とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
最近返信できず申し訳ないです
なんでも次回春の映画に我らがてつを氏がご出演なさるとか
…楽しみですな
では、相変わらずですがどうぞ
「…ってことは、君はアレなのか。御坂妹達の長的な、ホストコンピュータみたいなものなのか」
彼女を地面に下ろしてアラタはそう尋ねた
「ホストっていうよりはコンソールに近いかもってミサカはミサカは訂正してみたり。ミサカの中心点はどこにもなくてネットの中で特定の個体が〝核〟として存在することにあまり意味がないのってミサカはミサカは偉そうに胸を張って講釈しみたり」
なんでも大勢の
…しかしそんなすごそうなのがこんなところで何をしているのだろうか
「あのねー、ミサカは実験の時にあなたたちに助けてもらったからそのお礼を言いに来たのってミサカはミサカは鶴の恩返し的な展開を言ってみたり」
「本音は?」
「信用してないし! ってミサカはミサカは地団太を踏んでみたり! 確かにお礼を言いに来たってのは偶然によるこじつけだけどってミサカはミサカは本心を明かしてみる!」
「じゃあ俺たちの不信感は正解じゃねぇか」
「そのデリカシーのなさが頭にくるのー! ってミサカはミサカはポカポカやってみる!」
そう言って
なんだか怒らせてしまったようだ
アラタが彼女の相手をしつつ、当麻があちこちを見渡して
「悪い悪い、あっちにポップコーン売ってるから、そいつでお許しくだせぇ」
「女の子の繊細な心を食べ物ごときで誘導できると思っているの!? ってミサカはミサカは愕然としてみる!」
あれま、と当麻は思った
どうやらインデックスを相手した時の対処法が身に染みてしまったようだ、これはいけないと当麻は反省したのちに
「ごめん、じゃあ断食な」
「ポップコーン大歓迎だけど! ってミサカはミサカは食べ物はもらうけど怒るのはやめないという新しいアクションを披露してみたり!」
「どっちだよ」
そんなアラタの言葉とともに
なんだかんだで食べ物で話が纏まりそうだ
しばらくして、当麻がキャラメルのポップコーンを購入し、甘ったるいにおいのするその円筒の容器を
「おお、ミサカの頭とおんなじくらいの大きさかもって、ミサカはミサカは徳用サイズに感心してみたり」
「…しまったな。明らかにお前の胃袋よりもビッグサイズじゃねぇか」
「まぁインデックスはこれくらい五分足らずで完食するもんな…」
そんなアラタの危惧が的中したのか、数分後
ポップコーンの大きな容器を片手で抱え、もう片方の手は口をおさえうずくまる幼女の姿が確認された
「べ、別に残してもいいんだよ?」
いたたまれなくなったアラタが彼女の肩を叩いてみる
「み、ミサカはミサカはいただいたものを粗末にするようなおバカさんでないげぷ」
「あぁもう。待ってて、今水買ってくるから」
プルプル震える彼女の頭を撫でると適当な自販機からミネラルウォーターを買ってきて彼女に手渡した
受け取った水で喉を潤すことによってようやく本調子を取り戻した
ポップコーンを手近なベンチにおいて彼女は言った
「ミサカはね、これをかっぱらってきたの、ってミサカはミサカは戦利品を自慢してみたり」
「いきなり山賊宣言かよ、やるな御坂上位個体…ってあん? これって、いつもは御坂妹がしてるゴーグルじゃねぇか」
彼女がぐいぐいと指差しているのは彼女の首にぶら下がったゴーグルだ
暗視装置みたいな、いかにもな電子機器
なんだろうか、っていうかこれは御坂妹が普段つけているゴーグルではないだろうか
「どうもこれってミサカのために作られたものではないから上手くつけられないの、ってミサカはミサカはちょっとしょぼんとしてみる」
「? 要はゴーグルを固定してるバンドの長さを調節すればいいんじゃねーか?」
「? ばんど?」
「貸してみな」
そういいながら当麻は彼女と同じ目線に立つ
当麻がそのバンドに触れてみるとそれはゴムでできていた
わかりやすく言うなら水中ゴーグルを思い浮かべてみるとわかりやすいか
アラタはそんな光景を見ながらなんだか兄弟みたいだなー、なんてことを考えていた
「ちょっとごめんよ」
言いつつ当麻は本体のゴーグルをつかむ
分厚いゴムのバンドは当麻に引っ張られてみょーん、と伸びていき、それと同時になんとなくアラタは嫌な予感がした
「当麻、念のため慎重に―――」
が、アラタの警告は時すでに遅し
不意に伸びたバンドに
「いた、いたたってミサカはミ―――」
「わっ!?」
驚いた当麻はうっかりゴムバンドから手を離してしまった
伸びていたゴムバンドは元のサイズに戻ろうと伸縮し―――後の結果はご想像の通りだ
数秒の後
ゴロンゴロンとその辺を転げまわっている彼女が発見された
どことなく気まずい空気があたりを包む
声をかけようか迷っている二人にもう一度彼女が立ち上がった
彼女の瞳は若干涙目になっている
もう一度、ということだろうか
今度はアラタがやることになった
しかし結果はお察しである
この時
健気だ…!
それが二人が思った感想だった
そんな彼女の心意気にこたえるべく、当麻とアラタは細心の注意を払ってゴムの長さを整えることに挑戦する
数分奮闘してようやく長さを調節したそのゴーグルを
ゴーグル本体の大きさのほうが彼女のサイズに合ってない感じだが、それでもずり落ちることはなさそうだ
おおー! 彼女は嬉しそうにくるくるとその場で回りその喜びを体全体で表現している
そんな彼女を見て、ふと思った疑問を小さい声でアラタに耳打ちをした
「…なぁ、コイツ一人でこの辺をうろついているのかな?」
「さぁ、もしかしたら妹のほうも近くにいるのかもしれないし…はぐれてしまったのかもしれないな」
地下街だからあんまり実感は湧かないが、現在時刻は午後六時前、夕暮れ時だ
どこかにいる親御さん…か誰かを探して彼女を預けたほうがいいだろうか、なんて考えている二人をしり目に、
◇◇◇
「でねでね。とうまってばいっつも私を置いてけぼりにしてどっかに行っちゃうんだよ? あれはもう放浪癖の一つといっても過言ではないかも」
ちなみに先のインデックスの相手は浅倉にまかせっきりだが、こうなることをなんとなく察していた彼は特に文句を言うことなくすんなり引き受けてくれた
しかしインデックスの声の大きさは結構大きく、少し先を歩いている
とりあえず思ったのは、彼女の言う〝とうま〟という名前を聞くとよくわからんがイライラする、ということだ
「おまけによく無茶ばっかりして怪我もしてくるし。あらたみたいな力があるならともかくともさ」
ついでにそのあらた、という名前を聞くと浅倉もちょっぴりムカリときた
なんでだろう、どこかで聞いたことがあるわけでもない…と思うのだが
「ところで、あなたたちはここで何をしているの?」
「人探しだよ」
「さっきのけーたい、の?」
「うん? そう、だけど」
「だったら何だよ」
先を歩いていた
隠しておく必要はないし、こういうやつは言っておかないと何回も聞き返してくる可能性が高そうで鬱陶しい
少し似ている人間を知っているからわかる
そういうとインデックスは三毛猫を抱き上げると首をかしげて
「そういえば、まだお礼をしてなかったね」
「黙って帰れクソガキ。テメェみてェなガキに関わると余計手間取る予感がすンだよ」
「お礼してなかったね」
まさかのスルーである
「さっきの子だよね? とうまが見つかるまでなら一緒に探してあげてもいいよ」
「―――クソッタレが」
「…そう言うなって」
完璧なまでの、その無邪気な言葉を聞いて、彼は思わず吐き捨てた
―――他人の善意に付き合うということは、案外疲れるということを、今日初めて思い知った
◇◇◇
ステーキハウス〝ブラックサン〟
最初はひっそりとやっていたこのステーキハウスも、今ではそこそこお客が来るようになっていた
「マスター、いつもの頼むぜ」
探偵、左翔太郎
ブラックサン最初の常連客となってくれた青年だ
今回は相棒であるフィリップはいないらしく、一人である
「やぁ翔太郎君、今日はフィリップ君はいないのかい?」
「あぁ、たぶんアイツは今読書してるころじゃないか? 読んでない本を消化するって言ってな」
「なるほど」
いつも通りの他愛ない会話を聞いて光太郎は厨房へと戻っていく
そんな時、またブラックサンの入口が開かれた
「南さん、こんばんわ」
「おっ邪魔しまーすっ!」
そこにやってきたのは夜神一真と黒川陸姫の二人組だ
翔太郎は首を向けて、その二人にあいさつする
「おっす、お前らも来たのか」
「翔太郎さんもいたんですか。…ていうか、結構な頻度でここに来てますね」
「憩いの場なんだよ、ここは」
夜神は翔太郎の隣に座り、翔太郎彼の言葉に水を口に含みつつ返答し、軽く帽子をかぶりなおす
「けどなんとなく翔太郎さんの言ったことわかるなー。なんていうか、このお店の雰囲気? っていうか…」
陸姫は翔太郎の言葉にうなずきつつ、彼女は夜神の隣に座った
そしてメニューを開きつつ、鼻歌を歌い始める
奏でている歌はかつて鳴護アリサが歌っていた歌だ
「…お前、本当にアリサが好きなんだな」
「えぇ、さすがにファン一号ではないですけど、仮にも短い間ですけどボディーガードした仲ですからね!」
「へぇ、アリサのボディーガードなんてしてたのか? 黒川は」
「そうなんですよ、翔太郎さん。えへへ、すごいでしょ?」
きゃるん、なんて擬音が聞こえてきそうな感じで黒川陸姫はウィンクする
その際、ちらりと彼女は夜神を見るが、当の夜神はどこ吹く風でマスターである光太郎に自分が食べたいメニューを注文していた
…どうやら相も変わらず、のようだ
ふと、何気なく翔太郎は席から立ち上がって入口から顔を出し何となく空を見た
空は暗く、雲が多い
―――これはひと雨降りそうだ
「帰りは傘でも買って帰るかな…」
また余計な出費だな、と思いつつ、改めて翔太郎は席に座った
◇◇◇
「むむ。もうこんな時間だ、ってミサカはミサカは少し焦ってみたり」
当てもなく三人で歩いていると不意に彼女は呟いた
見たところ壁掛け時計みたいなものは見当たらないし、地下街では空の様子もわからない
そうなるとミサカネットワークみたいな何かで何らかの情報でも得ているのか
「あのね、ミサカはそろそろ帰らないといけないのって、ミサカはミサカは残念なお知らせをしてみる」
「まぁ時間が時間だからなぁ」
「普通は帰るもんな、夜近いし」
当麻とアラタとしてはこういう子供は早く帰るべきだと思っていたので少し安心だ
二人に
「ホントはもっと一緒にいたいけど、ってミサカはミサカはしょぼんとしてみたり。会ったのは偶然だけどお礼をしたかったっていうのは本当だし、ってミサカはミサカは本心を吐露してみたり」
彼女はかけてもらったゴーグルに手をやった
でも、と彼女は続ける
「あの人たちは心配すると思うんだ、ってミサカはミサカは思い出しながら先を続けてみたり。さすがに遅いと探しに来るかもしれないし、ミサカもあんまり迷惑かけたくないからって、ミサカはミサカは笑いながら言ってみる」
彼女の言葉を聞きながら、ふぅん、と二人は言葉を濁す
よくわからないが、きっとその人はいいやつっぽいな、なんて漠然とした感想を抱く
「弱いんだ」
彼女は言葉をつづけた
「あの人はいっぱい傷ついて、手の中にあるものを守れなかったばっかりか、すくってた両手もボロボロになってるの、ってミサカはミサカは断片的な情報を伝えてみたり。その友達もあの人を支えて結構傷だらけになってしまってるし、これ以上負担をかけたくないから、今度はミサカが守ってあげるんだってミサカはミサカは打ち明けてみる」
「―――そっか」
「できるよ、君なら」
彼女の言葉に偽りなどない
いいやつっぽい、ではない
きっと、間違いなくいいやつだ
「カッコいいとこもあるんだよ、ってミサカはミサカは自慢してみたり。だってボロボロの傷だらけになってもミサカのために戦ってくれたんだって、胸を張ってみたり」
どうしてかその男の行動パターンには、なぜだかものすごく親近感がわくのだけれど
ばいばい、と言って去っていく彼女の背中を二人はしばらく眺めていた
最終下校時刻、終電の時間が迫っているのか慌ただしくなり始めた人ごみの中に、彼女の体はあっという間に消えていく
「―――ってか、結局インデックス見つからなかったな」
「あぁ、そうだな。…ったく、あいついったいどこほっつき歩いて―――うん?」
言葉の途中でふと当麻が見覚えのある人物を見た
当麻につられてアラタも視線を動かすと、〝彼女〟はこちらへ近づいてくる
◇◇◇
「あ、とうまだ。あらたもいるっ」
傍らのインデックスが言葉を発し動きを止めた
彼女の視線は通路の先を見ている
「見つかったのか」
「うん」
そもそもこの状況で誰を指して捜し人だといっているのかわからない
「行けよ」
「でも、あなたたちの知り合いは?」
「そいつは大丈夫だ。こっちも見つけた」
浅倉が言葉を投げかけた方向もインデックスと同じで前方だ
その方向から中高生がメインの人ごみをかき分けるみたいに、女の子がこちらに向かって走ってくるのが見えた
二人は、その女の子の名前を知っている
本名かどうかなどわからないし、便宜上の名前にどんな価値があるかわからない
何があっても、それしか呼ぶ名前がないのなら、やはりそれは名前なんだろう
だから、二人はその名を呼んだ
「
「おーい、こっちー!」
二人に呼ばれたことに気が付いて、女の子の走る速度が一層走る姿が早くなる
彼女の顔にはバカみたいな笑顔が張り付けられている
それを見ていた二人の隣でとん、と小さな足音が聞こえた
「じゃあ行くね。ありがとう」
インデックスはそれだけ言って、自身の探し人の名前を叫んだ
「とうまーっ! あらたーっ!」
インデックスの足に力がこもる
わずか数十分の間行動を一緒にした女の子は二人の元を離れ、人ごみの中に入っていく
彼女は振り返ることはない
二人の少女は自身も気づかないうちに交錯し、すれ違い、距離を離す
「たっだいまーってミサカはミサカは定番な挨拶を言ってみたり―――て痛い! どうして無言でしかも連続で手刀を繰り出すのって、ミサカはミサカは泣きまねをしつつ上目づかいであなたを見てみたり!」
ビスビスと彼女の頭にチョップを繰り返す彼はこれまでの不満をぶちまける
「っつうか、お前は今まで何してたワケ?」
「遊んでもらってたの、ってミサカはミサカは正直に答えてみたり」
だが、そこから得られるのは何もない
ただ漠然とした、人ごみがあるだけだ
そう、いつも通りに
申し訳ないが今回の気まぐれ紹介もお休みします
ではでは