Infinite Stratos 学園都市最強は蒼空を翔る   作:パラベラム弾

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九話

「―――ごぶッ、が、ぼォあ……ッッ!?!?」

 

絶叫の代わりに、開いた口から鮮血が滝のように噴き出した。

 

何が起きたのか理解できなかった。

 

アレイスターが腕を僅かに動かした、と知覚した瞬間には、一方通行の腹部が真一文字に切り裂かれていた。凄まじい衝撃を内包した一撃によって彼の身体は綿埃よりも軽々と吹き飛ばされ、更衣室の内壁をぶち抜いてアリーナ内部へと放り出されていた。

 

もはや激痛などという言葉で形容できるレベルではない。灼熱の半田ごてで内臓を直接掻き回されたか、あるいは溶けた鉛でもぶちまけられたか。少しでも気を抜けば直ぐにでも意識が飛びそうな程の『熱さ』に脳髄を灼かれながらも、一方通行はなんとか状況を整理しようと必死に頭を回転させる。

 

彼の能力『一方通行』は熱量、電気量、運動量など、地球上に存在しているありとあらゆるベクトルを自在に操り掌握することができる。地球上で起こる全ての事象は物理法則によって成り立っているため、その法則さえ理解していればベクトルの掌握は容易い。

 

後は事象を数式に置き換え、変数を書き換えて再出力すれば、その改変の結果として反射や統一が行える。

 

だがそれは、あくまでも『既存の法則』が基準である場合の話。

 

読み解いた事象が、彼の頭脳を以てしても理解不能な『未知の法則』から成り立っていたとしたらどうか。定めるべき数式も書き換えるべき変数も求めるべき解も、言葉では説明出来ない不鮮明で曖昧な『何か』で補完され、それでいて正しく世界に出力されている。

 

学園都市における能力とは、平たく言えば途中式を書き換えて別の解を導き出すということ。だが今の状況は、解だけを教えられて「この解に至るまでの途中式を答えよ」と言われているのに等しい。

 

ともすれば、その『解』すらも合っているかどうか分からない、そんな原因不明の一撃だった。

 

(クソったれが……量が多いとか演算が複雑だとかそォいう次元の話じゃねェぞ。もっと別の、大元の部分が決定的にズレてやがる!! 何だ、あの野郎は一体何を持ち出してきやがった!?)

 

ザクロのように裂けた腹部から流れ出る血を能力で止め、痛覚の信号も遮断する。常人ならばまず間違いなくショック死する程の傷と出血を抱えながらも、能力で身体を無理矢理動かして一方通行は立ち上がる。

 

視線を巡らせれば、数メートル程先に楯無が呆然とした表情で佇んでいた。他にも箒や鈴音、セシリア、少し離れた位置に一夏とラウラ、シャルロットの姿も確認できた。どうやら全員無事なようだが、この状況に理解が追い付いていないのだろうか。皆一様に呆然としたまま動かなかった。

 

どちらにせよ、このままここに居てはアレイスターとの戦闘に巻き込まれる。あの不可解な攻撃の前では、絶対防御など何の役にも立たないだろう。流石の一方通行も、アレイスターを相手にしながら彼女たちを守り抜ける自信は無かった。

 

口の中に溜まった血を吐き捨て、

 

「更識、今すぐ全員アリーナから退避させろ。このままここに居りゃ巻き込まれるぞ」

 

「……退避、させろ?」

 

一方通行の放った言葉を耳にした楯無の表情が変わったことに、彼は気が付かなかった。自分が開けたアリーナ外壁の大穴、その向こうに目を向けたまま続ける。

 

「あァ。出来る限り遠くまでだ。少なくとも10キロは離れた場所まで移動して、そこで待機しろ。野郎の狙いが俺だけなら、手出しさえしなけりゃオマエらに被害が及ぶことはねェハズだ。教師にも増援は要らねェって伝え―――」

 

しかし、彼の言葉は最後まで続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「―――バカなこと言わないでッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

悲鳴にも似た楯無の叫びが炸裂したからだ。

 

いつにない剣幕に、驚いたように彼女の顔に視線を戻した一方通行は、そこでようやく楯無の変化に気がついた。普段は楽しそうな笑顔を絶やさない楯無の顔には、一方通行が初めて目にする明確な『怒り』が浮かんでいた。

 

だが彼は、その怒りが何によってもたらされたものなのかを理解することは出来なかった。

 

「あなた、自分が今どういう状態か分かってるの!? そうやって立っていられるのも不思議なくらいの重傷なのよ!? そんなボロボロの身体で、まだ戦うつもりなの!?」

 

「…………、そォだ。これは、俺が撒いた種だ。俺一人で始末をつけなくちゃならねェ。だからオマエらはさっさと撤退しろ」

 

「何を言ってるの!? 撤退するべきは透夜くんの方よ!! 早くISを展開しなさい、そうすればまだ命だけは助かるから!!」

 

「……更識」

 

「これ以上あなたを戦わせはしない。自ら死にに行くような真似は、私が許さない!! 無理矢理引き摺ってでもあなたを戦場から―――」

 

「更識」

 

感情のブレーキが効かなくなり始めた楯無の言葉を、不自然な程に穏やかな声が遮った。

 

思わず言葉を詰まらせた彼女の瞳と、彼の瞳が交錯する。腹の傷など、痛みなどまるで感じていないような、普段通りの無表情。しかし、楯無にはそれが今にも泣き出してしまいそうな子供のように見えた。

 

これはきっと、彼の『我儘』だ。

 

いつだって合理性と論理性を重視して行動してきた彼が、自分の意見をここまで押し通そうとすることなど一度たりともなかった。だからこそ、初めての我儘くらいは聞き届けてあげたいという気持ちはある。

 

(……でも、だからって!! そんな、そんな頼みを聞いてあげられるわけないでしょう!! 透夜くんをここに一人残して行くことが彼の為になるのだとしても、私は―――ッ!!)

 

頼む(・・)

 

「っ―――」

 

その短い一言に、果たしてどれ程の思いが込められているというのか。ダメだと言って切り捨てることは簡単なはずなのに、楯無はどうしても否定の言葉を口にすることが出来なかった。伸ばした腕も、届かない。彼の痩身を捕らえるはずだった鋼の五指は、ガキリと虚空を握り潰すだけであった。

 

そうして場を支配しかけた静寂を、聞き覚えのない第三者の声が破る。

 

『ふむ。お約束とはよく言ったものだが……わざわざ追撃せずに待っていてやったのだ。別れの挨拶は済ませたのかね?』

 

ずぐん、と。

 

言葉では形容し難い重圧が楯無の全身を刺し貫いた。

 

声の主は、緑色の手術衣を纏った銀髪の男だった。今の今まで何も無かった場所に、そこにいることが自然であるかのように立っていた。

 

外見こそ確かに男の姿をしているが、それを『人間』と呼ぶことに楯無は強い違和感を覚えた。眼前のそれと自分が同じ存在であるとはどうしても思えなかった。例えるなら、精巧に作られたマネキン人形。幾ら外見を整えようとも、中身が決定的に異なっている。

 

この男は、もはや人という枠組みに収まる存在ではない。

 

敵対した瞬間に己の死が確定すると、理屈ではなく本能で察した。

 

「透夜、くん」

 

こんな化け物のような存在が、何故彼を狙うのか。何故彼が狙われなくてはいけないのか。彼はこれと戦おうとしているのか。本当に勝てるのだろうか。彼は自分たちに何を隠しているのか。

 

疑問が頭の中を巡り、訊きたいことが無数に浮かんでくる。ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情を乗せて楯無がなんとか言葉にできたのは、少年の名前のみであった。

 

返答は短かった。

 

「―――行け」

 

それだけを口にすると、彼は男に向き直る。

 

楯無はまだ何かを言いかけたが、堪えるように口を引き結び、後方で佇む専用機持ち達へと振り返った。誰もが納得いかないという表情だった。きっと理解しているのだろう。例え全員がこの場に留まったところで、足手纏いにしかならないことを。いの一番に異を唱えそうな一夏でさえも、悔しそうな表情で俯いていた。

 

最初に動き出したのは楯無だった。緩やかな挙動で、鋼の翼がふわりと浮き上がる。そうして、未練を断ち切るかのように一瞬で加速すると、最高速度で空の彼方へと飛翔していった。それを皮切りに、一つ、また一つと背後の気配が遠ざかっていく。

 

周囲に視線を巡らせれば、青紫の機体と暗灰色の機体も既にその姿を消していた。あちらもあちらで、突如現れたアレイスターの脅威を感じ取ったのだろう。敵ながら引き際は弁えているようだ。

 

最後の気配が消失したのを感じると、一方通行は小さく息を吐いた。

 

これで後顧の憂いはすべて消えた。

 

後は、訣別を果たすだけ。

 

汚泥のようにまとわりつく忌まわしい過去に、ケリをつける時だ。

 

『改めて言っておくが』

 

静まり返ったアリーナに、その声はよく響いた。

 

『大人しく学園都市に戻ることを勧めるぞ? 君では私を倒すことは出来んよ。先程の一撃を防げなかった時点で、君の敗北は確定しているのだからな。それとも、ご自慢のISで一発逆転でも狙っているのか? どちらにせよやめておけ。その玩具が役に立たないことくらいは、君も分かっているだろう』

 

ただ淡々と、事実だけを述べるアレイスター。

 

確かに、一方通行はアレイスターの攻撃が何によるものかを理解出来ていないし、ISを展開したところで焼け石に水だろう。反射さえ貫通する攻撃を、絶対防御程度で防げるわけもない。

 

だが、

 

 

 

 

 

「―――勝利条件の違いだ」

 

 

 

 

 

一方通行の顔に焦りはない。

 

「向こうで聞いた話だが、『量産型能力者』なンてのを作り出そうっつゥ計画があったらしいな。それが成功したのか失敗したのかまでは知らねェが、まァ大方頓挫したンだろォよ」

 

まるで世間話をするかのように、言葉を紡ぐ。

 

「もしも成功してりゃ、テメェがわざわざコッチまで出張って来る必要性がねェ。新しい『一方通行』を作り出せば済む話だからな。って事は、超能力者(レベル5)を人工的に作り出す技術は未だに確立されてねェって訳だ」

 

『……、やれやれ。私も暇ではないんだ。時間稼ぎの下らない問答に付き合うつもりは―――』

 

「そンな訳で一つ提案なンだが」

 

呆れたように肩をすくめるアレイスターの言葉を遮るように、一方通行はゆるく両手を広げる。

 

その顔には、引き裂かれたような笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『一方通行(この能力)』を、俺の脳細胞ごと生ゴミに変えちまうってのはどォだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ、まさか―――!!!』

 

一方通行の考えを理解したアレイスターが、初めてその表情を崩す。

 

アレイスターの目的は『一方通行という能力を学園都市に持ち帰る』こと。ならば、その『一方通行』という能力自体が消えて無くなれば、アレイスターの目的を達成することは出来なくなる。DNAを使って能力を複製することも不可能な以上、彼の能力が失われてしまえば終わりだ。

 

既に発動準備は終わっている。

 

後は命令ひとつで能力が神経回路を焼き切って、アレイスターの野望を打ち砕く。どの道反吐が出るような計画でも立てているのだろうし、それを防いでこれ以上の悲劇を減らせるのならそれでいい。

 

 

 

最後の最後、脳裏に幾人かの顔が浮かんできたが、一方通行の決意は揺らがなかった。

 

空を仰ぎ、誰に向けるともなく小さく呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あばよ(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――山田真耶は、学園の地下シェルターにあるオペレータールームで必死にキーを叩き続けていた。

 

10分程前に、学園をモニターしていたカメラが1つ残らず砂嵐に塗り潰された。原因は全くの不明。計器類をチェックしてみたが、狂ったようにデタラメな数値を叩き出し続けていた。

 

加えて、カメラの不調と同時に専用機持ち達との連絡も一切取れなくなっている。何度もコードを変えてコンタクトを試みてみたが、全て徒労に終わっていた。

 

ISの通話回線は、生半なジャミングやハッキングで妨害できるようなものではない。だからこそ、それが繋がらないとなれば叩き付けられる不安や焦燥は凄まじいものになる。

 

もう何回目かも分からないエラーを吐き出したモニターを悲痛な表情で見つめ、それでも再度キーを叩く。何かをしていなければ、生徒達への罪悪感で心が押しつぶされてしまいそうだった。

 

真耶の感性は、一般的な教師のそれと変わらない。

 

千冬も教員免許を取得してはいるが、彼女は元世界最強のIS乗りだ。ドイツ軍の教官を務めていたこともあってか、その感性はどちらかというと軍人に近い。『IS学園教員』として見るなら千冬だが、『教員』としてなら真耶だろう。

 

善行をすれば我が事のように喜んで、非行に走れば胸を痛めながらもしっかりと叱責する。危険なことをしようとすれば全力で引き止め、悩んでいれば親身になって相談に乗る。作戦の成功か生徒の安否かをとわれれば、一も二もなく後者を選ぶ。そんな人間だった。

 

故にこそ、彼女が願うのはたった一つ。

 

(お願いです……皆さん、どうか無事で……!)

 

祈るようにキーを押し込む。

 

モニターに『接続中』という文字が浮かび上がり、僅かな沈黙が室内に流れた。そして―――回線が繋がったことを示す、緑色の『通話中』の文字が点灯する。一瞬呆けた真耶だったが、慌ててマイクを掴み取ると無我夢中で呼びかけた。

 

「あ、ッ―――み、皆さんっ! 聞こえますかっ!? 聞こえているなら応答してください!!」

 

しかし、スピーカーからはサーッという静かなノイズしか流れてこない。半狂乱になって呼びかける真耶の表情は、今にも泣き出してしまいそうな童女のようだった。

 

「鈴科くん! 織斑くん! 篠ノ之さん! オルコットさん! 凰さん! デュノアさん! ボーデヴィッヒさん! 更識さん! 返事をしてください!! 誰か、誰でもいいですから!! お願いです……応答、してください……!!」

 

返事はなかった。

 

ずらりと揃えられた最新鋭の通信設備は、ただただ沈黙を貫くのみだった。マイクを握り締めたままくずおれる真耶。絶望の暗雲が彼女の心を覆い尽くそうとしたとき、

 

 

 

『……―――ぃ』

 

 

 

声が聞こえた。

 

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった相貌を跳ね上げる。

 

気の所為などではなく、確かに応答があった。意味のある言葉として聞き取ることはできなかったが、誰かが真耶の呼びかけに応えようとしているのだ。

 

もう一度マイクに向けて応答を求めてから、全神経を集中させて耳をすませる。どんな小さな反応も聞き逃すまいと、呼吸すら止めて。跳ねる心臓の音すらも煩わしく感じるほどだった。

 

そして―――

 

『……か……! い……先生! ―――山田先生!! 聞こえますか!? 山田先生!!』

 

「更識さん!! 良かった、無事だったんですね……っ!!」

 

あまりの安堵に足から力が抜けてしまいそうになるが、まだやらなくてはならないことが多すぎる。通信さえ繋がれば情報交換ができる。そうすれば状況の把握と、優先事項の設定も行える。

 

現在の状況を聞き出そうとした真耶が口を開く前に、楯無の焦った声が飛んできた。

 

『山田先生! そちらの、第三アリーナの状況はどうなっていますか!? 透夜くんは無事なんですかッ!?』

 

「え……? ちょ、ちょっと待ってください! 更識さん達は今第三アリーナに居るんじゃないんですか!?」

 

食い違う認識。

 

まずは両者の持つ情報の擦り合わせからだと判断した真耶は、先程からカメラが使いものにならず、地上の状況が分からないために専用機持ちとのコンタクトを取ろうとしていたこと。そして、謎の通信不良の為一切の連絡が取れず、今ようやく回線が繋がったという旨を楯無に伝えた。

 

楯無曰く、アッシュ及びサイレント・ゼフィルスとの交戦中に正体不明の謎の男が乱入。その男の狙いは一方通行であり、巻き込んでしまうことを恐れた彼が専用機持ち達を逃がし、致命傷を負った彼一人だけがアリーナに残ったという。

 

それを聞いた真耶の背筋が凍った。

 

思い出されるのは福音事件。暴走し異様な二次移行を果たした軍用ISに対して、彼は手負いの一夏と箒を逃がし、たった一人で戦い抜いた。用意しておいたはずの援軍を拒み、手助けは不要だと切り捨てて、全てのリスクを背負い込んだ。その代償として、彼の左腕は海の藻屑と消えたのだ。

 

どうにも彼は、他人が傷つくことは恐れる割に、自分が傷つくことには何の躊躇いもないらしい。自己犠牲というわけではないが、とかく危険なことは自分一人で何とかしようとする。他人を守る為ならば、躊躇なく自分の命を差し出してしまいそうな危うささえ纏っていた。

 

幾ら強大な力を持っていても、真耶にとっては彼も大事な生徒の一人であることに変わりはない。そんな彼が、自分から命を捨てに行くような真似をしようとしているのだ。

 

「どうして……」

 

俯いた真耶の口から、小さな呟きが漏れた。

 

直後、

 

 

 

モニターが回復する。

 

 

 

ようやく己の役目を全うしたカメラ群は、渦中の第三アリーナの様子を鮮明に映し出していた。

 

破壊された更衣室。粉々に砕けた観客席。大穴の開いた内壁。散らばる瓦礫。そして、アリーナ中央に咲き誇る、不気味な程に鮮やかな大輪の血華。

 

その赤い花弁の褥に沈む人影が一つ。

 

鮮血で斑に染められた白髪と、線の細いシルエット。横一文字に切り裂かれた腹部は赤黒く変色しており、近付いて見てみれば腹腔に収まる臓器の一部が顔を覗かせているはずだった。

 

出来の悪いスプラッター映画を見せられているような気分だった。眼前の光景がとても現実のものであるとは思えなかった。復旧したバイタルモニターから鳴り響く『心肺停止』のアラートが、何処か遠く聞こえていた。

 

呆然と立ち尽くす真耶。

 

その耳に、声が届く。

 

 

 

『―――やぁやぁ、これはまた派手にやったねぇ』

 

 

 

ISの開放回線ではない。アリーナをモニターしているカメラがその声を拾っていた。

 

『全身の生体電流を逆流させて自殺ー、だなんて考えるかな普通? 死ぬにしたってもっとマシな方法考えなよ。おかげでシェイクしたプリンみたいになってんじゃん。ちょっとは治す方の身にもなれってんだい』

 

気が付けば、そこに立っていた。

 

横たわる少年のすぐ傍に、いつの間にか佇んでいた。

 

『でも、キミは死なないよ。私が死なせない。こんなくだらない、三文小説も真っ青なバッドエンドなんてこの私が認めるものかよ』

 

常識を変革し非常識を実現する、神出鬼没の大天災。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ヒーローには、幸福な結末(ハッピーエンド)がお似合いなのさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠ノ之束は、そう言って笑った。

 

 

 

 

 

 

 


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