とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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ぐだってますよ
ごめんなさい

みんな、本日6/26はバトライドウォーⅡの発売日だ!
だから更新速度遅れるよ
ごめんなさい

またあと少ししたらちょいオリジナルな展開に入ってオリアナ戦はカットする予定
あくまで予定ですからあしからず

…ただそのオリジナルに入ったら文章の量はめっきり減ると思います

ではどうぞ


#56 約束 

列車が止まった

その事実が指し示すのは目的地の西部山駅に到着した、と言うことだ

 

列車のドアが開くと同時、一向は外へと飛び出し、手近な出口に向かって一直線に走り出した

走っている最中、適当なゴミ箱の中にステイルは噛みタバコをはき捨てて

 

「土御門はどこにいる!? やつがいないと、探索に使う〝理派四陣〟が発動できないんだけどね」

 

そう言いながらステイルは携帯を操作する

走りながら一瞬、アラタは土御門のことを考えた

あの時―――エンデュミオンのときも彼は手を貸してくれたことから、彼も魔術に関係している人物なのだと初めて知った

そして同時に、如月弦太郎も土御門と同様に魔術師、と言うことも

 

しかしもともと魔術を使用できない弦太郎はともかくとして、土御門は魔術師でありながら超能力者でもある、と言うことだ

 

それが何を意味するのか

 

それを決断した彼の意思は強固なものだろう

 

だから、アラタはあの時何も聞かなかった

 

そんなことを考えていると繋がったのか、ステイルが口を開いた

 

「土御門かい?」

<にゃー。悪ぃな。自立バス近辺まで来てるんだが…ここらは十キロ走のコースに指定されてるみたいだ。スケジュールの変更で時間が早まったみたいだ。バスが往生してるぜぇい>

 

ステイルはわかりやすく舌を打つ

そしてまた口を開く

 

「そこからここまでの距離は」

<降りて走るならざっと十分てところか>

「―――そいつはマズイな」

 

式はそう言い、アラタもそれに頷く

オリアナ・トムソンを発見し約三分、そして駅に来るまでに約五分、そこからさらに十分も待って探索しようものなら確実に彼女を見失う

 

「…その何とか陣ってやつの有効範囲は?」

<半径三キロだにゃー。…そういやカガミんたちには言ってなかったな>

 

土御門の苦笑いを聞き流しつつ、アラタは腕を組んで考える

もしあの女がこちらの思惑に気づいて走っていたらそれこそ完全に詰みだ

おそらくそれを土御門もわかっている

だからこそ、彼は聞く

 

<ステイル、俺が作った〝理派四陣〟のパターンは覚えてるか?>

「無理だ。仮にケータイ越しに指示を受けても僕はできないぞ。見よう見まねで組んだところで、僕には理論はわからないからね。ついでに言えば西洋術式のサーチも完全に専門外だ」

<―――だよにゃー。…よっし>

 

土御門は少し悩んだ後に

 

<わかった。理派四陣はこっちで発動する>

 

迷わず言い切ったその台詞に、上条当麻はギョッとする

そして、なんとなく想像していたアラタは苦い顔をし、式ははぁ、と息を吐いた

 

<なに。徒歩十分って距離なら底まで致命的な誤差じゃない。駅まで行くよりここでやったほうが早い。アイツだって地下とか、そういう移動手段に切り替えてると言えないわけでもないし、やるならさっさとしたほうが早い>

 

「ちょっと待てよ土御門! お前、これ以上魔術を使って大丈夫なのかよ!?」

 

これ以上、と言う当麻の言葉から察するに合流以前に彼は魔術を使って体がボロボロなのだろう

超能力者が魔術を使用すると、体のあちらこちらが爆発する

実際その現場を見たわけではないが当麻の動揺から察するとかなりの大怪我であると見て間違いない

そもそも魔術とは才能ない人間のために作られた代物だ

ゆえに、才能のある超能力者が魔術を行使すると体が拒絶反応を起こしてしまうのだ

 

言葉を続けようとする当麻を遮ってステイルが問うた

 

「―――良いんだね?」

<断りを入れる理由がわかんねーぜぇい? 俺は魔術師だからな。使ってナンボの商売ですたい。あ、あとカミやん? 苦情なら後で聞くからよろしくー。んでカガミん、お見舞いの品はメロンがいいにゃー。天下御免みたいな>

 

「土御門ッ!!」

 

当麻が叫ぶが、もう通話は切られていた

ステイルは携帯を仕舞いつつ、当麻を見る

そんな当麻にアラタは言葉を投げかけた

 

「たぶん次に来るのは、その術式が終わったときだ。―――気持ちはわかるけど、あいつの本気を汲んでやってくれ」

「―――畜生!」

 

そう言われて当麻は手近な壁に己の拳を殴りつけた

そうして少し待った後、また土御門から連絡があった

内容は簡単なもので、人気のない場所に移動し、その術式を発動したとのこと

 

◇◇◇

 

土御門元春が上条当麻たちのところに連絡を入れる少し前、彼の携帯には別の人物から連絡が届いていた

彼の携帯のディスプレイには〝葛葉颯太〟と書かれている

 

(…にゃー。また、やなタイミングで…)

 

今現在、彼の体は魔術を使用した直後で負傷している状態である

この状態で会話をすればまずい、しかし無視をするのも時間帯的に考えておかしい…悩んだ末、土御門は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた

 

「へーい、ソウちん、いったい、どうしたのかにゃー」

 

土御門はなるべく平静を装いながら言葉を発した

 

<いや、別にそれっぽい用事はないんだけどさ。今度の競技は俺も応援にいけたらなってさ>

「にゃはー、それは嬉しい心がけだぜぇい。そういうのって、大事だと、思うにゃー」

 

正直自分でもごまかしきれているかわかったものではない

それでも、土御門は多少強引にこの喋り方を貫く事にした

 

<…土御門? どうした、息切れてないか?>

「そいつは、気のせいってやつだぜぇい。ほら、競技終わりでちょっと息が上がるくらいあるだろ?」

<そりゃぁ、な。まぁいいや、変に時間とらせて悪かったな>

 

本当に会話は些細なもので、そういった後ガチャリと通話は終わった

ふぅ、と土御門はほっと胸を撫で下ろし改めて電話をかける

今度は、上条当麻らのところだ

 

 

一行は地上へと続く階段を駆け上り出口へと走る

第五学区は当麻やアラタが住んでいる第七学区と違い大学や短大が多い

ビルが多く立ち並び雑然としたイメージはあるものの、学生から見るとどうにもとっつきにくい

が、今はそんな事を言っている場合ではない

ステイルの中にある携帯が目的地を告げている

 

それこそ文字通り、命懸けで

 

<…たぶん、オリアナも気づいてるだろうぜぇい。動きが変わった、北西に今向かってるな。距離は…だいたい三百~五百メートルって、所か。待ってろ…すぐに、絞り込んでやるぜい…>

 

途切れがちになっているのは通信状況が悪いからではない

通話している彼自身、全身から血を流して魔術を施行しているからだ

当麻が何かを言おうとしたときに、また土御門が口を開いた

 

<反応が、出たぜい。ターゲットは、カミやんたちの地点から北西を維持、距離はだいたいメートルで三百九から、四百三十三の間にいる、直線的に振り切ろうとしてる。急げよ、有効範囲から抜けられるまで約千七百メートルだ…>

 

アラタはその報告を聞きながら少し後ろを走ってるシャットアウラに向かって僅かに視線を向けて

 

「アウラ、パンフはあるか!?」

「あぁ、持っている!」

 

シャットアウラはポケットからパンフレットを取り出しそれをアラタに手渡した

どうやらシャットアウラはすでに大覇星祭のページを開いたまま仕舞っていたらしく、スムーズに学区の地図を開くことが出来た

 

「北西に三百九~四百三十三…とすると、こいつか。こっから八百メートル先にモノレールの発車駅があるな。第五学区を回るこの環状線に乗られたらあっさり抜かれちまうぞ」

 

ここより八百、いや、先行するオリアナにとってはおおよそ五百~四百だ

切符を購入する時間、モノレールが来るまでの待機時間を考えると余裕は何分あるかわからない

が、そこで土御門が妙な事を言い始めた

 

<…待ってくれ、オリアナが急に動きを変えた…。なんだこいつ、一体何を…?>

 

何かを訝しむように彼は呟きを続けていく

 

<不意に動きを止めた…? いや、そしてすぐにまた動きだし―――ッ!!>

 

電話越しではあるがはっきりと土御門の動揺が聞き取れた

そしてその直後まるで金網に引きずられたような音を立て通話が途切れる

 

「土御門? おい、どうした!?」

 

通話が途切れてしまってはオリアナがどこに向かっているのかが分からない

追っているつもりが逆に距離が離れてしまう可能性があるのだ

故に闇雲に動けない

 

「―――やられたね」

 

足を止めて数秒、不意にステイルが口を開いた

 

「なにがだ」

「これは推測だが、恐らくオリアナは逆探知を逃れるために距離を離すのではなく、縮めることを選んだんだろう。〝術者の中心点である土御門を潰すこと〟もまた敵の勝利条件の一つさ」

 

式の言葉にステイルはスラスラと答えていく

淡々と呟くその言葉に当麻は青ざめながら

 

「待てよ、つまりそれって…!」

「恐らく、土御門の身に何かあったとみて間違いないね。そこに、オリアナが向かっているかはわからないが」

「…戦術としては最適なのだが、やられるとキツイな」

 

シャットアウラの呟きに当麻がぎり、と拳を握り叫んだ

 

「今、土御門はどこにいんだよ!?」

「僕が知るわけないだろう」

 

ステイルは彼の叫びに真っ直ぐ事実を告げた後、付け足した

 

「だから、これから探すんだ」

 

 

「がっ、はっ!!」

 

土御門は肺から息を吐きながら地面を二、三回転がった

同時に持っている携帯が手から離れ付近の柱にぶつかる

今土御門がいるのは地下街と地下街とを結ぶ連絡通路だ

当然ながら人波は限りなく少ないし監視カメラ等の死角にもなっている

 

そんな考えをしている土御門の耳にぐしゃ、という音が聞こえた

土御門が地面に作った理派四陣の地図が踏む潰されて四散した

それを踏みつぶしたのは一人の男だった

 

「油断してましたね。ここに来るのはオリアナさんでもよかったのですが」

 

目の前の男を土御門は初めて見る

情報は聞いていたが、邂逅するのはこれが最初だ

土御門はゆっくりと地面から立ち上がりながら目の前の男を見据える

 

「お、お前は…!?」

「名乗るほどのものじゃないですよ。必要なのは簡単な事実。―――構えないんですか? 僕は君を消しにきたんだ」

 

淡々と口を紡ぎながら目の前の男はゆっくりとこちらに向かって何かデッキのようなものを突き出した

そのデッキには、トラの模様が描かれている―――瞬間、彼の腰にベルトが顕現した

直後一度その両手をクロスしその手を自分の腰に持っていく

左手を僅かに右斜めへと、そして右手はデッキ付近に

 

「―――変身」

 

言葉のあと、彼はデッキをバックルに装填した

すると鏡の割れるような音と一緒に、彼の身体を変えていく

やがて男の姿はなくなり、目の前には虎のような姿をし、斧を携えた仮面ライダーがいた

 

「…お前、仮面ライダー、だったのか!」

「―――少し、弱いものいじめになるかもしれない。だけど、平等な世界にするためには使徒十字がいるんだよ」

 

ゆっくりとライダー―――タイガが白召斧(びゃくしょうき)デストバイザーを構えた

その姿を見て、土御門はギリ、と歯を食いしばる

相手が生身のままだったら、まだ多少は抗えたかもしれない

またここに来ていたのがオリアナだったならハッタリか何かで乗り切れただろう

しかし、目の前にいるのはライダー

健全な状態ならまだしも、魔術をいくらか使用してボロボロのこの状態では満足に身体が動くかも怪しいのだ

 

(―――ちぃ… どうする…!?)

 

 

サトルが行動している時、オリアナは列車の中にいた

 

(…サトル君が足止めしてくれるこの隙に、私はどう動く…)

 

列車が止まりドアが開くと同時オリアナは外へ飛び出した

次の目的地はこの場所から少し離れた自立バスの停留所

大覇星祭中の学園都市はお祭りムードで人が多いが基本的に人畜無害の老若男女だ

 

(〝彼〟はサトル君に任せるとして、私はどうしようかしら。もし万が一に聖人を送られた場合を考えて、対聖人用の術式の考案をするか…、はたまた、カメンライダーに対しての術の考案っていうのも面白そうね…)

 

思考を巡らせていた彼女は些細な事を見過ごした

一つは、今通っているこの道は、狭く、複雑なつくりをしていたこと

そして今通りかかっている付近にたまたま脇道があったこと

さらにその脇道から誰かが飛び出してきた、という事

 

「姫神ちゃん、近道をしないと次の競技に間に合わない―――うわっ!?」

 

衝突

小柄な女の子はちょうどオリアナのお腹の辺りにぶつかって今度は一緒にいた黒い髪の女の子に後頭部からぶつかった

幸いにも、その黒い髪の女の子の後ろにいた女性は距離が開いていたおかげか濡れるのは免れた

 

咄嗟にオリアナは単語帳を噛み千切ろう―――として踏みとどまる

ぶつかった相手は身長百三十センチ弱のチア服を着た女の子だった

黒い髪の女の子は小柄な少女とぶつかった衝撃で所持していたフルーツジュースのカップを離してしまい盛大にそのまま落下しばしゃ、と盛大にぶちまけた

 

胸元に当たった液体はそのまま少女の頭に降り注ぐ

 

 

「そ、その、大丈夫ですか?」

「―――小萌先生。よくもやってくれた」

「ご、ごめんなさいですよ。で、でも私も濡れ濡れですのでお相子なのです。あ、そっちの人は大丈夫なのですかー」

 

こちらを心配そうに覗きこんでくる小萌先生、と呼ばれた女の子

どうやら追手の魔術師の類ではなさそうだ

オリアナは日常的に作れる笑みを作り

 

「えぇ、お姉さんは大丈夫。それより貴方たちはどうかしら? そのまま表を歩くのは少し刺激的な格好になっていないかしら?」

「あ! 姫神ちゃんが濡れ濡れの透け透けなのです!」

「先生も。胸の辺りが尖っているよ?」

 

バッと迅速な動きで小萌は自分の胸元を両手で隠す

そんな光景を見て姫神の後ろにいる女性―――浅上藤乃は微笑んだ

姫神は小萌の顔が赤くなるのを見て改めて自分の胸を見下ろして―――オリアナは気づいた

 

黒い髪の女の子の胸元

 

ジュースを浴びて透けてしまった体操着

はっきりと見て取れるくらいに、形に現れている

首から細い鎖でぶら下げたネックレスみたいなもの

その鎖は体操服の中に入っており、鎖の先端につけられたのは場違いなくらいに大きい、

 

イギリス正教の、アレンジが加わった、銀で作られたケルト十字

 

オリアナ・トムソンはそれが何のためにあるのかを知らない

そもそも姫神に宿っている力すら、彼女は知らない

この状況で、彼女が判断してしまう結論は

 

(英国側の、魔術師―――!?)

 

学園都市でも十字を模した装飾品の一つや二つ売っている

その十字架に込められた意味を知らずにつけている子供とかもいるであろう

しかし、だ

 

まさか一種の結界として機能する霊装なんかを一介の一般人が所持しているはずがない

おまけに、その結界の名前は―――

 

(〝歩く協会〟!? あの禁書目録に使用されている防護術式と同じのを携えているなんて―――この化け物―――!)

 

迷いはない

単語帳を口へ運び一枚引きちぎり、そして―――

 

 

タイガがこちらに向かって走る―――その時だった

 

「ハァっ!」

 

土御門の後ろから突然何者かが飛び出してきた

飛び出した人影は手に持っている弓のようなものを引き絞るとそれをタイガに向かって放った

いきなりの事で多少戸惑いはしたが難なくタイガはデストバイザーでその矢を弾き返す

人影は土御門の近くに着地すると彼を守るように自分の身体を前にする

 

赤い弓を剣のように持ち直し、タイガと目を合わせた

彼は声で土御門に言う

 

「やっぱりな。水臭いぜ元春」

 

目の前の―――ジンバーピーチとなっている鎧武はそう言う

 

「お、お前…! どうして…!?」

「疲労から来る呼吸と、何かを耐えてる呼吸は似てるようだけど違う。お前から聞こえた呼吸は、なんか痛みに耐えてる感じだった。…応援も大事だけど、友達を助けるのももっと大事だろ」

 

鎧武は改めてソニックアローを構え、目の前のライダー、タイガを見据える

対してタイガはふぅ、と言った様子で肩を竦め

 

「…やれやれ。だけど、十分目標は達したし、まぁいいか」

 

そう告げてタイガは踵を返し一目散に走って行った

慌てて鎧武は追いかけたが曲がり角を曲がった辺りでどういう訳か忽然とその姿は消えてしまい、ジンバーピーチ特有の異常聴覚で辺りを探ってはみたが何も手がかりは得られなかった

唯一、その曲がった先に壊れたテレビがあったが、特に何もなさそうだと鎧武は判断した

 

ひとまず鎧武は変身を解除して土御門の所へと走る

どうやらアイツからは特に攻撃を貰っていないらしく、比較的傷は少なめですんだようだ

また携帯も壊れていなかったのもまた幸運といえるだろう

 

「…借りが出来ちまったにゃー、ソウちん」

「気にすんなよ。お前がいろいろ訳ありなのも知ってるし、可能な限りなら俺も手伝うからさ」

「―――ったく、相変わらずのお人よしだぜぇい」

「哉斗からもよく言われるよ」

 

そう言い合って、何の気なしにお互いの拳をぶつけた

 

 

同時刻、より少し前に時間は戻る

 

走っていた当麻らが最初に視界に捉えたのは人混みだ

そして―――

 

「アラタ、血の匂いがする」

 

真っ先にその匂いに気が付いたのはシャットアウラだ

シャットアウラに言われ他の者も警戒心を露わにする―――その時だ

 

「ひ、姫神ちゃん!! 姫神ちゃあん!!」

「皆さん、道を開けてください! お願いします!」

 

聞こえてきたその声色は意外な人物たちだった

その人垣を突っ切るようにアラタが直進し、軽く人垣に穴を開ける

そこの路地で見たのは、赤い色だった

 

ビルとビルの間にある細い道の組み合わせなのだが昼間だというのにここには太陽光が当たらない

じめじめとしたその道路は黒っぽく空気の流れも悪い気がする

その路地が、朱色に染まっている

 

「―――か、ガミね、くん…! 両儀、さんも…!?」

「上条、ちゃぁんっ!!」

 

慣れた声色は浅上藤乃と月詠小萌のものだった

ただその二人の身体は血で汚れ、瞳からは涙が零れている

そして小萌の足元に一人、横たわっている一人の少女

名前は姫神秋沙

体操服の上半身がズタボロに破られている

その上には―――恐らく藤乃が巻いたのであろう―――包帯が巻きつけてあった

しっかりと結び付けられているのに、血液はジワリとにじみ出てその純白を容易く朱に染めている

 

「な、なぁ…先生! ここで、ここで何が起きたんだ! 誰が、こんな事!!」

 

当麻が問うが、小萌は泣きじゃくるばかりで話にならない

その問いに聞いていた藤乃が代わりに応えた

彼女もまた涙交じりだ

 

「さっき、そこで小萌さんがぶつかって…! 謝って、笑ったって思ったら急に、怖い顔になったと思った時には、もう…!!」

 

「―――オリアナ、だな」

 

またこの場に来るもう一人の人物

それは橙色のコートを着込んだ蒼崎橙子と呼ばれる魔術師

 

「トウコ…お前、どうしてここに」

「正直言うと偶然さ。通りかかったら魔力を感じてね、しかし、こうなっているとは思わなんだが」

 

式の声に橙子は煙草を携帯灰皿に入れながら返答する

その問いに当麻が訳が分からないというような表情で

 

「ど、どうして! 姫神は関係ないだろ!?襲う理由なんか…」

「あれだ」

 

その叫びに、ステイルが静かに答える

苛立たしげに適当なビルの壁にその煙草を押しつけながら

 

「彼女に使われている十字架。あれに使用されている歩く協会という術式は特殊な霊装でね。それを見たオリアナが、敵国の魔術師だと思ってもおかしくはない」

「―――なるほど。要は、勘違いで彼女は襲われてしまったのか」

 

そのステイルの呟きにシャットアウラが反応する

恐らくは、追手が先回りしたと思い込んだオリアナが先手必勝を狙ったのだろう

 

「間違え、た…!? ここまでやっておいて、間違えた、だけだと…!? あの、野郎ッ…! ふざけやがってェぇぇっ!!」

 

思わず手近な壁を、当麻は殴り付けていた

涙を流し続ける小萌が思わずビクリと肩を震わせた

 

「…なぁ、人払いとか出来ないか」

「あぁ、君に言われてやるのは不本意だけどね」

 

アラタに言われステイルは懐からルーンのカードを取り出した

それらをばら撒き壁や地面に貼り付けて

 

「―――これよりこの場は我が穏所と化す」

 

その言葉と同時にこの場に集まっていた人たちが散り散りとなっていく

恐らく、人払いが発動したのだろう

 

「これだけ完璧に応急処置を施してあるんだ。救急車も呼んでいるだろう、なら路地の入口で待っていると良い。ここにいては救急隊員が見つけられないかもしれないからね」

「そうだな。―――待ってられない、急ぐぞ、アラタ」

「―――あぁ」

 

ステイルの言葉に式が賛同しつつ、歩くように促す

アラタは最初苦い顔をしたがやがて感情を殺すように歩き出す

それに続くようにシャットアウラも走り出す

 

倒れている、姫神秋沙を超えて

 

「待てよッ!!」

 

一番最初に声を上げたのは上条当麻だ

いや、想像できない訳ではない

むしろ、容易に想像できた光景だ

 

「どうしたよ、今ここにいたってオレたちに出来る事はない。じゃあどうするか、進むしかないだろ」

 

それに答えたのは両儀式だ

 

「俺達のせいで巻き込まれたんだぞ!? このまま放っておけってのかよ!!」

 

付近にいる小萌や藤乃はお互いの顔を見ながら怪訝な顔して、涙をぬぐう

橙子はそれらを見て徐にまた煙草に火をつけた

 

「―――じゃあ、何かできるのか」

 

鋭く、それでいて凛とした声が当麻の耳を貫いた

 

「何かできるのならやってくれ。オレやアラタは魔術なんて使えない、この神父も燃やすしか出来なさそうだ。生憎だけど、その子の傷を治すなんてオレたちには出来ないんだ」

 

彼女にしては珍しく、少しだけ物悲しそうな表情だった

それにアラタが続いていく

 

「怒るお前の気持ちも分かる。けどな、怒ってんのはお前だけじゃないんだ」

 

そう言うアラタの拳は、ギリギリと震えている

当たり前だ

友達を傷つけられて怒らない人などいないのだから

 

「―――ひとまず、先に行け。応急でいいのなら、私がやってやろう」

「出来るのか? トウコ」

「さぁな。けど、あそこで箱庭の真似事をしてる子よりはマシだと思うが」

 

徐に指差されたところを目で追う

―――と、それまで黙っていたステイルが息を呑むのが分かった

 

橙子が指を指したところにいたのは月詠小萌だ

その隣には静かに小萌の行動を見守る藤乃がいて、両方とも女の子座りをしている

しかし、重要なのはそこじゃない

 

小萌はその辺に落ちている小石や空き缶と言ったのを積み木みたいに並べていく

それらはまるで、簡単にこの場を現してるミニチュアだ

 

「―――っ」

 

思わずステイルの息が漏れる

その後で言葉を発した

 

「―――何を、しているんだ、君は」

「シスターちゃんの時は…」

 

小萌は真っ直ぐと、ステイルを見つめ返す

 

「シスターちゃんの時はこれでなんとかなったのですよ…。だから…今回だって、どうにかなるに決まっているです…!」

 

「! …まさか、〝貴女〟が―――ッ!?」

 

ステイルは思い出していた

インデックスが初めてこの学園都市にやってきた時、神裂が間違いで彼女を斬りつけたことがあった

その時、当麻とアラタは彼女を背負い、小萌のアパートへと逃げていたのだ

 

そうだ、当麻やアラタに魔術は使用できない

ならあの場で魔術を使用したのは必然的に―――

 

「以前はこれで上手くいったのに…! 言われた通りにしてるのに…! さっきまで浅上さんと一緒に、楽しくナイトパレードの話をしてたのに…、どうしてこんなっ…!」

 

その叫びを、ただ黙って聞くしかなった

煙草をふかしつつ、不意に橙子が口を開く

 

「今彼女が組んでいるのは一定の空間と魔術師が作り上げた箱庭をリンクさせるタイプの魔術だ。この方式ならミニチュア内の人形の傷を[直]せば、リンクされた人体を[治]せる類のな」

 

彼女は改めて携帯灰皿に吸殻を入れそれを仕舞う

 

「一口に回復魔術と言っても宗派、法則、術式は様々だ。呪文を唱えれば治ってくれるわけじゃない。風邪薬で骨折は治らないのと一緒さ。状況に適切な術式じゃないと、効果は発揮しない。ましてや打撲や裂傷、骨折、さらには動脈、内臓を治すとなれば専門家が必要だ。―――残念だがあの術式は完成していない」

 

橙子は小萌が作っているミニチュアを見ながら静かに言う

 

「…これは私の私見だが、小萌先生は考えに考え抜いて魔術という理解できない代物にすがったんだろう。目の前の生徒を、助けるためにな」

 

その感情は、きっと誰もが通るやもしれない感情だ

大切な人の為なら、きっとありもしない奇跡にすがるように

 

「―――違う、そうじゃない」

 

え? と小萌は顔を上げる

その疑問に耳を傾けず、ステイルは懐からルーンのカードを数枚取り出し

 

「海の水を、バケツに救うように、まずは―――」

「アラタ、式、そして上条当麻。お前たちは先に行け。ここは何とかしてみよう」

「―――え?」

 

ステイルの隣に橙子も立つ

彼女を見て小萌も気づいたのか、「蒼崎さん…」と小さく口に出した

 

「橙子…」

「そんな顔をするなアラタ。私も治癒は苦手だが…この魔術師と、小萌先生の記憶の中にある禁書目録の一部を使えば、時間稼ぎは出来るはずだ」

 

ステイルは橙子の顔を見て、それからもう一度小萌の顔を見る

そして今度は藤乃へと視線をやり

 

「貴女は路地の入口で救急隊員を誘導してください。…何をしている上条当麻。君は早くオリアナを追うんだ。ただでさえ不安な術式を君の右手で破壊されたらそれこそ本末転倒だ。終わったら僕も追う。すべてを終わらせるのなら、ここを進んでいけ」

 

「…分かった。それで上手くいくなら…ステイル、姫神を頼んだ」

「期待はするな。僕だって初めてなんだ、この世界で攻撃以外で魔術を使いたいなんて思うなんてさ」

 

 

姫神秋沙は静かに思考を巡らせる

なんでこんな風になってしまうのだろう、と

痛みは飽和状態を超え逆にマヒしてきている

そのせいで逆に周囲を見渡す余裕が出来てしまうほどだ

 

倒れる自分を挟んで、誰かが何かを言っている

 

「―――じゃあ、何かできるのか?」

 

ゾクリとするような声色だった

同じ女性なのに、こんな声が出せるのかと、驚いてしまうほど

 

「何か出来るのなら、やってくれ」

 

出来るって言いたかった

だけど、現実は非常で

 

「怒るお前の気持ちも分かる。けどな、怒ってんのはお前だけじゃないんだ」

 

そう言ったのは、あの少年の友達だ

その言葉を聞きながら、どうしてと、彼女は思う

一度その言葉を否定すれば済むだけなのに、どうしてこの身体はいう事を聞いてくれない

 

「―――すべてを終わらせるのなら、ここを進んでいけ」

 

思わずやだと言いたかった

だけど、声なんて出なかった

 

「分かった。それで上手くいくなら」

 

少年は進むことを決意し、倒れる自分を超えて先を歩いた

その隣にいる友達も、赤い服の女性も、黒い髪の人も少年に追走する

 

世界はこうも、都合よく進んでくれない

世の中は、ザンコクだ

 

「ごめんな、姫神」

 

それでも、言葉を彼女は聞いた

 

「ナイトパレードまでにはお前の病室に帰るって約束する。だから、待っててくれ」

 

それを聞いた時、思わず彼女は微笑んだ

自分を取り巻く世界は冷酷で、伝えたい言葉は伝わらないくせに、あの少年の言葉は、とても心強いものだった

 

ズルい、なんて彼女は思わず心の中で口にして―――




気まぐれ紹介のコーナー

今回はこいつ

仮面ライダーダークディケイド

後悔させてやるぜ……


仮面ライダーダークディケイドとは、ゲーム『仮面ライダー クライマックスヒーローズ』に登場したオリジナルライダーである

◇キャラクターとしてのダークディケイド

姿はディケイドと瓜二つだが、ディケイドライバーの色はディケイドと対称的な真っ黒であり、全身の色も黒みがかった灰色となっている
またディバインアーマーが金色で縁取られており、これはダークライダーであるリュウガやオーガ等と共通する意匠である
言ってみればダークライダーの伝統色なのだが、本家ディケイドがマゼンタ、ディエンドがシアンなため、同じく三原色であるイエローを盛り込んでいるという見方もできるかもしれない
その正体は一応『大ショッカー首領だった頃のディケイド』だとゲーム内では言われているが、他にも『本当の破壊者となった平行世界のディケイド』や『(士とは別の)真の大ショッカー首領』と諸説あり、そもそもディケイドと言う作品自体設定があやふやな為、ぶっちゃけその正体は現在に至るまで不明のままである

またゲームでのみの登場のため、公式での映像・立体化は 一つも存在しない(コラ画像はある)


そう言う意味では不遇だと言えるが、それが却ってコイツの不気味さを際立たせている……かもしれない
因みに最終回直後の嘘予告に出てきた「もう一人の士」はコイツではないかと言われているが、その真偽は定かではない
元々ディケイドが二次創作に引っ張りだこのキャラであり、その偽者でありハッキリとした正体が分からないコイツもその方面ではそれなりに人気が高い
また物語終了後も旅を続けるディケイドに、最後の敵として立ちはだかる存在だと予想する者も少なくない

◇ゲームキャラとしてのダークディケイド

初代クライマックスヒーローズのストーリーモードのラスボスとして登場
基本的な性能は通常のディケイドと同じ(コンプリートフォームにも変身出来る)だが、唯一の違いとしてFFRが一切使用できない(自分の使った感覚では攻撃力が高く設定されてるような気がした)
その為対戦ではディケイドの劣化として扱われる等、此処でも不遇……まぁこれはクラヒではよくあること
まあ台詞は若干違うので使う価値が全く無いわけではないが(歩き方も一応違う)

では今回はこの辺で

ではでは
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