↑この曲を執筆前に聞いたので中身に影響してるかも。
長くなりましたが今回でダイヤージの過去編は終わりです。
俺は急いで声のした方向に向かって走った。
乗ってきたアプトノスの奴はこの先にいるであろう古龍の気配を敏感に感じ取りやがって俺を落っことして逃げ出しやがったから俺自身の足で走り抜けることになったんだが。
ったくマコの奴。いくら足が早くとも古龍がいる場所を走り抜けるのに臆病なアプトノスを貸すとは何考えてやがんだ!
「おい、誰かいるのか!?
いたら返事しろ!!」
俺は声のした辺りに着くと大声で悲鳴の主を探す。
幸いにもテオ・テスカトルはちょうどエリア移動をしたようで俺の頭上を気付かずに通り過ぎて行った。
「……誰かそこにいるんですか?」
声がしたので振り向く。
そこには大きな倒木の陰から顔だけ覗かしている一人の少女がいた。
「おう、俺はシャオ村から来たダイヤージってんだ。
君はテオ・テスカトルの討伐依頼を受けたハンターか?」
俺がそう聞いたのは目の前の少女がハンターが身につけるであろう武具で身を固めていたからだ。
背中には太刀の鉄刀【神楽】、防具の方はラオシャンロンの素材を使った女性用装備の凛シリーズだ。
防具と同じく凛と煌めく視線はこの沼地の暗闇を切り裂くほど鋭い。
見たところ俺よりも年下みたいだがこれだけ立派な装備ってことはテオ・テスカトルの討伐に来たハンターと見ても間違いはねぇーだろう。
……さっきの悲鳴もこの少女のものなのだとしたら年上として聞かなかったことにしたほうがいいだろうな。
「……貴方がダイヤージさんでしたか。
私の名前はラピス・イツサラ。
貴方のことはシャオの村の文通友達のレイコちゃんからよく聞いています」
「ん? ちょっと待った。
そんなナリしてレイコちゃんのペンフレンドで商隊の護衛のハンターって君なのか?
テオ・テスカトルの討伐依頼を受けたハンターじゃなくて?」
「はい、ここ数日シャオ村の隣の村には来ていたもののテオ・テスカトルによる足止めを食らい、おまけに向かうのが遅れる旨を記した手紙の返事を書こうにも古龍観測所が鳥便の一般目的での使用を禁じたために送れなかったので私はこうして単身向かうところだったのです。
迎えに来ていただきありがとうございました」
「いや、迎えにって言われても俺も俺自身のために来たようなもんだし礼なんざいらねぇよ。
それにレイコちゃんへの手紙の返信が遅れていた理由も分かってホッとしたぜ。
正直君が遊び半分で文通をしてレイコちゃんをいたずらに傷つけているんじゃないかと思っちまってたくらいだからよぉ。
まぁ、何はともあれ合流出来て良かったぜ」
瞳に宿る芯の強さ。この子は本気でレイコちゃんのことを考えてくれていたんだな。
こんな友達がいるならレイコちゃんもすぐに元気になるだろ。
「それでは早速ですが早い所シャオの村に行きましょう。
私も見ての通りラオシャンロンを討伐するくらいには腕の立つハンターのつもりですが所詮は下位クラス。
一人で、ましてやG級のテオ・テスカトル相手に正面から挑んでも勝てませんので。
先ほどは けむり玉と隠密スキルの併用で上手いこと難を逃れましたが次も上手くいくとは限りませんしね」
「そっか、ならちゃっちゃと行くぞ。
今レイコちゃんは病状も悪くなってっから君に元気付けてもらいてーんだよ」
「私もレイコちゃんの病気の事は聞いています。
彼女の病気についても人づてに調べたところかなり重い病気のようですし私が会うことで少しでも元気が出ればと思って来ましたので」
こうして俺は目的であったレイコちゃんの文通相手との合流を果たし、あとは村に帰るだけとなっていた。
……のだが、さすがは古龍と言ったところか。
気配察知能力も伊達ではないらしく村まであと少しというところで発見されてしまった。
「クソッ! ラピスちゃんはこのまま急いで村に走れ!
この道を真っ直ぐ進めばじきに村に着くはずだっ!!!」
「そんなッ! それじゃ貴方が囮になると言うのですか!?」
「あぁそうさ。俺ぁなぁ、見ての通り不良やってるしなまじ腕っ節が立つもんだから友達なんざそんなにいやしねぇ。
人様に迷惑をかける馬鹿はぶっ飛ばさねえと気が済まねーし、なまじ頭の出来もいーもんだから親の雇った家庭教師には質問攻めしたら2度と来なくなった。
料金以下のクソマズイ飯を食わせるレストランにはうちで作ってる高級食材を仕入れさせて料金と釣り合うように料理指導しなきゃ気がすまねぇ不良だよ。
けどなぁそんな俺でも分かることがある。
病気で苦しんでいるレイコちゃんを今元気にしてやれるのは君だけなんだ!
俺の代わりにレイコちゃんとずっと友達でいてやってくれや」
へっ、薄々こうなることは予想してたんだよ。
死亡フラグもビンビンにおっ立ってたし俺はレイコちゃんの本当のお兄ちゃんにはなれねぇ。
だがなぁ、それでも死にかけの少女のために命張れるってんならそれは男にとって最高にグレートな生き様じゃねぇか!
自分に酔ってるって? あぁそうだろうな。俺は自分に酔っていると断言出来る!
だがそれでも、自分の命よりも優先させたいものがあるのが男だッ!
その結果が妹のように可愛がってきたレイコちゃんを幸せに出来るってんなら俺は本望だぜ。
「ドラァ!」
俺の拳が偶然だろうがテオ・テスカトルの額に命中し角を一本根本からへし折った。
「いまだラピスちゃん!
俺のことは気にせず村で待っているレイコちゃんの元に向かってくれッ!!!」
「駄目ですダイヤージさん!
貴方は自分がどれだけレイコちゃんに大切に思われているか分かっていないですか!?
みんなあの子の友達なんです!」
はっ、んな事知ってっよ。
だからこそ俺はレイコちゃんの理想であり続けなきゃなんねぇ。
俺が想っているのと同じくらい俺を慕ってくれているあの子のためにも。
彼女がいつも言ってくれたように俺はあいつの頼れるお兄ちゃんを目指してるんだからな。
この心が叫ぶ限り、誰一人邪魔などさせやせしねぇ! それが古龍であってもだッ!
テオ・テスカトルはそこで俺に向かって一度吠える。
「駄目ぇーーーーーーーーーーー!!!!!!」
ラピスちゃんの悲鳴と角を折られて怒り心頭のテオ・テスカトルが俺に向かって突進を開始したのはほとんど同時だった。
「……さよならだ。レイコちゃん」
その時俺は死を覚悟したのだがここで俺でもラピスちゃんでもない第三者の声が耳に届いた。
「そこであなたが死んだら誰が今回の話の語り部をするんですか?」
何だ?
声と同時にとてつもない殺意の籠った銃弾が雨のように頭上から降り注ぎ俺の目の前あと数センチという距離まで迫っていたテオ・テスカトルの体を地面に縫い付けるようにして放たれた。
「ぷふぅ~、久し振りの実践でしたが私の腕も落ちていないみたいですね。
体重をゼロにすることで飛行船からの飛び降りも難なく成功させ、目標を仕留め、着地も成功させる。
全部こなさなければならないのが一流の辛いところですがさすがは私。
我ながら百点満点の出来ですねぇ♪」
まるで何事もなかったかのようにG級のテオ・テスカトルをあっさりと殺した声の主は羽毛が落ちてくるかのように静かに俺の側に降りてきた。
それは俺よりもずっと小さく、幼く見えるがどこか大人びた妖艶さまで持ち合わせた美少女。
羽のような飾りのついた貧金で出来ているのだろう兜に、同じく貧金で出来ているのだろう金色に輝く防具を身に纏い、その小さな手には明らかに体格に不釣り合いの巨大なヘビィボウガンが握られていた。
「君がダイヤージ君ですね。
私はフリーのハンターのイトラ・モンスータです。
シャオ村のギルドマスター、マコさんの依頼で来ました」
「は?」
その瞬間ようやく俺の脳みそが働き始める。
いやいやいや。依頼を受けたハンターが来てくれたのも、そのハンターが俺よりも年下の女の子だったこともどうでもいい。
だがテオ・テスカトルを瞬殺!? G級だぞ!? 古龍なんだぞ!?
何でこんな俺よりも小さい女の子が“一瞬”で狩れるんだ!?
古龍ってのはG級ハンターでさえも複数のチームで討伐にあたるような自然災害と同義の脅威じゃねぇのかよ!?
「私は『殺戮人形(キリングドール)』って二つ名まで持ってますし二つ名持ちのG級ハンターなら一瞬で仕留めるのも簡単ですよぉ~。
現に私の夫や姉弟子の方たちもこの程度のテオ・テスカトルなら一瞬でしょうし。
サイズも見たところ最小値のようですしね♪」
ピコピコと兜についている羽飾りを動かしながら頬を赤らめて照れる少女。
ははっ、こんなナリして村では喧嘩最強の俺よりもつえぇだなんて月までぶっ飛ぶ衝撃だぜ。
「なんか俺よりも年下に見える可愛らしい少女が瞬殺したテオ・テスカトルに手こずっていた自分が情けなく思えてくるぜ」
「そんなぁ、可愛いだなんて言っても私はすでに既婚者にして新婚一年目の人妻ですから口説いても死ぬだけですよぉ♪
それに私はこれでも大陸中に知られる大人気アイドルハンターですし強くて当然じゃないですか。
メランコリってるところ悪いですけどマコさんからの依頼では貴方と一緒にいるであろうレイコちゃんという子のお友達を一緒に村まで連れて行くことまで含まれているのですからさっさと元気を出してください」
はぁ、なんつーかよーっ、俺って今回見せ場なしじゃね?
なんかもう俺なんかいなくても良かったっつーかよー……
「まったくそこまでショックですかねぇ?
仕方がないので担いで行くことにしましょう。
ほら、そこに突っ立ってるあなた、確かラピスちゃんでしたっけ?
あなたも村まで送りますから私にしっかり捕まってくださいね」
「え? いったいどうする……って、わひゃぁ!」
「ぬおっ!?」
説明すると俺とラピスちゃんを危機から救ったイトラちゃんという少女は俺達をその小さな肩に担ぐと物凄い速度で走りだしたのさ。
ここに来るまでに乗っていたアプトノスよりも断然はえぇ、一体どういう脚力してんだよ!?
まぁ、今更なツッコミは置いといて、そのおかげで村まではものの数分で着いた。
「ダイヤージ! どうやら無事に文通相手の女の子と合流してイトラちゃんに助けられたみたいだけど急いで病院に向かうんだ!
マジで危篤の五秒前ってくらいレイコちゃんの病気が悪化してるんだよ、うん!」
村の入り口で俺の帰りを待っていたマコからのセリフ。
だが俺はそれを聞き終わる前にイトラちゃんに担がれたまま病院に向かっていた。
「到着です(ポイッ)」ドシンッ
「くっ、レイコちゃん!!」
到着と同時に投げ捨てられたのだがそんな事に構わず急いで病室に向かう。
「はっ……はっ、ダ、ダイヤージお兄ちゃん……」
「ほらレイコちゃん! 君の友達のラピスちゃんも連れてきたぞ!」
「レイコちゃん、遅れてごめんなさい! ごめんなさいって今更だよね!
でもほら、ちゃんと来れたよ。
私が付いてるから早く良くなってよ! ねっ」
苦しげな様子ながらも俺とラピスちゃんを見つめるレイコちゃん。
だがすでに眼は見えてねぇみてぇだ。目の焦点が合ってねぇ。
耳だって聞こえているのかすら怪しい。
くそっ、病気の方がここまで進んじまうだなんて俺はどうすりゃいいんだっ!
たった一人の少女を笑顔にすることも出来ねぇのかよ!
と、思っていた。
「まぁ乗りかかった船ですしここも私に任せてもらいますよ」
ここまで俺達を連れてきてれくれたイトラちゃんだった。
「私はハンターとしての師匠でもある夫から弟子の時に色々なことを学びました。
その経験から言いますとこの子の病気は治せますね」
「本当か!? ならすぐに治してくれよ。
この子はこんな所で死ぬべきじゃねぇんだ!
これまで不幸だった分幸せになる義務があんだよっ!!」
「私からもお願いします!
レイコちゃんにとっての初めての友達が私であるように私にとっての最初のお友達も彼女なんです。
このままお別れなんて出来ません!」
「あーもー、そんなに大声出さなくても聞こえますよぉ。
ちゃっちゃと治しちゃいますから少し離れていてください」
俺とラピスちゃんを押しのけたと思ったらイトラちゃんはいきなりレイコちゃんの胸に手を突き刺しやがったんだよ。
これにはさすがの俺も驚いたね。
「ん、ありましたね」
そして何事もなかったかのように黒く腐敗した肉の塊を引きずりだして事もなげにそれを手の中で燃やした。
「…………」
「…………」
「あぁ、今のは心霊医術ってやつです。見るのは初めてですか?
刃物を使わずに人体に貫手を食らわせて体の悪い部分だけをちぎり取って傷跡一つ残さず手を引き抜くっていうアレです。
それと手の中で燃やしたのは体温を炎よりも熱くすることで抜き取った病気の原因を発火させただけですのでご心配なく」
「う……あ、ダ……イヤージ、お兄ちゃん……
それにラピスちゃ……ん?」
「おぉ! 気づいたかレイコちゃん!
俺だ! 約束通りラピスちゃんを連れて来たぞ!!」
「はじめましてというのも変だけど、ようやく会えたね。レイコちゃん」
この後はもう感動の展開でみんなして喜びあったもんだぜ。
助けてくれたハンターのイトラちゃんは「祝いの席に余所者がいるのは無粋ですから」っつって旦那さんが待ってるっつー飛行船に飛び乗ってどっか空の彼方に飛んで行っちまったんだがな。
ちなみに帰る時もジャンプで空に待機していた飛行船に乗ったのを見た時はさすがに俺も慣れていたからあんま驚かなかったけどな。
10mくらいジャンプ出来る人間がいてももう驚かねーわ。
まぁ、そんなこんなで無事に終わったってことさ。チャンチャン♪
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「_____てな事があってよぉ、ってどうしたみんな?」
「どうしたじゃないですよ!」
「最高にいい話じゃないのさ!」
「結果的には美少女が三人も出てきてるじゃないか!
ダイヤージずるいぞ!」
うおう、こいつら何言ってんだ?
「はぁー、とりあえずレイコちゃんが無事に病気も治ってお友達とも出会えてよかったですよ」
「本当よねぇ。これでもし死んでたりしたら今頃怒り狂ってダイヤージの頭真っ二つに割ってたわよ。
あんたの過去だけで三話も使っちゃったんだし。
その結果がバッドエンドってのは許せないもの!」
「しかしちょっと待ってください。
今回の話はダイヤージの医者を目指すきっかけを話すというテーマではなかったのですか?」
フィズの奴余計なことに気づきやがって。
それはおまけだから別にどうでもいいってのによぉ。
「確かにもうどうでもいいけど聞きたいですねダイヤージ君がなぜ医者を目指すのか」
「さぁ吐きなさいダイヤージ。
あんたは私たち三人に話す義務が生じたのよ♪」
「……あー、何と言うかな。
あのあと思ったんだよ。
『医者ってすっげぇグレートじゃね?』 ってよぉ」
「「「…………」」」
「いや聞けよお前ら。
俺もさぁ、イトラ・モンスータって名前をどっかで聞いた気がすっからレイコちゃんの退院祝いをしたあとにマコに聞いたら大陸中で有名なトップクラスのハンターらしいんだよ」
「確かにモンスータって苗字はこの大陸では有名よね。
私自身もそのイトラちゃんの旦那さんのハターン・モンスータさんのファンだし」
「あ、私もノレッジちゃんから以前雑誌を借りて読んで以来ファンです」
「『最強』のハターンさんと言えば美人の弟子が沢山いることでも有名ですね。
僕もハターンさんのお弟子さんの写真集なら何冊か持ってますよ」
やっぱあの人ら有名人なんだな。
この三人まで知ってるって相当だぜ。
「で、そこから俺もハターンさんのファンになってよぉ、寡黙で渋いハードボイルドな男ってのが最高にグレートだと思って自分の理想の紳士道っつーの? そういうのを決めて紳士であろうと生きてきたらいつの間にやら医者を目指していたってわけさ。
それが俺自身がどんな怪我でも病気でも治せる万能薬になるっつー夢の始まりだったのかもなー」
くくっ、まぁもっとも俺の夢を形作ってんのはそれだけではなくこいつらチームの仲間の影響でもあるんだがな。
んなこと言ったら恥ずいし言わねぇけどこいつらと一緒に全員揃って学院を揃って卒業して、それぞれの夢を実現出来ればいいな、と思う俺なのであった。
あと俺が自分の夢を目指すことでモンスターとの共存を目指してるシャルラの夢の助けにもなりゃいいな、っつー考えもあったりするんだがな。
シャルラってばマジで可愛いし……
前作のヒロインのイトラ再登場♪
彼女は前作の終わりからさらに腕を磨いていますので何でも出来ます。
まぁ、それはさておきキャラ設定にも書かれていますが追記しますとダイヤージはテオに対する怒りやら憎しみやらで拳に龍殺しの効果を付与させていたのでテオの角が折れたというわけです。
太刀の龍刀【朧火】なんかも龍に対する「憎しみ」がこもったことで龍殺しの効果が付与されているみたいですし憎しみ=龍属性ってことで問題ないでしょう。
龍属性=痒みと表現した漫画もありましたが。
今回の話は『CALLING 〜黒き着信〜』というゲームを不幸すぎるだろ!? という思いと、私がハッピーエンドを書いてやる! というい気持ちで書きました。
久し振りにデモンズソウルの動画を検索していたらこのゲームのゆっくり実況動画に出会い、観てみたらハマったのですよw
『CALLINGゆっくり鳴る黒き着信【ゆっくり実況プレイ】』ってタイトルなのですが面白いですよ♪
とにかくハッピーな話に出来て満足です。
あ、この作品でのレイコちゃんのお母さんはレイコちゃんが治ったことで入院費もいらなくなったので家族二人でのんびり暮らしましたとさ。