THE LAST OF US ×学園黙示録   作:たまごねぎ

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12/5 タイトルを変更しました。


#4 インフェクテッド

 どうする───平野の問いに対し僕は返答が返せずにいた。

 当然ながら平野に付き合って護衛の頼みを引き受ける理由は無い。それに平野の様に銃、つまり武器に執着する理由も自分にはないのだ。

 だが、平野が言うように自分達が今いるこの世界も奴らが蔓延っているであろう元の世界に負けず劣らずヤバいらしい。となると、この先必ず武器が必要になってくる。

 

 しかしだ。その武器を手早く手に入れる為には多大なリスクを伴う護衛の頼みを引き受けなければならない。加えて自分達は何の武器も持っておらず護衛することはおろか自分自身の身を守れるかすら怪しいのだ。

 

 思考を一旦止めると、平野へと疑問を投げかける。

 

「平野、よく考えてくれ。僕たちは今なんの武器も持っていないんだぞ、これじゃあ護衛どころか自分の身を守れるかも───」

 

『ちょっと待って頂戴」

 

 話は黒人の女性の声によって遮られた。一体なんなのだと苛立ちを覚えながら女性の方へと非難の視線を向ける。

 

『ごめんなさい、私の説明が足りなかったわね。もしあなた達が護衛の頼みを引き受けてくれるなら、その間だけ武器を貸すわ』

 

「武器を貸す?」

 

『ええ。確か、その木箱に入っていた筈よ」

 

 そう言うと女性は部屋の隅に置いてあった黄色のペイントが施された木箱を指し示す。僕は彼女の言葉が事実かどうかを確かめるために、その箱の蓋を取り中を覗き込んだ。

 

「凄いな……本物の銃と、弾丸だ」

 

「えっ!ホントに!?」

 

 僕の漏らした言葉に反応した平野は木箱へと駆け寄り、中身を覗くと興奮と喜びが入り混じった表情を顔に浮かべ眼鏡の奥の目をギラギラと輝かせながら箱に入っていた二つの銃の内、一つを手に取るとニヤリと口元を大きく歪めた。

 

「リボルバー………メーカーの名前は消えてるけど、多分タウルス社のヤツだな。大口径ではないな、となると──」

 

 ブツブツと何事かを呟きながら平野は銃をじっくりと眺めたあと、弾倉に装填されていた弾丸を取り外し手に乗せると状態を確認していき、状態を確かめ終わると再び弾倉に弾丸を込めた。

 

 求めていた銃に触れられた事がよっぽど嬉しかったのだろう、幸せそうな表情を浮かべながら銃を眺めて悦に浸っている平野を横目に僕も木箱の中に入っていた銃を取り出す。

 

「それはッ!コルト・ディフェンダー、天才銃工と名高いジョン・ブローニングが作ったアメリカの象徴とまで言われてるあのガバメントを護身用に改造したヤツだよ!!」

 

「お、おう、解説ありがとな」

 

 興奮した様子で口早にこの銃を説明してくれた平野に若干引きながらも感謝の言葉を送ると、再び視線を手に握られている銃へと落とす。

 エアガンなどとは比べ物にならない重さだ。加えて人の命を奪う道具なのだと言う事実が銃をより重くしているように感じられる。握られた銃を見つめながら僕は再び、どうするべきかを考える。

 

 多大なリスクが存在する事は変わらないが、少なくとも身を守れる術は得る事ができた。戦う為の手段を得た事が動機となり、少し前までなら絶対に頭に浮かぶ事は無かったであろう“頼みを引き受けても良いのではないか”との考えが頭に浮かんできた。

 

 どうせいつかは手に入れる必要性が出てくるのだ。加えてこの頼みを引き受けなかった場合、武器を手に入れる為には更にリスクの高い手段を選ばなければいけなくなる。

 

 悩み、悩み、悩み───僕は決断を下した。

 

「平野、決めたよ。僕も彼女の頼みを引き受けることにする」

 

 その言葉に平野は銃を眺めるのを止めて緩んでいた表情を引き締め、僕の方へ向き直る。

 

「小室、この頼みを引き受けるって事の意味が分かって言ってるんだよね」

 

「ああ」

 

 僕の言葉を聞いた平野はそれ以上追求する事はなく、頷きを返すと木箱の中に入っている物品を床に並べ始めた。

 

『話は済んだようね。準備が終わり次第、倉庫に向かいましょう』

 

 

 ****

 

 

「こんな事を言うのもなんだけど小室が護衛の頼みを引き受けるって言った時、耳を疑ったよ」

 

「どうしてだ?」

 

「いや、多分断るだろうなって思ってたからさ。小室は僕と違って武器とか求めてなかったしね」

 

「………多分、この先武器が必要になってくる。だから今が手早く武器を手に入れるチャンスなんじゃないかって思ったんだ」

 

「それよりも平野。さっきから顔が緩みまくってるぞ、銃を貸してもらっただけでそこまで喜ぶか?普通」

 

 銃を見つめながらニヤけ面を浮かべる平野の姿は完全に危ない人のソレだ。

 現在、僕たちは後方にいる女性の案内に従い倉庫に繋がる道を女性を護衛しながら歩いている。

 

 建物を出た当初は辺りを警戒している軍に見つからないように慎重に行動していたが自分達が歩いている女性からこの辺りは軍やごろつきが滅多に来ないとの言葉を聞き少しだけ警戒を緩め、不安と緊張を紛らわす目的で声のボリュームを抑えながら平野と会話をしていた。

 

「当たり前だよ!!なにしろ一ヶ月前からずっと触ってなかったから、何というか久しぶりに触れて感無量って感じ」

 

「平野、声!」

 

「あ……ゴメン」

 

 慌てて口を抑えた平野は僕と女性に申し訳なさそうに頭を下げたあと、ふと何かに気づいたのか僕の方に体を向けた。

 

「一応聞くけど小室って本物の銃の使い方は知ってる?」

 

「いや、撃つとき以外は引き金に指を掛けちゃいけないって事ぐらいしか知らないな」

 

 銃の知識などテレビや映画で見た事ぐらいしか分からない。当然ながら専門的な知識など知るよしも無い。

 

「じゃあ僕が教えるよ」

 

「教えるって……平野は知ってるのかよ、本物の銃の使い方」

 

 僕の言葉を聞いた平野は口元に笑みを浮かべ、もちろんと言った。平野の言葉に思わず驚きの声が口から出た。

 

「アメリカに行った時、ブラックウォーター社って言う民間軍事会社に務めていた元デルタフォースのインストラクターに一ヶ月間、銃の使い方とか色々教えてもらったんだ」

 

 その時の事を思い出しているのか顔を綻ばせながら語る平野を僕は驚愕の眼差しで見ていた。言動の端々から平野がミリオタである事は気づいていたが、まさか実銃を扱えるとは───

 

「何というか、平野ってそう言う方面には本当に凄いのな」

 

「フヘヘッ、あ、ありがとう。それじゃあ早速、使い方を説明するね」

 

 平野は女性から貰ったバッグの中から借り物のガバメントとマガジンを取り出すと使い方の説明を始めた。

 勿論、命を奪う武器である銃を使用する事に抵抗はある。だが生き延びる可能性を少しでも上げる為には、使う使わないなど言っていられない──“使えるようにならなければいけない”のだ。

 

 恐らくだが次に死んだ場合、もう生き返る事はできないだろう。そうならない為にあらゆる手を打っておかねばならないとの考えを抱きながら僕は平野の説明を聞いていた。

 

 

 ****

 

 

『そろそろ倉庫に着くわ。この辺りは軍やハンター達は来ないけど、その分感染者が多い。音を立てないように静かに行動して』

 

 女性の言葉に僕と平野は頷きを返すと、より慎重に歩みを進める。

 軍やごろつき達とは違い感染者は感染してから間もないランナーを除けば聴覚以外の感覚を失っているらしく音さえ立てなければ問題ないとの話だった。

 だが問題はランナーだ。感染初期の段階にあるランナーは感覚を失っておらず、音を立てずとも見つかれば襲いかかってくるらしい。

 

 元の世界の奴らなどよりも遙かに厄介な相手とこの先戦っていかなければいけないのかと思うと早くも気が滅入りそうになる。

 

 そうして暫くの間、周囲に敵がいないかを確認しながら歩いていた時だった。自分の少し後ろを歩いていた平野が何かに気づいたのか止まれのジェスチャーをする。

 僕たちがいる場所から数メートル離れた路地からヨタヨタと覚束ない足取りで何者かが出てきた。

 

 その姿を視認した僕たちは咄嗟に近くの建物の壁に隠れ、路地から現れたソイツの動向を窺う。ソイツは覚束ない足取りで数歩ほど歩いたあと突然頭を押さえながらその場に立ち尽くし動かなくなった。

 

『ランナーね。ただでさえこの辺りは感染者が多いのに……最悪のタイミングだわ』

 

「ランナーって事は、アレが……感染者」

 

 ビラのイラスト通り、頭からは僅かだが茸の傘のような物体が生えているのが見えた。実物を見ている為だろうか、ビラで見た時よりも何倍もおぞましい。

 

「どうします?撃ちますか」

 

 平野の言葉に女性は呆れた表情を浮かべ溜息を吐くとダメだと平野の言葉を否定した。

 

『銃を撃ったら、その音でまた別の感染者が寄ってくるわ。となると何か音を立てておびき寄せるしかないわね』

 

 そう言った女性が地面に落ちていたガラス瓶を拾うのを見て僕と平野は彼女が何をしようとしているのか理解した。

 

「瓶を使っておびき寄せるんですか?」

 

『いいえ。まずはあのランナーの他に感染者がいないかを確かめるのが先よ』

 

 女性は怪我を負っていない方の手でガラス瓶を僕たちのいる場所からできるだけ離れた所へと投げた。数瞬のあとガラスが砕け散る音がかすかにだが聞こえた。

 情報通り、棒立ちのまま動かなかったランナーは破砕音に反応しガラス瓶が落下した場所へと叫び声を上げながら走っていった。加えて周囲の建物からも破砕音に反応した六、七体の感染者が現れ音源へと走っていく。

 

『予想通りね。もう一度投げるから奴らが音に気を取られている間に前に進みましょう』

 

「分かりました。もし、奴らに見つかった場合は?」

 

『そうならないように祈っているけど、見つかったとしたら戦うしかないでしょうね』

 

 女性のその言葉を聞いた平野が銃を手にした時に見せた笑みの数段上、凶悪な笑みを浮かべながら腰のベルトに差していたガバメントを抜いたのを僕は見逃さなかった。武器を持つと人格が豹変する人物はアニメや漫画などで目にした事はあったが、まさか平野もソレだったとは。

 

 平野にならい、僕も腰のベルトに差しこんであるリボルバーを抜いた。何も化け物と戦うのはこれが初めてでは無い、怖じ気づいて銃の引き金が引けないと言う事はないだろう。

 

『頭を狙いなさい、そうすれば一発で仕留められる。それじゃあ──いくわよ』

 

 再度、同じ場所にガラス瓶が投じられる。それと同時に女性を間に挟み込む形で護りながらひたすら前に進んでいく。極度の緊張で全身から汗が噴き出る、なにせ怪我人を護衛しながらの移動のため只でさえ数で勝る感染者の近くをゆっくりとしたスピードでしか移動できないのだ。

 頭の中ではこの女性を置いていけとの考えが絶えず浮かんでくる。──が、元の世界の学園で僕は■■■、■■■と一緒に生き延びる事で精一杯で同級生を見殺しにした。だから次こそは見殺しにはしない、絶対に一緒に生き延びてみせる。

 

 そして感染者達から数十メートル程度の距離を離した所まで来たとき前の建物から新たに一体、感染者が現れた。覚束ない足取りでふらふらと出てきたランナーは僕たちの姿を捉え───

 

『アアアァァアァァ!!!』

 

「R O C K ' N ’ R O L Lッッ!!!」

 

 荒廃した町に銃声が鳴り響く。叫び声と共に引かれたトリガーは撃鉄を打ち鳴らし弾倉に詰め込まれた弾丸を叩く。ライフリングを通り銃口から発射された弾丸は狙いを誤る事なく感染者の頭部めがけて空気を切り裂きながら突き進み───感染者の脳天を貫いた。

 

「小室ッ!来るよ!!」

 

 今の銃声でガラス瓶に引き付けられていた感染者達が叫び声を上げながら僕たちを殺そうと近づいてくる。平野に教わった通りに銃のグリップを握り、近づいてくる感染者達へと構える。

 彼我の距離は数十メートル。平野の話によると、僕の持つリボルバーの有効射程は三十メーターほどらしいが素人の僕ではその距離で命中させる自信は無い。

 

『やるしかないようねッ!』

 

 女性も怪我を負った脇腹を押さえながら手に持った拳銃で奴らを撃っている。

 引き付けろ───少なくとも数メートル程度の距離なら命中させる事が可能だ。

 

「弾切れッ!不味い、小室!!」

 

 弾倉の中の弾薬が尽きたのだろう、平野の酷く焦った声を聞きながら僕は数メートル程度まで近づいてきた感染者と目が合った。

 

 “奴ら”と同じ目だ。何の感情も無い、ただ目の前の獲物を殺すことしか頭に無いのだろう───そんな奴らに二度も殺されて堪るものか。

 

 それに元の世界では僕が■■■を殺すのを躊躇った所為で大切な■■■を失った。これ以上、自分の躊躇いの所為で誰かを失う事は耐えられない。

 

 思考は未だかつてない程に冴えている。狙いは頭部。トリガーに指を掛け、かつて人間だった物へと僕は“今度こそ”躊躇う事なく引き金を引いた。

 

 銃声と共に射出された弾丸は目の前の感染者の頭部を貫通し、その生命を奪った。周りを見渡せば他の感染者達も二人が始末したのか叫び声と銃声で満たされていたこの場所に再び静寂が戻る。

 

 頭部から自分と同じ赤い血を流し倒れる感染者へと目を落とす。やはり命を奪う事は慣れないなと思いながら、握り締めていた銃から手を離しベルトの間に差し込もうとした時だった。

 

 すぐ近くで叫び声が聞こえた為に咄嗟に顔を上げると自分から数歩ほど離れた路地から今まで隠れていたのか顔の右半分が茸で覆われた感染者が歯をむき出しにして襲いかかってくるのが見えた。

 

 不味い───銃をソイツに向けるが僕がトリガーを引くのと奴が僕の体に喰らいつくのでは奴の方が僅かに早い。一瞬の後に感じるであろう激痛に耐えようと目を閉じて歯を食い縛る。

 

 が、その痛みが訪れる事は無かった。恐る恐る閉じていた目を開くと僕の視界には───

 

「大丈夫かね?」

 

 この場に似つかわしくない、藤美学園の女子生徒が着るセーラー服に身を包み凛とした雰囲気を纏った女性が僕を襲った感染者の血で濡れた木刀を携える姿が映っていた。

 




ラスアス2のトレーラーを見ましたが、2もジョエルとエリーの物語らしいです。どんなストーリーになるのか楽しみなんじゃ~
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