とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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中々更新できず申し訳ない
リアルとの両立って難しいね

いつも通りだけど、呼んでくれてありがとうございます

誤字脱字等ございましたら気軽に報告を

ではどうぞっ


#50 互いの戦略

吹寄制理

 

彼女は大覇星祭の運営委員の一人だ

警備員(アンチスキル)や風紀委員のような特別な権限は持たないが競技の準備や審判を担当するので割とバカにできないポジションだ

世間一般では大きいスポーツの祭典程度の印象しかないが大覇星祭は各校の能力開発具合を簡単に評価出来てしまうので、学校の予算編成にも影響するからだ

 

当然、運営委員だって競技には参加する

 

それ故に運営委員は自分のスケジュールに都合をつけないといけない

しかしそれを言葉にするのは簡単だがここ東京の三分の一を占める学園都市、競技する場所によっては相当な時間がかかる

おまけに開始や終了なんかも時間通りに進むとも限らないために、油断はできない

要は時間との戦いだ

 

吹寄はスポーツドリンクの入ったボックスを両脇に抱えながら考える

 

玉入れの競技場に向かうにはバスを使った方が…いや、今の時間は…などなど

 

運営委員ならば地図などを頭に叩きこんでいるのは当然だ、さもなければ不慮の事故が起きた時に対応できない

今現在吹寄制理は自分が審判を行う競技場へ向かっている最中ではあるが、最短距離を外れて大きく迂回している最中である

理由は単純、人混みの多いエリアを避けた方が結果的には時間の短縮になる

急がば、回れ、という奴だ

そういう訳でさっき当麻を引きずっていた道を逆走して彼女は前へ前へと進んでいく

と、そんな視界の先に

 

数メートル先にチアガールの恰好をした銀髪の女の子が四つん這いでなんか打ちひしがれている

その隣には黒いワンピースに頭に…なんだろう、角のカチューシャ? みたいなのを付けた黒髪の女の子もいる

涼むなら木陰に入ればいいのに、と素直に吹寄は思う

 

「うう。せっかくとうまを応援しようと思ってたのに…なんだかどこかに行っちゃったみたいだし…」

「はは…気にしないでよインデックス」

「そ、そうですよ、クワガタちゃんの言うとおりですよシスターちゃん。きっと上条ちゃんたちにも深い事情があったに違いないんですよ!」

 

そんな銀髪の女の子の横で頑張って宥めているのは小柄な少女にしか見えない教師、月詠小萌だ

どういう訳でか彼女もまたチアガールのような恰好をしている

吹寄は眉をひそめて

 

「先生、私が先生に伝えて案件はどうなりました? …ていうか公衆の面前でなにしてるんですか。もしも軽い錯乱ならホットミルクとかを与えてお腹を見たし沈静化を促すか唐辛子等の刺激物で思考を外側に向けるといいと思います。今手元には唐辛子しかないですけど使いますか」

「だ、大丈夫なのですよ吹寄ちゃん。―――ちょ! 鼻に押し込もうとしないでください! なんか江戸の刑罰みたいになっちゃいますからー!」

 

そう吹寄に言われそうですか…と短く返事をして七味の入った小さ目なひょうたんをポケットに戻す

そんな吹寄の耳にシスターの口から言葉が聞こえた

 

「とうまは…? とうまはどこ?」

「…そういえばアラタも見ないなぁ…」

 

シスターの言葉に続いて黒髪の女の子も言葉を漏らした

…そういえば、あの二人はどこに行ったのだろうか

 

 

左翔太郎は伊達明の営む屋台に座っていた

炎天下の下で歩き回って少々体力の奪われた翔太郎はたまたま見かけたこの屋台で涼んでいたのだ

伊達から出された氷の入った水を飲みながらふぅ、と翔太郎は一息を付いた

 

「にしても、大覇星祭ってのはすげぇイベントだな。テレビまでいるとは思わなかったぜ」

「それは俺も同感だぜ翔ちゃん、おまけに、一週間も続くってんだから、長いイベントだよね」

 

適当に伊達と話してみる

この人はおでんの屋台と言ってはいるが正直に言っておでん以外も売っている気がするのは気のせいだろうか

まぁ、今となっては些細なことだが

 

「…にしても、太陽も空気読んでるよな。ちょっと気合い入りすぎてるっていうか、熱いっていうか」

「それは仕方ないでしょ。天気に文句は言えないからねぇ」

 

伊達と二人そんな会話をしていると屋台の隅に置いてあるラジオから声が聞こえた

内容は簡素なもので、どこかの中学校で競技が始まるぞ、という内容のものだ

翔太郎は伊達と二人、そのラジオから聞こえる声を聞きながら冷水で喉を潤していた

 

 

シャットアウラは冷や汗を流していた

別にアラタを応援するわけではないのだが、いずれ自分も参加しなければなれないため、学んでいるのも悪くはないと思ったのだが…

 

「…戦争、なのか。大覇星祭とは」

 

はっきり言えば驚いた、としか言いようがない

巻き起こる砂塵、飛び交う弾丸(みたいな何か)、行き交う人々etc.…

自分がエンデュミオンで体験したことが小さく見えてしまうくらいだ

これは三年になった時にはどういった戦略で行こうか考えないといけない…と本気で思い始める

ていうかアリサは大丈夫なのだろうか、こんな戦場に駆り出されて彼女に怪我でもされたらたまったものじゃない

もしそういう場合が来たら全力で守らなければ、とまだだいぶ先の事を考え拳を握る

それはそうと今のとことアラタの姿を見ていない、一体どこにいるというのか

 

「…そういえば次は玉入れ…だと言ったか。私が入るクラスは出ないが…アラタの知人がいるらしいし、見に行っても文句は言われまい」

 

そう自分に言い聞かせ地図を広げる

ここからだと…こういけばいいのか、と自分なりにルートを組みながらシャットアウラはのんびりと歩いていく

どうしてだろうか

顔には出ていないが、どこか…心のどこかでこの大覇星祭を楽しんでいる自分がいた

 

 

「中学校?」

 

インデックスらの所へ戻ろうとしたところで、蒼崎橙子からの電話が彼の携帯に届いた

 

<あぁ。魔力の流れを探していたら、その中学校の前についた。私は今そこにいる、お前は来れるか>

 

橙子の指定された中学校を探してみるとこの場所から割と近い場所にある

これならすぐに合流できそうだ…しかし、そこはもうすぐに競技が始まる時間帯ではないか?

 

「けどどうする。その学校はもう競技が始まるぞ」

<ふむ。…その辺はおいおい考えるとしよう。とにかく合流だ>

 

ひとまず考えるのは後回しにして足を動かすことにした

軽く駆け足だと思わず人とぶつかってしまいそうになるがなんとか人混みを掻き分けながらアラタは足を進める

 

少し早足で駆けると思いのほか早く着いた

校門の前にはすでに橙子が立っている

橙子はアラタの姿を見つけると手で合図した

 

「ここだ、アラタ。…しかし、もれなく何かしらの競技が始まってしまいそうだが」

「そればっかりは仕方ないと思うけど。ところで橙子、この中学校には何が仕込まれているんだ」

 

軽く中学校を見渡せる範囲で見渡してアラタは橙子に聞いた

ちらちらと見えるかごから察するに恐らくここでやる競技は〝玉入れ〟だろう

一般的に玉入れとは自分たちの籠に用意された球を投げ入れる文字通りな競技なのだが、大覇星祭の玉入れは全然違う

 

どれくらい違うかというとそれはもうそばとうどんくらい違う

 

まずこの大覇星祭に参加する生徒は基本的に能力開発を受けた学生が大半である

つまり競技が開始すると同時に風やら土やら水やらが飛び交う戦場と化してしまうのだ

対戦相手のレベルが低かったらまだいいが常盤台とかを相手にするともう絶望しかない

異形の化け物を生み出してしまうくらい位には絶望できるレベルだ

 

そんな事を考えつつ、アラタは橙子の言葉を待つ…が、帰ってきた言葉は

 

「…分からん」

「…え?」

「分からん、と言ったのだ。大雑把ではあるがこの中学校から魔力の流れを察したから、何かあると踏んだまでだ」

 

まさかのカミングアウト

しかしそうなら行動がとれない

ふぅむ、とアラタが橙子の隣で首を捻っていると

 

「…鏡祢じゃない。こんな所でなにしているの」

 

立っていたアラタの背後から慣れた声が聞こえてくる

振り返るとそこに吹寄制理が立っていたのだ

アラタは視線を気まずそうに泳がせながら

 

「え、えっと。ふ、吹寄はなしてここに?」

「私はここでやる競技の審判だからよ。それがどうかしたの?」

 

そうか、と頷きそうになってハッとする

…もしかして上手く彼女に手伝いか何かを申請できればこの中学校内を探索できるのではないか

恐らく当麻とその仲間もこの情報を掴んでいるだろうし、彼らの動きをサポートできるかな、と考えたのだ

とはいえ所詮お手伝い、そのような申請通るだろうか…いや、ともあれまずは当たって砕けよう

それでダメならどうにかして潜り込むだけだ

 

「な、なぁ吹寄。その、なんだ。なんか俺に手伝えることって、ないか?」

 

 

意外にあっさり通れてしまった

彼女から任された仕事は参加選手の入退場の誘導だ

幸いにも競技開始までの時間はまだ少しある、始まるまでに探せればいいのだが

そう思いながら燈子から渡された一本の煙草に視線を落とす

 

―――それは魔力に反応すると勝手に火がつくように術式を施した煙草だ、それで内部を探ってくれ、私は改めて周辺を調べてみる

 

橙子はそう言って再度学校の周辺を散策すべく歩いて行った

校内でも同じようにアラタも歩き回ってはいるのだが如何せんこの煙草がうんともすんとも言わない

橙子に限って術式を間違えたなんてないだろうし、単純にこの学校にはないのかもしれない

しかし燈子がここに流れを感じたなら間違いなくここにあるはずなのだ

だが誘導の時間も迫ってきているし…仕方ない、と一度切り上げアラタは吹寄から借りた運営委員の腕章を腕につけて生徒入退場を誘導するべく走り出した

 

 

次なる競技は玉入れである

御坂美琴は土でできた校庭に立っている

最新鋭の設備を持っている常盤台に慣れている美琴としてはこういった凹凸が不規則に会ったり衝撃の吸収の効率もまちまちな土の競技場というのも何だか新鮮だ

 

生徒総数二百人弱、そしてその全員が生粋のお嬢という常盤台中学陣営は一見すれば口をそろえてみんな可憐だというだろう

客席にカメラが多いのも絵として華になるという理由が多そうだ

 

しかしそれはあくまで学園都市の外部から見た意見である

内部から見るとまた違って見えてくる

 

常盤台と戦う、という事は最低でも強能力者(レベル3)、最高でも超能力者(レベル5)と戦う事を意味している

彼女たちはニコニコと笑顔ではあるがそんな笑みの中で軍艦一隻の破壊など造作もない彼女らを楽観視なんてできないのだ

銃撃飛び交う戦場に丸腰で突っ込むようなもんである

実際対戦相手校は生徒総数二千人前後いるくせに彼ら彼女らから漂ってくるのは悲壮感だ

プライドの高い連中はそれを鼻にかけて高笑いなどをしている

はぁ、とため息を吐きながら美琴は気になっている場所を見た

 

選手の入場誘導をアラタがやっていたのも驚いたが、こちらは驚きではなく困惑だ

 

(…)

 

美琴は首を捻る

百メートル離れた相手中学の中に、どういう訳か年齢的にいちゃいけない人がいる

しかもご丁寧に運動服まで用意しているのだ

 

(…なにやってるんだろう)

 

御坂美琴は本気で疑問に思った

そんな美琴を見てさらに食蜂は首を捻る

何考えてるのかしらぁ、と言いたげな食蜂の視線に、美琴が気づくことはなかった

 

 

常盤台が参加校だったことにも驚いた

しかし一番驚いたのは常盤台の対戦相手校の連中の中に何か知らんが上条当麻とういう自分の親友が紛れ込んでいた事でして

誘導する際にさりげなく近づいてアラタは問うた

 

(何してんだお前、これ中学校の競技だろう、お前そんな趣味があるのか)

(ちげーよ! …えっと、分かり易く説明するとだな?)

 

そう言って当麻は琴のあらましを話してくれた

内容はだいたい橙子が言っていたものほぼ同じだ、ただ一つ、当麻の協力者が言うには籠が怪しいらしい、という点を覗いては

 

「土御門が言うには、だいぶ前から設置されてて〝籠の周りに玉を置く〟んだから、最初に籠の位置を決めておく必要がある。だから籠に魔術的細工が施されてる可能性が高いらしい」

「なるほど。籠、か。盲点だったな、確かに競技の開始前…具体的には数十分前か、その時の配置を見越して何かを仕掛けた、という感じかな。わかった、俺もなるべく注意しながら競技を進める。お前と、土御門にも気をつけろよって言っておけよ、万が一吹寄に見つかっても今回は俺は何も言えないからな」

 

ご無体な! と当麻は言うがこれは詮方なきことなのである

一応、グラウンドに立ってはいるがその役割のほとんどはただの監視、自分の前に当麻が見えたなら遠慮なくスルーするが相手が吹寄だったらアラタとしては何も言えない

 

しぶしぶと生徒の中に紛れていく当麻の横に僅かな金髪が見えた

土御門だ

彼が魔術に関与していると知ったのは先のエンデュミオン事件の時だが、アラタは彼がどれほどの実力を持っているのかは知らない

だが、当麻もいるから何とかなるだろう…と考えていたところで

 

「…あ、そう言えば魔術の発動条件知らない」

 

完全に聞くのを失念していた

くそ…と頭を掻きながらアラタは周囲を見渡す

当麻に聞こうにも彼は完全に生徒たちに紛れてしまっており、この中から探すのは結構しんどい

土御門も探せば見つかるだろうが流石にこの人混みを掻き分けて捜す気も起きない

ここは任せるしかないか…と考えつつふと吹寄を見ると彼女はすでに開始を告げる準備に入っていた

もうこうなってはあの当麻らを頼るほかないか…と心の中で考えながら何気無く煙草を握りしめた

そして熱っ!? となって思わず手をポケットの外に出して気が付いた、と同時に慌ててポケットの中の煙草を取り出す

 

煙草に火がついていたのだ

 

めぼしそうなところは全て歩き回ってはいたが、この校庭に来て僅かではあるが火がともっていたのだ

ていうか、気づいていなかったら危うく燃える所だった

まさかこんな所で火災などは起こしたくない

しかし、これが校庭に来てから燃えた、となるとやはり術式はこの校庭のどこかにある

その元凶に近づくことが出来ればさらに勢いよく燃えるだろう

 

「…やっぱり、見回りって称してこの戦いの中に入るしかないな…」

 

正直この言い訳が通用するかもわからないしそれ以前に能力飛び交うこの合戦の中に入り込みたくはない…が、この際仕方ない

万が一誰かが巻き込まれて発動でもしたらそれこそ大惨事だ

自分の使命は何だ、とアラタは自身に自問自答する

そう、それは誰かの笑顔を守る事だ

 

誰でもない、他人の笑顔を

 

 

<用意>

 

吹寄はマイクを握り、開始の合図をしようとしている

そもそも運営委員のお仕事は負傷したものの回収や試合開始の合図、及び終了の合図など割と多方面である

流石に実況とかはやらないが(やられても困るが)ほかに面倒なのは玉入れで籠に入った玉数を数えることくらいだろう

流石にこれほどの人が増えるとこの競技で使用する玉の数は夥しい量だ

それ故に玉入れに裂かれている時間の三分の一は〝玉のカウント〟になっている

 

<用意―――>

 

彼女の仕事は試合開始の合図のみ、終了の方は誰か別の運営委員がやる手はずになっているハズだ

吹寄はこの合図が終わったら玉を数える側に回らなければならない

 

(…今あの集団に何か見知った顔がいた気がするのだけど。気のせい、と割り切ってしまおう)

 

あんなものは幻想だ、まやかしだ

生じた疑問に無理やり決定づけて、彼女はその言葉を叫ぶ

 

<―――始めッ!!>

 

吹寄が告げる

そしてその校庭は戦場と化し―――誰も知らない所で別の戦いが始まる―――




今回の気まぐれ紹介はお休み

ではまた次回
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