その眼は何を語るのか 作:また抜き
何もない空虚な夜空に浮かぶ黄色い満月、それは全てを見透かし、全てを見守っていた。
「何故だ!イタチ!!どうして…こんな」
「…」
街灯のない街並の外れの中唯一の明かりである月に照らされているのは二人の青年と少年。
青年は18、9歳ほどの少し細身でその眼は三つ巴になっており紅く輝き、困惑している。
少年はただうつむき、青年の疑問を受け流している。
「答えろ!なんでこんな真似を!!」
「…己の器を…測るためです。」
何?と呆気にとられた顔をしながらも青年が少年を睨みつける。少年はそれ以上何も言う気がないのか黙って下を向いている。
「何が…あった?何故こんなことに…」
「…これ以上ここにいるのはマズい。どいて下さい」
青年の疑問に答える気がないのか、青年の言葉を遮って少年は刀を構えながら一歩踏み出す。
冷たい風が吹き荒れる、少年の眼は青年と同じ紅に染まり、その眼からは敵意しか感じられない。
「イタチ…お前を殺したくはない…」
「…俺が何の対策もせずにここにいるとでも?」
青年の悲痛に満ちた声を嘲笑うかのように少年が挑発をする。
「…そうだったな。お前は俺が知る者の中でも最高クラスの忍びだ。常に油断せず、常に最善の結果を出し続けた。」
「…ぁぁ、だがそんなことはどうでもいい…そこを…どけ!あなたを殺したくはない…」
少年の赤い瞳からは涙が溢れており、頰を流れ地面に落ちていく。その手に握られている刀は力みすぎて震えている。
「もう一度聞く、何があった?何故こんな真似をした?」
「…ぅ、おぉぉ!」
青年からの疑問を無視して少年が駆け出す。
「…悪いな、ここでお前を止めさせてもらう!!!!」
「うぉぉぉぉ!!」
少年は青年に接近し刀を振ろそうとして、やめる。
青年の手には日本のクナイ、そのクナイはチャクラで強化されており赤黒い色になっている。
少年は少し引き下がり、術を発動させるべく印を結び始める。
「火遁豪火球の術!」
少年の口から巨大な炎の玉が吹き荒れる。その大きさは半径3メートルほどで青年を燃やし尽くすべく、近づいていく。青年も印を結び始め、術を発動させる。
「水遁水滝壁の術!」
水の壁と炎の玉、二つは拮抗し合いながらも少しづつ炎が水に飲み込まれ、小さくなっていく。
少年は火が完全に消えるのを見届けることなく手裏剣を連続して投げる、それは早く、そして正確なものだ。
青年もクナイを飛ばしそれを弾きかえす。
「…」
「…」
互いに攻め入る隙を狙い、いつでも戦えるよう体制を整える。
「 ーーー!」
先に動いたのは青年だった。
「千鳥千本!!」
雷遁千鳥千本、千鳥を千本のように細かく投げる術だ。
少年もその数を前にして避ける事を諦めたのか、自身も千本を投げてそれを相殺させる。
「俺にそんな小細工は通用しませんよ。」
少年が言う。
「…そうだな、俺も任務から戻ってきたばかりで疲れてるんだ。そろそろ諦めないか?」
「…残念ですが貴方の望みは叶わない!水遁水龍弾の術」
言い終えた少年は神速、とも言えるスピードで印を結び、水の龍を出す。
「…水遁か」
水の龍は青年を食い殺ろすように襲いかかる。
「…土遁土龍弾!」
青年は土でてきた龍を地面から作り上げ、水の龍とぶつける。土は水を吸い取り、崩れ落ちる。
「…さすがですね。」
「…お前こそ。」
「しかし勝つのは俺です。万華鏡写輪眼!」
勝利宣言をした少年の眼が変化する。赤い眼はさらに紅く、そしてその模様は手裏剣のような模様に変化する。
万華鏡写輪眼、最も親しい者の死によって開眼されるうちはの究極瞳術。その力は圧倒的なものだ、左右の眼に宿る新たな力とその二つの力を持った者のみが手にする最強の能力。しかし青年の顔に危機感は見当たらない。
「…俺も使えるというのを忘れたのか?」
「いいえ、しかし今は使えない。そうですよね?」
「…知っていたのか?」
「はい、そして今あなたはかなり無理をしている。」
図星をつかれたのか青年の顔に焦りが浮き出る。
冷や汗が額から滴る。
「今のあなたに負ける道理はない。」
「…そいつはどうかな…」
青年が印を結ぼうとした瞬間、少年が左眼を大きく見開く。そしてその眼からは赤い血が流れ落ちる。
「
「!?チィッ!!」
青年はすぐに印を結ぶのを中断して横に走り出す。先ほどまで青年が立っていた場所は死の黒炎に焼かれていく。
「くそっ!土遁土塊壁!!」
青年は走りながら早々に印を結び土の壁を作り出す。それは少年の視界から自身を消すためのものだ。
もちろんすぐに燃やされてしまうが少年が土壁の裏を見たときには青年はすでにいなかった。
「どこに…くっ…はぁ、はぁ」
左眼を閉じて少年は青年の姿を探す。
しかしその姿はすでにこの場にはなく、少年と次第に消えていく黒炎だけが残っていた。
「(どこに…いや、深追いはよそう。撤退できるのは今しかない。)」
少年は青年を探すのをやめて里から出るために門の方へと歩き始める。
「(それにしても、あの人が逃げるとは…やはり思えない。警戒は怠らない方がいいだろう。尾行されている可能性もある。)」
幸いにも門まで行くのに誰とも遭遇せず、門の前にも誰もいない。少年は少し安堵したように息をついて、すぐに眼を見開く。
「しまっ…!!!」
少年の視界が歪み始める。ぐわんぐわんと音を立てながら自分が地面が、空が月が、空間が…世界が歪んで崩れ始める。
少年は驚愕の表情を浮かべながらもそれに抗えずに地に倒れ伏す。そしてーーー
「幻術だ。」
青年が姿を現し倒れている少年を見下す。
「…く…いつ…の間に…」
「簡単な話だ。何事も上には上がいる。俺の幻術も使いどころでは万華鏡写輪眼持ちのお前にだって作用する。お前の月読には劣るが瞬間的な発動は得意だ、それこそ息をするように幻術をかけられる。」
「…」
里に戻るぞ、と言いながら青年は少年を肩に背負おい、里の中に戻っていく。
「何故こんな真似をした?」
木々ばかりでまだ家などは見かけないが里の中を歩きながら青年は少しづつ体力が戻りかけていく少年に尋ねる。
「…さっきも言った…はずです。」
しかし少年は答えるつもりがないのか適当に答える。
「…誰かに命令されたのか?」
「…!!?」
「やはりか…誰だ、言え!」
青年は少年を肩から下ろし答えるように言う。
「答えろ!何故こんな真似をしたんだ!」
青年が激昂しながら少年の肩を揺さぶる。少年はやはり言うつもりがないのか顔色を悪くしながらも沈黙を守りつづける。
青年は尋問をするのに熱くなりすぎていたのか気付かなかった。この近くに黒いコートを着た仮面の男がいたことに。そしてその男は厄災であることに…
「そこまでにしてもらおうか。うちはユウキよ」
「「!?」」
突然現れた仮面の男に驚きながら青年は警戒を少年は安堵の表情を浮かべる。
「何者だ。」
青年は少年を背に隠し、自身はクナイを構えて仮面の男と対面する。その光景がおかしかったのか仮面の男はクククと笑い、自身の名を明かす。
「…何?そんなバカな!」
「….事実です、ユウキさん。彼の名はうちはマダラ。かつて初代火影千手柱間とともにこの里を作り上げた創始者。そしてうちはの創始者でもある。いくらあなたでも勝機があるとは思えない。引いて下さい。」
うちはマダラ、そう自ら名乗った男は青年にゆっくりと近づく、警戒している様子はなく自然に歩いていく。
「イタチ、もう回復しているだろう?こっちに来い。」
仮面の男の言葉に従うように少年が立ち上がり、歩き始める。青年は止めようと後ろを向くが、
「かかったな!」
青年が後ろを向いた瞬間、仮面の男が前に進み、青年の背にクナイを突き刺す、急所は外れていたが血が噴き出る。
「グ…クソォ。」
青年は倒れ、少年はその横を通り過ぎて仮面の男の横に行く。
「言い残すことはないのか?イタチ」
「…ユウキさん、サスケを…………頼みます。」
青年は起きているのか眠っているのか、彼の倒れているところはおびただしい血で濡れていた。
仮面の男は少年が言葉を言い終えたのを確認すると仮面の奥で光る眼を使い、少年とともに闇に消えていった。
「またあの夢かよ…朝っぱらから最悪だな。」
少し高価そうな部屋の中でベッドから飛び上がるようにして起きた男が頭をかきながらぼやく。
「ユイのやつは何してんだよ。」
男はベッドから降りて時計を見る。その針は12時30分を指している。男の頰に汗が流れる。
「…寝坊した。」
今日はサスケのアカデミー卒業試験の日だから観に行くつもりだったのになぁ、とつぶやきながら部屋を出てリビングに歩いていく。
「あら?ようやく起きたのね。早く昼食作ってよね。」
リビングには一人の女が椅子に座っており、足を組み、腕を組み、上から目線でユウキに言う。その偉そうな態度を見てユウキは溜息を吐き、昼食の準備をし始める。
「…で?サスケの奴はどうだった?やっぱり緊張して震えてたか?」
「まさか、いつも通りね。むしろいつもよりいつも通りだったわ。」
その言葉に苦笑したユウキは相変わらずだなと独り言を言い、卵を焼き始める。
「でもあいつも似てきたよなぁ、イタチに。ユイはどう思う?」
「…あんたはなんでそうやって空気を読まないのかしら?」
ユイと呼ばれた女はイタチ、という名前に反応しユウキをじと目で見ながら言う。
「…ま、俺はイタチを信じてるからな。」
「…わからないわ、あんたはあの時私が駆けつけなければ出血で死んでいた。それにイタチは一族を殺したわ、いかなる理由があろうとも決して許される事ではないわ。」
ユウキの言葉に反吐がでる、といった表情でユイが反論する。
「…まぁ、そうだな。」
「…この話はやめましょう。暗くなるだけだわ。」
気まずい空気が嫌だったのか、ユイは強制的に話を終わらせ、適当に二人は話し始める。、
「それにしても、今年は優秀なのはあまりいないようね。」
「そうか?サスケに日向の本家の娘、油目のとこの息子も地味だけど優秀らしいぜ?」
「サスケはともかく、日向ヒナタは大したことないそうよ。むしろ去年のネジの方が忍びとしてははるかに優秀ね。油目シノは正直どうでもいいわ、虫は嫌いだからなるべく関わりたくないしね。」
ユイの傲慢な発言に酷いなと苦笑するユウキ。
「それより貴方はどうなの?興味あるそうじゃない、例の人柱力に…」
「ナルトか、当全然だろ?ミナトさんの子供だ、興味はあるさ。」
「そうね、でも結構酷い扱いを受けてるらしいわよね、彼。」
「そうだな、でもまぁ皮肉なもんだよな。四代目の最後の形見を四代目を慕う者たちが虐げるなんてよ。」
悪どい顔をしながらユウキは嗤う。
ついでにその手は野菜を切ることに集中している。
「出来たぞ…飯食ったらどうする?まだ終わってはいないだろうし、見に行くか?もしかしたらサスケのも見られるかもしれないし。」
「そうね、それにもしかしたら面白いのもいるかもしれないものね」
ユウキが机にいくつか皿を並べる、そしてその上にサラダを入れ、茶碗には白飯。そして味噌汁を入れる。最後に大皿に魚を入れて完成だ。
「相変わらず質素ね。」
目の前に並ぶ質素な食事を見てゆいが溜息をつき、食べ始める。ユウキも「うるさい」と言ってから食べ始めた。