とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
今回は
メインなのにあんま出番ない美琴
それ以前に名前しかでない初春佐天
相変わらずです
こんなんでよければぜひ
感想なんかも一言、気が向いたら
その日珍しく記憶に新しい夢を見た
それは一人の男と初めて出会って日の夢だ
なんでかルームメイトが後輩に変わっていたりとかいろいろあったが、その男と出会ったのが進級してからの一番の出来事だったと思う
気さくに話せる男友達はおそらくそいつが初めてだろう
「…ぅ、ん…」
窓から差し込む日の光が部屋を照らし、その光が若干ながら美琴の覚醒を促す
美琴と黒子が住んでいる部屋は両サイドにベッドがあり、真ん中の壁には割と大きめな窓がある
その反対側に位置する壁には扉といたってシンプルなつくり
ちなみにもう一つのベッドには当然ながら黒子が寝ている
「あっはぁ…!! お姉様ぁ! そんな事されたらぁ! 黒子はぁ、黒子はもぉぅ…!!」
どんな夢見てるんだこいつは
だがしかし相変わらずの黒子の変態クオリティで安心、できるわけなかった
逆に後輩の未来に一抹の不安を覚えかねない事態に遭遇してしまった気分である
そんな変態丸出しな寝言を聞かされては美琴としては二度寝する気にもなれない
というか眠気が覚めてしまった
「…にしても、もう七月かぁ」
月日が経つのは早いものだ
成長って早いんだなぁとしみじみしながら、その時の事を思い出してみる
◇◇◇
常盤台中二年に進級しその日は特に宛があるわけでもなくただ周辺を歩いていた
しいて用事と言うなれば何か可愛いマスコットキャラ的な何かを探し求めてはいたのだが
「…ん」
ひとしきり歩いたところ喉が渇いた
実際はまだ大丈夫なのだろうが一度意識をしてしまうとどうにも頭の片隅に残って消えない
その辺の自販機を見つけると美琴は駆け寄って財布に中身を開けて小銭を探す
いつもみたいに〝ちぇいさー〟してもいいのだがまた警備ロボットに駆け寄られると面倒なので仕方なくお金で購入するべく小銭を探す(元来自動販売機はそうやって買うものなのだが)
そんな時だ
「おっ。お嬢ちゃん可愛いねぇ。一人?」
「よかったら、俺らとこれから遊ばない?」
「悪いようにしないぜ、へっへっへ…」
これだ
最先端科学とかなんか言ってもこういった連中は全く減る兆しを見せないし、むしろ増えてる感じさえする
幸いにも数は三人と少なめだ
これなら能力をだいぶ押さえて追っ払えそうだ
美琴はゆっくり振り返り面倒そうに頭を掻いて―――
「はいはい。そこまでそこまで」
唐突に聞こえたその声に意表を突かれた
その三人の間を押しのけて間に入ってきたのは一人の男
夏服の制服を着こんで髪は肩くらいまでの長さを誇る
しかしよく見ると髪先はまばらで、荒っぽい切り方をしてるんだと思う
「あぁ!? んだよてめぇよぉ!!」
案の定一人の男がキレ気味にその男に歩み寄る
しかしその男はそんなのどこ吹く風と言った様子で自販機に近づくと普通に小銭を投入し始めた
この状況で缶ジュースを買う気でいるのかこの男は
「よくいるよな。最近アンタらみたいな集団で一人の女の子の言い寄るヤツが」
ピッ、と彼は自販機のボタンを押す
がたがた、と音を出しながら自販機が吐き出したのは巨峰サイダーというグレープ味炭酸飲料だ
ちなみに彼が買ったのが最後の一本のようで
(あ、それ私も飲みたかったのに…)
美琴も美琴でこの後飲みたいジュースの事しか考えてなかった
男たち涙目である
「…大方、レベルの壁とかにぶつかってやけになってんだろうよ。こんなくだらないことしてないで、とっとともどんなよ―――」
「説教なんかしてんじゃねぇぞ糞がぁぁぁ!!」
ついにブチギレて男の一人が軽く勢いをつけて拳を突き出してきた
このままだと彼の顔に直撃する―――寸前に彼自身が受け止めた
ギリギリ、と男の拳が震えてくる
「こ…こいつ…!!」
「人に八つ当たる暇あんなら―――」
そのままつかんだ拳を引っ張り男の腹を蹴っ飛ばす
特に何するでもなく当たったその蹴りは確実に腹部をとらえ男を転倒させる
「―――自分見つめなおしてきやがれ。諦めるなんざ単なる逃げだぞ、このヤロウ」
そう短く言葉を紡いだのだった
◇
このご時世でそんな言葉を言う奴なんて初めて見た
確かにああなる理由の一つに能力の伸び悩み、というものがある
それをはっきりとした口調でああも言えるなど、彼も悩み努力したのだろう
「…一応」
「ん?」
「一応、感謝しとくわ。結果的には助けられる形にはなったし…」
普段美琴はこんなことは言わない
だが今回はその男も言葉で相手を説き伏せたわけだし、何より美琴もその男に興味があった
「あ…そだ。なんもされてないか? 見たところは大丈夫みたいだけど…」
「心配いんないわよ。あんな奴ら追っ払うのわけないし…それはそれとしてさ。あんたに一個聞きたいんだけど」
少しその男と距離を詰めて気になったことを聞いてみる
「アンタも、能力開発とかでさ、行き詰ったり、悩んだりしたことあんの?」
「ないよ。俺
「ふぅん…
耳を疑った
あんだけな事を言っておきながら彼自身は
それならむしろこの男の方がスキルアウトやそれこそさっきみたいなナンパ連中になってしまいそうな状況なのに
「…なんでさっきの連中を励ますようなこと言ったの? こう言っちゃなんだけど…あんただって似たような立場なのに…」
「ん? そりゃあ、あいつらだって夢見て
かきょ、とジュースのプルタブを開けながら彼は続ける
「可能性ない俺と違って、な」
そういって屈託ない笑みを見せる
その表情には迷いがない
どうやら彼は本当に自分が無能力者であることに劣等感はないようだ
「…本当、
苦笑いを浮かべながら美琴も自販機にお金を投入しジュースを購入する
購入したのはヤシの実サイダーという炭酸飲料
ガタンと取り出し口に吐き出したサイダーを取りながらもう一度彼を見て
「けど、私はきらいじゃないよ。あんたみたいなの」
「…そいつはサンキュー」
お互い短く言葉を紡ぐと互いの隣を通り抜けていく
互いの後姿はどこか、清々しかった
ちなみに、再会はあんがい早かったのだが
◇◇◇
「…お姉様?」
「あ、黒子。おはよう」
回想しているうちに黒子が起床したようだ
眠い眼を擦りながら眠気と戦っているこういう時の黒子はまぁしおらしい雰囲気なのに
「…普段もこんなだと問題ないのになぁ」
「ふぇ? 何か仰いましたお姉様」
「なんでもないー。黒子、早く支度してよ? 今日初春さんと佐天さんが来るんでしょ?」
そうなのだ
親睦を深めようということで今回、二人はこの常盤台女子寮の美琴と黒子の部屋に誘ったのだ
当然ながらアラタは男子なので誘っていない
しかしここの寮監にはたまに差し入れを持ってくるあたり中は悪くないのだろう
ちなみに寮監はアラタの友人の好みらしい
「そうでした。急ぎませんと」
黒子も起きたことだし、美琴もベッドから立ち上がり着替え始める
今日もまた楽しい一日が始まるのだ
◇◇◇
学園都市第七学区のとある広場
様々な人が行きかうその広場に一台の屋台がある
夏休みの真っ只中だというにのれんには〝ばぁすおでん〟と達筆な字面で書かれている
そんなおでんの屋台に一人の少年が座っていた
少年の名前は鏡祢アラタ
そしていろいろなおでんもろもろの仕込みをするのが屋台主、伊達明
フラッとこの学園都市にやってきた風来坊…などと本人は言っているが実際はわからない
また、彼も変身ベルト〝バースドライバー〟の所持者でもある
「伊達さーん。そうめん頼めますかー」
「おうよ。固さは注文あるかい」
「伊達さんに任せますー」
そんな店員と客のやり取りを済ますとアラタはぐたー、と突っ伏すように体をテーブルに預ける
そんなアラタに向かって伊達はこんなことを聞いてみた
「そういやよアラタ。お前さん、宿題終わったのか?」
「ちょくちょくやってますよ。なんだか当麻が写させてくれっていってきそうですが…」
「あぁ…予想できそうだな」
苦笑いを浮かべて伊達は茹でた麺を冷やす作業に入る
この〝ばぁすおでん〟はおでんと書いてはあるが実際はおでん以外の物も多々売っている
飲み物だって茶やお酒のほかにサイダーやオレンジジュースを売っていたりする
なんでもオールマイティな屋台を目指すとか
「すみません」
のれんを掻き分けスーツ姿の男性が一人、屋台に入ってきた
その風貌からして恐らく
「ヘイ! らっしゃーい! お客さん、注文はお決まりで?」
本日二人目の客に気をよくした伊達は気前良い挨拶でその客を迎え入れる
警備員であろう男性はメニューを見て悩んだ後
「あ、じゃあ僕もそうめんを」
短く注文を済ますと男性はアラタの隣に座る
流石に突っ伏したままなのはいけないので体を起こし態勢を戻す
男性はキョロキョロと珍しそうに屋台を見回す
まぁ妥当な反応だ
この糞暑い真夏にポツンとある屋台
だが学生には結構人気があるらしく、よく部活帰りの学生はもちろん、アラタもよく当麻と一緒にこの屋台に食べに来ている
「ほいお待ち。アラタ、先にできたから渡すぜ」
ことりと自分の前に置かれた皿に盛られた白い冷麦、そうめんである
まってましたと顔を輝かせテーブル真ん中に置かれている割り箸入れに手を伸ばし一本を掴んでそれを割る
そんな時、なぜか驚きに表情が染まっていた男性は目に留まった
「…えと、どうしました?」
「いや…その、君、もしかして鏡祢アラタって名前かい?」
なんでか名前を聞かれた
別に隠すほど有名でもないので「えぇ、そうですけど…?」と肯定する
「やっぱり。よく矢車隊長が仰っていた子か」
「矢車さんを知ってるんですか?」
そう聞くと男性は大きく頷くと
「僕は立花眞人。矢車隊長の部下です」
「矢車さんの部下…そうだったんですか」
矢車ソウ
彼はアラタがクウガだと知っている数少ない人物だ
他に人物を上げるなら目の前の伊達、伽藍の堂の人たち、左のダンナにフィリップ…
あれ、割といる
「たまに話してるのを聞くんです。生意気だけどいい奴だって」
「…矢車さんめ…」
苦笑いを浮かべながら心の中では少し感謝をしている
自分がクウガだと秘密にしてくれているようだ
「ほいお待ち、ちなみに俺は伊達明。よろしくなタッちゃん」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。…あとタッちゃんて…」
そんな何の変哲もない会話を繰り広げながらそうめんをすする
すすったそうめんの味はめんつゆの味がしみていて美味しかった
◇◇◇
その後つつがなく昼食も食べ終わり何するでもなく適当にコンビニにでも立ち寄って漫画雑誌でも立ち読みでもしようかな、と店内に入ろうとしたときだ
うぃーん、と店内から見知った顔が歩いてきたのだ
「あっ」
「…あら。奇遇ね鏡祢アラタ」
吹寄制理
アラタとは同級生であり友人である
長い黒髪にスタイルもいいし可愛い部類に入る
しかしクラス内ではなぜだか〝色っぽくない鉄の女〟などと呼ばれている
「まぁ奇遇だな。またあれか、健康食品の買い足しか」
「貴様は私をどんな目で見てるのよ! そりゃあ確かに昼食とかは通販で入手した健康食品を食べてはいるけども!」
がみがみと続ける吹寄の言葉を聞きながらこの後どうしようかな、なんて考えていた
しかし一度吹寄に捕まるとなかなか抜け出せないからなぁ…とかなんとか思ったその時だった
キャアァ!! と大きな女性の悲鳴と共に数々の声が聞こえてきた
「!?」
「! な…何!?」
吹寄の驚きと共にその音の方へ視線を移す
付近のレストラン辺りで妙な人だかりができている
どうやらまた
「吹寄、お前はここにいろ」
アラタはそう吹寄に言い残すとその喧噪の方へ走っていった
「あ、ちょ、待ちなさい!」
思わず吹寄も彼の後を追いかけていく
◇◇◇
「ちくしょー!!」
その喧噪を掻き分けて前に出るとマグマドーパントが一人の女性を人質にとり何かを叫んでいる
人質の女性の表情は恐怖に染まりきっており、いつパニックを起こすかわかったもんじゃない
「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!! なんだってんだぁ!!」
そう大声を撒き散らしながら周囲に喚き散らしている
彼がメモリを入手した経緯は不明だがこのままでは被害が大きくなるばかりだ
「けど今は…力がある! この力で…散々俺を馬鹿にしてきた奴らに復讐してやるんだ!!」
「そいつは間違った力だなぁ」
同じように喧噪を掻き分けて歩いてきた一人の男性
黒い帽子をかぶり紺のYシャツに袖なしのベスト、黒いズボンを着こんだその男
(…左のダンナ!)
その男は左翔太郎
かつて風都という街で探偵業を営んでいた青年である
今現在は学園都市に流出しつつあるガイアメモリを追ってこの学園都市にやってきたのだ
「学園都市の生徒なら、そんな紛い物の力に頼るより自分自身の力で挑んでみろ」
「ンだとぉぉぉぉぉ…!?」
このままでは逆上したドーパントにより女性に危害が加えられかねない
そう感じたアラタはまた人混みを掻き分けて人気のない路地裏に駆け込んでいく
◇◇◇
「たく…どこ行ったのよあの男…」
追いかけたはいいが完全にアラタを見失ってしまった
このまま下手に動くよりも事件が収束するまで待った方がいいだろう
徐々に人垣も冷静になっていき各々逃げ出す最中吹寄はアラタを探していた
彼が風紀委員だとは知ってはいるがああいう怪人みたいなやつはプロ(いるかわからんが)にでも任せていればいい
<BAT>
先ほど前に出てきた帽子の男が何かを起動させ怪人に向かってそれを投げた
カメラのような機械は瞬時にコウモリを彷彿させる姿へと変形し怪人を翻弄するように飛び回った
「ぬわっ!? なんだこれは!!」
コウモリに気を取られて思わず怪人は確保していた人質を離す
その隙を逃がさず、人質となっていた女性は一目散に逃げ出した
「…私もここを離れた方がいいか…」
アラタが見つからないのは気がかりだがここにいたままでは自分まで怪我をしてしまう
きっと無事だと祈りながら吹寄はその女性を追うようにその場から離れようと―――
「こなくそぉぉぉ…!! 死ねやぁ!」
やけを起こした怪人が闇雲に火山弾を辺りに巻き散らし始めた
「おうわっ!! っと、あぶねぇことしやがる…あっ!!」
たまたま青年が目を向けたその方向には後ろを向いて逃げている吹寄の姿があった
タイミングの悪いことに火山弾の一発はその吹寄の背中めがけて飛んでいく
「危ねぇ!!」
この位置では間に合わない
そう感じた翔太郎だがそれで諦めるわけにもいかない
気づいてくれることを願いながら大声を上げて吹寄に促した
いざとなればもう一つ持っているガジェットで守れる距離に…!
「…え?」
自分を呼ぶその声に気づいて振り返ったその時には火山弾が自分の目前にまで迫っていた
頭が真っ白になる
その瞬間に流れている時間がスローになるような錯覚さえ覚えてしまうほどにあっさりしているものだった
思わず吹寄は目をつぶる
・・・
だがいつになっても何も起きない
静けさに耐えきれなくなりゆっくりと瞼を開く
「…あ…」
変化はあった
具体的には自分の目の前
そこには吹寄を守るように立っていた一人の男
その姿は数えるほどしか見ていない、というか友人の写真くらいでしか見たことがなかった
そして直接見るのはこれが初めてだ
都市伝説としてしか見ていなかった赤い男の姿を
◇◇◇
「ナイスタイミングだぜアラ―――っほん!」
わざとらしく咳払いして翔太郎はクウガの隣に歩み寄る
「早く倒しましょうぜダンナ。いろいろと厄介なことになる前に」
「おお。激しく同意だ」
そういって翔太郎はどこからか二つスロットが空いてるドライバーを取り出した
それを腰に巻きつけると今度はベストの内側から一本の黒いメモリを取り出す
メモリには〝J〟と書かれている
翔太郎はそのメモリの端子付近のボタンをカチリ、と押す
<JOKER>
そうボイスが発せられ翔太郎はもう一人の相棒に向かって呟いた
「フィリップ!」
◇
第二左探偵事務所
なんてことはないただの廃墟をどうにか事務所っぽく見せてるだけだがここのガレージしかリボルギャリーが収納できなかったのだ
そんな中フィリップは椅子に座りながら読書に耽っていた
ライトノベルである
「…ふむ。たまに読むならいいかもね」
ペラペラとページをめくりながら少し背伸びをしようとしおりを挟んでテーブルに置いたとき。腰にダブルドライバーが現れた
「どうしたんだい翔太郎。また厄介事かい?」
(似たようなもんだ。行くぜフィリップ)
どうやら事件か何かに巻き込まれたようだ
フィリップは小さく笑みを浮かべながら一本の〝C〟と書かれたメモリを取り出した
「久しぶりだ。…ゾクゾクするねぇ」
カチリ、と押す
<CYCLONE>
そういって左手に持ったメモリをバッと自分の右側へ
◇
同じタイミングで翔太郎も右手に持っていたメモリを自分の左側へと動かす
場所は違えどそのポーズはWの文字を連想させた
『変身!』
先に事務所に待機しているフィリップがメモリをドライバーの右側に差し込む
すると差し込んだメモリは現場にいる翔太郎のドライバーへと転送されて、翔太郎がそのメモリを深く差し込み、直後に自分のメモリを左側に差し込んだ
最後に左手で右側、右手で左側のスロットを勢いよく開く
<CYCLONE JOKER!>
そんな電子音と軽快な音楽と共に強烈な風が巻き起こる
その強風が終わるとそこに翔太郎の姿はなく
右半身が緑色、左半身が黒色という特異な姿の男が赤い男の隣に立っていた
「仮面ライダー…ダブル」
小さくそう名乗るとダブルはマグマドーパントに向かってバッと右手を突き出したのだった
◇
「仮面ライダー?」
「あ? 知らないのか?」
聞きなれない単語を耳にしたクウガはダブルに向かって聞き返す
いや、聞き慣れないという言葉は少し違う
その時はその場の雰囲気で名乗っただけだったからすっかりその単語を忘れていたのだ
対してダブルはさも意外そうに
「知ってると思ってたんだがな…」
「<案外外には知られていないのかもね。早い話異名みたいなものだよ>」
翔太郎の呟きと共にフィリップが右の複眼を点滅させて発言する
その言葉を聞いたクウガはふぅむ、と考え始めた
正直クウガと名乗るのもなんか味気ない気はしてたのだ
その単語をつけて頭の中で改めてリピートしてみる
うん、その時も結構いいかも、と思ったがやっぱりしっくりくる
「…ダンナ。その単語、俺もつけていいですか?」
「構わねぇぜ。お前も紛うことなきライダーだからな」
よし、と心の中でガッツポーズをする
この名前ならもっと堂々と名乗れそうだ
「俺を無視してんじゃねぇぇぇぇ!!」
激昂したマグマの声を聞きながらクウガは悠然としたままマグマに向き直る
ゴオッ!! と炎を纏いながら吹き飛ばそうとクウガに迫るが彼は勢いよく跳躍するとマグマの背後に着地して
「俺はクウガ。仮面ライダークウガだ!」
そう高らかに名を名乗った
それが新しい己の名称と言わんばかりに
「何が仮面ライダーだこの野郎ぉ!!」
「もう一人いるって事忘れてねぇか!?」
喚き散らすマグマに向かってダブルが連続で蹴りを叩き込む
回し蹴りを連続で二回、その後にもう反対の足で蹴りつけて吹き飛ばす
「がっはぁ!」
大きく転がりながらもマグマは態勢を立て直しながら反対側のクウガへと殴り掛かる
しかしそれを予見していたクウガはその拳を受け止めて腹部に膝を数発打ち込んで自身の反対方向に投げ飛ばした
「ぐわぁぁぁ!?」
大きく弧を描いてマグマは地面に叩きつけられる
マグマはゆっくり立ち上がるがその足はふらついている
「メモリブレイクだ」
「了解」
クウガとダブルは頷きあってマグマを見据える
ダブルはドライバー左側のメモリを取り出し、クウガは一回バク転して距離を取った
まずはダブル
抜いたメモリをベルト部分右側にあるマキシマムスロットに差し込んだ
<JOKER MAXIMAMDRIVE>
そんな電子音性と共にまた大きな風が巻き起こりゆっくりとダブルの体が浮き上がっていく
浮き上がったタイミングでクウガが動く
離れた位置から足に力を込めて走る
そして空中へと一回転しながらダブルと同じ高さまで飛び上がりマグマに向けて右足を思いっきり突き出す
同様にクウガを確認するとダブルはマキシマムスロットを軽くポン、と叩いた
その空中のまま一度後転してその両足をマグマに向けて突き出した
「ジョーカーエクストリーム!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
クウガはその右足を紅蓮の炎に纏わせて繰り出し、ダブルは身体を中心から左右に割れ時間差で繰り出す
クウガのマイティキックとダブルのジョーカーエクストリームがそれぞれマグマドーパントにぶち当たった
「が、ぁぁぁぁぁっ!?」
蹴りの反動でクウガとダブルは少し離れた位置に着地した
その直後にマグマドーパントは爆散した
その爆散した煙の中にメモリの使用者と思われる学生が力なく倒れ伏した
カチャン、とメモリが学生の付近に落ち、パリンと砕け散った
「決まったな」
「ですね」
そんな目の前で巻き起こった出来事についていけず、吹寄はただ茫然としてるしかなかった
◇◇◇
マグマドーパントとなった学生は駆け付けた警備員にしょっ引かれた
少々遅れたような気がするが、辺りがパニックに陥り避難誘導等に時間がかかっていたらしい
ちなみに翔太郎はクウガがいなくなった後にすたこらさっさと立ち去ってしまった
あまりにも早いものだから吹寄はお礼が出来なかったとそこだけは嘆いていた
そしてアラタが戻ってきたら吹寄に天頂部を思いっきり叩かれました
なぜ? みたいな顔してると何を言ってるんだと言わんばかりに
「貴様今までどこにいた! どこ探しても見つからないから、流石に心配したんだぞ」
「す、すまん…けど避難誘導とかしてたから…」
当然ながら嘘だ
避難誘導等は駆け付けた
「あ、鏡祢くん!」
吹寄とそんな問答している間に一人の警備員に声を駆けられた
アラタの名前を知っているから相手は立花であろう
「ちょっと聞きたいんだけど…ここで怪人が暴れてたんだよね? その怪人は誰が…」
「仮面ライダーです」
立花の問いに吹寄が答える
「…仮面、らいだー?」
「はい」
その表情にはなぜかアラタに向けたものがあった
横目でちらりとこちらを見やる
その視線には〝どうだ〟みたいな意味が込められていたようで
そしてそんな視線を送ってきた吹寄がちょっと可愛いと思ってしまったワケで
「…ふふっ」
「!! 何がおかしい鏡祢アラタ! そんな意味有り気な笑みを浮かべるなんて顔の筋肉が弛んでいる証拠ね今すぐこのコロコロローラーで徹底的に鍛えてやるわ!!」
「なんでんなの持ってんだお前ってか痛い!! 痛いってマジで!!」
そのまま目の前で仲睦まじく騒ぎ合う二人を見ながら立花は微笑む
そして学生だったころを思い出し、ちょっと泣きそうになった
◇◇◇
今日この日
ある都市伝説サイトにまた一つ書き加えられた
:仮面ライダー
人知れず学園都市を守る仮面のヒーロー
一緒に張られている写真には、クウガとダブルがマグマドーパントと戦っている姿が映し出されていた