しょしたい!   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 この物語は最初のうちは三人称で書いていますが次話から一人称メインに変わります。

 ぶっちゃけ、ノリです。



第三話:同級生

 授業も終わり教室には帰宅時間まで駄弁り続ける生徒が何人かいたが、シャルラとノレッジはお互いに示し合わせたように荷物をまとめるとすぐに教室をあとにした。

 

 いや、実際に示し合わせていたのだが。

 

 

「今日はシャルラちゃんの歓迎パーティーを開こうと思うからいっぱい御馳走作らなきゃね。

 こう見えて私は料理が上手いんだよ♪」

 

 

「そこまで気を使っていただかなくともいいんですよ?」

 

 

「なぁに言ってんのそんな小さいのに遠慮する必要ないわよ」

 

 

 半ば強引に引っ張るノレッジだが、嫌と思わせない自然なしぐさにシャルラは好感度をさらに上方修正。

 

 小ぶりながらもシャルラの腕に触れるノレッジの柔らかさに興奮してしまったノリともとれるが。

 

 そしてノレッジはノレッジで、シャルラの年の割に青天井の成長を見せる双丘に癒されていたりする。

 

 似た者同士の二人だ。

 

 

「ほぉら、見てごらんシャルラちゃん。

 この街の夕方は買い物客で賑わうから、早いとこ買い物済ませないといい物はすぐに売り切れちゃうからね」

 

 

 シャルラはともかく、そういう行動に慣れているからノレッジは自然な様子を演出したまま絡めた腕とその先の手の動きを言動で逸らす。

 

 ドンドルマほどの大都市の通行人たちも、特に何を思うでもなく自然なまでに街中で百合の花を咲かせる二人を背景として流している。

 

 流石と言うべきか、何と言うべきか。

 

 父親がシャルラの学者修行の地をこのドンドルマの街を選んだのはこういった風景を見せるためでもあったのだろうが、シャルラに小指と小指に赤い糸が結ばれたような友人を探させるためだったのかもしれない。

 

 その相手が女の子であることは、父であるジョン・アーサーも思いもしなかっただろうが。

 

 

「おばちゃーん、この樽に入ってるシモフリトマト傷がついてるから1ゼニーで売ってくれない?

 もちろん1個ではなく一樽を1ゼニーで」

 

 

 そんな風にシャルラが考えていると、遊びは寮に帰ってからとばかりに買い物パワーを発揮するノレッジ。

 

 

「1ゼニー負けろならともかく1ゼニーに負けろはやりすぎだよノレッジ。

 高級食品なんだから」

 

 

「じゃあほら。この樽、ゴキブリが入ってるし1ゼニーを受け取る代わりに私に処分を任せると思ってさ♪」

 

 

「ほらって、今あんたが入れたんじゃないのさ!」

 

 

 食材屋のおばちゃんとも顔見知りらしく、慣れた様子で値引き交渉をするノレッジ。

 

 その間手持無沙汰なシャルラは何もかもが見慣れない街の景色を眺める。

 

 見たこともない素材で作られた防具を身に纏ったハンターや、見たこともないモンスターが籠に詰められて運ばれていく光景。

 

 これだけの人が生活をするこの街で、自分がこの景色の一部になったということが嬉しくてたまらないのだ。

 

 が、もちろん人が多いと騒動も起こるわけで、

 

 

「あ……」

 

 

 シャルラは背後からの突然の衝撃を感じ前のめりに転んでしまい、持っていた鞄の中身をぶちまけてしまった。

 

 

「いきなり俺にぶつかってくるなんていい度胸してるじゃねぇか!」

 

 

 見れば身長2mを越えるような大柄のハンターが立っていた。

 

 

「こりゃ慰謝料として嬢ちゃんの有り金縁部いただくけど文句ないよなぁ!?」

 

 

「……(見るからにチンピラですね。でも下手に倒したら引っ越し早々“血祭り少女”だなんて言われるかも)」

 

 

 もっとも良い解決策は人に頼ることだが、チンピラの口調に苛立ったシャルラは、自分が倒しても問題ないのでは? と考えていた。

 

 チンピラはこの手のことの常習犯なのだろう。

 

 一番残虐かつ手を汚さない解決策を模索していたシャルラをよそに、慣れた手つきで地面にばら撒かれたシャルラの財布を拾うと勝手に中身を抜き取ってしまう。

 

 周りは人の流れが激しく、チンピラの腰巾着が上手く影になるように立っているのでこの騒動に気づいてる者はいない。

 

 ノレッジも食材屋との交渉に熱中しているようですぐ後ろでこんな騒ぎが起きていることに気づきもしない。

 

 

「ん? しかし嬢ちゃんよく見りゃかなり可愛いじゃねえか。

 財布返してやる代わりにちょっと付き合えよ」

 

 

 チンピラの腕が、シャルラを掴もうとしたところでよく響く声がそれを止めた。

 

 正確には、シャルラがチンピラの全身の骨を粉砕するのを止めたことになるのだが、傍から見れば少女と暴漢なので声の主は勘違いをしたことになるのだろうが。

 

 

「やめろ屑が!」

 

 

 見れば人混みの中から黒い革製の学ランを着こみ、頭をゲリョスソウルの髪型で固めた青年が歩いてきた。

 

 

 

「……おい、てめぇ。今のは俺に言ったのか!?」

 

 

「だったらどうしたってんだ!?」

 

 

 巨漢のチンピラは、突然現れた青年の胸倉を掴むとそのまま殴りかかる。

 

 

「……(ふむ、困った時に助けてくれるヒーローがいるだなんて、私には主人公補正でもあるんでしょうね」

 

 

 この手の正義感の強い者は、弱い印象を持っていたシャルラは、自分を助けてくれようとした青年が殴られ、吹き飛ばされる光景を思い浮かべてしまったが、そうはならなかった。

 

 

「ぼっぱぁ!」

 

 

 吹き飛んだのは掴みかかったチンピラの方だった。

 

 相手よりも青年の方が素早くその顔面に拳を叩きこんでいた。

 

 

「何人たりとも俺の目の前で女の子に手を挙げる奴ぁ許さねぇ!」

 

 

 青年は吐き捨てるように言うとシャルラに向かう。

 

 

「大変だったな嬢ちゃん。

 雰囲気的に田舎から出てきたばかりなんだろうけど街にはああいったゲスが居っから気をつけろよ」

 

 

「そうですね。ありがとうございました」

 

 

 危うく自分が手を出すことでチンピラに絡まれる以上に面倒なことになるところだったのだ。

 

 冷静さを取り戻したシャルラは、素直に青年に礼を言った。

 

 

「いいってことよ。俺はこれでも紳士を目指してるんでな。

 困ってる女の子を放っておけなかったのさ。

 それより嬢ちゃんも王立学術院に通う学生だろ?

 俺もこう見えて学術院に通ってっから、また学校であったらよろしくな」

 

 

 そう言って青年は爽やかに立ち去っていく。

 

 

「やはり美少女に生まれて正解といいますか、この街での初日としては悪くないですね」

 

 

 この時からすでに百合の気があったシャルラだが、青年の紳士的な振る舞いには好感触であった。

 

 

「ぷっひゃ~♪ おまたせシャルラちゃん……って何かあったの?」

 

 

「……何でもないですよ」 

 

 

 面倒になったシャルラは考えるのをやめた。

 

 とりあえず、今日はこのままノレッジと一緒に学生寮に向かうだけ。

 

 ドンドルマの街に引っ越してきた初日から色々と騒がしいのだと思うシャルラなのであった。

 




最初はシャルラとノレッジの二人だけがメインで百合の話にしてもいいかとも思いましたがメインキャラに男が一人もいないのは暴走させずらいので出したのです。

 でも男女の恋愛描写なんて普通ですしメインキャラにさせるつもりは今のところないんですけどね。

 あとシャルラは三人称だと普通に大人しい子に見えるかもしれませんが次回から一人称で書くのでけっこう印象が変わると思います。
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