アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい   作:天城黒猫

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投稿、非常に遅くなりました。申し訳ありません。学園祭やら、部活やら、テストやら何やらが重なって、投稿することができなかったのです……やっと落ち着いたので、投稿開始です。どうしても、リアル優先になってしまいなすね……でも、エタりはしないので、そこだけはご安心ください。

FGOは、セイレムを無事クリアしました。その他のイベントも楽しかったです。……今年のクリスマスイベはどうなるやら……エレちゃん引こうにも、石がない! でも、ミドキャスは引きましたとも! セイレムの人たち、真名隠す気が全くない……! アポアニメも楽しんでいます。

サンムーンとどうぶつタワーバトル面白いです。


苦悩

 魔獣のそれへと姿を変えたアーチャーは、ひときわ大きな声で咆哮し、理性のやっていない、しかし、鋭い目で天草四郎を睨みつけた。彼女はまさに猪のように、彼の元へと素早く突進した。彼は、刀によってその突進を防御したが、その体は衝撃によって宙を舞い、後方へと吹き飛ばされた。

 アーチャーは続いて、魔猪の頭へと変質した腕より、矢を放った。その矢の速度は、普段の彼女が放つものよりも、高速であった。天草四郎は、空中でその矢を刀で弾き、地面に着地し、身構えた。彼女は再び攻撃を行おうと、彼の元へと地面を蹴った。

 ライダーは、アーチャーと天草四郎との間に駆け寄り、アーチャーを両手で受け止めた。アーチャーは、彼には目もくれずに、咆哮をあげながら天草四郎へと飛びかかろうと暴れていた。

 

「クッソ、俺は眼中には無えってか?」とライダーはアーチャーを押さえつけながら言った。

「姐さん、そいつはショックだな。畜生! ──令呪による命令でそうなっているんだろうが──麗しのアタランテがこんな、獣へと姿を変えちまった方がよっぽどだが。おい、天草四郎! お前の願いは、世界を、人類を幸福にしようとするものだ! それによって、世界がどうなるかなんざ、俺にはわからねえ! だが、姐さんのマスターの願いは、少なくとも碌でも無いもんだ、それだけは分かる。アレは、自分の為なら、他の全てがどうなっても構いやしねえという奴だ。少なくとも、俺は今までにそういうやつを何度も見てきたから、分かる。アレも、そいつらと同じだ! どっちにしろ、世界規模で影響をもたらす願いだというのは、間違いないだろう。だが、どっちがマシかといえば、お前のほうがマシだ。姐さんは、俺が引き受けるから、お前は大聖杯の間へと行け!」

「よろしいのですか?」

「構わねえよ。今、ここで、俺はこうして戦わないとならねえ。それだけの理由があるんだよ。そら、行け!」

「わかりました。ありがとうございます、ライダー」

 

 天草四郎はこうして、大聖杯へと通じる廊下へと駆け出した。彼の後に、アサシンは体をよろつかせながら続いた。キャスターも同じく続いて、彼の後をついていった。

 

「『人生とは不安定な航海だ』このさき、どうなるやら、見届けなければなりませんな! 『彼ら十人、二十人の剣よりも、お前の目に千人の人間を殺す力がある』と言う通り、吾輩達のマスターと、アーチャーのマスターには、宿業とでもいうべきものが宿っております! さて、これから行われるであろう戦いは、間違いなく伝説的な物となるでしょう。それはこの吾輩、ウィリアム・シェイクスピアが保証しますとも! その様子をこの目で見届けなければ! そして、この腕とペンとで、書き綴らねばなりません!」

「喧しい、喧しいぞ、キャスター。そう騒ぐな、我の体内の毒はまだ解毒しきれていないのだ。そう五月蝿いと、うっかり殺してしまいそうになるぞ」

「おやおや、これは失敬。ですが、女帝殿は平気なのでしょうか?」

「たわけ、至って重症だ。ヒュドラの毒だと分かった時は、流石に諦めかけた。しかし、我の体内に存在する無数の毒を調合し、抗体を新たにつくりだして、この通りだ。ああ、忌々しいアーチャーめが! よりにもよって、この我に毒を打ち込むとはな。しかも、その毒で我が苦しむなどとは! 本来ならば、特殊な毒で延々と苦しませて殺してやりたいところだが、あの様子だと、ライダーが手出しは許さんだろうよ。全く、これだから男というのは! まあ良い、今となってはこっちのほうが先だ」

「ほうほう、成る程、成る程! よろしい、では共に行きましょうか、女帝殿! ところで、肩などはいりますかな?」

「それは死んでも断る」

 

 こうして、天草四郎とキャスター、アサシンの3人は大聖杯の元へと向かった。玉座の間に残ったのは、アーチャーとライダー、そしてランサーの3騎であった。

 アーチャーは、ライダーの拘束から逃れ、2騎の様子を伺いつつも、今すぐにも攻撃を加えんといった様であった。ライダーは、彼の後ろで立ってるランサーを見て、言った。

 

「よう、ランサー。お前は行かねえのか?」

「不要だ。ここでは、一人よりも二人の方が良いだろう」

「そうかよ、だが殺しはするなよ」

「それは甘いな。だが、なるべく努力するとしよう」

 

 アーチャーは、ランサーへと標的を決め、彼の元へと猪の頭による攻撃を行った。ランサーは、それを槍で弾き返し、炎を放った。その炎は、アーチャーに火傷を負わせた。彼女は、その火傷を気にした様子はなく、より一層凶暴化した様子で、猪の頭による攻撃を続けて行った。それを、ランサーは正確に槍で弾いていった。

 

「無駄だ。獣では、オレの槍に勝つことはできん。(アグニ)よ!」

 

 ランサーの肉体から放出された炎によって、アーチャーは彼の元から離れた。彼女は唸りながら、ランサーを睨みつけた。ライダーは、歯ぎしりをしながら叫んだ。

 

「姐さん、アンタは獣ごときに乗っ取られるほどヤワじゃねえだろう? あのアルゴー船の一員ならば、その程度どうということはねえだろう? とっとと正気に戻っちまえ!」

「無駄だ、アレはもはや獣そのものだ」

「黙ってろ、ランサー!」

 

 ライダーは叫んだ。彼の心中は次のようなものであった。

 

(くそったれ、全く持って難儀なもんだ。本来ならば、姐さんは敵なんだから、とっとと殺してしまえばいい。だが、恋だの、愛だのという感情はこうも、俺の精神を激しく乱し、肉体と精神を縛り付けるもんなのか。一目惚れというのは、あまりするもんじゃねえな。令呪によって姐さんはああなっている。だから、そうやすやすとあの宝具の効果は解けはしないだろう。令呪の効き目が無くなるまで待つか? いや、待て! 令呪は何画使われた? 3画全てだ! つまり、令呪はもう無い! 今の姐さんは、アーチャーのクラススキルによって現界しているのか! 長引いたら、姐さんが消滅しちまう。あの船の乗員が、獣のまま、自分の意思が無いまま、ただ消滅する? そんなのは、冗談じゃねえぞ!)

 

 

 ライダーは、意を決したかのように、槍を霊体化させると、体を低くし、自分の体が最も安定するものへと、立ち方を変えた。その構えこそは、パンクラチオンの構えであった。彼はこれまでよりも、一層大きな声で叫んだ。

 

「おい、ランサー! 手をだすなよ! アーチャー! 麗しのアタランテよ! かかってこい、俺の名はアキレウス! ケイローンの教えを受け、オリンポスの神々の加護を受けしものなり! さあ、さあ! かかってこい!」

「──■■■■■■■■■■■!」

 

 そうした叫びに、アーチャーは反応し、彼女もまたこれまでよりもより一層、大きな咆哮をあげ、ライダーの元へと駆け寄った。

 

 

 

 大聖杯が設置されている場所は、床と空とが逆さまの状態となっており、床は天井であり、天井は床という様であった。泉は、庭園内部に張り巡らされた、湖の上にいくつか浮かんでいる床板の一つに乗っていた。彼は大聖杯を見上げると、呟いた。

 

「やっとだ……やっと、ここまでやってきた。あとは、長年の考察と実験の通りにいくかどうかだ。時間は丑三つ時、つまり僕の魔力が最も満ちる時間帯だ。準備としては全く十分。あとはやるだけだ。実行するだけだ」

 

 彼が魔術回路を起動させようとしたちょうどその時、ポケットに入っている携帯電話が着信を知らせた。彼は、携帯を手に取り、通話を開始した。

 

「もしもし、先生。こんな夜遅くにどうしました? ゲームで徹夜ですか? 駄目ですよ、夜遅くまで起きていたら、グレイにまた文句を言われてしまいますからね」

 

 電話の相手である、ロード・エルメロイⅡ世は、静かな声で答えた。

 

「構わん。徹夜など、どうということはないとも。この非常事態だ。徹夜の一つや二つしても、グレイは文句を言わんよ。ところで、今までにも散々電話をしたのに、通じなかった。何故今になって出た?」

「ああ、携帯の電源を切っていましたからね。きっと、何かの衝撃で電源が入ったんじゃないんですかね? ま、それはそうとして、心配してくれていたんですか? 大丈夫ですよ。今はまだ、この通り、五体満足で生きていますから」

「そうか、それならば良い。ところで、聖杯大戦はどうなった? どうにも、現地に向かわせた時計塔の報告係は、全滅したそうだ。そちらの状況が全く掴めん」

「ああ、それならばご心配なく。獅子劫さん、コトミネ・シロウさん達の活躍によって、ユグドミレニアのマスター達は敗北しました」

「そうか、お前は今どんな状況に置かれている?」

「アーチャーが、他のサーヴァント達と交戦しています」

「セイバーと獅子劫界離は?」

 

 泉は、残念そうな声で言った。

 

「残念ながら、セイバーが脱落しました。でも、獅子劫さんが安全な場所であるここに連れて行って、匿ってくれています」

「そうか、それならば良い。獅子劫界離に変わる事はできるか?」

「いえ、不可能です。彼は今、別の場所にいますので」

「そうか」

「はい」

「泉、川雪泉、お前は何故嘘をついている?」

 

 泉は目を見開いた。

 

「おや、なんで嘘だと思うんですか? 先生」

「お前の声の調子、自分で言ったセリフなどを考えれば、怪しい箇所は幾つかある。何よりも、お前の父親が先ほど時計塔に来た」

「そうですか、父さんはなんと?」

「こう言っていた。『我が息子は間違いなく、我々一族歴代で最高の実力を持つ魔術師だ! 根源に至る可能性も十分ある、素晴らしい! ああ、だがそれはどうでもいい。儂は、泉が幸福に過ごせるのならば、それで十分なのだ』と」

 

 泉は、携帯電話を握る力を少しばかり強めた。それは無意識での事であった。

 

「そうですか……全く、良い父さんを持ちました」

「……そろそろ本題に移ろう。川雪泉、お前は何を企んでいる?」

 

 とロード・エルメロイⅡ世は、声の調子を厳しいものへと変えて言った。

 

「お前は、一体何を企んでいる? 破滅か?」

「ああ、先生──分かります。貴方は、優しい人ですね。尋問をしようとしているけれど、同時に諭そうとしているんですね? 全く、優しい人です。全く、愚かな人です!」と泉は叫んだ。

 

「先生、ロード・エルメロイⅡ世、ウェイバー・ベルベット! お前の言葉なんて、全くもって僕の心に響かない! いいや、お前だけじゃない! この世界に存在する者全ての声は、僕の心に響かない! 風景ですらも! 自然ですらも! 人相ですらも! 何も、何も響かない! 僕にとって、この世界は無でしかない。ハリボテの世界でしかない。架空の世界でしか無い! こんな世界、くそったれだ!」

「そうか、獅子劫界離はどうなった?」

「死んだよ、僕が殺した。みっともない死に様だったよ」

「他の魔術師もか?」

「ユグドミレニアは全員死んだ。時計塔が送り出した魔術師は、興味もなかったから別にどうでもいい」

「そうか、なんという無気力な声をしている。それがお前の本性か? お前の願いは、世界の消滅か?」

「全く持ってその通りだ。だが、消滅はあくまでも過程に過ぎない」

「それはどういうことだ?」

「それを応える気はない。とはいえども、貴方には何かとお世話になっていた。だから、忠告しておこうか。今のうちに、やり残したこと全てをやっておけばいい。──さようなら。先生」

 

 泉は携帯電話を粉々に握りつぶし、その残骸を地面にばらまいた。彼は振り向いて、この間につい先ほどやって来た天草四郎を見つめ、言った。

 

「天草四郎時貞──君も、願うのは諦めたほうがいい。僕の願いは、君の願いも同時に達成できる」

「そういうわけにはいきませんね」と天草四郎は答えた。「俺の願いは、決して叶えなくてはならないものだ。あのような地獄を二度と生み出すわけにはいかない。人類に苦しみなど不要、幸福のみが存在してこそ、人間は真に人間となるのだ」

「幸福、ねえ。君の願いが叶ったとしても、それは僕自身を幸福にできそうにない。だから、僕は僕のために願いを叶える。天草四郎時貞、邪魔をするな。キリスト教ならば、人類なんかよりも、目の前で苦しんでいる隣人に手を差し伸ばせ」

「それはできないな。川雪泉。そうか、お前の願いは他の破滅による、自身の救済か」

「その通り。こんな世界に居るという行為そのものが、僕にとっては永遠の拷問に等しい。だから、僕は全てを正常にするんだ」

「そうか、譲る気は無いというわけか。なら、良いだろう。川雪泉。──願いを叶えるのは、この天草四郎時貞だ!」

「いいや、違う。天草四郎時貞。──願いを叶えるのば、この川雪泉だ!」

 

 天草四郎は、刀を手に取り構えた。泉もまた、片手には数本の黒鍵、もう片方の手には銃を握った。泉の体のあちこちが光り輝いた。その光というのは、彼の魔術回路によるものであり、体の隅々まで、全ての魔術回路が浮き彫りになり、その文様が皮膚に浮かび上がった。彼は呟いた。

 

「──全魔術回路起動開始。魔術投影魔術開始(マジック・トレースマジック・オン)。起源行使によって、詠唱は全て破棄。行使する魔術は全てで千。行使完了、これより儀式を開始する」

 

 泉の体がより一層光り輝いたと思ったら、それは一瞬のことであり、光は元通りのものとなった。すると、大聖杯から、激しい光が放たれはじめた。天草四郎は、警戒をしながら言った。

 

「大聖杯が稼働しているだと? 一体、何をした?」

「簡単なことさ。大聖杯が、その機能を果たそうと準備を初めたんだ」

「大聖杯を操作しているような様子は無いが。かといって、大聖杯の操作という行為は、そこらの使い魔に任せるような事もできない」

「ああ、僕は操作していないさ。そう、『肉体』の僕は。アレを操作しているのは、さっき分離した『精神』と『魂』との僕だ」

 

 天草四郎は目を見開いた。

 

「さっきは、僕という存在を『肉体』『魂』『精神』の3つに別けた。ここにいるのは、『肉体』だ。(肉体)の役目は、お前を足止めすることだ」

「……いいだろう、ならば、お前を打ち破り、俺が大聖杯の操作権を奪い取るだけだ!」

「やってみせろ!」

 

 こうして、川雪泉と天草四郎との二人は激突を始めた。






次回の投稿は明日か、来週になります。

次回予告!

【時計塔】

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