかった

 

◇◇◇

 

バスの周辺をくまなく探すが、一向にその男の子は見つからない

 

「そっちは!?」

 

バスの外を探す初春に美琴は聞いた

 

「ダメですー!」

 

しかし返ってくるのはいないの言葉

 

「どこ行ったのよ、もう…!!」

 

同じように佐天も探すがやはりどこにも見つからない

一体どこに行ったのだろうか、と思ったその時だ

 

「ちょうどいい! 一緒に来い!」

「え? お兄ちゃんだれ―?」

 

変なやり取りが自分の後方から聞こえてきた

振り返ると強盗グループの最後の一人が、件の男の子の手首を掴み上げる姿が見えてしまった

 

「あ、あの…」

 

一瞬佐天は美琴たちに知らせようとした

しかしその一瞬の行動の遅れが男の子を危険にさせてしまう

 

(…私だって!)

 

たった一人の男の子を守るくらいはできるはずだ

 

 

「やっぱり、広場の方をもう一度―――」

 

バス周辺を調べつくしたがどこにもその男の子は発見できなかった

もしかしたら広場のどこかに隠れているのかもしれない可能性に賭け、そう初春とバスガイドに言おうとしたその時だった

 

「あぁ!? なんだてめぇ!! 離せよ!!」

 

「だめぇ!!」

 

何やら言い争う声が聞こえてきた

その声の正体は佐天と強盗のやり取りだった

よく見ると佐天は迷子になっていた男の子を守るように抱いている

 

「くそっ…!! この野郎!!」

 

強盗は痺れを切らしたのか、強行に出た

ぐっと足を引いて佐天の顔に突き出した

そう、蹴ったのだ

 

「あうっ!?」

 

そう彼女は声を漏らし佐天はゆっくりと地面に倒れ伏す

それでも彼女は男の子を守ろうとしたその腕を解くことはなかった

 

「!!」

 

その光景を見ていた美琴の中で何かがプツン、とキレた

当然だ

友達を蹴り飛ばされて何も感じない奴などいない

 

◇◇◇

 

「あの野郎!!」

「くっ!!」

 

黒子とアラタも同様に怒りをあらわにし、それぞれ駆けだそうとしたその時だ

 

 

 

「黒子ォォォッ!!」

 

 

 

耳をつんざくような怒号が二人の耳に響き渡る

恐る恐る二人は美琴の方へ振り返る

そこにはゆっくりと歩いてくる御坂美琴の姿があった

その表情は不機嫌とも通り越して不快に近い

 

「こっからは、私の個人的なケンカだから、手、出させてもらうわよ」

 

「…あー」

 

現場を見ていたせいで断りづらい

本来なら黒子的にはあんまり美琴には参戦してほしくはないのだが…

判断に困った黒子は助けを求めるようにアラタを見た

 

「アラタも。それでいいわよね?」

 

「…ふぅ」

 

アラタは一つ息を吐いて美琴に告げる

どのみち彼女に言ったって無駄なのだ

なら

 

「ほどほどにな」

 

「オッケイ…!」

 

後押しをするだけだ

 

「思い出した!!」

 

唐突に地面に縫い付けられてるパイロキネシストが本当に思い出したように口を開く

 

「風紀委員には、捕まったら最後身も心も踏みにじられて再起不能にする最悪の空間移動能力者(テレポーター)がいて!!」

 

「誰の事ですの」

 

いや、確実にお前だろう

そう心の中で黒子に突っ込む

 

 

強盗は事前に停めてあった車に乗り込みエンジンをかける

このままでは何もかも負けたままで引き下がることになってしまう

 

「くそっ…!! このまま引き下がれっかよ!」

 

慣れた手つきで車を反転させると目の前にいる美琴に相対するよう位置に移動する

 

「こうなったらこのまま…!」

 

そう、強盗は一気に美琴らを轢こうと思っているのだ

 

「…」

 

対する美琴はスカートのポケットからゲームセンターで使うようなコインを取り出した

特に焦った様子などなく、まるで作業みたいに

 

 

「さらにその空間移動能力者(テレポーター)の、身も心も虜にする最恐の電撃使い(エレクトロマスター)が!!」

 

美琴の事を言われて少し誇らしく思ったのか、黒子が口を開く

 

「…そう。あの方こそが、学園都市二百三十万人の頂点…」

 

美琴はピィン、と右手でコインを弾く

弾かれたコインはゆっくりと宙を舞う

 

「七人の超能力者(レベル5)の第三位…」

 

強盗が一気にアクセルを踏み、美琴を弾き殺そうと接近する―――

 

「…!!」

 

だが美琴の方が早かった

自分の手元に落ちてくるコインを自分の雷の力を用いて撃ち出した

 

音速の三倍で放たれたそのコインはまさにそこを走ろうとしていた車の地面に着弾し、その場所を抉り取った

 

爆風に巻き込まれた車は勢いよく縦にくるんくるんと回りながら美琴の頭上を越えて地面に落下する

幸い爆発はしなかったようだ

 

超電磁砲(レールガン)―――御坂美琴お姉様」

 

常盤台が誇る、最強無敵の電撃姫ですの―――

 

爆音から耳を守りながら、そう黒子が付け足した

 

◇◇◇

 

警備員(アンチスキル)が来てから、事態はすぐ終息に向かった

初春は現在先輩である国法に被害の報告の最中である

 

別段やることがなかったアラタは強盗グループが警備員のトレーラーに連行されていくのを黙ってみていた

そしてパイロキネシストがトレーラーに乗り込むときに黒子が喋った

 

「…貴方の能力もなかなかの物でしたわよ」

 

そう言われてパイロキネシストはゆっくりとこちらを見る

 

「能力に有頂天になるあまり、道を違えてしまったようですわね。…しばらく自分を見つめなおして、もう一度出直してくださいな」

 

そういうと黒子は振り返り歩いて行った

パイロキネシストは一人歯を噛みしめた表情をしながらトレーラーの中に入っていった

 

「…あ、そうだ」

 

最後に乗り込んだ強盗の顔を見てアラタは思い出した様子で彼に歩みよった

そいつは佐天を蹴っ飛ばした男だ

 

「な、なんすか?」

 

「や、女を蹴った罰」

 

そう言ってアラタは拳をグーにして突き出す

バキッと鈍い音がトレーラーの中に響き渡った

 

◇◇◇

 

「本当に、ありがとうございました!!」

 

「あ…いえ、あの…」

 

佐天は自分が守った男の子の母親からの感謝の言葉をもらいドギマギしていた

無我夢中でやったことだから、そう正面か言われると反応に困ってしまう

 

「ほら、貴方も」

 

母親にうながされて男の子もうんと元気良くうなずいたあと、佐天に向かって

 

「お姉ちゃん、ありがとう!!」

 

満面な笑顔とそんな言葉をもらった

その男の子の笑顔を見て佐天は改めて思う

 

〝守れてよかった〟と

 

 

男の子がバスに乗り込み走り去っていくのを佐天は小さくなるまで眺めていた

そこで緊張の糸が切れてしまったのか佐天はペタリとその場に座り込んでしまった

 

「…はぁ…」

 

そこでまた安堵のため息

脳裏に浮かぶあの男の子の笑顔

自分は守り切れたのだ

 

「佐天さん」

 

いつのまにか自分の目の前に美琴が立ってこちらを見ていた

その隣にはアラタもいる

 

「お手柄だったな、佐天」

「うん。すっごくかっこよかったよ」

 

二人から面と向かってそう言われるとどうにも言葉に詰まってしまう

二人ほどの力はもっていないけれど、確かに力になれたのだ

 

「…御坂さんもアラタさんも―――」

 

「おっふたっがたー」

 

佐天の言葉を遮って黒子の言葉が耳に入る

彼女は二人の間に飛ぶとがしっと抱き着く

 

「おわ!? おい、黒子!!」

「ちょ、やめなさいって!!」

 

目の前で行われるそのドタバタに佐天はきょとんと目を丸くする

それと同時にまた日常が戻ってきたのだと実感する

 

「佐天さーん!!」

 

報告を終えた初春が駆け寄ってくるのが見える

自分の怪我を心配してくれる彼女の優しさが少しうれしかった

 

「佐天さん! 怪我は!?」

「へーきへーき」

「ほんとですか!?」

 

自分を心配してくれる初春に感謝しながら、佐天は先ほど黒子にかき消されて言えなかったことを心の中で呟く

 

〝御坂さんもアラタさんも、とってもかっこよかったです〟

 

そう心で呟きながら目の前で行われるドタバタを見守った―――

 

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