アルゴが犬苦手設定を追加しました
宴会が終わり、ミヅキとデネブは宿の部屋でベットと床に倒れ込むように寝そべった。
《ホロウ・エリア》を一気に攻略、さらにエリアボスまで倒した疲労感が今になって出てきたのだ。
(明日は…姉御んとこで武器のメンテだな…、それにセルティの馬具の注文………)
ミヅキは考えの途中で熟睡してしまった。
‡‡ 閑話① ミヅキのアルバイト ‡‡
翌朝、ミヅキは日の出と同時に起きた。
デネブもそれにつられて起きた。
「おはようございます、ミヅ様」
「おぅ、デネブおはようさん」
ミヅキは大きく欠伸をして金髪をがしがし掻くと緑のセーターに黒のカーゴパンツといういつもの軽装に着替え、トレードマーク(のつもりでいる)黒文字を咥えた。
デネブの散歩がてら街の裏手の路地で日課の体操と槍の型稽古を始めた。
「ふ…む、久々に抜いたせいもあるかもしれんが、結構イったな」
ミヅキの手にした愛槍【影松(シャドー・パイン)】は穂先だけでなく柄にも傷が目立っていた。
「ミヅ様、こちらも…」
デネブの背中の小太刀、【薙刀・静】の刀身にも刃こぼれが目立っていた。
「まずは姉御んとこだな」
‡‡
《リズベット武具店》
「リズの姉御、いるか?」
「あ!!いらっしゃい、…ってミヅキか」
どこかの誰かさんの訪問を期待していたリズベットは一瞬がっかりしたような表情になった。
「おはようございます、リズベット殿」
「うん、デネブもおはよ」
ミヅキはリズの手にしている箒に気付いた。
「掃除中だったのか?なんか珍しい光景だな姉御は金属打ってるイメージしかねぇし」
「それは………キリト………とかが、急に訪ねて………、わあぁっ!じゃなくてっ!お店が散らかっていたらお客さんへの印象も悪いでしょ。とりあえず朝一でまずは掃除するようにしたのよ」
「ふむ、ではわたくし達も手伝いますぞ」
デネブは口で器用にちりとりを咥えた。
「で、なにやればいい?」
「そうね、とりあえず武器の中であんまり質が良くない物を集めてくれる。全部練習用に鋳直そうと思うの」
「OッK~、鍛冶スキルを上げるにはいい方法かもな」
「ミヅ様、ほこりが立つので裏でお願いします」
ミヅキは大量の武器の入った箱を店の裏に運ぶと選別を始めた。
「こっちは…鋳直しに回していいな、こっちの武器は特殊効果も付いているから取っておくとして…」
「ミヅキ、作業進んでる?」
「あぁ、もう少しでこの山が終るよ」
「山って…わっ…こんなにたくさん武器があったんだ」
「いやいや姉御、人ごとみたいに言うけど、これ全部自分で作ったんだろ?」
「そうだけど…、改めて並べてみると壮観ね」
「もしかしてこれ全部ここに来てから作ったものなのか?」
「うん、少しでも早く鍛冶スキルを元に戻したくて…」
ミヅキは箱の中から一振りの片手剣を取り出すとそのパラメーターを確認した。
「これなんて結構いい出来じゃねぇか?」
しかしリズベットは首を横に振った。
「ううん…、まだまだ本調子じゃないわ、もっとスキルを上げないと前みたいな剣は作れないわ」
「ふぅ~ん…、でもそうやって妥協しねぇから姉御を信頼しているんだけどな」
ミヅキは傍らの愛槍をリズベットに渡した。
「メンテ、頼むぜ」
「………うん、任せて!」
リズベットは溌剌とした表情槍を受け取ると店に戻っていった。
「………」
ミヅキは黒文字を取り出して口に咥えると選別した箱の中身を改めて見た。
「にしても…、ずいぶん片手剣が多いな………、そんなにスゲェ片手剣作りたいのか…?」
‡‡
メンテナンスと掃除が終ったリズベット、ミヅキ、デネブは朝食を摂るために宿に戻った。
「え、じゃあキリトとアスナ、それにフィリア…さん?にもユニークスキルのこと言ったの?」
「ああ、抜かなきゃならない状況だったしな」
「ミヅ様の技もですが、やはりリズベット殿が作り上げた【薙刀・静】だからこそ、勝てたのです」
「ま、まあね、あの槍と刀の鍛錬方法の中間を探りながら鍛えた物だし、そんじょそこらの鍛冶屋じゃできないわよ」
鼻高々のリズベットに、ミヅキは本題を切り出した。
「で、ちょっと相談なんだが………」
ミヅキからの相談を聞き終えたリズベットは腕を組んで悩んだ。
「う~ん、馬具かぁ…」
「無理…か?」
「出来なくはないけど、ここの革製品とかって結構いい値段するのよね」
「む…」
ミヅキはウィンドを開くと残金を確認した。
「しまった…、昨日の宴会の飲み物とつまみ買い過ぎた………」
「ですから、わたくし昨日申しました。無駄遣いせぬようにと………」
「ああいう時に金ケチるような真似したくねぇんだよ」
ミヅキは胸を張った。
「ま、とりあえず材料の手配とか作る準備はしとくから、まずは金策しときなさい。てゆーか、下層からのツケだってそれなりにあるんだからね。新装開店したからってチャラにはならないからね」
「う~ぃ」
そんな会話をしながら宿屋の1階の食堂に入ると、アスナ達女性陣が隅に固まっていた。
その集団の視線の先では・・・・・
「キリト!おはよ~」
「ストレア!?どうしてここに?」
「何も無いけど…ただキリトに会いたかっただけ、それじゃダメ?」
「えっ、そ、その…ダメ?って言われても…」
「早く早く!こっち」
「うおっ!引っ張るなって!」
キリトとストレアが朝っぱらからイチャイチャしていた。
「…で、あの人は何?」
リズベットに訊かれたアスナは首を傾げた。
「何と言われても…」
アスナ達の疑問に答えたのはミヅキだった。
「あぁ、あいつはストレアだよ」
「ストレア…さん?下の層から新しく来たとかそういう人なの?」
アスナが再びキリトとストレアに視線を向けると・・・、キリトの膝の上にストレアが座っていた。
「………うふふ、何かとっ~~ても仲良しさんみたいね………」
「ア、アスナ!落ち着いて!顔が全然笑ってないわよ!」
「あたし、ちょっといってきます!あれはもう放置していいレベルじゃないですよ!」
「待て待て、落ち着け」
勇んだシリカをミヅキが止める。しかし、女性陣がずかすかと2人のテーブルまで進軍して行った。
「キリトちょっといい?」
「や、やあリズ、それにみなさんお揃いで…」
「みなさんどうも!あ、ミヅキにワンちゃんもやっほー!」
「おぅ」
「おはようございます、ストレア殿」
フレンドリーに挨拶するストレアにシリカは単刀直入に訊いた。
「あの!あなたはキリトさんとどういう関係なんですか!?」
「キリトとは、とっても仲良しな関係!」
「な、な、仲良しな関係だったら膝の上に乗ってもいいんですか?」
「これは店が混んできたなって話をしたら他の人に席を譲ろうってことになってそうしたら何故かこんな感じに…」
キリトの苦しい言い訳に、アスナは“微笑んだ”。
「なるほどー、紹介ありがとうね、キリト君」
「ア、アスナさん…?」
「それとキリト君?あとで私の部屋に来てもらえるかな?」
「…はい」
「ねえねえアタシも行っていいかな?アスナってキリトのお嫁さんなんでしょ?キリトのお話聞きたいな!なんか楽しそう」
「た、楽しそうって、…あの、じゃあ部屋に来る?」
「あっ、でも今日は止めておく、もう十分に楽しんだし。それに、みんなとも仲良しになれたし!だから、2人の部屋に行くのはまた今度の楽しみに取っておくね!それじゃアタシ帰るね!キリトもみんなもまたね!」
ストレアは喋るだけしゃべると本当に帰ってしまった。
「………嵐のような方ですな…」
ミヅキの足元のデネブが呟いた。
「キリト、ちょっとこっちに来て」
その嵐(ストレア)が去った食堂、リズベット達女性陣がキリトを囲んだ。
「………」
「………」
シリカもリーファも尋常ではない目付きでキリトを睨んでいた。
「キリトさん、質問があります」
「な、なにかな…?」
「…あのストレアって人はいったいなんなんですか?」
「なんかすごくお兄…、キリト君と親しい感じだったし…」
「…たしかにみんなにも話しておいたほうがいいかもしれないな。それじゃ、ストレアとどうやって知り合ったか話すよ」
「さあ、キリトのナンパの手口が明らかになるわよ」
「あのなぁ…、バカなこと言ってないで聞いてくれ。俺が街を歩いている時だ、突然どこかから視線を感じたんだよ、でも俺の索敵スキルをもってしてもその視線の正体がつかめなかった…」
「キリト君の索敵スキルでも見つけられなかったの?」
キリトのことなら何でも知っている良妻アスナは驚いた。そこで、今まで女性陣の圧力に口を挟めなかったミヅキが発言した。
「で、キリトが俺とデネブのとこに逃げてきたんで」
「わたくしの鼻で蓮の香りを嗅ぎ取り、『出てきなさい』と言ったら…、出てきたのがストレア殿だったのです」
「でもいったいなんのためにキリトを付け回していたんだろう…」
リズベットは首を傾げた。
「それに関しては正直わからないんだ…何度聞き出そうとしてもはぐらかされてさ、逆に探りを入れようとストレアを尾行したこともあったけどすぐにバレたよ。俺がストレアに関して知っていることは裏道の宿屋に一人で住んでいるってことくらいだよ」
そこでミヅキは口の黒文字をピコンと立てた。
「ちょい待て、一人暮らしかどうかってことキリトが聞き出したのか?」
「違うって、尾行した時に知ったんだよ」
「ふむ、キリト殿。それは俗にストーカーというのでは?」
「断じて違う!…そう、尾行だ、謎の人物に追われた俺がそいつを調査していたって別に変じゃないだろ?」
「でも、パパの行動の上を行くなんてすごいですね」
「俺の索敵スキルにも引っ掛からない、ずば抜けた隠密スキル…そして未だに正体不明…、とてもじゃないが一筋縄で相手できる奴じゃない」
「ちゅ…注意が必要ってことでしょうか…」
シリカが少し怯えたように訊く。
「いや、これは単なる俺のカンでしかないんだけど…、ストレアは俺に対して敵対心を持っているわけではないと思うんだ」
「むしろ、ものすごく懐かれちゃってる感じよね」
リズが溜息混じりに呆れた。
「ははは…それは否定できないな…」
「どう、アスナ?」
「うん、ストレアさんとキリト君の関係はわかった。でも…キリト君に接触してきた理由って結局なんなんだろう…」
「一目惚れじゃない?」
「リズぅ!」
「じょーだんよ、じょーだん」
「正体が分からない以上は用心しなくちゃいけないだろうけど、俺の心配はいらないよ」
「アンタバカね、アスナは違う理由で心配してんのよ」
「う…と、とにかくキリト君は色々気をつけること!」
「お…おう…」
‡‡
ミヅキとデネブはキリト達と朝食を食べると、転移門広場のクエスト掲示板で割りの良いクエストを探していた。
「あ、ミヅキにデネブ」
「きゅる」
そこにシリカとピナがやってきた。
「おぅ、お前もクエスト探しか?」
「うん、勢いでここに来たはいいけど、今のあたしのレベルじゃ迷宮区なんてとてもいけないし…、でもこないだキリトさんが待ちの中で生産系のスキル無くてもできる所を色々案内して教えてくれたの。それにお茶や夕飯まで一緒しちゃって…」
「…ん?キリトってアス姐ぇと結婚してんだよな、システム上」
「え、うん」
「シリカ殿、それはいわゆる“不倫”なのでは?」
デネブに指摘されてシリカは慌てた。
「ひゃああああ!どどど、どうしようっ!?ふふふ、不倫!ライン流出!?記者会見??慰謝料?民事訴訟!?うわぁぁん!」
「落ち着け、この世界にセンテンススプリングはいない。………いや、それ以上に厄介な“鼠”はいるけど………っ!?」
すると、ミヅキが口に咥えていた黒文字がいつの間にか無くなっていた。
「ん~?気のせいカ、オレっちのことを噂していたように聞こえたけド?ミッチィ~?」
「アル姉ぇ!?」
ミヅキの背後の柵には情報屋鼠のアルゴがニヤニヤしながら器用にしゃがんでいた。その手にはミヅキから掠め取った黒文字があった。
「ミッチは稼げるクエスト、そっちのビーストテイマーのシリカお嬢ちゃんは今のレベルでもできるクエストをお探しなんダロ?」
「え…?どうしてあたしの名前を?」
「フェザーリドラをテイムした美少女プレイヤーの情報なんてとっくの昔に知っているサ。さて、そんなビーストテイマーのお二人にいい情報があるよ」
二人は情報代を割り勘で払うとアルゴから情報を買った。
「ところで…、アルゴさんはなんで柵の上に?」
「………おデブがいるから地上に降りたくない………」
‡‡
「あ、キリトさんこんにちは!この間はありがとうございました。おかげさまで街の中でできる効率の良いスキルが見つかりました!」
転移門広場でキリトとばったり会ったシリカは嬉しそうに報告した。
「そっか、それはよかった。どんなクエストなんだ?」
「え?あ…そ、それは…」
「…?」
「じゃあそろそろクエスト起動の時間なので失礼します!
「お…おう、それじゃ」
シリカは慌てて商店通りへと走り去って行った。
「…ちょっと心配だな、シリカには悪いが跡をつけさせてもらうか…」
(よし、こっそり…。建物の中に入ったな…ええと、店名は『あい★くら』?ちょ、ちょっと怪しい名前だな…どんな店だ?ここの窓から少しだけ中が見えるな…よし、…なんだ?内装がやたらとファンシーだけど普通の喫茶店みたいだな。まあ正式なクエストなら怪しい仕事をさせられるわけもない、か。そうだ、どうせならちょっと挨拶していくか)
キリトは店の中に入った。
「おかえりなさいませ、ご主人さま!」
「や、やあ」
キリトの表情は強張っていた。その目の前には、ふりふりのメイド服を着たシリカが愛嬌たっぷりの仕草で出迎えていた。
「キ、キリト…さん…?」
シリカの表情がどんどん引き攣っていった。
「ちょっと…様子を見に…」
「い、いやぁーーーーーーーっ!!」
店内にシリカの悲鳴が響いた。
「うおおっ!落ち着け!シリカ!」
「おいあの黒ずくめの男、メイドにセクハラか?」
「俺たちのシリカたんを泣かせるなんて…」
チェック柄シャツにクラインよりも悪趣味なバンダナというある意味この場に一番馴染んでいる客2人がキリトを睨んだ。
「ご、ごめん、どんなクエストか気になって追いかけてきたんだ、そんなに嫌がるとは思わなくて…」
「黙ってたのは悪かったですけど、跡をつけるなんてひどいですよぉー!」
「あの男、ストーカー行為まで…」
「おのれ外道め…」
「べ、別に隠すことないだろ?…うん、いいお店じゃないか」
「だ、だって恥ずかしいじゃないですか、あたしこんなちんちくりんなのにフリフリのメイドさんなんて…」
「そんなことないさ、よく似合ってるよ。うん、すごい可愛い」
「か、可愛い…っ?」
(シリカがまたフリーズしてしまった…)
「な、なんかごめんな…そういうことなら俺コーヒーかなんか飲んでさっさと帰るよ」
「あっ、い、いいえ!大丈夫です、キリトさんはお客様なんですから」
「そ、そうか?」
「はい!」
色々吹っ切れた、というかやけっぱちになったシリカはキリトを席に案内した。
「それではキリトさん…じゃなかった、ご主人様、メニューをどうそ」
「本日のオススメは、『あい★くらオムライス』と『あい★くらカレー』です!特にケチャップがオススメです。ケチャップはお客様の前であたしたちメイドが愛情こめてかけるんです。キリトさんのためなら、あたし…いっぱい愛情かけちゃいますよ!」
「じゃあカレーで」
「ええっ!?どうしてオムライスじゃないんですか?」
「いや…、余計な手間をかけさせるのもなんだかなぁと思って…」
「そんな!全然余計じゃないです!むしろ喜んで愛情ケチャップをかけさせてもらいます!!」
「わ、わかった…そこまで言うならオムライスを…」
「は、はい!『あい★くらオムライス』ですね」
(ふう…まさかこんなことになるなんてな。しかし、シリカがメイド喫茶か、最初は意外だと思ったけど…)
注文を待つ間、キリトはシリカの働きっぷりを見ていた。
「シリカちゃん、こっちも注文お願い」
「はい、ただいま」
(シリカ、人気者なんだな…。接客も堂に入ってるし、ひょっとしてこういうの向いてるんだろうか?)
「ねえねえあの黒ずくめ、シリカちゃんになんかしたの?」
「あ…いえ、あの人は…その、あたしの…特別なご主人様です♪」
「な…ん…だと…」
(しかしさっきから他の客からの突き刺さるような視線が痛い…)
「ご主人様~、おまたせしました!こちら『あい★くらオムライス』です」
シリカがオムライスを運んできた。
「あ、ああ、ありがとう」
「それじゃあご主人様のためにシリカがケチャップでたっぷり愛情込めちゃいますね」
KIRITO LOVE
「えへへ、ご主人様にシリカの気持ち知られちゃいました音符」
「そ、そのロールプレイも仕事のうち?」
「え?あっ!そうです!もちろんそうですよ!さ、さあキリトさ…じゃなくてご主人様、シリカが食べさせてあげます。はーい!あ~~~ん♪」
「え?あはは…た、食べさせてもらわないとダメなのか?」
「こ、こういうルールなんです!」
「でも他の客はそんなことしてないような…」
「それは…えーと…、さ、最初の一口をメイドが食べさせるんです!」
「そ、そうなのか…じゃあまあ…いただきます」
「えへへ…どうですか?お味は?」
「…ん、もぐ…おお!美味い!これは美味い!」
「え?そんなに?」
「シリカも食べてみなよ、俺の反応が大げさじゃないってわかると思うよ」
「それじゃあ一口だけ…ん…もぐ…、お、おいしい!ホントに美味しいです!」
「だよな、玉子のトロトロ加減とか味付けの濃さとか絶妙だよ!」
「ですね、ここで働いてるのに全然知らなかったなあ…。もう一口だけ…ひとくち…くち…、あ…ああああああ!?か、かん、間接っ!間接っ!!」
「かん?かん…なに?」
「えっ?ああっ!その…えっと…か、間食!メイドは仕事の間の間食禁止なんでした!」
「ああ…それもそうか、悪い、違反させちゃったな。それじゃあとは俺が食べるな、スプーン貸してくれるか?」
「は、はいっ!」
「あん…もぐもぐ…」
「ひゃあぁぁ…、か、間接…キス…」
「な、なんか顔が真っ赤だけど大丈夫か?」
「え?ええ!だ、大丈夫です!」
(う~ん…シリカの様子がおかしい…、やっぱり知ってる人間に働いてるところを見られると気が散ったりするのかな…早めに食べ終わって切り上げよう)
「シリカちゅゎ~ん、注文おねが~い」
キリトに殺気の篭った視線を送っていた客の一人がシリカを呼ぶ。
実はこの客シリカがシフトの間ずっと居座り続けているのだ。
「はい、ただいま」
「ねえねえ、今度演劇ギルドの公演を観に行かない?チケットあるんだ~」
客は下卑た視線と態度でシリカに言い寄る。
「あの…あたし、ここのお仕事もありますし」
「そんなこといわないでさ~」
キリトはスプーンを置くと近付いた。
「おいアンタ…、」
しかし、キリトが男を止める前に、黒い影が颯爽とシリカと男の間に割って入った。
「申し訳ありませんがご主人様、当店のメイドを口説かれては困ります」
それは、金髪をオールバックにした燕尾服姿の・・・・・・・
「ミヅキ…!?」
「なんだお前、ご主人様に意見するつもりか、何様だ!?」
「いえいえ意見などと滅相もない、私は“あくまで執事”ですから」
ミヅキは普段のギラギラした雰囲気は無く、柔らかい物腰で対応していた。
「ふん、だったら何か甘い物を持ってこい、ご主人様を不快にさせたんだ、シリカたんにあ~んして食べさせてもらおうか」
「かしこまりました」
「え…ちょ、ミヅキ………」
動揺するシリカを尻目に、ミヅキはお盆にケーキを載せてきた。
「当店自慢のふわふわクリームのタルトでございます、…どうぞお召し上がり………やがれゴラ゛ァッ!!!」
タルトが叩きつけられた客は顔面クリームまみれになって、入口のドアを突き破って店の外まで吹っ飛ばされた。
「ふが…、お、おまえなに、し…」
「あァ?そうかそうか、甘いモンのあとにはしょっぱいのが欲しいか、ならこちらどォーぞっ!」
ブチキレたミヅキは塩の入った袋を片手でぶん投げた。
「へぶぅっ!」
客はそのまま気絶してしまった。
「ふん…」
ミヅキは手袋を脱いで新しいの穿いた。
「お騒がせしてすみません、お飲み物をサービスさせていただきます」
ぽかーんとしている他の客に、ミヅキは一礼した。
「ジンジャーエールでございます」
キリトのテーブルに執事ミヅキがドリンクを持ってきた。
「…何やってんだ?お前経験値は足りてるだろ」
「………金が足りなくて…、リズベットの姉御へのツケやセルティ用の馬具も必要だし………」
素に戻ったミヅキはキリトにだけ聞こえるようにこそっと言った。
「それでか」
「基本は厨房だけどたまにフロアにも出るからこの格好なんだよ」
「もしかしあのオムライス…」
「あぁ、俺が作った」
「すごいな…アスナにも匹敵するスキルだぞ…」
「マニュアルに従って作れば調理スキルが低くてもそれないりのが作れるんだよ。つーかキリト…」
ミヅキはキリトに耳打ちした。
「ここでのバイトのこと、姉御達には言うなよ。知り合いのしかも女子にこんな格好見られたたかねぇんだよ」
「あぁ…、」
しかし、ミヅキは失念していた・・・・
ここを紹介したのがアルゴだということを