アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい 作:天城黒猫
いや、エクストラが正解なのでしょうがね……アレはランルー君がいるからああなっているとかなんとか、そんな話を小耳に挟んだり。さんざん悩んだ挙句、オリジナルのキャラみたいになってしまいました。
誰か、答えを知っている人は教えてください。
宝具
「さあ」と”黒”のランサーは言う。「まずは凱歌を挙げようではないか。そう、私という吸血鬼が誕生したという事を、世界に知らしめるための、鮮血と恐怖に塗れた唄を歌おうではないか」
と彼は言いながら、たまたま近くにいたホムンクルスへと手を伸ばし、その生まれたての赤子のように真白な肌をした、首へと、吸血鬼ならではの、口から伸びた鋭い2本の牙を突きたる。ホムンクルスの体は細かく震え、目はだんだんと快楽へと溺れていくようなものへとなり、口からは唾液を垂らす。吸血とともに味わう快感に溺れながら、ホムンクルスの全身を駆け巡る血液は”黒”のランサーの牙を通じて、外へと出て行く。そして血が無くなったホムンクルスの皮膚はまるで、老人のように皺だらけになり、真白な肌も、くすんだ、茶色へと変わっていた。その代わりとして、”黒”のランサーの肌の皺は無くなり、髪も、白髪といったようなものはなくなり、その姿は、4、5歳ばかり若返ったようになっていた。
そしてホムンクルスの血を全て吸い終えた”黒”のランサーは、命なきホムンクルスを投げ捨て、その場で呆然として立っている"赤”のセイバーとアーチャーを見やる。
彼女らは、目の前の吸血鬼という怪物に怯えるようなことはなく、剣を、もうひとりは弓に矢を番え、いつでも攻撃できるように、また、吸血鬼の攻撃をいつでも回避できるように、警戒をしながら構えていた。そんな彼女らを見て、”黒”のランサー……否、もはやランサーという言葉では、彼には相応しくないだろう。言うなれば、彼は理性のあるバーサーカーといった所だろうか。吸血鬼と呼称するのが、まさに正しい。ともかく、吸血鬼は彼女らを見て、微笑んだ。その笑みというのは、実に紳士的な、社交界の貴族が、婦人に対して行う、警戒心を持たせないどころか、好感を持たせるような微笑みだった。
「ところで」と吸血鬼は言った。「私は宝具によって吸血鬼になった──尤も、その前である私は、必死に抵抗したようだが、令呪の命令を、ダメージを負った肉体で跳ね返せる事もできずに、見ての通りになったわけだが──吸血鬼になったのだが、それはあくまでもクラスの変更のようなものであり、この肉体がサーヴァントである事には変わりない。
つまりは、私は”黒”のサーヴァントとして、また、マスターであるダーニックの命令によって、"赤”のサーヴァントを皆殺しにしなければいけないのだ。……だが、それでは惜しい。二人共、若く、そして強く、屈強な肉体を持っている。そこで、どうだろうか? 私の配下へと入らないだろうか? 我が元で、召使、あるいは囲いとならないだろうか?」
「ふん!」と”赤”のセイバーは言う。「お断りだな! テメエ、舐めてんのか? ああ? そうだろ。吸血鬼だかなんだか知らねえが、要はアレだろ? 人間大の蚊になっただけだろうが。その上で、配下になれだと? 王にでもなったつもりか? くだらねえ。王という称号は、テメエ如きには、相応しくねえんだよ!」
「やれやれ! 断られてしまったか。では、そちらの婦人はどうだ?」
と吸血鬼は、”赤”のアーチャーを見る。
「私もセイバーと同じ答えだ」と彼女は言い、番えてあった矢を、吸血鬼の眉間へと放つ。しかし、彼はその、音速で飛来する矢を、人差し指と親指でつまみ、放り捨て、
「そうか……では仕方がないな。吸血鬼となった私にも、願いというものはある。そのために、まずは諸君らを殺害させてもらおう!」
彼の、赤い目が、一瞬赤い光を放ち、口の端から、鋭い牙を見せつけ、そして、吸血鬼としての筋力を存分に振るうべく、彼の両腕や全身の筋肉に力が入りる。そして、彼は、鋭い爪を持つ両手を武器として”赤”のセイバーへと振るう。”赤”のセイバーは、それらをものともせずに、剣でいなし、弾き、あるいは空したり、逆に切り込んだりとしていき、吸血鬼は一寸のところで回避するが、彼の服には、少しずつ切れ込みが出来上がっていった。
「オラ!」と”赤”のセイバーは言う。「服だけじゃなく、肉体の方もズタボロに切り刻まれな!」
と彼女は意気揚々と剣を振るう。しかし、先程の言葉を言い終わってから、吸血鬼の爪と、彼女の剣がぶつかり合い、金属音と火花を発生させたとき、吸血鬼の胸や腹といった、正面の部分から、まさに無数の杭が、ハリネズミのように生え、その先端一つ一つが、”赤”のセイバーを串刺しにせんとする。
”赤”のセイバーは一瞬驚愕したものの、直感によってあらかじめ身の危険を感じていたおかげで、まさに本能というべきか、素早く後退し、杭は宙を貫くばかりだった。
「ぬう……惜しいな」
「少し驚いたが、それだけだ! これで手品は終わりか?」
「手品? 手品とは結構だな! よろしい!」
と吸血鬼は言い、第二の攻撃方法を取るべく次の準備を始めた。彼の目は先程よりも赤く光り輝く。それとともに、その光に見とれた、周囲に居るホムンクルス達が、さながら意志なき操り人形とでもいったように、ゆっくりとした動作で、”赤”のセイバーとアーチャーへと近づく。それだけではなく、先程吸血されて、干からびた木乃伊のようになったホムンクルスは、ゆっくりと起き上がり、彼の近くのホムンクルスへの首へと、吸血鬼の証である牙を突き立て、血液を少量ばかり吸い、血を吸われたホムンクルスの口からは、吸血鬼の牙が覗いており、彼はほかのホムンクルスへと噛み付き、吸血を行う。こうしたことが繰り返され、この場にいる2、30ばかりのホムンクルス達は、瞬く間に、全員が吸血鬼の眷属へとなった。
「さあ」と吸血鬼は言う。「我が僕たちよ! あの二人も、同じように我等と同じ存在にしてしまえ!」
ホムンクルス達は、戦闘用として調整された力と、吸血鬼になった事によって得た膂力をもって、彼女ら二人へと襲い掛かる。バルバードを持ったホムンクルスが、”赤”のセイバーへと、武器をふるう。”赤”のセイバーは、その武器を、剣で跳ね返すが、ホムンクルスは再びバルバードを振り下ろす。そういった、武器の打ち合いが7、8合ほど続き、ホムンクルスの肉体は切断され、絶命した。
「こいつ等」と”赤”のセイバーは言う。「普通のホムンクルスよりも、少し強くなっていやがるな。……ま、あのピクト人共には遠く及ばないが」
「そうか」と”赤”のアーチャーは言う。「そうなると少しばかり厄介だな。ここは私がやろう」
彼女は弓に矢を番え、蒼天へとその矢を放ち、同時に宝具の真名を開放し、雨のごとく降り注ぐ矢が、ホムンクルス達を一斉に貫き、吸血鬼の眷属となった彼らは全滅した。
「ほう」と吸血鬼は言う。「なるほど。予想してはいたが、ホムンクルスをいくら吸血鬼にしようが、サーヴァントの高みには遥か遠いか。では、やはり私自身が、貴様らの相手をするしかないようだな! いいだろう! 生娘どもよ! お遊び、娯楽は終わりだ!」
「ハ!」と”赤”のセイバーは言う。「だったら、初めからテメエだけでかかってこいよ」
吸血鬼は笑い、
「確かにその通りだ! 我はドラキュラ! 夜の王であり、怪物の王であり、世界へと恐怖を刻み付ける存在である!
なればこそ、私はドラキュラとして在ろうではないか! 再び、しかも今度は実在した物として、世界にその名を轟かせようではないか!」
と叫び、”赤”のセイバーへと襲い掛かる。
再び始まった吸血鬼と騎士の戦いは、先ほどとは違い、吸血鬼が、騎士を圧倒とはいかないが、騎士を押していた。
「テメエ!」と”赤”のセイバーは言う。「さっきは手加減してやがったな? 力はさっきよりも強く、技術はさっきよりも鋭い!」
「はは」と吸血鬼は笑う。「確かにその通りだ。私は怪物と名乗っていようが、紳士である故な。少女を相手に、本気でかかるのもどうかと思っただけだ」
彼の言葉に、”赤”のセイバーは、僅か、それこそ刹那にも満たない一瞬だけ、全身を強張らせる。彼はその一瞬を見逃さず、すかさず鋭い爪が生えた手を振るう。彼女はそれを回避するが、爪の先端は頬を掠め、彼女の頬からは血液が一筋垂れる。
吸血鬼は、爪に付着した、”赤”のセイバーの血液を舐めとり、
「乙女の血というのは、たとえ騎士であろうと美味いな! さぁ、貴様の血液をたっぷりと寄越せ! 存分に吸い尽くしてやろう。そのあとは、吸血鬼の配下として、そうだな。メイドあたりとして使ってやろう!」
「何だと?」と”赤”のセイバーは呟く。兜に覆われていても、その声、その気配からして、彼女が怒りに染まっていることは、明らかであった。「少女? 乙女? オレを2回も侮辱したな!
そして、メイドだと? オレはテメエなどには仕える気は無い!それは先ほどの答えで言ったはずだがな! テメエは2回もオレを侮辱し、その挙句、オレをテメエの配下に加えるだと? ふざけるなよ! オレが仕える存在はただ一人だ! わかったか? この吸血フェチ野郎が!」
と”赤”のセイバーは、先ほどよりも鋭い、獣が爪を振るうがごとき剣筋で、吸血鬼の胸を切り裂く。そして、彼女の兜は変形し、彼女の素顔を露にする。やはりその顔は、怒りによって歪んでおり、鋭い殺意の光線とでも言うべき視線で、吸血鬼を見据えていた。そして、彼女の持つ剣から、赤雷が発生し、それは徐々に強くなっていく。
「さぁ! 死にさらせ! 『
そして放たれた光線は、吸血鬼の肉体を、なすがままなく包んでいき、激しい雷と魔力の激流によって、彼は霊核ごと粉々に粉砕されていき、その存在を消滅させた。
光が止んだころ、”赤”のセイバーは中指を突き立てて、
「クソ野郎が」
と言い、剣を仕舞い、周りを見回す。すると、”赤”のアーチャーの姿がどこにも見えず、そして、彼女から少々離れたところで、”赤”のランサーと”黒”のセイバーが、お互い全力の一撃を放つべく、魔力を充填していた。その様子を見た彼女は、驚き、そして巻き込まれてはたまらない、とその場から移動した。
”赤”のアーチャーは、”赤”のセイバーが宝具を開放し、決着がついたと判断し、その場から移動した。その移動先というのは、己のマスターに指定された場所であり、彼女自身、そこで何をするのかわはっきりと理解していなかったが、その場所に到着した瞬間、己が何をすべきか理解した。というのも、その場所というのは、”黒”のキャスターの最高傑作を隠してある湖であった。彼女は、マスターに、指定の場所に到着したということを、念話によって知らせる。そして、帰ってきた答えは、やはり彼女の予想した通りだった。
「やれやれ」と”赤”のアーチャーは呟く。「泳ぎはあまり得意ではないのだがな」
彼女は湖へと飛び込み、中に隠されているものを目にする。それは巨大な、それこそ、今までの量産のゴーレムとは違い、まるで一つの岩山とでも言ったようなものであり、その形状は、まるでミケランジェロが掘った彫刻とでも言うように、どこか、一つの芸術品を思わせるように美しかった。
”赤”のアーチャは弓を強く引き絞り、発射する。放たれた矢は、ちょうどゴーレムの胸を貫き、それと同時に、ゴーレムの体に罅が入る。
「なるほど。宝具の前身なだけあり、ほかのゴーレムよりも幾ばかりか頑丈というわけか。それでも、これには耐えられまい」
と彼女は、先ほどよりも強く弓を引き絞り、矢を発射する。そして、”黒”のセイバーの鎧を貫通するほどの威力を持った、必殺の矢は、ゴーレムを確実に、粉々に破壊した。ゴーレムの体は崩れ落ち、湖の底へと沈んでいく。”赤”のアーチャーは、水の中を進み、沈みゆく破片をいくつか手に取り、丘へと上がってゆく。
陸へと上がった彼女は、その身を震わせて、水を跳ね散らし、
「しかし」と彼女は呟く。「この破片が魔術の材料となるとの話だが……魔術というのは、奇妙なものだ。せいぜいが、小さな竈か、投げて使うしかないであろうこの石ころが使えるというのだからな」
と彼女は、その身を翻し、空を見上げる。そこには、一つの巨大な空中庭園と、黄金の光を放つ月が光輝いていた。
今回は、自分の実力不足がにじみ出ているなぁ、と。後で治すかもしれません。
次回!
『千年樹の一族』
『聖女と殺人鬼』