アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい   作:天城黒猫

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”赤”の狂戦士の咆哮・師と弟子の再開

「──成る程な」

 

 黒のランサー(ヴラド)は呟く。

 彼の目の前には、全身を串刺しにされても、なお生きている。圧制者(ヴラド)を降さんと、拳を握って進もうとしている──赤のバーサーカー(スパルタクス)がいた。

 全身を串刺しにされようが、いくら血を流そうが、バーサーカーは笑みを浮かべ続ける。

 

「ははははは、良い。良いぞ! この杭は正に圧制者たる象徴なり! ──さぁ、もっとだ! もっとわたし(弱者)を踏みにじってみろ!!」

 

 赤のバーサーカーは、体に突き刺さった杭を気にした様子もなく、その歩みを進める。

 一歩歩みを進めれば、地面から生え、自身の肉体に突き刺さった杭が、動いて肉体を削る。だが、更に一歩進めば、その杭はバーサーカーの体に刺さったまま、へし折れた。

 黒のランサー(ヴラド)は、こうして実際に対峙し、理解する。

 ──赤のバーサーカー(スパルタクス)は、誇り高き反逆者だと。

 例え狂っていようと、その在り方は何処までも純粋だ。

 ──反逆者。

 

「貴様のその在り方──最早一度の尊敬すら抱こう。だが、生憎余は王だ。そして、此処は我が領地。その領地に踏み入った蛮族は──処刑する」

「その傲慢なる思考、正に圧制者。さぁ、反逆の時だ!!」

 

 赤のバーサーカーは、その足を早め、黒のランサーの元へと突撃しようとする。

 だが、黒のランサーは鋭い眼光で、赤のバーサーカーの姿を見、片腕を上げた。

 

「言っただろう? 処刑する、と。──極刑王(カズィクル・ベイ)!!」

「お、おおおぉおおぉ!?」

 

 其はヴラド三世の象徴たる処刑法。即ち──串刺し。

 これまでも赤のバーサーカーへと杭を生やして、打ち込んできた。──だが、この攻撃(処刑)は、これまでのものが生易しく見えてしまうほどに、苛烈であり、凄まじかった。

 ──地面より生えるは、杭──否、其は最早一本の巨大な漆黒の柱だった。

 10本、100本、1000本──何本もの杭が、同時に同じ場所に生えた結果──赤のバーサーカーは、()に飲み込まれた。

 そして残ったのは、黒のランサー(ヴラド)のみであった。

 反逆者(スパルタクス)は、(ヴラド)によって処刑された──。

 それがこの勝負の結果。──誰もがそう思っていた。

 だが、忘れてはいけない。スパルタクスは、──()()()()()()()()()()()()

 

「オオオォォォオオオ雄々々々々々々々々────!!」

 

 咆哮が大気を震わせる。その咆哮は、正に獣の雄叫びそのものであった。

 ──発生源は、杭の柱の中。

 杭を粉々に、内部から砕き、彼は姿を現した。だが、彼の姿はヒトとしての形ではなかった。

 巨人の様に巨大な腕のみがあり、その腕の根元には、足や眼球、歯といった人間の部品であろうものが、肉塊に引っ付いており、僅かに蠢いている。

 それは、赤のバーサーカーの宝具──庇獣の咆哮(クライング・ウォーモンガー)という、敵より与えられたダメージを、己の糧とし、肉体をブーストさせるというものによるものだ。

 そして、口と思わしき部品が蠢いて、言葉を発する。

 

「圧セ──我──愛────を────!」

 

 その言葉は途切れ途切れだった。──だが、黒のランサーは、理解する。

 これから圧制者たる私に対する攻撃が始まると。

 その証拠として、巨人の腕が動いた。拳を振り上げるように、天高く伸ばし──振り下ろす。

 黒のランサー(ヴラド)めがけて、捻り潰そうと、振り下ろされる。

 ──黒のランサーは、その攻撃を回避しようと、後方へと高く跳んだ。

 

「ぐ、ぅっ!?」

 

 確かに、拳の直撃は避けた。だが、その威力は隕石が落ちた、と錯覚させる程に凄まじく、それによって発生した衝撃波だけは、回避する事は叶わず、黒のランサーは吹き飛び、もんどりを打った。

 

「────汝──抱擁──」

 

 そして、2発目の攻撃を行おうと、再びその拳を振り上げる。

 ──人間の身体を棄ててでも、圧制者に叛逆する。

 それは最早悪霊が持つ執念だ。

 起き上がった黒のランサーの形相は恐ろしいほどに、歪んでいた。

 

「──オノレ」

 

 その怒りようから、さらなる攻撃を加える──かに思われたが、黒のランサーは赤のバーサーカーに背を向けた。

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私はこうも言ったぞ、蛮族。()()()()()()()だと」

 

 ──極刑王(カズィクル・ベイ)

 

「おおおおおおォぉおおおおぉッ!?」

 

 そして、赤のバーサーカー(スパルタクス)()()()()()()()()()

 黒のランサー(ヴラド)は、何度も赤のバーサーカー(スパルタクス)に攻撃を行っている。──そして、攻撃が行われた時点で、赤のバーサーカー(スパルタクス)は、黒のランサー(ヴラド)()()になったのだ。

 ──そして、赤のバーサーカー(スパルタクス)の肉体は、ミキサーにかき回されたように、粉々になった。

 

「──余は王だ、故に我が領地に踏み入った蛮族はこうなる」

 

 黒のランサーは、城の中へと悠々と入っていった。

 

 

失墜()────ッ!!」

 

 黒のセイバー(ジークフリート)は、己の宝具を放つ。途中で地震があったが、この攻撃は令呪の命令によるものだ。よって、地震程度で中断する事は不可能だった。

 そして、剣が振り下ろされ、光が赤のライダー(アキレウス)へと伸びてゆく。

 

「────ッ!!」

 

 ──果たして、赤のライダーの肉体には、傷一つ付いていなかった。強いて言うならば、砂埃が少々付着した程度だろうか。

 

「ナアアァァ──────ッ!!」

 

 黒のバーサーカー(フランケンシュタイン)が、黒のセイバー(ジークフリート)の放った宝具によって、大気に満ちた魔力を吸い、赤のライダー(アキレウス)へと突貫する。

 だが、振るわれた戦鎚(メイス)は、片手で受け止められた。

 

「────ウゥ」

「宝具を使っても、俺の体は傷つかなかった。そして、お前らはこの赤のライダーが撃ち取る。──死ぬ時は陽気が良いぜ?」

 

 赤のライダーは槍を振るい、黒のバーサーカーの首をはねた。

 はねられた黒のバーサーカーの首は、地面にコロンと転がった。

 ──だが、黒のバーサーカーは死んでいない。

 

「ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥゥゥゥ──────ッ!!」

「何!?」

 

 その雄叫びを精神の弱いものが聞いたら、気を狂わせる程に、おぞましい叫びと共に、首の無い黒のバーサーカーが、地面に突き立てた戦鎚(メイス)から、雷が赤のライダーに降り注いだ。

 ──磔刑の雷樹(ブラステッド・ツリー)

 それが黒のバーサーカー(フランケンシュタイン)の宝具。リミッターを解除し、敵に雷撃を浴びせるというものだ。

 ──だが、今回はリミッターを解除せずに、使用している。

 ──それでいい。

 一瞬の隙さえ作れれば。

 一瞬怯んだ赤のライダーの元から、黒のバーサーカーは離れ、黒のバーサーカーと入れ替わるように、矢が飛んで来た。

 

「ガ────ッ!?」

 

 その矢は、()()()()()()()()()()()()()()()

 ──馬鹿な。

 赤のライダー(アキレウス)はありとあらゆる攻撃を受け付けない不死の肉体を持っている。

 そんな肉体に、傷を付けた。傷付けられる人物がいる。

 

「ハ、ハハハハハハッ!! ──素晴らしい。今のは黒のアーチャーによる攻撃か!?」

 

 その事実に、赤のライダー(アキレウス)は笑い、喜ぶ。

 そして、黒のアーチャーと、自分が戦う事は必須だと理解する。──何故ならば、黒のアーチャーは赤のライダーの肉体に傷を付けた──それはつまり、不死身の英雄(アキレウス)という存在を殺す事が出来るのだから。

 そして、黒のアーチャー()が森の木々の奥から姿を現した。

 

「な──────」

 

 赤のライダーは、黒のアーチャーの姿を見て絶句した。

 ────生前、出会い、寝食を共にし、語り合い、教えられた事が……!!

 

「あ、────なたは──」

 

 赤のライダーは黒のアーチャーに、肉体による攻撃を加えられ、最後まで続かなかった。

 だが、赤のライダー(アキレウス)は未だに戸惑っている。だって、何故ならば、敵は、黒のアーチャーの真名は──ケイローン。

 生前、アキレウスを英雄にする為に育て上げた──アキレウスの師なのだ。

 

「ええ、その通りです」

 

 黒のアーチャー(ケイローン)は頷いた。そして、赤のライダー(アキレウス)は悟る。

 ──ケイローンは、敵として召喚されたと──。

 

「セイバー! バーサーカー! キミ達はボクのピポグリフに乗って!!」

 

 黒のライダー(アストルフォ)は、黒のセイバー(ジークフリート)と、黒のバーサーカー(フランケンシュタイン)に、彼の(ピポグリフ)に載せるように促す。

 そしてピポグリフは、主人である黒のライダーを置いたまま、少しだけ重そうな顔をしながら、飛び立った。

 

「ボクも後で行くから、頑張れ!」

 

 黒のセイバーと、バーサーカーは、先ほどある指示を受け取った。

 それは、黒のキャスター(アヴィケブロン)の宝具を、破壊しようとしている人物の討伐。

 黒のアーチャー(ケイローン)は霊体化して、セイバーとバーサーカーの元に向かいに行き、そこで自身の弟子(アキレウス)の姿を見て、彼を倒せるのは私だけだ。と確信し、そのまま赤のライダー(アキレウス)と対峙する。

 そして、残った黒のセイバー、ライダー、バーサーカーは、マスターの指示により、キャスターの宝具を守護しに行く────。

 

 

 

 時は、赤のライダーと黒のアーチャーの邂逅より、少々巻き戻り、泉は突然発生した地震により、よろめくがすぐに体制を立て直した。

 同様に、黒のキャスター(アヴィケブロン)もまた、戸惑ったものの、己の策を実行する為にゴーレムを操作する。

 黒のキャスターの策というのは、驚く程に単純だ。ゴーレム一体一体の戦闘力は、サーヴァントには届かないし、腕のある魔術師にも破壊させる。

 ──だが、一つだけ利点がある。それは、ゴーレムの製作者が、キャスター故の利点。

 ────大量生産。

 つまり、──数だ。

 一体で勝てないならば、更なる数を送る。サーヴァントでも大量のゴーレムを雪崩れ込ませれば、良くて勝利、悪くても傷を負わす事ぐらいは出来るだろう。

 黒のキャスターは、付近のゴーレムを──見張り用の物を除き──全てを泉の元へと集結させた。

 

「うわぁ……あんなにいるとゴキブリみたい……」

 

 泉は現れた大量のゴーレムを見て、そんな感想を漏らした。

 数にして、40体近くだろうか。

 あんなにいると、勝てるかどうか──。先ほど使用した魔術を使うにも、代償(フィードバック)があるため、その瞬間を突かれたら、攻撃される──つまり、死ぬだろう。

 故に、ゴーレム達とは徒手空拳で戦わなければならない。

 

「ま、勝つんだけどね!」

 

 泉は、ゴーレムの群れへと突撃していく。

 泉の拳を何度か当てれば、ゴーレムは破壊される。──だが、それでも。

 ──ちょっと無茶だったかな?

 数が多すぎる。一発でも攻撃を食らえば、泉の骨は砕け散るだろう。故にゴーレムの放つ攻撃に当たるわけにはいかない。

 それを大量のゴーレムに囲まれ、行わなければならないのだ。

 

「とう!」

 

 ──これで3体目。

 泉の拳によって、ゴーレムが倒れる。戦闘開始から既に10分が経過しているが、まだ3体しか倒せていない。

 泉の体力は、じわじわと削られていくが、ゴーレムに疲労という概念は存在しない。

 

「……ふぅ……少し──いや、かなーりヤバいかも?」

 

 ──このままでは、負けるのは泉だ。

 そんな絶望的な状況の中、一筋の光明がささった。

 ──否、刺さったのは矢だった。

 ゴーレムに一本の矢が刺さり、砕け散った。

 泉は一瞬戸惑うが、すぐに矢が飛んできた方向を見て、笑顔になる。

 

「──アーチャー!」

「汝、少々無茶が過ぎるのではないか?」

 

 そこには弓をつがえ、獅子の耳と尾と、髪を風に揺らしている泉のサーヴァント(アタランテ)がいた。

 泉はゴーレムの群れから抜け出し、赤のアーチャーの元へと走る。

 

「ありがと! 死ぬかと思ったよ!!」

「……阿呆か、あの数では流石に勝てないのはわかるだろう?」

「いや、行けると思ったんだよ。ま、ムリだったんだけどね!」

 

 そんな泉の言葉に、赤のアーチャーは少々呆れる。

 泉はそんな赤のアーチャーの様子を見て、流石に少しばかり反省した……のか、アホ毛をしょんぼりとさせている。

 

「ま、いいや。今回は読みが甘かったボクが悪いんだし──アーチャー、お願い!」

「承知!」

 

 ──そこからは、あっという間だった。

 アーチャーが弓を穿てば、ゴーレム達はあっという間に粉々になって砕け散り、やがて全てのゴーレムが粉砕された。

 そして、これで一息つける──と思った瞬間、赤のアーチャーの鋭い視覚は、森の向こうよりやってくる存在を捉えた。

 

「あれは……」

 

 赤のアーチャーは、ソレの姿を明確に見定めるために、目を細める。そして見えたのは──ピポグリフという幻獣に跨った黒のセイバーと、黒のバーサーカーであった。

 その姿を視認したアーチャーは、自身の弓を強く引き絞る。

 赤のアーチャー(アタランテ)が持つ弓──名を天穹の弓(タウロポロス)。守護神アルテミスより授かったその弓には、とある機能が存在する。──その機能とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、というものである。

 そして最大限まで引き絞り、放たれた矢は──黒のセイバー(ジークフリート)の堅強なる鎧を打ち砕いた。

 

「────ッ!?」

 

 黒のセイバー(ジークフリート)は、肩に突き刺さった矢を引き抜く。その矢は頭を狙っていたのだが、直前で肉体をずらして肩へと着弾させた。だが、まさか自身の鎧を貫くとは──! その予想外の出来事に、驚きを露にしながら、黒のバーサーカーとともにピポグリフから飛び降りた。

 敵はアーチャー。このままピポグリフに乗っていては、狙撃されるだけだ──。そんな判断で飛び降りたのだ。

 赤のアーチャーは、ピポグリフより飛び降りて、宙を落下している黒のセイバーに、再び狙いを定めて矢を放った。

 だが、その矢は空中で引き抜いた漆黒の大剣によってはじかれた。

 地面に着地した黒のセイバーと、黒のバーサーカーは走る。泉と赤のアーチャーがいる場所へと────

 

 




お手数ですが、誤字を見つけた場合は、ご一報くださいませ。無いといいんですが……

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