アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい 作:天城黒猫
「──成る程な」
彼の目の前には、全身を串刺しにされても、なお生きている。
全身を串刺しにされようが、いくら血を流そうが、バーサーカーは笑みを浮かべ続ける。
「ははははは、良い。良いぞ! この杭は正に圧制者たる象徴なり! ──さぁ、もっとだ! もっと
赤のバーサーカーは、体に突き刺さった杭を気にした様子もなく、その歩みを進める。
一歩歩みを進めれば、地面から生え、自身の肉体に突き刺さった杭が、動いて肉体を削る。だが、更に一歩進めば、その杭はバーサーカーの体に刺さったまま、へし折れた。
──
例え狂っていようと、その在り方は何処までも純粋だ。
──反逆者。
「貴様のその在り方──最早一度の尊敬すら抱こう。だが、生憎余は王だ。そして、此処は我が領地。その領地に踏み入った蛮族は──処刑する」
「その傲慢なる思考、正に圧制者。さぁ、反逆の時だ!!」
赤のバーサーカーは、その足を早め、黒のランサーの元へと突撃しようとする。
だが、黒のランサーは鋭い眼光で、赤のバーサーカーの姿を見、片腕を上げた。
「言っただろう? 処刑する、と。──
「お、おおおぉおおぉ!?」
其はヴラド三世の象徴たる処刑法。即ち──串刺し。
これまでも赤のバーサーカーへと杭を生やして、打ち込んできた。──だが、この
──地面より生えるは、杭──否、其は最早一本の巨大な漆黒の柱だった。
10本、100本、1000本──何本もの杭が、同時に同じ場所に生えた結果──赤のバーサーカーは、
そして残ったのは、
それがこの勝負の結果。──誰もがそう思っていた。
だが、忘れてはいけない。スパルタクスは、──
「オオオォォォオオオ雄々々々々々々々々────!!」
咆哮が大気を震わせる。その咆哮は、正に獣の雄叫びそのものであった。
──発生源は、杭の柱の中。
杭を粉々に、内部から砕き、彼は姿を現した。だが、彼の姿はヒトとしての形ではなかった。
巨人の様に巨大な腕のみがあり、その腕の根元には、足や眼球、歯といった人間の部品であろうものが、肉塊に引っ付いており、僅かに蠢いている。
それは、赤のバーサーカーの宝具──
そして、口と思わしき部品が蠢いて、言葉を発する。
「圧セ──我──愛────を────!」
その言葉は途切れ途切れだった。──だが、黒のランサーは、理解する。
これから圧制者たる私に対する攻撃が始まると。
その証拠として、巨人の腕が動いた。拳を振り上げるように、天高く伸ばし──振り下ろす。
──黒のランサーは、その攻撃を回避しようと、後方へと高く跳んだ。
「ぐ、ぅっ!?」
確かに、拳の直撃は避けた。だが、その威力は隕石が落ちた、と錯覚させる程に凄まじく、それによって発生した衝撃波だけは、回避する事は叶わず、黒のランサーは吹き飛び、もんどりを打った。
「────汝──抱擁──」
そして、2発目の攻撃を行おうと、再びその拳を振り上げる。
──人間の身体を棄ててでも、圧制者に叛逆する。
それは最早悪霊が持つ執念だ。
起き上がった黒のランサーの形相は恐ろしいほどに、歪んでいた。
「──オノレ」
その怒りようから、さらなる攻撃を加える──かに思われたが、黒のランサーは赤のバーサーカーに背を向けた。
──
「私はこうも言ったぞ、蛮族。
──
「おおおおおおォぉおおおおぉッ!?」
そして、
──そして、
「──余は王だ、故に我が領地に踏み入った蛮族はこうなる」
黒のランサーは、城の中へと悠々と入っていった。
「
そして、剣が振り下ろされ、光が
「────ッ!!」
──果たして、赤のライダーの肉体には、傷一つ付いていなかった。強いて言うならば、砂埃が少々付着した程度だろうか。
「ナアアァァ──────ッ!!」
だが、振るわれた
「────ウゥ」
「宝具を使っても、俺の体は傷つかなかった。そして、お前らはこの赤のライダーが撃ち取る。──死ぬ時は陽気が良いぜ?」
赤のライダーは槍を振るい、黒のバーサーカーの首をはねた。
はねられた黒のバーサーカーの首は、地面にコロンと転がった。
──だが、黒のバーサーカーは死んでいない。
「ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥゥゥゥ──────ッ!!」
「何!?」
その雄叫びを精神の弱いものが聞いたら、気を狂わせる程に、おぞましい叫びと共に、首の無い黒のバーサーカーが、地面に突き立てた
──
それが
──だが、今回はリミッターを解除せずに、使用している。
──それでいい。
一瞬の隙さえ作れれば。
一瞬怯んだ赤のライダーの元から、黒のバーサーカーは離れ、黒のバーサーカーと入れ替わるように、矢が飛んで来た。
「ガ────ッ!?」
その矢は、
──馬鹿な。
そんな肉体に、傷を付けた。傷付けられる人物がいる。
「ハ、ハハハハハハッ!! ──素晴らしい。今のは黒のアーチャーによる攻撃か!?」
その事実に、
そして、黒のアーチャーと、自分が戦う事は必須だと理解する。──何故ならば、黒のアーチャーは赤のライダーの肉体に傷を付けた──それはつまり、
そして、
「な──────」
赤のライダーは、黒のアーチャーの姿を見て絶句した。
────生前、出会い、寝食を共にし、語り合い、教えられた事が……!!
「あ、────なたは──」
赤のライダーは黒のアーチャーに、肉体による攻撃を加えられ、最後まで続かなかった。
だが、
生前、アキレウスを英雄にする為に育て上げた──アキレウスの師なのだ。
「ええ、その通りです」
──ケイローンは、敵として召喚されたと──。
「セイバー! バーサーカー! キミ達はボクのピポグリフに乗って!!」
そしてピポグリフは、主人である黒のライダーを置いたまま、少しだけ重そうな顔をしながら、飛び立った。
「ボクも後で行くから、頑張れ!」
黒のセイバーと、バーサーカーは、先ほどある指示を受け取った。
それは、
そして、残った黒のセイバー、ライダー、バーサーカーは、マスターの指示により、キャスターの宝具を守護しに行く────。
時は、赤のライダーと黒のアーチャーの邂逅より、少々巻き戻り、泉は突然発生した地震により、よろめくがすぐに体制を立て直した。
同様に、
黒のキャスターの策というのは、驚く程に単純だ。ゴーレム一体一体の戦闘力は、サーヴァントには届かないし、腕のある魔術師にも破壊させる。
──だが、一つだけ利点がある。それは、ゴーレムの製作者が、キャスター故の利点。
────大量生産。
つまり、──数だ。
一体で勝てないならば、更なる数を送る。サーヴァントでも大量のゴーレムを雪崩れ込ませれば、良くて勝利、悪くても傷を負わす事ぐらいは出来るだろう。
黒のキャスターは、付近のゴーレムを──見張り用の物を除き──全てを泉の元へと集結させた。
「うわぁ……あんなにいるとゴキブリみたい……」
泉は現れた大量のゴーレムを見て、そんな感想を漏らした。
数にして、40体近くだろうか。
あんなにいると、勝てるかどうか──。先ほど使用した魔術を使うにも、
故に、ゴーレム達とは徒手空拳で戦わなければならない。
「ま、勝つんだけどね!」
泉は、ゴーレムの群れへと突撃していく。
泉の拳を何度か当てれば、ゴーレムは破壊される。──だが、それでも。
──ちょっと無茶だったかな?
数が多すぎる。一発でも攻撃を食らえば、泉の骨は砕け散るだろう。故にゴーレムの放つ攻撃に当たるわけにはいかない。
それを大量のゴーレムに囲まれ、行わなければならないのだ。
「とう!」
──これで3体目。
泉の拳によって、ゴーレムが倒れる。戦闘開始から既に10分が経過しているが、まだ3体しか倒せていない。
泉の体力は、じわじわと削られていくが、ゴーレムに疲労という概念は存在しない。
「……ふぅ……少し──いや、かなーりヤバいかも?」
──このままでは、負けるのは泉だ。
そんな絶望的な状況の中、一筋の光明がささった。
──否、刺さったのは矢だった。
ゴーレムに一本の矢が刺さり、砕け散った。
泉は一瞬戸惑うが、すぐに矢が飛んできた方向を見て、笑顔になる。
「──アーチャー!」
「汝、少々無茶が過ぎるのではないか?」
そこには弓をつがえ、獅子の耳と尾と、髪を風に揺らしている
泉はゴーレムの群れから抜け出し、赤のアーチャーの元へと走る。
「ありがと! 死ぬかと思ったよ!!」
「……阿呆か、あの数では流石に勝てないのはわかるだろう?」
「いや、行けると思ったんだよ。ま、ムリだったんだけどね!」
そんな泉の言葉に、赤のアーチャーは少々呆れる。
泉はそんな赤のアーチャーの様子を見て、流石に少しばかり反省した……のか、アホ毛をしょんぼりとさせている。
「ま、いいや。今回は読みが甘かったボクが悪いんだし──アーチャー、お願い!」
「承知!」
──そこからは、あっという間だった。
アーチャーが弓を穿てば、ゴーレム達はあっという間に粉々になって砕け散り、やがて全てのゴーレムが粉砕された。
そして、これで一息つける──と思った瞬間、赤のアーチャーの鋭い視覚は、森の向こうよりやってくる存在を捉えた。
「あれは……」
赤のアーチャーは、ソレの姿を明確に見定めるために、目を細める。そして見えたのは──ピポグリフという幻獣に跨った黒のセイバーと、黒のバーサーカーであった。
その姿を視認したアーチャーは、自身の弓を強く引き絞る。
そして最大限まで引き絞り、放たれた矢は──
「────ッ!?」
敵はアーチャー。このままピポグリフに乗っていては、狙撃されるだけだ──。そんな判断で飛び降りたのだ。
赤のアーチャーは、ピポグリフより飛び降りて、宙を落下している黒のセイバーに、再び狙いを定めて矢を放った。
だが、その矢は空中で引き抜いた漆黒の大剣によってはじかれた。
地面に着地した黒のセイバーと、黒のバーサーカーは走る。泉と赤のアーチャーがいる場所へと────
お手数ですが、誤字を見つけた場合は、ご一報くださいませ。無いといいんですが……