ルナside
ドンドルマの街に着いていきなり裏の仕事を任せられてしまったッスけど裏切ることを前提に考えを巡らせたら気が楽になったものでそのまま同室の部下二人と一緒に朝までキャッキャウフフして疲れからようやく眠りについた頃にギルドナイト隊員寮のウチらが借りている部屋の扉を叩くノックの音で目が覚めたッス。
一息(ワンブレス)の説明は疲れるッスね。
視線を巡らすとベッドの上では二人がかりとはいえウチの人並み外れた性欲のすべてを受け止めたイコルとミガカは死んだように眠っている。
起こすのも忍びないと思い、起こさないように入口まで行く。
コンコンコン
「はいは~い、今出るッスよ~」
こんな朝早くからこの街に来たばかりのウチらに会いに来るなんてギルドナイトの誰かだと思ったッス。
だけどそれとは違った。
驚くべき相手が目の前にいるというのは眠気を宇宙の彼方に飛んで行ってしまうほどの衝撃があった。
「あなたがこのたびドンドルマに転勤になったルナ・ギドイトさんですね?
私はシャルラ・アーサーと言います。
少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」
扉の向こうにいたのはまさに天使(エンジェル)と言うに相応しいとんでもない美少女だった。
シャルラside
私がギュスターブ・ロン氏の立場ならジョン派とロン派の派閥争いによる被害を少なく終わらせるために火種となっている私自身を暗殺してくると真っ先に考えました。
確かに私は人よりも頑丈かつ強い身体ですけど死ぬ時は死んじゃいますからね。
そしてロン氏が私を暗殺するとしたら自分で手を汚すことはまずないでしょう。
自分だけの平穏な生き方を望んでいる人が自ら危険を冒すくらいならギルドナイトという使い勝手のいい連中を利用すると思ったからです。
そしてギルドナイトの方でも私のような子どもが殺害対象なら誰か新人にでも練習代わりに殺させようとするはず。
ここ最近でこの街のギルドナイトのみならず、街の運営に携わる人全ての履歴、動向をクラーマさんとの協力のもとに調査した結果この街に昨日から転勤してくることになっているルナ・ギドイトさんという人に白羽の矢が立ったのでは? と思いこうして本人に会いに来たのです。
私を見て驚いたような表情。
これは間違いなく昨日の時点ですでに私の暗殺依頼の話を聞いているとみて間違いないでしょう。
「か……」
「か?」
しばらく呆然とした様子だったルナさんが何かを口にしています。
「かぁ~わいいぃ~~~~!!!!!
何君可愛い!! やっぱ駄目ッスうちにはこの子は殺せないッス♪
むっきゃぁ~~~~~♪♪♪」
「にゃぎぃ! ちょ、ちょっといきなり何するんですかぁ!?」
まさかいきなり会ったばかりの子どもに抱きつくなんて予想外でした。
彼女は一流の百合という情報を事前に入手していたので会っていきなり殺しにかかることは無いと思っていました。
少なくとも最初は話し合いから始まるものだと思い、それでも何があってもいいように身構えていたのですがこれは予想外です。
しかし特に危害を加えてくるわけではないので少し驚きましたが当初の予定通りの行動に移りましょう。
ギルドナイト指揮官のラスコー・ビトーさんを調査した結果、ルナさんは裏の仕事に慣れるために子どもが殺害対象の暗殺任務を任せられたのではなく任務失敗の責任を取らせて辞職に追い込む、もしくは始末するための理由付けとして私を殺すように言われたのでしょう。
現・ギルドナイト指揮官のラスコーさんは自分の地位を脅かすほどに有能な人間を排除してきた経歴があるようでしたし。
証拠はありませんがクラーマさん印の情報網なので間違いはないはず。
ルナさんはこれまでにこなしてきた実績からもかなり優秀な方のようですしギルドナイト指揮官が排除しようと考えるのも肯けますね。
でもそれとは関係なく、
バチバチッ
「ぐえっ!」
これまたクラーマさんが作ったオリジナルの防犯アイテムだそうで、電撃袋を使って作ったスタンガンだそうです。
威力は雷属性に弱い小型モンスターなら一撃で仕留める威力だそうですがこの物語はギャグなので死にはしないでしょう。
あとエロエロな人はどんな攻撃を食らっても根性スキルがデフォで備わっているので必ず体力が1は残る気がしますし。
エロは生命力の証です。
「たいちょ~、誰かお客さんですか~って……かぁ~わぁ~『バチバチッ』イィィー!」
「イコル~朝からルナ隊長を一人占めするなんてズル『バチバチッ』……」
ふぅ~、三人でしたか。いえ、人数は事前に調べて知っていましたがルナさんの性格から朝までお楽しみだったでしょうから起き出してくる体力が残っているとは思わなかったもので。
とりあえず気絶しちゃったみたいですし三人とも部屋の奥へ運び込んで起きたら再び話をつけますか。
あ、ちなみに学校の方にはクラーマさんの研究のお手伝いという名目でサボっていますので何の問題もありません。
帰ったら本当に何かしら怪しげな実験の助手をさせられそうなのが不安ですけど……
……
…………
「_____で、私は現在王立学術院にて学生をしているのです」
「いい話ッスねぇ~……、ぐすん」
「まさかここまで苦労しているいじらしい少女の命を任務との天秤にかけていただなんて……」
「許せないのはギュスターブ・ロンです。
酷いです。全ての元凶よッ!!」
目を覚ました三人に私のこれまでの出来事を話してみましたが情報通りの人たちでしたね。
こんな人たちをこの街に呼んだギルド上層部は少し間抜けに思えますが少なくとも私にはプラスに働きますね。
なんせあっさり籠絡できました。
ちなみにこの会話も監視されている可能性がありますので私がお母さんから受け継いだ『風』を操作する能力で会話による空気の振動をいじってルナさんが私を暗殺するために呼びだして殺しやすくするために新密度を上げている、という印象を与える会話に変化させていますので聞き耳を立てられていても安心です。
「まさか君みたいな可愛い女の子が貧乏暮らしをしていたところを偶然出会った学術院の事務員の女性に救われ実は父親がジョン・アーサーだと知られたことでジョン派とロン派の派閥争いの旗印となってしまい謀殺されそうだっただなんて……
ウチはそんな君にフォ~リンラヴ!!!!!」
「ルナさんはうるさいから少し静かにしてください(バチバチッ)」
再びスタンガンの一撃で頭がちりちりになってしまったルナさんは放っておいて話を進めましょう。
ちなみに私の生い立ちは面白おかしく設定をいじっています。
その方がこの人たちを御しやすくなりますからね。
美少女の嘘は大きな器を示して許すのが人間というものでしょう。
「それで私がここに来たのは皆さんに私の味方をしてほしいからなのです。
現在学院の方には数は少ないですがジョン派の人たちが味方としています。
ですが如何せん数が少なくギルドナイトの方にはツテがないので皆さんにはギルドナイトの内部事情を探るためにも現ギルドナイト指揮官をクビにしてルナさんを次の指揮官に据えようと思っています」
「うーん、それはいいけどさぁシャルラちゃん。
ルナ隊長もあたし達もこの街には来たばかりで味方はいないのよ?」
「それにあらゆる交通機関はギルドナイトの息のかかった人らで警備されているから余所の街に救援要請なんて出来ないし」
「あぁ、そういうのはいいんです。
私の望みはただ一つ。あなた方に私の暗殺依頼を頼まれたという証言をしてもらうだけでいいんですよ。
証言さえいただければそれをあらゆる情報伝達手段として街中だけでなく大陸中に広める手段は用意してありますし。
……最後の方でちょびっとだけ活躍してもらうことになるかもしれませんが」
というかほとんどがクラーマさんやお父さんの人脈なんですけどね。
私自身も街に来てからそれなりに信頼できそうな味方を個人的に増やしてきてはいますが相手が相手だけにどうしても一緒に戦ってくれるような味方はなかなか見つからず、数はいません。
ですがこちらは質には自信があります。今回の騒動で数でも上回る予定ですが。
「とりあえず私の暗殺依頼でしたっけ?
その任務は今見せてもらった依頼書によりますと期限が決まっているようですし期限が来るまではあなた方も失敗扱い出来ないでしょうし殺されないでしょう。
しばらくは私に対して暗殺しやすいように信用を得ようとしている、って名目で私と行動を供にしてみてください」
では作戦を実行しましょう。
ふふふ、私を殺そうとするだなんていい度胸ですねギルドナイトの指揮官さん。
あとギュスターブ・ロン。
私がいずれ書士隊のトップになった時に便利に使うためにもギルドナイトという組織自体は潰しはしませんがトップや幹部は全員社会的にクビにしなければいけませんね。何人かは物理的にクビになりそうですが。
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ♪
今回の話について説明しますと、『ギルドナイト』という組織はハンターズギルドの直轄ですが、ハンターズギルドは国から正式に認められた公的機関ってわけじゃないんですよね。
なので『王都』ではなく、『ドンドルマ』の街にギルドナイトの本拠地という設定で行きます。