冬の神様   作:yosiyosi

1 / 4
001

赤い霧がやっと収まった頃の話だ。

 

「神様が住むのに、ちょうどいい場所ってないかな?」

 

と、そこに居た少女に声をかける。

 

「ですって、紫(ゆかり)」

 

「神様が住むのに丁度いい場所なんて、知らないわね。でも妖怪の山はおすすめしないわよ」

 

「妖怪の山だね。ありがとう」

 

「いえいえ」

 

唐突に現れた紫に動じることも無く、男は『妖怪の山』に向けて足を動かす。

 

「アレ、あんたが連れ込んだ神様?」

 

「さあ?大方、外の世界で生きていけなくなった神じゃないかしら」

 

「ふーん」

 

 

 

 

 

 

「ぱっさぱさー ぱっさぱさー 口も心もぱっさぱさー♪」

 

「あら、素敵な歌ね」

 

男が鼻歌を鼻ずさんで歩いていたら、上から声をかけられた。

 

「ありがとう、それほどでもあると思ってたんだ。君は?」

 

「私は射命丸文。鴉天狗よ」

 

見れば、扇を持って一本歯の高下駄を履いている。

 

「これはどうも。僕は冬の神様です」

 

「ご丁寧に。ところで、妖怪の山には何の用で?」

 

「ここに来る前に、紅白っぽい女の子に神様が住むのにいい場所は無いか聞いたら、急に出てきた紫(むらさき)のお嬢さんにここを紹介されたんだ」

 

「きっと博麗の巫女に妖怪の賢者ね。まあ、彼女達が言うんならそんな厄介な人でも無さそうですし、一応私から上に話を通しとくわね」

 

「ありがとう。僕は君の事そんなタイプじゃないけど、とても素敵だと思うよ」

 

「どういたしまして。私も貴方の事はタイプじゃないけど、それほど素敵だとは思わないわ」

 

そこまで言うと、文はものすごい速度ですっ飛んで行った。

 

「わあ、速いね。ま、どうでもいいけど。

……ふっかふかー ふっかふかー♪」

 

 

 

 

 

 

「うーん、この山に住んだらいいのは何となくわかったんだけど……この山のどこに住んだらいいのかなぁ?」

 

「さあ?」

 

「返事が来るとは思ってなかった。とてもびっくりしました」

 

「それはごめんなさいね」

 

男が振り返ると、髪を首の前で結わった赤と緑なクリスマスカラーの少女が立っていた。

 

「……君はすごくかわいいね。所で、僕はそんなかわいい君のぱんつをお金に変える魔法を使えるんだけど、見たくないかい?」

 

「死ぬほど興味ないわ」

 

「じゃあ僕に近づかない理由はないよね」

 

「あら、そうなのかしら?人に近づかないように教えられてきたの」

 

「それは残念。僕は、君みたいな子がタイプなんだ。結婚しない?」

 

「独身の自由さが好きなの。結婚する気はまだないわ」

 

「そうかい?気が変わったら真っ先に僕に声をかけてください」

 

「ええ。まかせて。じゃあね、冬の神様」

 

「うん。またね、厄の神様」

 

 

 

 

 

 

「彼女の家に居候させて欲しかったな。僕は尽くされるタイプだから、結構可愛がってもらいたかったんだけど……」

 

「何の話?」

 

「いいえ、何にも。あなたも神様?」

 

「ええ。秋稔子よ。こっちは姉の秋静葉」

 

「よろしくね」

 

「よろしくお願いします。信仰しても何も良い事がないことで有名な冬の神様です。冬雪夫って呼んでくれてかまわないよ。そんな名前じゃないけど」

 

よく似た姉妹が男に声をかける。

男も特に驚いた風でもなく片手をあげて返事していた。

 

「本名は?」

 

「まあ、そんな事より。秋の神様なんだよね?」

 

「ええ。まあね」

 

「私は紅葉の神で稔子が豊穣の神よ」

 

「僕も秋は大好きさ。一番好きな季節だよ。読書とか、あと秋刀魚とか好きだし。ああ、もちろん紅葉とかもそれなりに好きです。そして、僕の好きな言葉は五穀豊穣だ」

 

「あら、ありがとう。でもあなた、冬の神様よね?」

 

「ええ、そうです。でも僕は冬が大っ嫌いだ。冬なんか、無かったらいいのに」

 

「変わった人ね」

 

「初めて言われたよ」

 

「じゃあ変わってない人なのかもしれないわね」

 

「そっちの方がいいかな。自分がどこの生まれかは知らないけど日本人としては、大多数に埋もれて個性も何も無い生活を送りたいよ。そして、誰の目にも留まらずひっそりと消えたいね」

 

「あら、見かけによらず殊勝な人ね」

 

「ひょっとして僕の見かけは豪奢なのかな。それも悪くないけど」

 

「いえいえ。所で、今更だけどあなたは何でここに?」

 

「うん。この山で暮らそうと思ってたんだ」

 

「へえ。あ、そういえば、お山の頂上って空き地じゃなかったっけ?」

 

「そうなのですか?」

 

「そうだったと思うわ。別に、高いと偉いなんて思ってるアレはここには居ないから、頂上で暮らせばいいんじゃないかしら?」

 

「うん、ありがとう。こう見えても家を建てるのは得意でね。是非頂上を頂くとしますか。今僕上手い事言ったよね」

 

「じゃあまたね」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「親切な人だったなぁ。何て言ったっけ?秋山……まあいいか。よーし、頑張って家を建てるか」

 

そう言って男は、どこからともなくのこぎりを出す。

そこに生えていた大きな木を20秒ほどで切り倒し、その切り株に腰をかける。

 

「はぁ……家を建てるのも飽きたなぁ。もういいや。今日はこのままここで寝よう」

 

日はまだ真上だというのに、木屑のついた切り株に寝転がった男は、そのまま寝た。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。