ミヅキとデネブは76層の転移門から《ホロウ・エリア》管理区へと転移した。
「フィリア、セルティ」
ミヅキが呼びかけると、中央のコンソール前にいたフィリアとその傍らに寝そべっていたセルティが振り向いた。
「悪ぃ、少し待たせちまったか?」
「そんなことない、私も私で管理区を調べていたから」
フィリアはミヅキを見つめながら少し顔を赤らめ安堵した表情をした。
「本当に…、来てくれたんだ」
「あン?また来るっつったろ」
ミヅキは擦り寄ってきたセルティの首筋を掻いてやりながら応えた。
「さて、それでは攻略と行きますか」
デネブがセルティとミヅキの間に割り込んで来た。
「おぅ、じゃ行こうか」
「何だか、随分と楽しそう。あんなに強いボスと戦ったのになんか暢気だね」
「もちろん強ぇヤツと遣り合うにはそれなりの準備が必要だし、気も抜けねぇ、でも、やっぱ楽しぃんだよ」
「………」
「ん?どしたフィリア?」
「えっ?あ、えーと…なんでもないよ」
「フィリア殿、何か心配事あるなら言って下さい」
「大丈夫よ、デネブ。あなたのご主人様がはしゃいでるの見て呆れてただけ」
「そうですか、それなら致し方ないですな」
ミヅキがオイコラと突っこむのを無視してデネブはフィリアに訊ねた。
「ところで《ホロウ・エリア》というのはどのくらいの広さで、いったいどのようなエリアなのでしょうか?」
「私もまだ樹海周りしか行ったことないけど、う~ん………もっとフィールドの繋がりが周囲に広がっている感じ」
「ふむ…アインクラッドのように階層を登っていくわけではなく、周囲のエリアを探索していく感じなのでしょうか」
「そう…だと思う」
「んじゃ、まずはさっきの樹海だな」
ミヅキは槍を担ぐとフィリア、デネブ、それにセルティを見回した。
「うん」
「はい」
セルティも蹄で管理区の床を鳴らした。
4話 鈴音鉱石
二人と一匹と一頭は神殿前で肩ならしにモンスターを倒していた。
互いの連携や身体が慣れてきた頃、フィリアが自分のソードブレイカーの刀身をなぞって首を傾げた。
「ねえ、武器を強化したいんだけど手伝ってくれない?」
「なんだ、調子悪いのか?」
「うーん、耐久度も手製の整備砥石で研いでるけどそろそろちゃんと鍛冶屋に出さないと…、それに《ホロウ・エリア》の敵相手だともう1ランク性能上げておきたいの」
「ん、そぉいうことならOKだ」
「ありがとう、鈴音鉱石っていうアイテムを集めるといいらしいの。鈴音鉱石は『遺棄された武具実験場』ダンジョンの敵がドロップするみたい」
「フィリア殿、それはどの辺りになるのでしょうか」
「えっと…、この先の『聖剣を盗んだ待機所』を抜けて、『植物たちの楽園北領域』の先にあるの」
「結構な長距離だな、フィリア、セルティに乗るか?」
「今は大丈夫、疲れたらお願いね、セルティ」
フィリアはセルティの身体を撫でた。セルティも嬉しそうに身体を震わせた。
『植物たちの楽園北領域』に辿り着いたミヅキ達は怒涛の勢いでモンスターを撃破していった。
動く食人植物のチアーフラワーはミヅキが【影松(シャドー・パイン)】で蔦を弾き、絡め取り、穂先で斬り裂き、巨大な人型大樹ナーサリーツリーに対してはフィリアが卓越したAGIを発揮し、フィールドの木を走り登り背後から首筋を狙った【ラピッド・バイト】で仕留めた。
「すげェな…」
「うん、何故かああいう巨大な人型モンスターって駆逐衝動に駆られるの」
「さて、それではこの調子で進撃しますか」
食べたらバッドステータス必至な不気味キノコ、デリシャスマッシュルームはセルティがギャロップで駆け抜け踏みつけていった。踏んでもコインは出なかったが・・・・・
「ん…?」
マッピングしながら進んだ先はだだっ広いだけでモンスターも何も無かった。
「ふむ…、なにやら芳しい匂いが………」
デネブが鼻をひくひくとさせていると後ろからミヅキが声をかける。
「おーい、デネブ!ここなんもねぇから先に進むぞ」
「はい、ミヅ様ただいま」
ミヅキ達はさらにレベルを上げながらフィールドを進んだ。途中、南領域でまたミヅキが【パーフェクションスタイル】でアストラル種族のNM(ネームドモンスター)プラントプリースト(フードを被った大鎌の死神)に戦いを挑み、フィリアが防御援護をしつつ、セルティの機動力で辛うじて倒し、曲刀【プリュム】をゲットした。
「だから…、どうして…、アンタは…あんなレベル差のデカイ相手にばっかテンション上げて掛かって行くのよ!!」
肩で息をしながらフィリアがミヅキに怒鳴る。
「う~む、そこにいた奴がたまたま強かっただけだ」
「ミヅ様、今までのように私だけならともかく、フィリア殿まであのような修羅場に巻き込むのは控えていただきませんと…」
フィリアとデネブのお説教もどこ吹く風状態のミヅキは曲刀を片手に持ち振って使い心地を確認していた。
「斬れ味は良さそうだが、見た目がなぁ…、これは金欠時の売りだな」
ミヅキはストレージに曲刀を納めると口に咥えた黒文字を上機嫌に動かしながら槍を担いで歩き出した。セルティもそれに付き従う。セルティ自身は無茶な戦闘にも難無くついて来ていた、どころか、凄まじい速度でレベルが上がっているようだった。
「…はぁ、デネブ、よく今までついて来たわね、あんな男に…」
「まぁ、あれでも本当の無茶や道理に反するようなことはしない真っ直ぐなお方なのです………ただ極度の戦闘狂とでもいいましょうか、普段は冷静なのですが感情が昂ぶり易いのです」
フィリア、デネブが溜息混じりに南領域を出たミヅキとセルティの後を追う。
北領域の端っこに転移石を見つけ、北領域の登録を済ませ、いよいよ目的地の『遺棄された武具実験場』へと足を踏み入れた。
「ここか…」
「うん、ここのモンスターがドロップするみたい」
「では、早速倒していきますか。向こうに数体のモンスターの臭いがします」
デネブの索敵に従い、二人と一頭は奥へと進んで行った。
「フィリア!そっちに行ったぞ!」
「左から回って下さい!」
ミヅキは槍を右手一本で持ち大きく振り回し、数だけは多いスライム、ヴァリィスラッシュを一箇所に追い込んだ
「やぁっ!」
フィリアが斬属性短剣ソードスキル【クロス・エッジ】を発動させまとめて切り払った。
「うし、次行くぞ」
隣の区画では今度はフィリアとデネブ、セルティが追い込み、ミヅキが全方位突属性槍ソードスキル【ヘリカル・トワイス】で騎士型モンスターヴァリィタブを薙ぎ払った。
ヴァリィストライクというゴーレムだけは槍でも短剣でも中々有効攻撃が決まらなかったが、そこはレベル差で押し切った。
「ふぅ…、どうだ?」
「………うん…、これくらいあれば。あとは腕のいい鍛冶師がいれば」
「アテ無かったのか」
「うん…、このレベルとなると鍛冶スキルもかなり無いと…」
「ミヅ様、リズベット殿の所はどうでしょう?」
「姉御んとこか」
ミヅキは指をパチンと鳴らした。
「…誰?」
「俺の槍を造ってくれた鍛冶屋だ」
「アインクラッドでも指折りのスキルの持ち主です。腕は保証します」
「そっか…、じゃあお願いしても…いい?」
「あぁ、なら一旦管理区に戻っか」
「うん」
フィリアからソードブレイカーを預かったミヅキとデネブは、アインクラッド76層アークソフィアの商店通り角の《リズベット武具店》を訪ねた。
「姉御~、いるか」
「ミヅキ?どうしたの」
リズベットは店の奥から出てくるとミヅキとデネブを見て驚いた。
「ちょっとこの短剣の鍛錬を頼みたい」
ミヅキはフィリアから預かったソードブレイカーと鈴音鉱石をカウンターに置いた。
「これは?」
「《ホロウ・エリア》で知り合った奴の武器だ。腕のいい鍛冶屋を探していたから姉御んとこ紹介したんだ」
「つまりご新規さんね。いいわ、アンタの紹介だし新装開店第一号だから料金は勉強させてもらうわ」
リズベットは短剣と鉱石を持って店の奥へ引っ込んだ。
ミヅキがドロップしたアイテムのストレージを整理していると、リズベットが出てきた。
「はい、鍛冶スキルがちょっと不安だったけど、なんとかできたわ。次までにはもう少し鍛冶スキル鍛えておくから、よろしくって伝えといて、えっと…、その人のなんて名前?」
「フィリア殿と申します」
「ちなみにトレジャーハンターらしい」
「トレジャーハンター?ってことは珍しいお宝とか武器とか持ってる?」
「あ~…、訊いてみるわ」
「もしあれば代金は現物支払いでもOKって言っといて」
「おぅ、んじゃ、改めて行ってくるわ」
「リズベット殿、行って参ります」
ミヅキとデネブが店から居なくなると、それにしても、と、リズベットは首を傾げた。
「さっき出て行ったばっかりですぐ戻ってきたわよね、攻略前のチェックでこの短剣の鍛錬を決めたのかしら…」
一応、オリジナル要素を少し入れました
仮面ライダーバトライドウォーにかまけ過ぎた