とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
エピローグ的な意味合いなので短いです
鎧武もついに最終回
城ノ内が初瀬の張り紙はっつけて探してるシーンでグサッと来た
そうだ、知らないんだったね…
アニキも生きててよかった
そして次のステージへ
相も変わらない出来ですがどうぞ
誤字脱字あったらご報告を
ではどうぞ
ふと、目が覚めた
姫神秋沙は病室のベッドの上で目が覚めた
姫神秋沙のいる病室は当麻やアラタみたいな個室ではなく、カーテンで区切られた六人一部屋の一般的な病室だ
この部屋を使用しているのはみんな女性で、年齢もバラバラだ
姫神と同年代の女性もいる
「…」
彼女はぼんやりとした目線を天井へとさまよわせる
その後でゆっくりと上半身だけを起こした
「あ、起きたんですね? 姫神さん」
こつりこつりとこちらに向かって歩いてくる一人の看護師
歩いてきながら他の起きている患者さんに挨拶をしながら女性―――浅上藤乃は笑みを浮かべる
因みによく見るとベッドに上半身部分だけを乗り上げる形でインデックスがべちゃー、と身体を預けている
すやすやと寝息を立てて、気持ちよさそうである
「朝はベンチで寝ちゃいけないからね。貴女の様子を覗きに来たんだけど、そのまま力尽きて眠っちゃったみたい」
小さい微笑みと共に藤乃は呟く
そう言えば彼女の同居人…もとい居候の家主はしょっちゅう怪我して病院に担ぎ込まれるので、ベンチやパイプ椅子で、彼女は病院で夜を明かすことに慣れてしまったみたいだ
待合所のベンチなどで寝っころがっている姿などはすっかり看護婦たちの噂になっている
「気分はどうですか? 何か変わった所とかは」
「大丈夫。検査の結果は良好だって。ちゃんと元通りになっているみたい」
彼女は言いながら自分が来ている寝間着の首元を引っ張り、中を覗き込んだ
十字架が見える
曲りなりにも女の子である姫神は身体に傷が残るか不安が残ったが、それについては「大丈夫。僕を誰だと思っているのかな。ふふ、患者に頼られる、というのは嬉しい事だね?」と言っていたのできっと大丈夫なのだろう
そう言えばすっぱり斬られた少年の右腕を一切の傷跡なく直していたのを思い出した
(…骨まで見えるような。傷だったのに)
寝間着の中の包帯を眺めつつ、姫神は独白する
赤い神父と橙色の女性が行ったのはあくまでも応急処置的なもの…らしい
しかしそれだけとはいえ普通では治せないような傷をあっさりと修復した魔術という力
一度絶望と一緒に諦めたハズの事柄が棘隣姫神の心に突き刺さる
「…今日か明日には。退院できるって。カエルのお医者さんが言ってた。…けど流石に。競技には参加できないかもだけど」
「? …姫神さん?」
藤乃には彼女の横顔がどことなく寂しそうに見えた
やがて彼女は意を決したようにふと藤乃に尋ねた
「…浅上さん。あの人たちは。今回も無茶をしていたの?」
「あの人? …あぁ、うん。よくわからないけど、そこのシスターちゃんがすっごく怒ってたから、きっと無茶していたと思う」
それを聞くと姫神はふと視線を下に落とす
(…ローマ正教の魔術師が。やってきたから)
結局、彼らが拳を振るっていたのはそのためだった
当麻らが本物の魔術師と一緒に傷つき倒れた姫神の元へとやってきた以上、それ以前に誰かと戦っていたはずだ
秋沙が倒れたのも、それを見て憤ったのも、結局はそれは〝目的〟を果たすための過程にしか過ぎなくて
(―――誰でも。よかったんじゃ)
よく考えてみると上条当麻と姫神秋沙の間には命を懸ける理由なんてない
鏡祢アラタにいたってはつい最近交流を持った程度だ
もし自分ではなく、あそこに倒れていたのが秋沙でなくても、きっと彼は救ったのだろう
自分がその場にいなかったら、きっと自分の存在は映らなかったのではないか
誰かを助ける、というのはきっと彼らにとっては日常的な行動なのだ
自分には、インデックスみたいに人に役に立てる知識なんてない
誰とでも分け隔てなく接して、誰かの心を安らがせるような心など持っていない
彼女はひざ元の布団を両手で軽くつかむ
きっとあの少年は自分が困った時にはいつでも助けに来てくれる
しかしその行動に、きっと意味はないのだろう
自分の為に行動を起こすだけで、彼は意味のない代償を払ってしまう
多くは、傷、という形で
「…私は。皆の迷惑にしかなってないのかもしれませんね」
冷めた言葉だと思ったのに、自分でいって胸の奥に響いた
「姫神さんは、自分を卑下しすぎだよ」
「ううん。本当の事。…私は。助けられるべきじゃなかった―――」
「姫神さん」
凛とした声色だった
「…あの人の右手。上条君…だっけ。殴りすぎてて手の皮膚が削れてたの。…普通の人は、本当にどうでもいい人のためにそこまで戦えないもの。きっと上条君は、姫神さんが魔術師とか、そう言った〝つまらない〟事件に姫神さんが巻き込まれたのが許せなかったんだよ」
これは主観だけど、と藤乃は断りを入れて
「あの子がそうであるように、きっと上条君も色々な人を守ったり助けたりしてると思うの。きっと、その上条君って人が紡いだ人の輪は、すごい繋がり方をしているわ。だけどそれで君を守るって気持ちが薄らぐことはない。姫神さんを迷惑だなんて思うこともない。その程度の人なら、彼が上条君の友達になんてなるはずないもの…。だから、ね」
藤乃はスッと自分の手を姫神の頬に添えて、彼女の眼を真っ直ぐ見つめた
頬から伝ってくる彼女の熱は、暖かった
「そんな悲しい事を言わないで」
姫神は何かを口にしようとして、しかし言葉が上手く声に出せない事に気づいた
口元が、僅かに震えていたからだ
その感情が、どんなものなのかを考えた時
「姫神さんの病室ってこっちでいいのかしら? …いきなり入っても迷惑に思われないかしら」
「姫神は無口だけど、静かなのが好きってわけじゃないぞ。よく見ると分かるけど、アイツ嬉しい時には顔が綻ぶんだ」
「ほえー、よく見てるな当麻。ふつう気付かないぜそんな事」
「そうか? 結構分かると思うんだけどな。って言うか、隠れ世話好きな吹寄さんならご存知かと思ってたけどなー」
「…世話好き? 私が?」
「はは、そうだな。姫神さんの病室が分からなくてオレや当麻の病室にお邪魔したり、売店で果物かお花、どっちがいいかを三十分がっつり悩んで決めたりさ。結構友達思いなんだな、吹寄はぶっふぉっ!?」
「ば、馬鹿なこと言ってないで、今日は第一種目からヘビーな全校男子騎馬戦本選A組があるのよ。怪我で見学している人や、応援で見に来ている人たちに来て良かったって思えるような内容にするわよ!」
藤乃は笑みを浮かべながら声のする方を見る
からから、と車輪のような音が聞こえる所から察するに姫神用に車いすも用意しているのだろう
「姫神さん、世界は、貴女を迷惑だなんて思ってないわ」
藤乃は声のする方からもう一度姫神へと向き直る
笑顔と共に
姫神は彼女の笑顔に、小さく口元に笑みを浮かべてそれを返し、もう一度声のする方向を見た
やがて病室のドアが開かれる
そこには、彼女が望んだ世界があった―――
今回の気まぐれはお休み
では次回ノシ