しょしたい!   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 今回も長くなってしまいました。

 それにしてもバトル以外で『熱さ』を出すのは難しいものですね。熱い話は好きなのでどの話でも意識はしているのですが。



第十八話:会議

 

 

 ロンside

 

 

 今日は学院の全職員を召集しての会議が開かれる。

 

 もちろん召集をかけたのは私だ。

 

 前任の書士隊長ジョン・アーサーの娘について書士隊員、ならびに学院職員達の反応から情報を集めておこうという腹積もりだ。

 

 学院内にはジョン派などという愚かな連中がいまだに存在しているが連中の反応によって件(くだん)のシャルラ・アーサーの危険度が知りたいのだよ。

 

 連中もこの私が15年の歳月をかけても追い出せない程に狡猾な奴らが揃っているからな。

 

 あまり性急に事を荒げては墓穴を掘りかねん。

 慎重に少しずつ情報を得ることで私の地位を盤石なものにしなければならない。

 

 いや、盤石でなければならないのだ!

 

 何者にも私の平穏なる人生のためには私の存在が脅かされる敵はいてはならないのだ!!

 

 

「あー、みんな今日は集まっていただき感謝する」

 

 

「そんなことよりも早く要件を話してもらえないでしょうか?

 俺たちも暇ではないのですが」

 

 

 開始早々にそう言ってきたのは書士隊所属のダレン・ディーノ。

 

 書士隊内では特に大きな発言力を持つジョン派の筆頭と言えよう。

 

 普段は牙を隠した物静かな口調だがいきなりの喧嘩腰にも取れるこの発言。

 

 これはやはりシャルラ・アーサーが連中の期待通りの人物だったからなのかもな。

 

 

「それを今から話すのだろう!

 つまらんことでロン隊長の邪魔をするなっ!」

 

 

 次に響いた声はダレンの発現を諌めるような発言。

 これは私が書士隊内で最も信用している女、ジェリー・クロムアーマーだ。

 

 私の派閥はどうにも数は圧倒的に多いのだが、どいつもこいつも有象無象の使えない連中ばかりだ。

 

 だがそんな私の味方の中でもっとも優秀な駒。それがジェリーだ。

 

 ここ十五年で学院内には私の派閥に属する者を多く重用し、ジョン派の連中は潰せる者は潰し、残った者も閑職に追い込むことで発言力を弱めることには成功しているがそれでも完全には消えない。

 

 それにハリーやダレンやサーなど、古参の者や書士隊内で活躍の目覚ましい者は相変わらず一見中立派のように見せかけてその大きな存在をひたすらに隠し、この学院に留まり続けている。

 

 それなのにこれまで私の地位を狙ってこなかったのは連中が独断専行をせずに一つに纏まり、今回のような好機を待っていたからにすぎないのだろう。

 

 少なくともシャルラ・アーサーという旗印を得た連中はじきに何かしら行動を起こすはずだ。

 

 それこそこれまでの鬱憤を晴らすかの如く。

 

 ジェリーも優秀とはいえ、古龍生態に関する知識においてはさすがにダレンやハリーに劣る。

 

 その他の調査任務では隊内トップの実績を誇るがそこまで優秀なのは彼女くらいしかいないのだ。

 

 本当に優秀なのはジョン派に与する者ばかり。

 

 その優秀な書士隊員であるダレンもさすがに先走ったと気付いたようだ。

 

 

「ん、確かに礼を失した発言でした」

 

 

 発現に対する謝罪はしてもダレンの表情には隠しきれない私への嫌悪の感情が見てとれる。

 

 周りのジョン派の連中のダレンを見る視線も、先走った発言こそ責めてはいるようだが行動自体を責めているようには見えない。

 

 これはやはりシャルラ・アーサーが私の予想通りの危険な存在であるということに違いない。

 

 

「さっ、ロン隊長。続きを」

 

 

「うむ」

 

 

 恭しい動作で私に傅くジェリー。彼女も周りの反応に気づいているらしく連中の一挙手一投足を見逃さないように目を光らせている。

 

 もう少し情報を探る必要もあるな。

 

 ジョン派に属する若い衆からは今の反応だけでだいぶ分かったがある程度古参のジョン派の書士隊員達はこちらの出方を窺っているようだ。

 

 私が情報を集めようとしているように連中も私の情報を得ようとしているのだろう。

 

 

「さて、今回集まってもらったのは他でもない。この間起きた新入生の課外授業でのことだ」

 

 

 この一言で反応を示す隊員達が数人。

 

 

「事前に調査をしたはずの狩り場に大型モンスターが現れたそうだな。

 それもモンスターの中で特に危険度の高いイビル・ジョーが現れたというのは大問題だ。

 この学院の生徒である彼ら彼女らはハンターではなく学者の卵なのだ。

 今回は運良く死傷者が出なかったがそれは奇跡に近いことだろう」

 

 

 ここで安堵のため息を漏らす者がさらに数人追加。

 

 古参の連中はなんの反応もなし。

 

 

「だが私がここで気になったのは、そのイビル・ジョーを武器も用いずに従えさせた新入生がいると聞いたことだ。

 名前はシャルラ・アーサー。入学は少し遅れているが今年度の新入生としてこの課外授業にも出ていたそうだな」

 

 

 これまで無表情をら抜いていたハリーの眉が少し動く。

 

 ハリーの奴も反応を示すとはこの先私が何を言うか予想が出来たのだろう。

 

 確かハリーはシャルラ・アーサーの担任をしているのだったな。

 

 

「知っての通りイビル・ジョーは危険極まりないモンスターだ。

 一度人里に現れればあらゆる生物を根絶やしにするまで食い尽くし、被害の規模にしてみれば古龍に匹敵すると言っても過言ではないだろう。

 その危険極まりないイビル・ジョーを一人の少女が従え、あまつさえこのドンドルマの街のアリーナでモンスター同士の賭け試合に出すなど正気の沙汰とは思えん。

 仮にそのイビル・ジョーが特殊な個体で大人しい性格なのだとしたらそのイビル・ジョーは学院にて調査対象として研究するべきではないのか?

 ハリー隊員。君がその時現場で指揮をとっていたそうだがなぜイビル・ジョーを捕獲したという報告が私に来ていなかったのかね?」

 

 

 この情報もジェリーが私に報告してくれたことで耳に入ったものだ。

 

 本来当事者であるハリー本人が報告すべきなのだがな。

 アリーナに対する届しか出ていなかった。

 

 

「あー、すいませんロン殿。吾輩としたことがうっかりしていたようですな。

 ですが飼い主である新入生のシャルラ・アーサーにも周りにも従順であり、危険性は感じられなかったので飼い主となったシャルラ自身に任せる形にしていたのですよ」

 

 

「確かにお前のことだからうっかりしていたのかもしれんが私が言いたいのはそのイビル・ジョーが危険性を感じない位に大人しいのならこれからの野生のイビル・ジョーへの対策として学院が率先して研究すべきだろうと言っているのだ」

 

 

 この発言に対して何人かが抗議でも言おうとしたのか立ち上がりかけるがそれぞれに周りの仲間に止められている。

 

 ふん、所詮ジョン派と言っても若造も多いのだな。

 それともシャルラ・アーサーという小娘一人のおかげで自分達が有利になったとでも思っているのだろうか?

 

 

「……ロン殿、アリーナでのモンスターの飼育は大老殿で正式に認められたもので賭け試合も今やこの街ではなくてはならない娯楽ですぞ?

 何より生徒の自主性を重んじる吾輩は生徒の大切なモンスターを奪うなど出来ません!」

 

 

「ふん、自主性、自主性ねぇ……。私はお前の意見は聞いていないのだよトレジャーハンターのハリー」

 

 

 あからさまに侮蔑を込めた口調で言うとさすがのハリーもわずかに怒気が溢れるがそれはすぐに沈静化した。

 

 まったく、少しは感情的になってくれた方がこちらとしても動かしやすいのだが流石はその年まで私の書士隊内に残ってこれただけはあるな。

 

 

「ハリー隊員。私はモンスターが嫌いだ。人間の敵となる存在が嫌いだ。大嫌いだ。

 根絶やしにしても構わないとも思っている。

 それは人間にとって有害だからだよ。

 だからその中でも特に脅威となる危険度の高いイビル・ジョーの生態、または弱点などを知る事はこれからの人類の未来につながるのだよ。分かるかね?」

 

 

「お言葉ですがその言葉には賛成しかねますな。

 吾輩は人間もモンスターも同じ世界に生きる同格の生き物であり、一方がもう一方を一方的に根絶やしにするような行いがこれからの未来につながる行為とは思えませんな。

 シャルラは人類とモンスターの新たな未来の可能性を提示してくれた私の可愛い生徒。

 そんな彼女と彼女の夢を否定するような発言は真っ向から否定させてもらいます。

 そして件(くだん)のイビル・ジョーはすでに私の生徒の大切な家族として認識されている。

 これを奪うことは教育者としても一人の大人としても子どもに対してするべきではないと思っています」

 

 

 おや? いつもの奴ならとりあえず従っておこうというスタンスで揉め事を小さくするものだがハリーまでこうはっきりと決別を示すのは珍しいな。

 

 これまでジョン派でありながらその事実を隠し、古龍調査における高い実績から書士隊内に留まり続けてきたこの男が単純にシャルラ・アーサーが生徒だからというだけでここまで強気に出るわけがあるまい。

 

 ダレンだけでなくハリーまでも味方につけるとはシャルラ・アーサー、ただ血筋のみの小娘ではないようだな。

 

 

「……それは私の意見に反対するというのか?」

 

 

「ええ、言葉通りに取っていただきたいですね」

 

 

 ふん、言葉通り、ね。

 

 生意気な。派閥の規模で言えばまだ私の派閥の方が数は圧倒的に多いというのに今ここで対立の意思表明。

 

 何か策でもあるのか?

 ……それもいいだろう。真っ向から来るなら真っ向から叩き潰すのも悪くない。

 

 どの道ハリーをはじめとしたジョン派の連中はいずれ残さず潰す気だったのだ。

 

 これまでのらりくらりと私の講じた策を尽(ことごと)く逃れていたようだがここまではっきりと私に逆らったのだから理由付けすることなど容易だ。

 

 

「貴様それでも栄誉ある書士隊隊員か!?

 ロン隊長の指示に従うことこそ書士隊員の義務であろう!!」

 

 

 ジェリーの奴、ここでキレるとは気の短い奴だ。

 

 駒としては使えるが感情的すぎるのが問題だな。

 

 

「黙れ! いい加減お前のロン氏に対する腰巾着っぷりが我慢ならなかったのだ!!」

 

 

 ふん、今度はダレンか。奴もあれで気が短い奴だからな。

 

 書士隊内でも派閥以前にジェリーとは反りが合わなかったようだが今回のハリーの私に対する宣戦布告でとうとう堪忍袋の緒が切れたといったところだろう。

 

 そもそもこれまで我慢出来ていたのが不思議なくらいに感情的な男だからな。

 

 そして私の方こそジョン・アーサーの味方をする者など大嫌いなのだがな。

 

 

 しかしダレンに続いてハリーまで……収穫はあったが今回の会議はイビル・ジョーとシャルラ・アーサーをどうするかが争点なのだが連中はどうするつもりなのだ?

 

 しばし様子見と思い、じっと見ているとジェリーを中心に私の派閥とダレンを中心としたジョン派の連中が揉めに揉めている。

 

 まったく愉快な連中だ。所詮騒げばどうにでもなると思っているのだからな。

 熱くなってくれるならその方が御しやすい。

 

 この会議の主導権を握っているのは私なのだからな。

 

 そう、これからの私の地位を盤石なものにし、何者にも阻害されない平穏こそ私が求めるもの!

 

 

 

 だが両派閥が罵り合いから取っ組み合いに変わろうとしたところで一人の人間によって争いは止められた。

 

 

ダァン!!!

 

「いつまでもくだらないことで騒いでんじゃないよっ!

 さっきから聞いてりゃ大の大人が『お前が嫌いだ!』『俺の方がもっと大嫌いだ!』ってガキかテメェら!?」

 

 

 無駄に熱い言葉に隠す気がさらさらないような怒気を込めて発言したのは学院受付でしかないクラーマだった。

 

 ふん、机を叩き割るとはとんでもない女だ。

 

 こいつはジョンとは同期らしいがジョン派と言うほどジョンに傾倒している訳でもなく、私の派閥に属するわけでもない本当の意味で唯一中立に立っていた例外的女のはずだが。

 

 

「いいか、あたしは派閥なんざどうだっていいのさ!

 けどなぁ、あたしゃ個人的にシャルラちゃん個人が大好きなんだよっ!

 派閥がどーのこーのってテメェらが何をしようが何を言おうが構やしねぇけどなぁ、子どもを旗印にしたくらいで調子こいてんじゃねぇよボケがッ!!!」

 

 

 この発言には場も静まり返る。

 

 この女は書士隊内外問わず顔が利くうえに貴族にも人脈があるそうだからな。

 私でさえこいつがジョン派であったとしても潰せるかどうか分からない独自の権力を持つ女だ。

 

 所詮は有象無象にすぎない凡俗な連中では反論すら出来んか。

 

 ふん、やはりこの女は危険だな。

 

 

「ハァ~……。今回の争点はさぁ、ようするにイビル・ジョーの今後でしょ?

 もういいじゃん。今のままで。

 イビル・ジョーなんてそんなに人里に来るモンスターでもないしこれまで通り書士隊の奴らが気張ればいいだけの話じゃん。

 子どもから家族を取り上げてまで研究する価値なんてないだろ?」

 

 

「ふん、研究の価値ね……。

 だがクラーマ。それは私に反論しているということで間違いないのか?

 言っておくが私はお前のことも大嫌いなのだ。

 ここまで面と向って反論するのであれば私とて幾らでもやり方が「ごちゃごちゃうっせぇんだよ! 文句があるならサシで勝負しようじゃねぇか!」……ならばこの先私は私のやり方で今回のことを問題として取り上げていくぞ」

 

 

 この女がこれほどまでに感情的になるとはな。

 少しばかりシャルラ・アーサーを甘く見ていたか?

 

 

「はん、それこそ望むところだ! あたしは生徒の心も体もねっぷりじっくり守り抜く教師だ!

 可愛い教え子に手をだすような輩は派閥がどーのこーの以前にみんなまとめてぶっ潰してやるッ!!!!」

 

 

 これまで中立ともとれるスタンスのこの女まで味方につけるとはシャルラ・アーサー。とんでもなく危険な存在だな。

 

 私の平穏のためにはあらゆる手段を講じる必要がありそうだ。

 

 

「クラーマ、お前は立場上は教師ではないしお前の方が危険な気が「あぁん!?」……イエ、ナンデモアリマセン」

 

 

 ふん、ハリーの奴もここでそのツッコミは緊張感に欠けるが……、まぁ、それなりに楽しめたし得るものもあった。

 

 会議は所詮連中の情報を得るためのものだったのだ。ここらでお開きにしてもいいだろう。

 

 

「分かった。ならばイビル・ジョーの件は現状のままにしよう。

 だがお前らの今後は私の裁量にかかっていることを忘れるでないぞ。

 ではこれにて今回の会議は終了だ」

 

 

 今後の対応としてはやはり奴(・)にでも頼るとするか。

 

 くくく、思ったよりも早くジョン派の連中を一掃出来そうだ。

 

 私の平穏のためにさっさと消えてもらわねばな。




 クラーマは別にジョン派ってわけじゃありませんがあえて言うならシャルラ派でしょうかね。

 可愛い女の子が大好きなのでもしこれがむっさい男子だったらここまで熱くなったりはしなかったかも……

 で、ロンの今後の対応ですがこの物語はギャグなので墓穴を掘るような展開や味方を少しずつ削るようなネチネチした追い込みをかけて丸裸にするような展開になるかも。一応何種類か最後を考えていますがどうしようかは考え中でした。
 やっぱり最後はギャグっぽくなりますが、何だかんだでロンも救われます。

 しばらくはギャグが薄めになりますがこれも私が書きたかった話なのでこのまま進めていこうと思います。

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