虚片~Aqua Moon~   作:蒼乃翼

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2015年12月5日時点で内容を変えました




あの日、俺はこの世界に囚われた

ある者は攻略し

ある者はそれを助け

大半の者はこの世界で偽りの安寧に浸っていた

 

そして俺は・・・俺流のやり方で抗うことにしてみた

ゲームであっても遊びじゃない?上等だ、なら徹底的にこの世界(ゲーム)を楽しんでやる

 

 

2024年 12月

 

 

小鳥囀る森の中

緑のセーター、黒のパンツという軽装の男は呆然としていた。

「あ~…、ここはどこだ?」

強烈な色の金髪をガシガシ掻きながら周囲を見回した。その肩には2mほどの短槍が担がれていた。

「確か76層がアクティベートされたから転移門から転移したけど…、ここが76層?」

男の斜め後ろ、一振りの小太刀を背負った白い大きな犬が歩いていた。

「…!」

その白犬が突如鼻をひくひくさせ、耳をピンと立て、周囲を見回した。

 

 

 

ザッ ザッ ザッ ザッ

 

 

 

「っ!」

金髪の男も背後から草木を掻き分ける音に気付いて振り返ると・・・・、

 

 

ドンッ

「ぁ…!」

 

 

「ってぇ…」

突如、蒼いケープを羽織ってフードを目深に被ったプレイヤーとぶつかった。

 

ヒュンッ

 

「おわっ!……ン?」

起き上がるやいなや、蒼ケープは腰から短剣を抜くと斬りかかってきた。そのカーソルの色に一瞬男は気を取られたが、今はそれよりも・・・・

 

ギィン

 

金髪の男は一文字槍の柄で防いだ。

 

シュッ シュッ シュッ

 

蒼ケープは連続で斬りつけてきた。金髪は槍の柄で防ぎながら間合いを取ろうとした。

「プッ!」

金髪は口に咥えていた黒文字を飛ばすと、蒼ケープはそれに一瞬怯んだ。

 

ブォン!

 

金髪は背後に跳びながら槍を右手一本で振り下ろした。

 

ガキィン

 

蒼ケープは短剣を逆手に持ち替え、刃の反対側のソードブレイカーで槍の穂先を受け止めた。

が、軽量級武器である短剣と蒼ケープの筋力では金髪の槍の一撃は防ぎきれず、その場に膝を着いてしまった。

「おい、お前何なんだ?」

金髪の男は訊いた。

「お前らみたいな連中に教えるつもりはない…」

「あぁ?誰と勘違いしてんだ?俺はソロだ。相棒はコイツだけだ」

「…本当に?」

「おぅ」

金髪の男は答えた。白犬も頷いた。

「………そう、悪かったわね、いきなり斬りかかって…」

「気にすんな」

 

 

 

「っ、伏せて!」

 

 

突然、蒼ケープは金髪を押さえつけてしゃがませた。白犬もそれにつられて伏せる。

「おぃ…、」

「もっと伏せて!」

長身の男の金髪頭を押さえ込んでその上に圧し掛かってさらに低くさせて、蒼ケープは木々の向こうを凝視していた。白犬も嗅覚と聴覚を駆使して状況把握に努めていた。

「おい…」

「ちょっと静かにして」

 

 

 

「胸が当たってんぞ」

「え?!」

 

 

 

蒼いケープを羽織った“女性”プレイヤーの装備は軽装で、薄い金属板の装甲で覆われている豊満な胸部は、密着している状態なので上部の覆われていない谷間部分が金髪の男の首筋に当たっていた。

「変態!なんでハラスメントコードが発動しないのよ!」

「そりゃ女のお前が男の俺に押し付けているからだろ。どぉやらこの世界、逆セクハラは問題無いみてぇだな」

「くっ…、」

金髪男は蒼ケープの女の視線の先を見た。そこでは・・・・

 

 

「ヒャッハッ~~!」

「ほらほらもっと逃げろ~~~!」

 

 

フード付きの外套ですっぽりと顔を隠した胡乱な集団が人間より3倍近く巨大な黒い首無し馬のモンスターを倒しまくっていた。

スローター系のクエストかとも思ったが・・・、

「っち…、」

わざと攻撃を外して追い立て、麻痺や毒効果を付加させた武器で攻撃して動きを鈍らせてからゆっくり嬲るように殺していた。

そんな状況に、金髪男は虫唾が走った。

 

 

「つーかリーダーは?」

「…こいつらは首が切れないからお前達でヤッチマエ、と言ってどこかへ行った…」

その内の1人、細剣・・・否、エストックを持った男が木の影に隠れていた2頭の馬目掛けその凶刃を突き刺そうとしていた。

 

 

「気にいらねぇ…」

「ちょ…」

蒼ケープ女の制止も聞かず、金髪の男は背中に背負っていた一文字槍を逆手に握ると、エストック男目掛け投げた。

 

ビュッ!

 

目の前を横切って木に刺さった槍に驚いた男が合図を出すと、フード集団はすぐさま散り散りに逃げた。その時、フードの隙間から赤い目がちらっと見えた。

「けっ、誰も俺とやられねぇのか」

「ちょっと、せっかく隠れていたのに…」

男は木から槍を抜くと周囲を見回した。それに合わせて、首無しの馬が次々とポリゴン片となって消えていった。蒼ケープ女と白犬も木陰から出てきた。

「生き残ったのは…、」

金髪の男が見回すと、先ほどの2頭が、顔のない首をこちらに向けていた。

「攻撃の意思は…、ねぇか…、ん…?」

2頭がポリゴン片となって消えると、そこには1頭の首無し馬が残されていた。

「さっきの2頭…、親馬だったんだ…」

蒼ケープ女はただのモンスターとは違う、まるで人間に近い行動に驚き、その行動に敬意を覚えた。

仔馬は親よりも小さく、それでも人間からすれば十分に大きい体を震わせながら起き上がると、森の奥へ逃げて行った。

「なんだったんだ、あの連中…」

「わからない、最初は私にちょっかいかけてきたからヤバイと思って逃げてたの」

「つまり俺はあんな腐れ外道どもと同類扱いされたってことか、アァ?」

金髪男は蒼ケープ女を睨み付けた。

「だって、あんた目付きの悪さでいったらアイツら以上じゃない!」

「ンだとこらァ!」

 

 

 

 

GSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

 

 

そんな問答をしていた二人と一匹の前に、巨大なモンスターが現れた。全体は骨だけの百足、その両腕には鋭い鎌、二人と一匹を見据えるのは二対四眼の頭蓋骨。

「んだぁ、この全身骸骨百足は!?」

「知らないわよ!」

金髪男はステータスを確認した。

「《Skullreaper》ってのか…、おい!お前、とりあえずこいつ倒すの手伝え!」

「え…?」

「いいからさっさと攻撃しろ!あのヤバそうな骨鎌は俺が引き受ける。お前は側面から攻撃しろ!!!!」

金髪の男は怒鳴ると同時に槍を大きく旋回させ振り下ろされる左右の鎌を弾き、いなし、防いだ。

「…っく、わかったわよ!」

蒼ケープの女も短剣を抜くと幾本もの足の隙間を縫うように走りぬけ、X字に斬り付ける短剣ソードスキル《ラピッド・バイト》を発動させた。

 

 

 

 

戦闘は順調に進んでいた。金髪は槍を変幻自在に旋回させ左右から迫る大鎌をさばき、時折槍ソードスキル《ツイン・スラスト》を頭蓋骨に決めヘイトを稼ぎ、バトルスキル《エグザクトオンスロート》を発動し柄による痛烈な一撃を与え、仰け反り状態にして、蒼ケープ女はその隙を縫って確実にソードスキルに攻撃を加えていった。

戦況は、骸骨百足の体力ゲージがイエローを切ってレッド間近のところで、動いた。

 

 

「尻尾だ!」

 

 

骸骨百足の尻尾は凶悪な槍となっていた。それが今まさに蒼ケープの女目掛け突き刺さろうとしていた。

「おぅ…、らっ!!」

和装の男は槍投げよろしく、助走を付けて槍を投擲した。

 

バギャンッ!

 

投擲された槍が尻尾を弾いた。しかし、その大きな動作の後の大きな隙は致命的だった。

「………っち、」

金髪の男が攻撃を覚悟した、その時・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・カッ・・・・・パカッ・・パカッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中から硬い何かが地面を、木の根を越えて近付いてくる音がした。

「あれは…」

金髪が音のするほうを見ると、疾走してくる黒い物体が・・・・、いや、よく見るとそれは、先ほどの漆黒の首無し馬だった。

 

ドォンッ!

 

《Skullreaper》に強烈な体当たりを喰らわせひっくり返すと、漆黒の首無し馬は金髪の男の前に来ると跪いた。

「…乗れ…ってのか?」

表情は読み取れない、しかし、その意思は確かに伝わってきた。

「っ…シャァッ!」

金髪が跨ると漆黒の首無し馬はプレイヤーでは到底出せない速度で走り出した。

「…~っ、これっ!」

蒼ケープの女が足りない筋力パラメーターで槍をなんとか持上げていた。

「おう!後は任せろ!!」

金髪の男は受け取った槍を右脇に抱え込むと、馬の腹を蹴った。

走り出した漆黒の首無し馬の速度は《Skullreaper》よりも速く、鎌の攻撃を掻い潜り、尻尾による全方位攻撃は跳躍で躱した。

金髪の男も初めて乗るはずの馬なのに回避方向、行動、突撃の指示などのタイミングが絶妙で、地上で戦っていた時よりも金髪の男は強かった。

「すご…」

蒼ケープの女は呆然と立ち尽くして金髪の男の一騎当千無双状況を見ていた。

 

 

 

 

‡‡

 

 

 

 

「はぁ~…、何とか倒せたな」

「《Skullreaper》って表示されていた。あんなモンスター、初めて」

「俺もだよ…、」

金髪の男は懐から新しい黒文字を取り出し口に咥え、馬の胴体を撫でていた。

 

 

「ねぇ、どうして訊かないの?“私のカーソルの色について”」

 

 

カーソルが通常プレイヤーを示す色は緑。しかし、蒼ケープ女のカーソルの色は・・・・

「オレンジだな」

「…そう、私……人を殺したの。だから関わらないほうがいい…。さっきは助っ人ありがとう、助かったわ…」

蒼ケープの女は立ち去ろうとした。

「ちょい待て、その前に聞かせろ。ここはどこだSAOの中ってのは確かだろうけど」

「…わかならない。私は半月前にここに飛ばされたんだけど……、生き残るのに精一杯でほとんど探索できていないから」

「なんで転移結晶を使わなかった?まさかクリスタル無効化エリアか?」

蒼ケープ女は首を振る。

「ここの階層はわからないけどアイテムやメッセージは通常通り使えるみたい」

「なら一個俺のを譲るぞ。さっきの共闘の礼だ」

「…遠慮する」

「あン?」

金髪の男が咥えていた黒文字をピクっとさせた。

 

 

 

『ホロウ・エリアデータ アクセス制限が解除されました』

 

 

 

突如、空からシステムアナウンスが響いた。

「なんだ、今のは?」

「アンタ、それ…」

「あン?」

金髪男が右手を見ると・・・

「いつの間に?さっきまでなかったぞ、こんなもん」

金髪男の右手の甲に光り輝く紋様が浮かんでいた。

「さっきのアクセス制限がどぉとかってのと関係あんのか?」

「…アンタ、一体何者?」

「どういう意味だ?つーか、ここは一体どこ…あぁ違ぇ、ここは一体何なんだ?」

「私も…、よくは知らないけど……、ねぇその手、よく見せてくれない?」

「ほれ」

金髪男は右手の甲を蒼ケープ女の方に向けた。

「………やっぱり、同じ」

「何がだ?」

「これと同じ紋様がある場所を知ってる」

「あ~…、そこに行けば何か分かるかも知れねぇな、行ってみっか」

男が金髪をガシガシ掻くと白犬も移動の準備を始めた。

「で、それ何処だ?」

「オレンジ……、レッドの言う事をそんな簡単に信じるの?」

「さっき骸骨百足ぶっ倒すので共闘したじゃねぇか」

「それは…、そうだけど」

金髪男は口に咥えていた黒文字を右手で抓んで一旦外すと名乗った。

 

 

「ミヅキだ。で、こいつは俺のテイムモンスターで相棒の…、」

 

 

 

「わたくし、ミヅ様の忠実なる僕、デネブと申します。」

 

 

 

 

「い…、犬が喋った?!」

「犬が喋って何が悪いのでしょうか?」

白犬、デネブはごく当たり前のように喋り出した。

「…………ゲームだからなんでもありなのね…」

そして、蒼ケープの女も名乗った。

「…フィリアよ」

 

 

フィリアは溜息をついた。

「…アンタって、よっぽどのお人好しか、よっぽどの馬鹿よね」

「一応、人を見る目はあるぞ」

金髪の男・・・・、ミヅキは左手中指で鼻の辺りをなぞる動作をした。しかし、そこには何もない。

「あ…、」

「ふふ、アンタって、現実じゃ眼鏡かけてたでしょ?SAOでもそういう癖ってでるものね。さ、行きましょ…って、」

フィリアとデネブは先ほどからミヅキにべったりの馬を見た。

「ところでミヅ様、その馬はどうするのですか?」

「な~んか、懐かれちまったし、このまま連れてくわ。」

ミヅキは僅かにある首筋を掻いてやった。すると、馬は嬉しそうにミヅキに身体を擦りつけた。

「テイムモンスター…ってこと?しかも二匹目の?!」

「な、なんですと!?」

デネブは驚いた。

「そうなるな、となると…、名前が必要だな………」

ミヅキはじっと馬の顔(があると思われる辺り)を見て少し考えた。

「うし、こいつは今から《セルティ》だ」

「セルティ?差し支えなければ、その由来って訊いても?」

「あ~…、リアルで飼ってる雌馬の名前」

「え?この馬雌なの?!」

フィリアは驚いた。

「あぁ、こいつの仕草とかも雌っぽいし」

「ふぅ~ん…、じゃあ歩くのに疲れたら乗せてくれる?」

「…いいか?」

ミヅキがセルティに訪ねると、セルティもフィリアに近付いて身体を擦り付けた。

「OKだってよ」

「よし、じゃあ行こうか」

フィリアはくすりと笑うと歩き出した。

ミヅキも槍を真横にして両肩に担ぐとそれに続いた。

セルティはそんな2人の後ろから従順について来た。

「おいセルティ、新参者の分際でミヅ様にあまりくっつくな」

デネブはセルティとは反対側からミヅキに付き従っていた。

 

 

 

 

 






オリジナル主人公
アバタ―名:ミヅキ/武芸者(自称)
イメージcv:小野大輔
武器:槍
見た目:デュラララの平和島静雄(グラサンは無し 口には常に黒文字を咥えている)
服装:キノの旅のシズ

オリジナルモンスター
デネブ
イメージcv:大塚芳忠
見た目:サモエド犬(170近い巨大な犬)
背中に小太刀を背負っている

漆黒の首無し馬/セルティ
《ホロウ・エリア》にしか生息していない特殊なモンスター
人2人くらいなら楽に乗せられる大きさ
雌の仔馬

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