とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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久しぶりの投稿
クオリティは相変わらず低いですよ
待たせたくせにね!

…いえ、本当にごめんなさい

短いし変なところで終わってますが、ゆるりと楽しんでください

誤字脱字見かけましたら報告ください

ではどうぞ


♯70 かんたんな嘘

一瞬、一方通行(アクセラレータ)は浅倉たちと合流することを考えた

しかし自身にもこういったことが起こっているのなら、彼らの身にも何かが起こっているはずだ

そしてわかりやすい合流ポイントは、例のカエル医者のいる病院だ

そこまで行けばひとまずは合流できるだろうと踏んだ一方通行(アクセラレータ)はひとまず車を走らせた

 

一方通行(アクセラレータ)等を乗せた車は、あれから十分程道を走らせた

しかし車で十分といっても、言い換えれば十分〝程度〟でしかないのだ

流石に可能性は低いが、衛生なんて使われてしまえば直ぐに追い付かれてしまうだろう

運転席のシートに縫い付けられた男はガタガタと震えながら小さな声で言ってきた

 

「ま、まだ走るのか…? このままじゃ、マジに―――」

「うるせェ。俺が良いって言うまで止まんねェよ」

 

ささやき返すと男はそれにだまり、震えながらも車の運転を続けた

それに気がついたインデックスがこちらを見て

 

「どうしたの?」

 

と聞いてきたが、一方通行(アクセラレータ)はそれになんでもねェよ、と言い返した

一方通行(アクセラレータ)本人は前方の運転席のシートに身体を預けるようにして、突き刺している凶器を隠しているので、今のところ彼女にはバレていない

 

しかし、と一方通行(アクセラレータ)は思案する

後部ドアのない盗難感まるだしのワンボックスが街中を走っていれば流石に警備員(アンチスキル)にぶつかるのではないかと思ったのだが今のところその気配はない

あわよくば黄泉川とコンタクトが取れるかもしれないと思ったのだが

 

(…この静けさも木原の野郎の演出ってェわけじゃねェよなァ)

 

現在、一方通行(アクセラレータ)は電極を通常モードに戻し、消耗を抑えている

木原と戦うには節約しなければならないのだ

しかしこの車にミサイルでも打ち込まれてはアウトだ、そういう未来も頭に入れながら、彼はドアのない出入り口から夜の町並みを睨んでいるのだが

 

「あ! みにくいアヒルの子!」

 

すぐ隣では世界観に一致しない白服シスターが絵本を引っ張り上げて目を輝かせている

彼女の膝に乗っている三毛猫は表紙のアヒルに何かが刺激されたのか、ジリジリと距離を詰めている

 

「てか、お前何であンなとこにいたンだ」

「借りてたのを返しに来たの。ほら、この最新鋭の日用品―――」

「馬鹿かてめェは! こんな使い捨てな上に丸められてゴミカスみてェなもン返されても迷惑だ!」

 

そうなの? と首をかしげるシスター

そう言って彼女は丸まったそのティッシュをまっすぐ伸ばし始めた

これはも受け取るしかないと判断した一方通行(アクセラレータ)は観念してそれを受け取り、ポケットに突っ込む

 

「そうだ、怪我は―――」

「問題ねェよ。いらねェ心配すンな」

 

その口調を聞いて安心したのか、インデックスは手元にあったみにくいアヒルの子を読み始めた

童話の内容を知っているのか、ページをめくる速度が速い

彼女が本の内容を読み終えるのを見計らって、一方通行(アクセラレータ)は言葉を紡いだ

 

「俺はこれから、はぐれたガキを探さきゃならねェ。手ェかかるが、あいつは自分の足で戻ってこれねェみたいだしな。だから、お前とはここでお別れだ」

「私も探すよ?」

 

即時返答

一方通行(アクセラレータ)の赤いその瞳から、一切目をそらすことなく、彼女はそう言い切った

 

「貴方が困ってるのわかるもん。ここにとうまやあらたがいたら、おんなじこと言ってると思うし」

「フン」

 

彼はつまらなそうに吐き捨てて、運転手の男に声をかけた

 

「ここらで止めろ」

 

文字どうり命を握っている一方通行(アクセラレータ)に男は黙って従った

インデックスを見て、一方通行(アクセラレータ)は言った

 

「協力しろ」

「うん」

「この近くにでかい病院がある。そこに入ったらいかにもカエルヅラな医者がいるはずだ。そいつに会ったら」

 

首筋をトントンとたたき

 

「ミサカネットワーク接続用電極のバッテリーを用意しろ、と伝えろ。大事なモンだ、それがねェと人探しができねェ。そいつを受け取ったらダッシュで戻ってこい」

「わかった。ミサカネットワーク接続用電極のバッテリー、だね」

 

一字一句完璧に復唱された

もっとも、本人は意味など分かっていないのだろうが

彼女は躊躇いなく雨の道路へと足を出した

 

「待っててよ?」

「あン?」

「戻ってくるまで、待ってなきゃダメだよ?」

「―――わァってるよ。だからさっさといけ」

 

一方通行(アクセラレータ)は答えた

インデックスは何度かこちらを振り返ったが、やがて水たまりを踏みしめながら走っていく

小さな背中が、完全に闇の中へと消えていった

 

「…クソッタレが」

 

吐き捨てて、もたれかかる

病院に替えなんてない、そもそも今つけている電極自体が試作品だ、それに対応しているバッテリーなんて量産化なんてされていない、というか量産化されていればありったけポケットにぶち込んでいる

要は、嘘だ

 

医者のところにいけ、ということ以外は、ぜんぶ

 

どこに行っても危険ではあるが、とりあえずあの医者のところにいたほうが安全なのは確実だからだ

生存率を上げるなら、アイツのところに送った方がいいだろう

これから始まる打ち止め(ラストオーダー)争奪戦には、はっきり言ってインデックスは荷物でしかなかった

だから、邪魔なものは邪魔にならないところに送ったまでのことだ

 

ふと、視線の先に見知った男達が、水たまりから現れた

紫色のライダーと、赤っぽいライダーだ

おそらくは、鏡の世界を伝ってこちらに来たのだろう

便利なものだ

 

「よォ。…芝浦はどうした?」

「―――死んだよ。俺たちを庇って、な」

「―――そうか」

 

一方通行(アクセラレータ)は何も答えなかった

それ以外何も言えなかったからだ

一方通行(アクセラレータ)は運転手の男に告げる

 

「車を出せ」

「ま、まだ開放してくれないのかよ…!?」

「死ぬか生きるか、テメェが選べよ」

 

後部座席に突き刺してある狂気を揺すると、三人を乗せた車が発進する

さらに五分ほど走らせると、小さい公園の前で車を止めらせた

どうやらここは第七学区の端のようだ

 

一方通行(アクセラレータ)は後部座席の足元にあったバッグを掴み、横に置く

ふと手塚が聞いてきた

 

「そういえば、杖はどうした」

「無くしちまったよ。不覚にもなァ」

 

それを聞くと少し驚いたような顔をして手塚は自分の周囲を見渡して、あるものを投げ渡した

一方通行(アクセラレータ)はそれを受け取ると、まじまじと投げられたものを見る

それはショットガンだった

グリップを掴み、ストックを脇で挟めばなんとか杖の代わりにはなるだろう

 

「体重で銃身が曲がってしまうかもしれないが、代わりにはなるだろう」

「悪ィな。助かる」

 

そんなやりとりをしていた彼らに、運転手の男がボソリと呟いた

 

「むだ、だ」

 

かすれた声

 

「あの人に直にあったなら、わかんだろ。木原数多は〝絶対〟だ。同行できる相手じゃない…」

「死にてぇのか?」

 

低い朝倉の言葉

しかし運転手の答えは想像に反したモノだった

 

「そ、それもいいかもな」

「…ほぉ?」

 

「死にたかない。けど、俺は同時に木原さんの怖さだって知ってる。あの人には、容赦がない。下手すると、〝死ねないかもしれない〟。木原さんは、ギネスだとか、世界三大事件を四大事件に増やしちまうとか、そういうのを―――」

「つゥかごちゃごちゃうるせェなァ…」

 

吐き捨てて、一方通行(アクセラレータ)は凶器を握り締める

 

「てか面倒くせェ! 殺すなんて曖昧なこと言わずにこのまま内蔵シェイクして口から血と昼飯を吐き出させンぞクソ野郎がァ!!」

 

耳元で大声を出したら、男の虚勢はあっけなく崩れた

死を実感していないやつなんてこんなものだ

運転手は叫ぶ

 

「クソ…ちくしょぉ!! ふざけろよ! 死ぬのは嫌だ! どいつもこいつも化けもんだ! 俺は帰ってシャワー浴びて酒飲んで、撮りだめた番組見んだよぉ!!」

 

そこにあったのは小さすぎる醜い光

立場もわきまえず、大物同士のいさかいに首を突っ込んだ結果がこれだ

みっともなく震える猟犬部隊の男に声を投げかける

 

「生きたいか」

「だからなんだっつぅうんだ!! 生きてぇに決まってるだろおがぁ! ちゃんと大手を振って生きてぇよ! けどそんなことできるわけねぇんだよ! バカじゃねぇのかよ俺ぇ!!」

 

土壇場まで追い詰められているのだろう

そうじゃないと、ここまで飛躍した話にはならない

 

「っは、よくわかってンじゃねェか」

 

一方通行(アクセラレータ)は口元を引き裂くように笑みを浮かべた

ルームミラーでその笑みを確認した男が怯える

 

「テメェに救いなんざねェよ。こンな世界に来て人踏みつけて、木原や俺達を敵に回してまだ人並み(幸福)に生きてェとかほざいてんじゃェよクソが」

「お前、何人これまでに殺してきた」

 

怯える男に手塚が問うた

 

「じゅ、十四人…」

 

絞り出すような声色だった

その程度、か

なら、まだ平和な人種だ

そして同時に、それを平和と認識している一行の方が、十分に化物だ

 

「選べ。ここで死ぬか、木原の手にかかって爆笑必死なオブジェになるか」

「い、嫌だ! 死にたくない!」

「なら、病院だな」

 

浅倉は呟く

 

「簡単にはお前は死なないよ。永遠に救いのない道をみっともなくあがいて生きろゴミ虫が」

「―――ちくしょぉ…」

 

手当を受けれるというのに、男は奥歯を噛み締めて悔しがる

 

「殺される。木原さんは地球の裏側であろうと追ってくる…助かるわけがない…!」

「あのクソ医者は患者を見捨てるようなやつじゃない。ま、一日くらいなら生きられるかもね」

「なんの保証にもなってねぇよ」

「その間に木原に心臓えぐられるかもしれないぜ」

 

浅倉の言葉に男は黙る

一瞬、一方通行(アクセラレータ)達が木原を倒したら、もしかしたらとでも考えたのだろう

 

「…どうせ、木原さんには敵わない」

「俺らはともかくテメェは無理だ」

 

一方通行(アクセラレータ)は吐き捨てて、なにか使えるものはないかと周囲を見始めた

 

「…? おい、コイツは何だ」

 

浅倉は気になるものを見つけた

見た目はサイレンサーを取り付けた拳銃みたいだが、先端にマイクの形をしたスポンジ状のセンサーが取り付けられていた

そしてグリップの上、ハンマーのある辺りに三インチの小型液晶モニタがついている

 

「そいつは、嗅覚センサーだ」

 

ルームミラーで確認したのか、男がそう答えた

 

「香水や消臭剤で使ってるヤツを、軍事に転用した…」

「よォは警察犬の機械化か」

「ま、犬よりは確実だろうな」

 

データ化により、入り混じった匂いの中から必要なものだけを取り出したり、メモリに登録できたりもするのだから

 

「俺たちは、いつもその嗅覚センサーを使って標的の足跡を追う。迅速かつ、確実にな。…木原さんらに睨まれて、逃げ切れたヤツを、俺は知らねぇ…」

 

一方通行と浅倉はつまらなそうな表情になる

ヤツらを叩き潰すのに、依存はないが[相手から奇襲される]パターンは好ましくない

ならこちらから[相手に奇襲する]構図を作った方が良い

一方通行は嗅覚センサーを弄り回しながら

 

「コイツの使い方はどう使う。ガキを探すのに使えるかもしれねェ」

「無理だ」

 

男は僅かに笑った

青白い、乾いた笑み

 

「猟犬部隊は、そのセンサーを打ち消す洗浄剤を持ってるんだ。匂いの分子構造そのものに干渉するヤツだ。襲撃地点でそいつを使っても意味がねぇ…」

 

話によると、洗浄剤には衣服にかけるものと後から現場に散布するものの二種類があるようだ

 

「お前は持ってるのか。その洗浄剤」

 

手塚の問いかけに男は震えた声で返す

 

「あればとっくに使ってる。所属が違う。足跡を追う係と、消す係は分業なんだよ…」

 

しかしその嗅覚センサーをごまかせるという事実を知っただけでも十分だ

センサーの適当に放ると一方通行(アクセラレータ)は言った

 

「…お前、動くんじゃねェぞ」

「ひっ!?

 

殺されると思ったのか、男はびくりと震えた

しかし男の予想に反して一方通行(アクセラレータ)たちはドアのない出入り口に動いていた

 

「ど、どこに行くんだ」

「ガキを助けに行くンだよ」

「諦めてねぇのかよ!? どこまで逃げても無駄なんだぞ!? それでもやんのか!?」

「たりめェだ」

「なんで即答できんだよ!? こんな世界に浸ってるのに、テメェがどれだけ分が悪い状況にいるか分かってんだろ!?」

 

その言葉に、手塚が答える

彼にしては珍しい、苦笑いを浮かべながら、先に降りた一方通行(アクセラレータ)と浅倉のふたりを追うように身を乗り出して

 

「平和に浸かりすぎて、やきが回ったんだよ」

 

◇◇◇

 

判断は一瞬

 

「当麻、走れ!」

 

これ以上隠れても無駄と判断したアラタは身を乗り出して、音もなく、その姿を紫色のクウガへと変える

同時にこちらへと火を吹いたマシンガンがクウガの鎧に当たるが、大したダメージには成りえない

一瞬こちらを伺うように打ち止め(ラストオーダー)を抱えた当麻がこちらを向くが、

 

「早くいけ!! 振り向くな!」

 

クウガは叫び、ここからの逃亡を促す

その身に銃弾を浴びながら紫のクウガはゆっくりとその黒ずくめの一団に向かって歩いていく

流石に殴ることはないが、地面を舐めるのは確実だ

 

 

手加減しつつ、相手を気絶させるのは少々苦労した

変に重武装しており、相手のほとんどが重火器に頼った物のため接近しづらかった

しかしこいつらはどうして打ち止め(ラストオーダー)を狙うのだろうか

 

「ともかく、当麻と打ち止め(ラストオーダー)は逃げ切れたのかな…」

 

彼女を抱えて走り去った方向を見ながら、クウガはゆっくりと変身を解く

同時に、これは美琴と夕飯を食べに行く約束には多分間に合いそうにない

少し考えて、アラタは動くことにした

走りながら携帯を動かし、彼女の電話番号へと電話をする

 

スリーコールのあと、聞き慣れた声がアラタの耳に届く

 

<アラタ? どうしたの?>

「悪い、美琴、晩ご飯の、件なんだけど…!」

 

走りながら携帯で会話をしているので、いかんせん息が荒い

そのことを見透かされたのか

 

<…またなんか面倒ごと? 風紀委員の仕事かしら?>

「その、似たようなもんだ。埋め合わせは必ずするから!」

 

立ち止まってキョロキョロと当麻が逃げそうな場所を探す

しかし流石に彼の動向などは流石に友人でもわからない

 

<仕事じゃあ仕方ないわよね…。おっけー、けど近いうちに埋め合わせしてもらうわよ?>

「もちろんだ。ありがとう、美琴。それと、本当にごめん」

<大丈夫よ。頑張って、アラタ>

 

そう言って電話は切れた

今度夕飯を食べに行くときはどこか高級なお店にでも行ってみようか…という考えを頭を振って振り払う

今は当麻と合流することが大事だ

その時、彼の耳に銃声が聞こえてきた

パン、と乾いた音だ

別の黒服グループか、あるいはまた別の奴らか

どちらにしても、行き先は決まった

 

意を決したように、鏡祢アラタは走り出した

もはやなんだかわからないが、だれかの好きにさせてなるものか

守ると決めたんだ、本郷猛(あの人)に託されたのだから




気まぐれ紹介のコーナーは後日書きます
本当に申し訳ない(メタルマン感

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