とある魔術の禁書目録 ~変わらない笑顔で~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
今回は前編となります
誤字脱字等ございましたらぜひご報告を
ではどうぞ
一週間前の事である
その日立花眞人はコンビニによってお昼ご飯でも買おうかな、と思っていた
念のためにG3になるためのユニットは自分の足元に置いてある
何時先日のような怪人が現れても迅速に対応できるようにするためだ
「…それにしても…」
〝おせっかいな仮面ライダーだ〟
そんな言葉が頭の中で繰り返される
先日自分を助けてくれたあの仮面ライダーは一体何者なのだろうか
都市伝説と言えど仮面ライダーはクウガだけではないらしい
他にもカブトムシのような赤いライダー、剣を使用する青いライダー、緑と黒の二色のライダー、トンボのようなライダーやサソリみたいなライダーなど少しネットで調べただけでこんなにも情報が集まってくる
ていうかどれだけみんな目撃してるんだと突っ込みたいほどである
基本的にこういった怪人は深夜帯に目撃されているのだ
つまり仮面ライダーらもそれに合わせて深夜に現れるということ
…その時間まで起きているとでもいうのか
健康に悪い、今度深夜の見回りでもしようかな、と思ってた時に事件は起きた
ういーん、と自動ドアを開けて一組の男女が入ってきた
二人とも右腕に風紀委員の腕章をしており女性は何かシールドのようなものを持っている
そして開口一番
「皆さん、早急にこの場から避難してください!」
女性の風紀委員が凛とした声で店内のお客さんたちに告げた
何事かと思ったのか不安に思った店長と思わしき人が女性の風紀委員に聞く
「あ、あの…うちの店に何か…?」
「重力子の加速が観測されました。この店に、爆弾が仕掛けられた可能性があります」
「ば、爆弾!?」
店長のその一言で店内がパニックに包まれる
恐怖におののいた声で店内を後にするものがいる中で眞人はがさ入れをしている男性の風紀委員に向かって歩き出し
「自分も手伝います」
「! 何を言ってるんですか!?―――」
「自分は
そう眞人は警備員の手帳を見せながら言った
もともと警備員というのは子供たちを守るために組織されたものだ
それなのに爆弾の捜索を子供たちに任せたまま自分だけ逃げ帰るなんてできない
「わかりました…では貴方はお弁当売り場のコーナーを調べてきてくれませんか?」
「わかりました」
短く答えて眞人は弁当売り場のコーナーに行こうとしたとき「きゃ!」という声が聞こえた
声の方に向けるとぺたりと座り込んだ女生徒の姿があった
「どうしました!」
眞人が駆け寄って女生徒に声をかける
「すいません、足を…」
どうやら逃げる際に足首をくじいてしまったようだ
「わかりました、肩を貸しますから、急いで…、…!?」
女生徒に肩を貸そうと屈んだその視線の先
正確には商品が乗っている台の下のスキマに何かがあった
それは愛くるしいウサギの人形
見た目だけは本当に愛くるしい人形だった
しかしそれは不意に捻じ曲がる
中心に強引にねじ込まれるような―――
そして眞人は本能で察知する
「まさか―――!!」
爆発は寸前
一人なら容易に避けれるこの距離だが女生徒がいるこの状況ではそれは出来ない
ならばこそ、と眞人がとったその行動は
「くそっ!!」
自分の足元にあるG3ユニットを迅速に装着し女生徒を守るように自分の身を盾にする
その数瞬後
大きな爆発音がそのコンビニに木霊した
「…ぐ…」
G3ユニットのおかげで幸いにも自分の身は守られた
女生徒の方も怪我はない
その爆発を聞きつけた女性の風紀委員と男性の風紀委員も駆け付けてくる
「大丈夫ですか!?」
「怪我は…!」
心配する二人の風紀委員に駆け寄られ、G3はそれに答える
「大丈夫です、これに助けられました…」
言いながらG3は爆発跡を改めて視線をやる
そこにはバランスボールのように大きな焼け焦げた跡があり、周囲の商品はすべて吹っ飛んでいる
もしこれが人になど当たったら…
考えただけで恐ろしかった
これが一週間前に起きた一番最初の
幸いにもその時は立花が居合わせたこともあり怪我人は出なかったがその後も同じような事件が続き次第に八人もの怪我人を出してしまった
◇◇◇
「ふあ…」
アラタが大きな欠伸をする
先述したように虚空爆破事件が続きその調査で正直睡眠の時間が全く取れていないのだ
眼尻に若干の涙を浮かべ前を歩くアラタの隣にいた美琴が口を開く
「…あんた大丈夫? 夕べも遅くまで調べてたんでしょ?」
「仕方ねぇよ…捜査が進まないんだから、今までの調査に何か見落としがないか確認しないといけないんでさ…」
実際黒子は今現在一七七支部で仮眠を取っているほどである
本当はアラタ個人としても手伝いたかったんだがどういう訳か
それでも納得いかないアラタは自宅で独自に調べてはいたのだが先の欠伸の通り何にも掴めなかった
あしからず、である
「…熱心なのは良いけど、あんまり無理しないようにね」
「…。なんだ、心配してくれてるのか?」
苦笑いと共に美琴に聞いてみる
すると美琴は「ばっ!」と顔を赤くしながら
「馬鹿言うんじゃないわよ! あ、あんたがいないと、その、場の空気が盛り下がるから言っただけよ!」
「へいへい。そういうことにしとくよ」
全く、という美琴と共にアラタは歩を進めていく
とりあえず、早急に虚空爆破事件の犯人をひっ捕らえなければ、と改めて心に誓う
◇
そんな美琴と別れアラタはもう一つ頼りになる人たちの所へ向かう
それは第二左探偵事務所と呼ばれる建物である
「ダンナー、左のダンナー」
扉をノックしながら了承を得ず扉を開ける
まぁいつもの事である
「…おいアラタ。毎回だけど了承を得て入ってこいよ」
入って奥のデスクに座っていた翔太郎が立ち上がりながら抗議の言葉を述べる
彼がここの探偵事務所の探偵、左翔太郎
この学園都市に流出したガイアメモリを確保及び破壊にやってきた二人組の探偵のうちの一人だ
「いいじゃないですか。減るもんじゃないですし」
「はぁ…まぁいいか。おいフィリップ、アラタが来たぜ」
翔太郎の視線の先にはイスに座りながらライトノベルを読みふける彼の相棒、フィリップの姿があった
フィリップは翔太郎に声に反応するとしおりを本にはさみアラタに向かって歩き出す
「やあアラタ。来たんだね。君の教えてくれたこの本、悪くないよ」
「そう言ってくれると紹介した甲斐があったですよ。なんならまた紹介しましょうか」
「それはありがたい! ぜひお願いしたい―――」
「あぁそれまでそれまで。アラタ、何か話が合ったんじゃねぇのか?」
このまま行くとラノベの話になってしまうと判断した翔太郎がそう横槍を入れた
そう言われてはっとなったアラタはその場で息を整え、改めて要件を伝える
「いえ、実は―――」
◇
「なるほど。件の虚空爆破事件の事か」
壁に背中を預けながら腕を組んでいたフィリップがそう呟く
「最近巷で噂の無差別爆破事件か…ったく、許せねぇよな…」
パン、と自分の拳を自分の掌にたたきつける翔太郎
もともと彼は正義感が強い
だからこうこそこそ爆弾を仕掛けて陰でほくそ笑んでいそうな犯人は正直言って彼は嫌いだ
それはもちろんアラタだって同じ気持ちである
「今のところ考えられるのはただの愉快犯か、なんかしらの悪意を持ってやっているのか…」
可能性は捨てきれない
しかしそれを結びつける証拠がどうも足りず断定はできない
「とりあえず俺も外を歩き回ってそれらしい人物を探してみる。アラタ、お前はお前で風紀委員のとこで調査をしててくれ」
「わかった。お願いしますよダンナ」
翔太郎と少し雑談を交わした後、フィリップに次持ってくるライトノベルは何がいいかを話した後、アラタは第二左探偵事務所を後にした
◇◇◇
「はぁい、奇遇ねアラタぁ」
探偵事務所を出てすぐ
食蜂操祈に遭遇しました
「…なんだ操祈。お前も暇なのか」
「開口一番失礼ねぇもう…。…あら? 貴方、目の下に隈が出来てるわよ?」
そう指摘されてハッとする
一番まずい人にそんなとこを気づかれてしまった
そんなアラタの表情に気づいた食蜂はにやぁ、と唇を歪ませる
それは決して悪い笑みではなくむしろ可愛い部類に入る
しかしその笑みの持ち主が食蜂だというのが問題なのである
「ねぇ、もしよかったらあたしが癒してあげましょうかぁ?」
「断固辞退する」
「即答!?」
確かに幾分か丸くなったといえど、逆にその純真な笑顔がなんか怖い
「そんな即答しなくても、もうちょっと考えてくれてもいいじゃないのよぉ」
「付き合ったら確実に今後の職務に支障が出そうで嫌なんだよ」
職務、という言葉を聞いて食蜂はあぁ…と言った表情をして、そして少し申し訳なそうに顔を俯かせてしおらしくする
「アラタも、風紀委員なんだっけぇ…?」
「…そ、そうだけど」
ギャップが激しすぎるんですけど
先ほどとは一転、急にしおらしくなった食蜂に少しときめく自分がいる
「…無理しちゃだめよぉ? アンタが怪我しちゃったら私のからかう対象がいなくなっちゃうんだからぁ」
前言撤回
ときめいた自分を殴りに行きたい
しかしこんなんでも心配をしてくれている事は伝わったので感謝はしておく
「…まぁ、サンキュ。お前の取り巻きにも注意をしとけよ」
そう言ってアラタは歩き出そうとしたとき彼の背中から食蜂が何か言っているのが聞こえた
「…心配はしてるんだからねぇ?」
「ん? なんか言ったか」
「何にもぉ」
◇◇◇
その日、寮に帰り夕飯を天道から貰った麻婆豆腐を食したあと居間にあるテーブルに置いてあるパソコンに向き合い、虚空爆破事件についての調査資料を確認し始める
例の爆弾はいずれもぬいぐるみや女物のカバンなどに仕込まれており、一見しただけではそれを爆弾と判別できない
正直言ってこれが怪我人を増やしてしまう原因だ
しかしあれほどの爆発を起こせるのは少なくとも
今のところ完全に手詰まりだ
今夜も夜遅くなりそうだ、と心の中でため息をついたその時、携帯が鳴った
携帯のディスプレイを見るとそこにはフィリップの名前があった
アラタは携帯の通話ボタンを押し耳に当てる
<もしもし、アラタかい?>
「あぁ、なにか分かったのか?」
電話の奥でフィリップが<ああ>と頷くような動作のあと言葉を続ける
<まぁわかったといっても些細な事なんだけどね…確実な情報とも限らない。それでもアラタに言っておいた方がいいかと思ってね>
「構わない、教えてくれ」
<わかった>
その言葉のあとがさがさとプリントを探る音が聞こえる
恐らく資料か何かを探してるのだろう
<あぁ、見つけた…。アラタ、一週間前のあの事件のあと、被害者が出たよね>
「? あぁ…」
<その時の被害者は風紀委員なのもわかってるよね>
「あ、あぁ」
それ以降不定期にその虚空爆破事件は広がっていき、いずれも風紀委員が怪我をしていき―――
「―――あれ」
そこで違和感を覚えた
怪我人の職業である
こう言った無差別な事件なら様々な人が怪我してもいいのだが…
<アラタも気づいたみたいだね。そう、この事件、どういう訳だか風紀委員ばかりが狙われているのさ>
思い返してみるとこの事件はどうも風紀委員が来たタイミングでその爆弾が爆発していたような気がする
もしかしたら犯人の狙いは風紀委員なのではないのだろうか
「じゃあもしかしたら、犯人は風紀委員に何かしらの恨みを持っている可能性が?」
<恐らく。…まぁ確実ではないけど、それだけだよ。頭の片隅にでもいいから留めていてくれ>
「あぁ、気を付けるよ」
<じゃあ僕はこれで。もしこれが事実なら君も危ない、用心してくれ>
最後にそんな言葉を残してフィリップからの電話は切れた
フィリップからの小さい親切に感謝をしつつアラタは通話ボタンを押して携帯を仕舞おうとしたとき、また携帯が鳴った
今日はよく鳴るな、とそんなことを思いながらディスプレイを見るとそこには御坂美琴の文字が
アイツから電話をかけてくるとは珍しい、と思いながらまた通話ボタンを押して耳に当てる
「もしもし」
<あ、アラタ。 今大丈夫?>
「あぁ、問題ない。どした?」
<いえね、アラタ明日非番でしょ? 息抜きにどうかなって今日佐天さんと話してたんだ>
息抜き、か
確かに最近夜更かししまくっているし、こういったときくらい羽を伸ばしたいものである
しかし黒子はどうかわからないが確実に女子は三人という構図になるだろう
その中に男子が自分だけというのは少々心もとない
「おっけー、参加させてもらうぜ。あ、けどちょっとこっちも誘っていいか? 人数は多い方がいいだろ?」
<え? 別にいいけど…誰誘ってくるの?>
「それは明日のお楽しみだ。んじゃま、また明日な」
<えぇ、それじゃお休み。再三言うけど、無理しないでよ?>
その後少しだけ会話を交わし電話を切った
そんな気遣いに感謝しながら誰を誘うか考える
「…大介でも誘ってみようか」
風間大介
高校生ながら〝バーバラKAZAMA〟という床屋兼美容院を経営しており、人気過ぎて予約は一週間待ちとかなんとか
友人というコネで入っているからそういったのはよくわからないが
「そうと決まればさっそく電話だ」
三度携帯を取り出し番号を見つけると電話をかける
スリーコール待ってがちゃり、と電話に出る音
<はい! もしもし〝バーバラKAZAMA〟でっす! 予約ですか?>
底抜けに明るい声が聞こえてきた
声で分かる、こいつは大介じゃねぇ
「てかなんでお前が大介の携帯もってんだよ」
<なんだお前か切るぞクソヤロウ>
「態度変わりすぎだろ!!」
先ほど電話に出たのは風間が預かっている
両親が蒸発し、途方に暮れていたところを風間に保護されそのまま風間宅に住み着いた十一歳の女の子である
どういうわけか風間にのみ好意的でありその他の人物にはやけに攻撃的(男性のみ)なのである
<ほかのお客様がしっかり予約してんのにアポなしで来やがるお前なんかしらんわ…あ、ちょ>
何やら電話の向こうでがたがたと騒がしい音が聞こえる
多分大介が自分の携帯を取り返そうと奮闘してるころだろう
五秒くらい待ってまた声が聞こえる
<…ヒカリが迷惑かけた。要件はなんだ>
すっごく疲れた声が聞こえた
むしろ迷惑かけてしまったのはこちらの方かもしれない
「い、いや。風間って明日暇か?」
<ん? あぁ、問題ないぞ? 遊びの誘いか?>
「まぁ似たようなもんだ。明日来れるか?」
<あぁ、何時だ?>
その後待ち合わせ等について二言くらい話込んだ後、じゃあなと互いに言って電話を切った
しかしヒカリのあの攻撃的なのもどうにかならんだろうか
風間にはやけにデレデレなのに
「…まぁ考えても無駄か」
そう自己完結しアラタはベッドの上に身体をうずめる
心のどこかで美琴たちとの息抜きに、少し期待を覚えながら
◇◇◇
夜
皆が寝静まったそんな時間帯
とある学生寮のとある部屋の中
一人の少年がパソコンの前に腰を下ろしていた
室内は真っ暗で、その場にはただパソコンの光だけがその部屋を照らす
少年はネットサーフィンをしながらヘッドフォンでただひたすらに〝ナニカ〟を聞いている
それは曲と形容できるかどうかさえ微妙なものだ
少年はパソコンの前で歪に表情を歪ませて
(…新しい時代が来る…)
そう心の中で呟いた―――