そんな小説の主人公みたいなイベントに僕は遭遇したくないとです。
「………おにーちゃん、おにーちゃん!」
僕の元に、とてとてと、可愛いドレスを着た一歳年下の可愛い妹がやってくる。
「ん?おーこんなところまでよく来たな。今日はどうしたんだ?」
白衣に身を包んでとりあえず何かを適当に研究していた僕は手を止めて、妹に向き直る。
「へへへ………じゃーん!これで私もお姫様!!」
そういって妹は最近発育のいい胸を張り、僕に見せつける。
「うお!………返してこい。どっからそんなドレス盗んできた」
「なんで盗んできた前提で話するの!?」
怒った妹と僕はじゃれる。それが僕にとっては最高の一時だった。
こんな日が、ずっと続きますように。
「………七日目。今日も僕は収容所。暇で暇で仕方がない。あーあ。外から天使とか降ってこないかなー。本当に降ってこられてもなんだけど………
っと」
「何書いてるの?」
「わーっ!ノックくらいしてよエカルさん!!」
「私の辞書にそんな言葉はない。そもそも辞書なんて持ってない」
「どういう意味ですかそれ!?」
………僕はまだ収容所にいた。そもそもこの世界には親もいなければ帰る場所もない僕にとってはこの収容所こそが家になってる気がする。
もうだいぶ体はマシになった。両手くらいならしっかり動く。足はまだ時々痺れたりするから歩くのには杖が欲しいけど。
ちなみにさっきまでしていたのは日記のような何か。
暇だったのでエカルさんにもらったノートに書いていた。そういえば雷華さん直属の天使もいるんだっけ。いつか会えたりするんだろうか。
「回想終わった?それならこっちも話があるんだけど。人の考え読むのって意外と大変なのよ?」
「何をやってるんですか………というかなんで回想だと分かるんですか」
「ぼーっとしてたらだいたいそんなものでしょ?」
「失礼な。考え事をしてるだけだったりするじゃないですかそんなんだからエカルさんは………」
………閃いた。
「カエル女って呼ばれたりするんですよ」
「カ、カエルゥ!?だ、誰がカエルよ!?」
うわ、怒りっぷりがすごい。
「………だってよーく考えればエカルって言葉、並べかえたらカエルじゃないですか」
「うぐぐ………言わせておけば!!覚悟しなさい晴ぅー!!」
「わ、ちょっ、何をするんですか!?」
エカルさんは僕に向かって体当たりをしてくる。自由に歩くことのできない僕はかわせずに押し倒された。
両手を押さえたエカルさんは僕を見つめてくる………
………ん?
「………あのー。何もしないんですか?」
「………もういいわ。帰る」
「え?な、なんでー?」
僕がきょとんとしていると、エカルさんは僕から降りて部屋を出ていった。
………本当に帰っちゃった………
何故?まさか他に恐ろしいお仕置きとかを思い付いたとか………!?
「………なんで手を出しちゃったんだろ。あの子一応障害が残ってるのに………」
「あ、なるほど。それで帰ったのか………」
壁ごしに外から聞こえてくる声に対して僕はほっとする。
………怒らせた僕がいうのもなんだけどさ。エカルさんってバカっぽい人だな。というかバカだ。
気持ちに流されやすいタイプ。やった後を考えるという部分が欠けてるような。
賢いけど精神面が弱い………ん?それって役立たず?………
もしかしてここにいるのって………ミスをやらかして左遷されたとか?
………そっとしておこう。
「さてと………邪魔なものも消えたし。こっちに書きますか………」
自分の私物………といっても文房具とかエカルさんからもらった本が数冊くらいだけど。
それらが乗ってる机の引き出しをすべて引き出す。すると黒いノートが落ちる。
このノートを僕はデスノートと呼んでいる………某死神の持っているものではないよ?
俗に言う中二病の産物でもない。
ただ、読まれたら僕が書いていることの恥ずかしさのあまり死ぬ(デス)ノートだからデスノートというだけ。
ここには『転生した僕』の思ったことと起こった不思議なことを書いている。
最初に書いているノートはあくまで『収容所にいる僕』の思ったことを書いているだけ。
『転生した僕』として経験したことは、突拍子もない、本当に謎なことばかりだ。それらを人に話すわけにはいかない………と思いノートを別にして書いている。
………内容は酷いけど。
さて、と。ここ数日、僕は夢を見る。前世の物と思われる幸せな記憶だ。
例えば友達のみんなで町中を使ってかくれんぼしたり。好きな漫画をみんなで紹介しあったり。学校のイベントでみんなで歌を歌ったり。
その記憶で、僕は幸せな一時を送っていた。
だけど………僕にはもうそれは手に入らない。僕はもう、一人だ。友達なんかいない。
遊び相手も………エカルさんぐらいだ。僕には何も残っていない。
幸せな夢を見ると僕はそれを痛感する。
………もし。僕は元の世界に帰れるのなら、すぐに戻りたい。でも、戻ったところで僕は幽霊になっているのかもしれない。
それなら僕は一人になる。だったら………僕はどうすればいいんだろう。
そんなことを日記に書き込んでいく。
「『例え一人になったとしても何も変わらない………僕は誰かに依存していかなきゃ生きられないんだよ。もし一人になったら………消えるしかない』………ん!?」
今何を言ったんだ!?………えーと………
思い出せない。なんで………?
「エカルさーん!僕さっきなんて言ったか聞こえてませんかー!?」
「そうよ………私っていつも周りが見えてないのよ………それでいったいどれだけの人に迷惑かけたかなんて覚えてないわよ………アハハ、私ってほんと駄目ね………」
「いつまでへこんでるんですかアンタは!?」
「思い出せない………か。ま、当然だな」
とある場所で、一つの映像の流れている端末を眺める少年がいた。
「さて、と。あいつが今見ている情報は………3つ、か。『自分の過去』と『偽りの過去』。そして『研究資料』………だが、一つしか記憶はできていない。ま、想定内だな。いくら見られても覚えてはいないようだし。せいぜいあがけばいい………」
彼は端末を操作して誰かと通話するモードに切り替える。
「俺だ。そっちの状況はどうだ?被害はろくに出てないらしいが………ん??あいつを受け入れるのか?俺は別にいいんだがなあ。あいつの記憶あいまいな点が多い。そっちに言ったとき何をするか俺にもわかんねーぞ?」
「リスクなしにリターンは望めない?ふ、お前らしい………わかった。準備は整える。そっちは頼むぞ?じゃあな………」
「………『リスクなしにリターンは望めない』か。そんなこと科学者なら誰でもわかってるさ………」
それをわかったとしたら、俺もあいつもこんな世界にはもういなかったんだろうな。
一枚の書類を、どこか、暗闇の中で見つけた。
『01
世界というものは一種のメビウスの輪にある。たとえ滅んだとしてもいずれ新しい世界に生まれ変わる。だが、もしも。そのメビウスの輪を断ち切ることができたら。世界は進化して別のものになるのではないか?
その別のものは、世界のすべてを持っている。それならばどんなものだって直せるかもしれない………
試してみる価値はありそうだ。』
どうも最近頭の回りが悪い。
今回いろいろ伏線出したけどこの後どうなるのか………