ロンside
シャルラ・アーサーに対して有効な策を模索し続けていたが、どうにも情報が不足している。
ギルドナイトも、あの娘の支配下にあっては逆にこちらの情報が奪われかねない。
そこで早いうちに、私がこの派閥争いに敗れる可能性を少しでも小さい内にあの娘を始末するための仲間を増やしておきたいと思う。
そういう考えから、今日開く会議は情報収集と今後の私の先行きを見るためにも最も重要なものとなる。
が、会議の時間まで、まだあるとはいえ、集まった私の派閥の人間は数人。
しかもジョン派 ―――いや、今ではシャルラ派だな――― の人間はまだ一人も来ていない。
私の派閥もずいぶんと小さくなったものだ。
と言うよりも、最近私を軽んじている者が多すぎる気がするのだが……
なぜか学院全体に、私がシャルラ・アーサーの暗殺を試みたという噂が流れはじめ、証拠こそ残していないために表立って私を糾弾してくる者こそいないが、周りが私のことをどう思っているかがよく分かる。
校内の掃除や簡単な設備の修理をしてくれている学院の用務員に、学院内にある私の自室の扉に書かれた落書きを消すように頼んでも「後でする」というばかりで結局自分ですることになった。
(たぶん落書きは生徒の誰かだろう。「『元』書士隊長室(笑)」などと書かれていた)
その用務員だが、シャルラ・アーサーが「自室に新しい本棚が欲しい」と言ったら自腹で瞬時に用意したという話も聞いた。
(私自身が女子寮に忍び込んだわけではない)
食堂のおばちゃんからも、注文したメニューをわざと間違えるという嫌がらせをされた。
(なぜ『こんがり肉』を注文して『キムチ丼、ご飯抜きの大盛り』が出てくるんだ!?)
自宅で飼っている鳥(古龍観測所にいたのが可愛かったので無理矢理一羽もらった)のピヨちゃんも最近私の肩に止まろうとしないし。
(飼い始めの時から一度たりとも懐いてくれていた訳ではないのだが)
最近は全てが悪い方へ悪い方へと向かっていく。
これも全てシャルラ・アーサーのせいだ!
あの娘が来てから私の学院内での地位は揺るぎだしてしまった!
(かと言って周りの嫌がらせのレベルが低いため、怒って周りに怒鳴りつけるわけにもいかない管理職の辛さ……。いや、これでも一応、書士隊内では一番偉いのだがな)
「おい、そこのお前。
今日の会議の時間まであと少しだがジェリーの奴はどうした?」
私とほぼ同時に入室し席に着いていた私の派閥の一人に声をかける。
「ジェリーさんでしたら用事があると言っていましたので少し遅れるそうです。
たぶん会議には間に合うと思いますが」
ふん、遅れる……か。
あの女も幼い頃から私が目をかけてやったと言うのに、たるんでいるのではないのか?
私が開く会議を差し置いてほかに重要な案件などないだろうに。
「……ふん、大分集まってきたか」
会議開始時刻の数分前になってようやく、ちらほらと現れた書士隊、ならびに学院内の職員たち。
だが、その中にありえない人物の姿を見つけた。
私の敵であるシャルラ・アーサーの姿があったのだ。
「待て、そこの娘。
確かお前は学院生徒のシャルラ・アーサーではないのか?」
ごく自然に入って来たように、私が声をかけるまで私の存在を全く意識していなかったかのような、自然な態度で私に目を向けるシャルラ・アーサー。
「あぁ、いましたか。現・書士隊長ギュスターブ・ロン氏。
確かに私は王立学術院生徒のシャルラ・アーサーですが、それが何か?」
直接顔を見るのはこれが初めてだが、なんだこの目は?
まるで私以上に黒く濁った眼をしながらも輝きは決して失っていない、そんな眼だった。
「『何か?』ではない。
これから行われるのは私が開いた学院の今後を決めていく会議だ。
一介の学院生徒が入室することは許可出来ん」
お互い様だろうが、私も精一杯自身の中の殺意を隠し、ごく自然な態度で言う。
「ええ、この場にいるのは書士隊の面々、それに学院職員の方たちだけですね。
だから私がここにいるのも問題ないのです」
「だから貴様は生徒で……」
そう言い掛けたところでシャルラ・アーサーが何かの書類を突き付けてきた。
「分かりますか?
私は今日付けで、この学院の生徒でありながら王立学術院学院長の席に就きました。
これで私がこの場にいることに反対することは出来ないでしょう?」
「ば、馬鹿な!?
この学院は私の手の者が……」
そこでまた、ハッとなる。
シャルラ・アーサーの背後に影のように付き従う連中の中に前・学院長の姿があることに。
「学院長! 貴様いったいどういうつもりだ!?」
「どういうつもり、と聞かれましても、私もだいぶ年ですからのぅ。
引退を考えておる時にシャルラちゃんが話を振ってくれたのですじゃ」
視線をシャルラ・アーサーに向ける。
「前学院長ですが、この方は実に快く私にその地位を譲ってくれました。
これからは書士隊こそあなたが管理しつつも学院内では私の方が立場は上ということを忘れないでくださいね」
それは戯言だ! と決めてかかりたかったが学院内でのシャルラ・アーサーの地位は私を上回っているというのは本当だった。
書士隊内では当然隊長である私がトップだったが、ここはあくまでも学者を育てるための学院。
学院の長である学院長の方が立場上の権力が大きくなるのは当然だった。
それを抑えるために前学院長はギルドナイトによる暗殺の恐怖で脅し、立場上は私より上でありながらも私の派閥に与していた。
しかし私に従わない連中への脅しの手段として使ってきたギルドナイトが、その脅しの手段として使えなくなったという問題が今、ここにおいて出てきてしまった。
「そ、そうだ! ジェリー! ジェリーはいるか!?」
会議に遅れていたということは、すでにシャルラ・アーサーが学院長の座を手に入れて何かしら私を追い出すための画策をしていることに気づいてその対策をするためだったに違いない!
あの女が私を裏切るはずなど……
「ロン隊長……、私はここにいます」
静かに場に響いた声。
それは私の敵であるシャルラ・アーサーの側から響いたものだった。
「申し訳ありませんロン隊長」
「なぜ……、なぜお前がシャルラ・アーサーに付くのだ……」
どう見ても私を裏切ったかのような謝罪の言葉、そしてこれまで観たこともないような満ち足りた笑顔。
「私はシャルラ様の愛により、魂のレベルで屈伏させられ、愛の奴隷として忠誠を捧げていくことにしました。
あなたからの恩は忘れませんが私のご主人様はシャルラ様です」
きっぱりと。
はっきりと。
決別の言葉を述べるジェリー・クロムアーマー書士隊員。
私はよほどひどい顔をしていたのだろう。
私を見て口の端を吊り上げ、とびっきりの笑顔を浮かべるシャルラ・アーサーが口を開く。
「さて、わかってもらえたと思いますが権力基盤は完全にひっくり返させてもらいました。
今日の会議もあなたにはあなたの考えがあったのでしょうが、私の大きくなった派閥のお披露目にでも変えさせてもらいますね」
シャルラ・アーサーは何か口にしているようだったが、それはもう、私の耳には入らなかった。
あまりにも突然の絶望。
他に対処法があったのではないか?
何かあの娘が地位を得る前に出来ることがあったのではないか?
私はこれでおしまいなのか?
そう言った自問自答が頭の中を駆け巡り、気付けば残っていてくれた数人の私の派閥の人間もシャルラ・アーサーの取り巻きに加わっていた。
「さすがに、あなたがこれまでに書士隊長としてやってきた実績から、すぐに追い出すことは出来ないでしょう。
ですが私はあなたに、あえて今、宣戦布告をさせてもらいます。
あなた……邪魔なんですよ」
そこからはもう何も覚えていない。
シャルラ・アーサーはその言葉を最後に部屋を出ていき、その取り巻きのシャルラ派の人間も追うように出ていく。
私に残された時間はもう少ないということを改めて認識させられるものだった。
いやぁ、あっさりと権力基盤をひっくりかえしちゃいました♪
この後のロンの最後の一手とシャルラのさらに上を行く策謀により物語は終盤へ。
そして私はギャグが大好きなのですよ♪
百合要素も、そりゃあ大好きですが、この世で最も価値があるものは『面白いモノ』だと思います!
面白ければ何でも大好きな私ですから、笑える展開を求めてしまうのですよw
なのでエロやグロに関しても娯楽の一つという認識をしていますので面白いかどうか以外を求めませんね。