虚片~Aqua Moon~   作:蒼乃翼

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5話 味噌汁とおにぎりと変な鍵

ミヅキとデネブがアークソフィアの転移門に向かうと、そこには先客がいた。

「あ、ミヅキ君にデネブ」

「あれ、アス姐ぇも攻略?」

「どうやら俺もミヅキと同じらしくてな」

素でスルーされたキリトがミヅキの目の前に右掌を開いて見せた。

「ミヅ様と同じ紋章がありますな」

「そ。で、これから2人で行こうと思ってな」

「良かったら一緒に行かない?ミヅキ君達の方が《ホロウ・エリア》については色々知ってるでしょ?」

「なら向こうで待ってる相方を紹介するよ。あいつのが知ってるし」

「では、参りましょうか、ミヅ様、アスナ殿、キリト」

「………あれ?俺の扱いが雑な気がする」

 

 

5話 味噌汁とおにぎりと変な鍵

 

 

「フィリア、ほれ」

ミヅキは管理区で待っていたフィリアにリノベイトしたソードブレイカーを皮製の鞘ごと放った。

「あ、ミヅキおかえり。…と、こちらは?」

フィリアはミヅキの後ろの白と黒の2人組みに首を傾げた。

「初めまして、《血盟騎士団》副団長のアスナといいます」

「キリトだ。ソロだけど今はアスナと組んでいる」

「け、《血盟騎士団》の副団長って…、閃光の!?」

「う…、うん、一応そう呼ばれているの、不本意だけど………」

「ん?アス姐ぇって有名人か?」

「むしろなんでアンタは知らないのよ?」

フィリアはミヅキの無知さに呆れた。

「ん~、あんま他人の事興味ねぇし」

「ミヅ様の交友関係は片手でも余るくらいしかいませんしね」

ぼっちのミヅキは置いといて、アスナはフィリアと話を進めた。

「もし良ければ私とキリト君も一緒に攻略に加えてもらえない?一応足手まといになるようなレベルではないんだけど」

「そんな、こちらこそお願いするわ。よろしく、アスナさん」

「アスナでいいわよ」

「ならアタシもフィリアで」

「さて、んじゃ行こうか。セルティ!」

ミヅキが黒文字を咥えたまま指笛を吹くと漆黒の首無し馬セルティが管理区の向こうからやってきた。

その姿を見たアスナは・・・・・・・・

「え…?」

「こいつが《ホロウ・エリア》でテイムした俺の相棒、セルティだ」

キリトはおおー、と驚いていたが、アスナの様子が変だった。

 

「お…、お化け~~~!!!」

 

アスナの悲鳴が管理区中に響いた。

「あ~、アスナってそういう系苦手なんだよな…」

アスナはキリトの後ろに隠れてぶるぶる震えていたが、それはアスナだけではなかった。

「セルティ…?」

セルティも身体を震わせていた。

「あ~…、アス姐ぇ泣かせたな」

「…ぇ?」

「セルティこんななりしてるけど、雌のまだ仔馬なんだよ。しかも両親をくそったれな連中にやられちまったばっかで」

「………」

「アス姐ぇが苦手なのはわかったけどよ、セルティに謝っちゃくれねぇか」

ミヅキはセルティの胴体を掻きながらなんとかなだめていた。

「…ぅん、えっと、ゴメンね、セルティ…お化けなんて言っちゃって………」

アスナはおずおずとセルティに近付くと頭を下げた。

「セルティ、アスナ殿もこうして謝っているのですし」

デネブもセルティを促した。すると、セルティは地面を蹄でカッカッと踏み鳴らした。

「ふむ、アス姐ぇ、セルティに乗ってくれ」

「へ?」

「馬の誇りは誰かを乗せてフィールドを駆け回ること。アス姐ぇを一端の騎士として見込んで頼む」

「………うん、わかった。えっと…、」

アスナは意を決して乗ろうとしたが、セルティには馬具が無いのでどうやって乗ろうかと途惑っていた。

「ほれ、俺の背中踏み台にしていいから」

ミヅキはミニスカの裾やその奥を見えないようにアスナに背を向けてしゃがんだ。

「ごめん、ちょっと借りるね」

アスナはミヅキの意外に大きな背中に一瞬だけ足を乗せると一気にセルティの背中に乗った。

「うゎあ…、」

アスナは急に高くなった視線に感動した。

「今度リズベットの姉御に鞍と鐙でも造ってもらうか」

「では今回の攻略で何か手土産でも手に入れますか」

「じゃあ指揮はアスナにお願いするね、戦闘は私に…、というかミヅキ一人突っこませればいいから」

「さぁ、スタートだ」

槍を担ぐミヅキ、それに従うデネブ、短剣を腰に差したフィリア、肩を回して意気揚揚のキリトを従え、馬上のアスナは宣言した。

「ではこれより、《ホロウ・エリア》の攻略に入ります」

 

 

 

 

「ミヅキ君深追いし過ぎ!一旦下がって!」

「こんくらい問題ねェ!!」

ミヅキは【影松(シャドー・パイン)】を縦横無尽に振るい、穂先で切り裂き、石突で突き、柄で打ち据えて、パックン・・・、もとい、フラワーマンにフラワーウーマンを次々と撃破していった。

「うわぁ~…、あいつすげぇな…」

「でしょ?私も一緒に攻略し始めたのついこないだだけど、毎回驚かされてばっかりなの」

キリトとフィリアはミヅキは取りこぼした蜂のモンスターイエローパルスを倒していた。

「ミヅ様基本的にソロでしか活動できないのです。協調性は無い、自己中心的、戦闘とあればすぐに血気盛んに突っこむ猪突猛進な方なのです」

鼻をひくつかせ周囲の警戒をしながらデネブが申し訳なさそうに説明した。

「確かに、あんな猪プレイヤーは戦力にはなるかもしれないけど、ボス攻略には向かない…、な!」

キリトは片手剣ソードスキル【スラント】で最後のイエローパルスを倒した。

「キリト君!フィリア!ミヅキ君のフォローお願い!」

馬上のアスナが援護を求めた。

「やれやれ…」

「まったく…」

2人は溜息を吐きながら武器を構え直した。

 

 

 

 

その後、突っこむミヅキ、それをフォローするフィリア達という流れで迷いの森を進んで行くにつれセルティの機嫌もかなり良くなり、アスナもすっかりセルティの背中が気に入ったようだった。

四人と一匹と一頭の一団は花畑に辿り着いた。

「ん…?この辺には敵はいねぇのか………、デネブ」

「はい…、周囲に敵の反応はありません」

「なら、ここで休憩しないか?俺もうヘトヘトだ…」

キリトは花の絨毯にどかっと座った。

「そうね、お弁当にしましょ」

「賛成~」

セルティから降りたアスナとフィリアも賛同し、ミヅキも槍を地面に刺した。

「はい、今日はお昼多めに作ってきて正解だったわ」

アスナがストレージからバスケットを取り出した。

「もしかしてこれってアスナの手作り?」

「うん、そうだよ。はい、食べてみて」

フィリアはアスナからバゲットサンドを受け取るとかぶりついた。

「っ~、美味しいっ!」

「よかった」

「こっちのも食うか?」

ミヅキは大量の竹皮包みを広げた。

「おにぎり?」

キリトは三角白米おにぎりを一個手に取ると一口食べた。

「うまッ!アークソフィアにこんなの売ってるショップあったか?」

「そういうのには俺けっこう鼻が利くんだよ」

「あ、じゃあこれにちょうどいいかな」

アスナはそう言うと魔法瓶を取り出し、キリトにカップを持たせ中身を注いだ。

「はい、飲んでみて」

「これは…?」

「飲んでみてからのお楽しみ、大丈夫ちゃんと味見してるから。フィリアとミヅキ君もどうぞ」

「ありがとう」

「サンキュ」

三人は少し口をつけた、途端、さらにもう一口啜った。

「これ…、味噌汁か?」

「うん」

「すご…、味噌ってアインクラッドにあったんだ」

「じゃなくてね、私料理スキル完全に極めてて、それで前はお醤油とマヨネーズ作って、今回はお味噌を再現してみたの」

驚くフィリアにアスナは説明した。

「む、これは握り飯に合うな」

ミヅキもおにぎりと味噌汁のカップ両手に舌鼓を打った。

「はい、デネブもどうぞ」

「ご相伴に預からせていただきます」

「と、そうだ。セルティ、お前これ食えるか?」

ミヅキはショップで買った素材アイテムのニンジンをセルティの前に出した。すると、セルティの首の無い部分から細長い影が伸びてニンジンを摑むとそのまま胴体へと取り込んでいった。

「あ、そうやって食うのか」

ミヅキは持ってきたニンジンを地面に並べた。セルティは残りも美味しそうに身体を震わせながら食べた。

「それにしても、まさかSAOで味噌汁が飲めるとはな。懐かしくてなんか…家庭の味って感じだ」

「家庭の味、かあ。嬉しいな、その言葉」

「本当に美味しかった。ありがとうアスナ」

「そ、そんな改まってお礼なんか」

「いや、嬉しかった時はお礼を言う、例え夫婦であってもそれは守らないとな」

「そうか、そうだよね」

2人の会話を聞いていたフィリアとミヅキは飲んでいた味噌汁を思わず吹き出してしまった。

「ふ…、夫婦!?」

「お前ら…、結婚してたのか?」

VRMMO内なので誤嚥性肺炎になるはずもないが、それでも2人は咳き込みながらアスナとキリトに訊いた。

「うん…、まあね…」

「ちなみに娘もいる…」

ミヅキはピンときた。

「あの前髪ぱっつんちゃんか!?」

「そう、ユイちゃん。22層の森で迷っていたのを2人で保護したらパパママって懐かれちゃって」

「ああ…、そういうことか」

「てっきりSAOには夫婦の営みから生命誕生まで再現できると思ったが…」

夫婦の営みの部分でキリトとアスナが一瞬赤くなったが、ミヅキもフィリアも気付いていなかった。

 

 

 

 

「よし、それじゃあ先に進もうか」

アスナが十分な休息時間を斬り上げると、各々アイテムや装備を確認して立ち上がった。

「じゃ、私達が先行して行くから2人は後から来てね」

ミヅキの先走りを暗に釘を刺したアスナはすっかり慣れたセルティの背に跨るとキリトを伴なって進みだした。

「へいへい」

ミヅキは槍を地面から抜くと、ふと視界の端に宝箱を見つけた。

「フィリア、あれ…」

ミヅキが指差すほうを見たフィリアが目の色を変えた。

「うっそ、こんなところに!?全然気付かなかった、中身は何かな~?」

「フィリア殿、罠にお気をつけください」

宝箱の開錠に夢中になるフィリアの周囲をデネブが警戒しつつ、ミヅキもじっと見守っていた

「うん!…よし、開いたよ」

「中には何が入ってたんだ?」

「鍵が2つ…どこに使うんだろう?」

中身は波打ったような形状の鍵が2つ入っていた。

「面白い形をしてるな、形が波打っているというか…、《ホロウ・エリア》でこんな形の鍵穴見たことあるか?」

「ううん、ないなぁ…」

「もしかしたらこの先のフィールドで使うのかもしれないな」

「だったらさ………、持っておこうよ、2人でここに来た記念にもなるし」

フィリアは少し頬を赤らめ俯きながらミヅキに鍵の片方を渡した。

「は?デネブもセルティも、キリトにアス姐ぇもいたじゃねぇか」

「もぉ~、そういうことじゃなくて!」

フィリアは鍵をミヅキに投げつけるとアスナたちの方に走って行った。

 

 

 

 

 

「なんだアイツ…」

ミヅキとフィリアは【貴重品】異形の鍵を手に入れた。




次回もこの4人と一匹と一頭でボスまで行きます
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